盲目になったファルシオン

ひと台詞１０秒（台詞言い＋エモで）
大体60分の芝居になっております。

ちびファル・ち）：ちびふぁる
マスター・マ）：ダルモア
ファルシオン・フ）：ファルシオン様

ち：
羽付ベレーを受け取りました
ベルティッドプレイドを受け取りました
航路開拓者のブーツを受け取りました

フ：普段着

ち）皆様、障害と言うものについてどうお考えでしょうか？
ち）障害とは字で書くとおり、邪魔をし、妨げるもの
ち）恋、仕事、生活、遊び─これらを成す時障害として立ちはだかるものは数多く存在します。
ち）さて、本日の演目は盲目となったセビリア１の貴族「ファルネーゼ公爵家」の長女、ファルシオンの物語。
ち）彼女は光を失い、そして、何を得るのでしょうか
ち）是非、最後まで御覧頂けましたらうれしいです。

ち）その日、「ファルネーゼ船団」は南蛮からの長い旅を終え、街へ戻ってきました

ここでtellで合図

ち）お母さん！　お母さん！　だっこー！
ち）/guts 大好きなお母さん 飛びついた
フ）あら、ちびちゃん。ただいま！
フ）/guts 飛びついてきたちびちゃんの身体 腕を回して迎え入れた
ち）お帰りなさい！　長旅お疲れ様！
フ）うんうん。ちびちゃんもお疲れ様！　お留守番、上手に出来たかな？
ち）うん！　私、とってもさびしかったけど、一回も泣かなかったよ！
フ）よしよし。あとでおっきな花丸あげるね！
ち）わーい！　お母さん有難う！
フ）いえいえ。それと、お土産もたっくさん買ってきたんだから。期待しててね！
ち）わいわーい！　お母さん大好き！
フ）うふふ。私もちびちゃんが大好きよ！
ち）うんうん……あれ？　お母さん？　どうしてお顔、真っ赤なの？
フ）あっ、あら？　そうなの？　全く気付かなかったわ
ち）それに汗出てるよー
フ）うふふ。それはね。ちびちゃんの顔を一秒でも早く見たかったから、駆けてきたのよ
ち）そうなんだ！　じゃ、早くおうちに帰って、お顔洗わないとね！
フ）うんうん。そうね、早く家に帰って……（フラッ
ち）お母さん？
フ）うっ、うふふ。大丈夫よちびちゃん。ちょっとだけ、立ちくらみしただけ
ち）お母さん。無理しないでよ？　長旅で疲れちゃったんだよきっと
フ）そうね。きっとそうよね
ち）うんうん。だから、今日は早く、一緒に寝よ！
フ）うふふ。良いわ。一緒に寝ましょ
ち）わーい！　お母さん大好き！
フ）うん、うん
フ）（おかしいわね。どうも、身体に力が入らないわ）
フ）（いつもなら長旅だったとしても、ちびちゃんの顔を見られたら疲れなんか）
フ）（─若くはなくなってきたのかしら）

フ：無装備・ここから暫くエモはひざまずく
ち：無装備

ち）その夜

ち）お母さん！　お母さん！
フ）うっ、うううん？　どうしたの？　ちびちゃん
ち）お母さんとっても熱いよ！　大丈夫！？
フ）だいじょうぶ、大丈夫よ
ち）お母さんちっとも大丈夫じゃない！　お洋服汗でびっしょびしょ！
フ）そっ、そうね、そうなのよね……
ち）お母さん、カゼ引いちゃったのかな？　私、お姉ちゃん達呼んでくる！　ちょっと待ってて！
フ）うん。お願い、ね
ち）はーい！　行って来ます！
フ）うんうん……。
フ）（疲れたにしては、おかしいわね。どうしたのかしら、私）
フ）（ただの風邪なら良いのだけど、南蛮の風土病なら─）
フ）（う、うううん！　そんなはず、ないわ。そんなはず。これだけ毎日、鍛えているのですもの）
フ）（一晩寝れば、きっとよくなる。きっと、そうよね）

ち）翌朝

ち）お母さん！　お母さん！
フ）あら、ちびちゃん。おはようは？
ち）おはようお母さん！
フ）うんうん。元気があって宜しい
ち）お母さん！　お熱引いたね！　よかったよかった！

