マスターとの出会い

Last-modified: 2015-05-07 (木) 20:40:03

マスター・マ):ダルモア
ファルシオン・フ):ファルシオン様

 

衣装表示は、そのシーン前にその通り着替えていただければ。
また、話の合間にエモを入れますと、より芝居が引き立ちます。

 

セビリアの酒場での公演を予定しております。
ひと台詞10秒(台詞言い+エモで)
大体25~30分の芝居になっております。

 

では、御確認ください。


マ)セビリアの路地裏
マ)ここに、猫の額ほどの空間が広がっていた。
マ)店員はマスター1人。顔に、年季の入った刀痕があること以外、素性を伺えるものの無い男である。

 

マ)カラン コロン
マ)おや? 珍しいこともあるもので。一人の女性が足を踏み入れる。

 

マ)これは、そんな彼女とマスターの、時重ねである。

 

マ:その辺の服 ファ:普段着

 

マ)いらっしゃいませ。お客様、何名様でしょうか?
フ)1人よ。─ふん。みすぼらしいお店だこと
マ)ははは。よく言われます
フ)私、このセビリア1の貴族「ファルネーゼ公爵家」の長女、ファルシオンよ。そんな私がわざわざ足を踏み入れたのですから
マ)左様で御座いますか。善処いたします
フ)で、ここはどんなものが頂けるのかしら?
マ)メニューは御座いません
フ)はあっ? 何それ?
マ)私の思いつくまま、その方に相応しいものを気まぐれにお出ししております。
フ)へえ。じゃ、早速だけど1杯頂こうかしら? ドン・ペリニヨン? アシエンダ・ラ・カピリャ?
マ)では、マティーニを。
フ)マティーニー? そんなありふれたお酒で私が満足するとでも?
マ)マティーニはシンプルなカクテルです。ですからより作り手の力量が試される一杯なのですよ
フ)つまりあなたの作るマティーニは、どんな高級なお酒よりも旨いってこと?
マ)お飲みいただければ……。はい。完成いたしました。御賞味下さい。
フ)じゃ、早速
マ)如何でしょうか?
フ)─まあまあやるじゃない
マ)左様で御座いますか。ではあと2口でお飲み下さい
フ)え!? こんな強いお酒、あと2口で行けと!?
マ)はい。マティーニの寿命は3口です。攪拌され、粒子と粒子がグラスの中で程よい味を保てているのはその位になります
フ)よーくわかった。私をからかっているのね!
マ)はて、何のことやら
フ)覚えてなさい!

 

数日後

 

ファ:きらびやかな服

 

マ)いらっしゃいませ。おや、貴女様ですか
フ)ふふ。良いドレスでしょ? 先日南蛮貿易で大儲けしたのよ
マ)左様で御座いますか
フ)じゃ、早速。この私に相応しいお酒、出しなさい
マ)では、バカルディーを
フ)はあっ!? バカ!? このゲイボルグの露にしてやるわ!
マ)まあまあお待ち下さい。バカルディーとは幸運という意味でして、貴女様の成功を祝した一杯となります
フ)そうなの。失礼したわ……あら?
マ)どうなさいましたか?
フ)つまり私の成功を、運と言いたいわけね
マ)ははは。邪知が過ぎますよ。運を掴むのも、貴女様の腕がよい証拠
フ)ふふ。騙されてあげるわ。その代わりマスター、あなたも一緒の飲みなさいよ?
マ)では、お言葉に甘えて
フ)乾杯!

 

数日後

 

ファ:ウエディングドレス

 

マ)いらっしゃいませ。おやおや、貴女様ですか
フ)うふふ。見てみてこの格好!
マ)ふむ。お祝い事でしょうか
フ)私、婚約したのよ! カリカットの大富豪と! 中々のイケメンよ!
マ)左様で御座いますか。はて、どこでお知り合いに?
フ)先日行われたオークションよ。私と共に競り合って、落札しまくったのよ
マ)はあ。左様ですか
フ)でねでね、意気投合しちゃったわ! お父様も妹も大喜び! だって相手の資産─
マ)では、そんな貴女様にふさわしい一杯を
フ)うんうん
マ)モスコミュールを御賞味下さい
フ)ではでは……。って、このカクテルどんな意味なのかしら?
マ)今の貴女様にふさわしいとだけ
フ)そうなの。じゃ、嫁入り前の楽しい一夜を、過ごさせていただくわ
マ)はい、ゆっくりと、お過ごしくださいませ

 

※ モスコミュール モスクワのラバという意味、ラバは後ろ足でキックする性質があるので、つまりそういうことである

 

数ヵ月後

 

ファ:みすぼらしい格好(古代の服など)

 

