TRPG向けダンジョンの冒険マップの手描き方法

Last-modified: 2017-12-20 (水) 19:19:39

■■はじめに■■
TRPG、特にダンジョンズ&ドラゴンズではゲーム中のキャラクターの位置を明確にするためのコマやミニチュア、マップが使われることが多いです。これらの小道具の使用はゲーム内の状況を明確にし、誤解によるトラブルなどを避けてスムーズに遊ぶ助けになります。また、良い小道具はゲームの雰囲気を盛り上げて楽しくするのに役立ちます。マップがあれば冒険者が新しい場所に侵入したとき、DMは状況の詳細な説明はマップにまかせて省略あるいは後回しにし、シーン全体の雰囲気の描写や悪漢のカッコいい決め台詞に徹することができます。
 公式シナリオなどではマップが提供されている場合もあり、最近は市販の汎用マップやマップ作成ツールも充実しつつありますが、自作シナリオで遊ぶ場合などにはそれらを活用できない場合も多いです。このページではダンジョンズ&ドラゴンズを念頭に、手軽に冒険マップを用意するための方法としてマップ手描きの方法/コツを説明します。

 
文責:オカ

[1]ゲームで実際に使用するマップの作り方を考える
まず用途ごとに最終的なマップの出力/製作の方法を考えるべきです。方法ごとに作りやすいマップの大きさがあり、目的に合わないと大変に苦労します。冒険マップを手描きする際に使いやすい手段ごとのサイズを幾つかリストアップします。

  • フリップマット(標準サイズ):24×30マス:PAIZO社が販売している1インチのマス目が描かれた表面コート済のマットです。ホワイトボードマーカーでマップなどを自由に描き、不要になったら拭き消せます。基本的な無地のモノ以外にも様々なシチュエーションの冒険舞台が印刷済みのモノが多数用意されています。
  • フリップマットBigger Basic(大判サイズ):27×39マス:標準サイズと同様ですが、より大きなサイズのものです。
  • A3印刷:11×16マス:最終的にA3用紙に印刷しようという場合、A3用紙1枚にこの程度のマス数を印刷できます。プリンタ機種によっては12×16マス印刷可能なものもあるかもしれません。D&Dの冒険を一区切りつくまで行うにはこのマップは小さすぎます。A3マップを何枚か繋ぎ合わせることになりますが、このマス数を意識することで作業が楽になります。
     

[2]ダンジョンの設計
[2.1] 実際にどのようなマップを描くのかはダンジョンマスターの冒険シナリオの内容次第です。シナリオ作成の方法についはDMごとに千差万別、ここで説明は避けて実際の冒険マップの描画のサンプル向けのダンジョンを考えてみました。
 シンプルなダンジョン探索を行いやすい標準フリップマット1枚、かつA3用紙印刷で4枚に収まるダンジョンということで「22×30マス」にします。自然洞窟と加工された部分が混在するダンジョンです。

 

自分の場合はダンジョンの設計を方眼紙で行っています。今回はA3用紙印刷に用いるテンプレートを書式に使用して設計します。これはA4用紙内の19.5cm×28.4cm内に「22×32マス」の区切ってあり、このマス目内にダンジョンを描いた後に枠内を11×16マスごとに切り出し、コンビニエンスストアなどで284%で拡大コピーすれば1マス2.5cmで実用できる縮尺になります。

 

22マス×32マスの書式

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A4サイズで22マス×32マス書式のPDFファイル(倍率284%のコピーで1マス2.5cm)

 

[2.2]今回に考えたダンジョンの全体像

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[2.3] ダンジョンの形状を描く際に人工物の部分はマス目に沿って角から角へとまっすぐに線を引きます。
[2.4] 自然洞窟は岩の材質によりけりとは思いますが、私の場合は斜め向きの短い直線を繋げて書いています。このとき、マス目の角から角へ斜めに線を引くとそのマス目にキャラクターが侵入できるのか否か判別が難しくなります。マス目の各辺の中央同士を結ぶように線を引いた方が良いでしょう。

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[3]ダンジョンの構成部品の描画

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[3.1]扉
エリアを区分ける扉はダンジョンに代表的な部品です。平べったい長方形で描き、一つの角に軸を表す○か、あるいは蝶番の出っ張り、余裕があればドアノブの出っ張りを描きます。

 

[3.2]階段
階段はコの字型の部品を連ねて表現するのがお手軽です。短い階段なら下段を小さめに、上段を大きめに描くとそれらしくなりますが、長い階段ではあきらめましょう。

 