フ；ここで立ち上がる

フ）うふふ。だって、鍛えているんですもの。このくら……
ち）あれ？　お母さん？　どうしたの？
フ）─ねえ。ちびちゃん
ち）どーしたの？　お母さん
フ）私、ちゃんと目、開けてるわよね？
ち）うん。ちゃんと開いてるよ！
フ）そうなのよね、そのはずなのよね
ち）うんうん。ちゃんと開いて、私のお顔見てるよ！
フ）……
ち）どーしたの？　お母さん
フ）─見えない
ち）え？　どういうこと？
フ）何も、見えないのよ！　ちびちゃんのお顔も、屋敷の中も、自分の身体だって……何も見えないのよ！
ち）お母さん！　落ち着いて！
フ）どうして。どうして見えないのよ！　昨日まで、ちゃんとちびちゃんの可愛いお顔、見えていたはずなのに！
ち）落ち着いて！　お願いだから落ち着いて！
フ）なんで、何で何も見えないのよ！！！
ち）お姉ちゃん！　大変！　お母さんが！　お母さんが！

ち）その日、ファルシオンの身に起きた悲劇は今まで何不自由なく出来ていたことの喪失でした
ち）失明。読んで字の如く、彼女は暖かな明かりも、空の青さも、娘の愛らしい笑顔も失ったのです
ち）この時代、何かを失うと言うことは、そのまま死を意味しました
ち）人としての、死
ち）果たして彼女は、どうなってしまうでしょうか？

※ここで休憩がてら、場面を「リスボン高台」へ移すため、観客に移動を指示する
　観客は壁際側だけど前目に座ってもらう

ファル：その辺によくある服
ちび：コイフ、ブーツ、エプロンドレス

ちびとファルはなるべく並ぶ

ち）数年後
フ）（─結局、四方八方手を尽くしたけど、治らなかった）
フ）（東洋の秘薬、治癒の滝、救済の教え。巨額を投じ、どれも試してみたけどダメだったわ）
フ）（仕舞いにはお父様、レナに跡を継がせるんだと私達を追い出す始末）
フ）あはは。疲れちゃった
ち）お母さん。お疲れ？
フ）う、ううん！　ちびちゃん。大丈夫よ！
ち）ほんとに？　お顔真っ青だよ？
フ）……うん。ほんとにほんと
ち）そっか。─ねえねえお母さん
フ）どうしたのちびちゃん？　そんな弱々しく
ち）─お腹、すいちゃったの
フ）うふふ。そうね。私もすいちゃったわ
ち）もう何日も、ご飯食べてないね
フ）そうね。ちびちゃんごめんね。お母さんがこんなだから
ち）ううん！　大丈夫！　だって、お母さんはちびのお母さんなんだから！
フ）うふふ。ありがとう
ち）でも、おなかすいちゃった。どうしよう？
フ）どうしましょう、ねえ
ち）うーん。
フ）……？
ち）（あ、あそこ─蜂蜜が入ったタルト、イチゴ一杯のケーキ、焼きたてのバケット）

ちび、ゆっくりと前進

フ）（心なしかちびちゃんの鼓動、激しくなってきてるわ……まさか！？）
ち）（─お母さんのためなら。きっと、とっても怒られるけど。でも私─悪い子になる。お母さんの、ためなら。お母さんの、ためなら！）
フ）ダメよちびちゃん！　幾らお金が無いからって、人に迷惑かけることは絶対絶対やっちゃダメ！
ち）えっ！？　お母さん！？　どうして！？
フ）見えなくても、分かるのよ。だって私、ちびちゃんのお母さんだから、ね？　だから、早まっちゃダメ！
ち）……でも。食べないとお母さんも私も、しんじゃう
フ）それでも絶対に！　ね？
ち）うっ、ううう。ぐすん。はぁい
フ）……そうだ！　ちびちゃん。ちょっと手伝って！