マ)いらっしゃいませ。おや。お久しぶりですね
フ)……。
マ)如何でしたかこの数ヶ月間。さぞ楽しい日々が─
フ)なくなったわ
マ)ふむ
フ)何もかも無くなったわ! あの詐欺師! 私の財産目当てで近づいてきて、散々浪費した挙句どこかに消えちゃったのよ!
マ)左様ですか
フ)おまけに実家には二度と帰ってくるなって言われてて……幸せボケした私は、うんって言っちゃってて
マ)それは災難でしたね
フ)もう何も無いのよ私。何もかも全て、失っちゃったのよー!
マ)では、そんな貴女様にふさわしい一杯を
フ)待って!
マ)はあ。どうなさいましたか?
フ)その一杯に支払うお金、今の私には。だから私をここで─
マ)残念ですがこの店、私一人暮らすのに手一杯でして
フ)じゃあ、あなたの妻になるわ! そうしたらお給料も要らないし、お店だってもっと─
マ)お客様、いや、ファルシオン
フ)え、初めて名前を─
マ)貴女様にはまだ、その身が残っておられるでしょう
フ)売春宿で働けってこと!? そんなのいやだわ!!
マ)違います。落ち着いて聞いてください
フ)いや! そんなの! そんなの絶対に!
マ)聞けって言ってるだろ!
フ)……うん
マ)貴女がこうなること、薄々感じておりました。これは私の勘といいますでしょうか、貴女にはあまりに隙が多すぎまして
フ)そうね、そうなのよね
マ)ですがその美貌、知己、武術。それらを組み合わせれば、幾らでも再起を
フ)私一人じゃ何も出来ないのよ! 南蛮貿易だって妹の助けがあってこそで、普段の私はただの─
マ)そうですか。まだ、カクテルとしては未完成ということですね
フ)……こくり。
マ)本来でしたらブルームーンやXYZ、ソルティードッグなどが相応しいと思いましたが─
フ)キスミークイックやビトウィン・ザ・シーツじゃないのね!
マ)まあ待て。ですから、貴女さえよければ、カクテルにして差し上げましょう
フ)えっ、もしかして!?
マ)ファルシオン。今の貴女にふさわしい作り手は、私でしょう。ゆっくりとステアして、差し上げますよ
フ)……はい///

 

翌朝 ファ:薄着

 

フ)うふふ/// ダメよマスター、そんなところ触っちゃ─ってあら? もう朝なの?
フ)どうしましょう。まだ胸がドキドキしてるわ。マスターったらあんなに強いなんて
フ)ねえマスター! もう1勝負……ってあら? マスター? ─何? この手紙

 

マ)ファルシオン。昨晩はお疲れ様。私も大満足だったよ
マ)いえ、そういう意味ではなくて。ようやく満足行く一杯を、仕上げることが出来たんだ
マ)私も昔は航海士だった。良い相場を目指し、宝を狙い、時には海賊とも一太刀交えた
マ)だがあるとき、その日常に退屈を覚えるようになってしまったのだ
マ)私は怪我を言い訳に航海士を辞めてしまった。多くの仲間が去り、独りぼっちになってしまった
マ)そんな時現れたのが君だ。自信に満ち溢れ、夢を語り、多くの成功談を聞くことが出来た
マ)時に意地悪したのは、そんな貴女に嫉妬していたからだ。すまない
マ)ファルシオン。貴女というカクテルは、まだシェイクされたばかりだ
マ)様々な美酒を重ね、時にはスパイスも交えて、立派な航海士になってくれ
マ)─これを読んでいる頃には、私はまた別の町へ旅立っているだろう。二度と、私の店に足を踏み入れないことだ。もしそうであっても立派なカクテルとして、輝く笑顔をみせてくれたまえ

 

フ)……あ、あああああああ。ああ!
フ)そんな、マスター! どうして!? どうして私の前から!?
フ)私また一人ぼっちなの!? そんなのいや! いやーーーーーー!!!!

 

マ)追伸 老婆心で申し訳ないが。君に内緒で、妹さんやお友達へ連絡しておいた。皆、貴女のことを心配していたよ。是非、頼ってみてくれたまえ

 

フ)─マスター。マスター……。あたし、頑張るから。立派な航海士になって、あなたのお店にもう一度、行くんだから
フ)うん。こうしては居られないわ。早速妹にお金借りないと!

 

フ)酒のある空間。そこには様々な人間ドラマが潜んでいる。
フ)嗜む者、救いを求める者、祝う者、別れを惜しむ者
フ)一杯の数だけ、物語が繰り広げられてゆく
フ)貴方はどんな物語を繰り広げておりますか? 例え、自分にとって無価値なものだとしても、他の人にとっては金言かもしれません
フ)私にとって─貴方たち一人一人は私を築き上げてくれる物語なのです
フ)以上です。御覧頂、有難う御座いました。