[3.3]水辺
水は近くの陸地を緩やかにしたような曲線を途切れながら描くことで表すことができます。

 

[3.4]机と椅子、寝台、本棚、トイレなど
これらの家具はそのエリアが何に使われているのかを示すものです。また戦闘時に活用される可能性があります。部屋ごとに適切な家具を配置しましょう。

 

[4]構造物内のと斜面のハッチング(斜線入れ)
上記[3]のままでDMはダンジョンの構造を理解できるのですが、ゲーム中に始めて見るプレイヤーには視認性が悪く、床の部分と壁の部分の見分けがつきにくいです。そこで、壁の石の中や斜面に斜線を入れることで視認性が上がり、マップの雰囲気がぐんとカッコ良くなります。

 

[4.1 TypeA]壁面沿いの石の中
壁面の壁の内部側に斜めの短い平行線を1~2マスぶんくらいの面積にササッと描き、また角度を変えて壁面に沿って描くことを繰り返します。図面記号っぽい描き方です。

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[4.1 TypeB]壁の下の影
上記[Type A]とは別のスタイルとして、絵画っぽい方法があります。壁面の室内側の床に斜めの短い平行線を描いていくスタイルです。奥まった部分の線を長くし、また角度を変えた線を重ねます。影のつけ方にちょっとセンスが入りますが、作業に必要な手数は[TypeA]の方法よりも少なく、慣れればより短時間で描けそうです。

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[4.2]石の中央部
上記[4.1]なんかを全面にやるのは大変ですが、大きい空白があると床と区別がつきにくくなります。石の真ん中辺は適当に雑な斜線を数本入れておくと、そこが侵入不可能な石の中であることがプレイヤーに伝わりやすくなります。

 

[4.3]床面の模様・ひび割れ
一方で、侵入可能な床にそれらしい模様やギザギザのひび割れを入れてやると、そこが侵入可能なエリアだと分かりやすくなります。。

 

[4.4]斜面になった崖
[4.4.1] 急な角度の斜面を描くにはまず斜面の縁から角度を変えつつ、線を伸ばします。
[4.4.2] 上記[4.3.1]で作成され区域の中に縁と並行っぽい線を角度変えつつ、描きます。

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[4.5] 手描きしたマップを拡大コピーして繋ぎ合わせ、エリアごとに切り分けて使用した場合、このようになります。場面ごとに部分マップを継ぎ足して重要なところだけ話すことで、とてもスピーディにゲームを進めることができます。マップは繋ぎ合わせたところで厚紙や画用紙に貼りつけてから切り分けると扱いやすいです。

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この方法が役立つのは手描きマップだけの話でなく、カラーのマップ画像などでも使うことができます。

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[5]フリップマットへの描画とそのタイミング
フリップマットを使用する場合、上記の方眼紙に描くのはDM本人が分かる程度の内容で構いません。~[2]か[3]の内容までで充分でしょう。マップをどのタイミングで描くかによって少し手順が変わります。予め描く場合は、紙に[2]~[4]を描く場合と変わりません。

 
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 (水や草、炎の表現に適時カラーペンで用いるとそれらしくなります。)

 

[5.1] 使用するときはまだ到達していないエリアは紙などを被せて見えないようにしましょう。

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[5.2] ゲーム中にその場で描くのもアリで、むしろそれがフリップマット本来の使い方だと思います。ただ、この場合でもマップ提示時点で見えている部分を書き込んでおくとスムーズにゲームを開始できます。

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[5.3] またダンジョン内部構造を描く際に基準となる部分にDMだけが分かる点を打っておくと、プレイ中にマップを素早く描くことができます。

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[5.4] プレイ中のリアルタイムにダンジョンを描く場合には、プレイヤーの行動宣言に合わせた描きこみタイミングが重要です。DMはプレイヤーを放置してマップを描くことに熱中するべきではありません。

 

プレイヤーがダンジョンの扉を開けることを宣言したら・・・、

  • [5.4.1] そのエリアの形状(上記[2]に該当する部分です)を素早くザックリと描いて場面の描写。
  • [5.4.2] プレイヤーからの質問や行動宣言に応答/説明しながら家具など([3]に該当)を描画。
  • [5.4.3] プレイヤー同士が相談しているときや休憩時にハッチング([4]に該当)を描写・
    ・・・・といったところでしょうか。
     
    フリップマット上でダンジョン壁の描画の様子
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フリップマットを用いてゲームをしながら描かれたマップ

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マップの描き方もマスタリングのやり口も人それぞれです。
皆さん、ご自分に合った方法を探ってみ見てください。
良い方法が見つかりますように!