ちび、ファルシオンに近づく

ち）えっ！？　どうしたのお母さん？　お洋服に手をかけて
フ）脱ぐの、手伝って頂戴。こんな服だって道具屋で売れば─
ち）で、でもいいの？　これを売ったらお母さん。寒くて凍えちゃう
フ）いいのいいの。ちびちゃんのお腹が膨れるのならそれで
ち）……ホントに、いいの？
フ）勿論よ！　ホラホラ手伝って！
ち）うっ、うん！

フ：無装備

フ）はいちびちゃん！　これで。美味しい物一杯一杯食べてね
ち）うん！　じゃ、お母さんも一緒に！
フ）うふふ。そうね。─でも、ごめんねちびちゃん。

フ：座り込むエモ

ち）えっ。どうしたのお母さん？
フ）ちょっとね、疲れちゃったみたい
ち）やっぱり！　さっき大丈夫って言ってたでしょ！
フ）─ごめんね。ウソついちゃった
ち）そんなぁ！　お母さんいつも言ってたでしょ！　ウソつくのは、絶対ダメー！　って
フ）そうね、そうよね……。お母さん。悪い子になっちゃったわね
ち）そっ、そんなことないもん！　お母さん、私に心配させないためだって！　ちび分かるもん！
ふ）─ありがとう。ちびちゃん。うふふ。動けなく、なっちゃったわ
ち）そっかあ……。じゃ、お母さん休んでて！　私、美味しいものいーっぱい買ってくるから！
フ）うん。待ってる。ちびちゃん。お腹すいてるんだから、ゆっくりで良いからね
ち）ううん！　早く行って来る！
フ）うふふ。ありがとうちびちゃん─こんなお母さんのために
ち）お母さん？
フ）うっ、うううん！　なんでもない、なんでもないのよ！　じゃあねちびちゃん！
ち）うん！　じゃあねお母さん！
フ）いってらっしゃい、ちびちゃん。

ち：ここで退場。ＣＣ
フ：ここから少しずつ、高台の端（飛び降りれそうなところへ）移動開始　観客に背を向けながらジグザグ移動

フ）─さて、と
フ）風の音が、聞こえるわ。喧騒、歓声、帆張り音。どれも、遠い彼方の様
フ）私が奏でていたメロディー。私という曲を彩っていた音符
フ）全ては遠い過去のよう
フ）ちびちゃん。ごめんなさい。悪いお母さんだわ
フ）守ってあげる。そう誓っていたのに、迷惑かけて、ウソついちゃって
フ）─最後は悲しい思いをさせて
フ）ちびちゃん。お腹一杯食べてね。私の、分もね
フ）お母さん。鳥になるから。鳥になってずっと、見守ってあげるから
フ）さようなら。ちびちゃん

マ）/shout ギムレットにはまだ早すぎるぞ
※　シャウトは、バザー方向まで行かないはずなので、演出としてＯＫなはず
※　ここで、階段下からマスターが走ってくる。

マ
テンガロンハットを受け取りました
リーガル・ブーツを受け取りました
ライディンググローブを受け取りました
サルミエント商会制服を受け取りました

フ）えっ、そ、その声は！？
マ）後姿が見えたと思えば、ふらふらと断崖へ。全く。私の酒を無駄にしないでくれ
フ）もっ、もしかして、マスター！？
マ）そうだよ。あの、ひねくれ男だ
フ）そんな、どうして、どうしてここに！
マ）はは、妹さんの注文だ。「バカで浪費家でどうしようもないカクテルが、貴方と言う作り手を待っている」っと
フ）そんな！　レナがそんなことするはず無いわ！　あの子、ファルネーゼの跡取りとして、私は邪魔で！　お父様と追い出したくせに！
マ）うむ。そう思われても仕方ないからな、彼女は。─これも、実家の全てを握り、姉の未来のために全力を尽くすための一芝居だったとしたら？
フ）そんなあ、まさか、そんなこと！？
マ）信じられないなら信じなくて結構。─例え、会えなくても姉妹というものは強い絆で結ばれているのだよ
フ）あっ、あああ……
マ）と、そうだ。ほれ
マ）/point ファルシオンの手 服を握らせた

フ：先ほどの衣装を装備しなおす

フ）えっ、服？　この手触り、まさか！？
マ）そう。さっきまで君が着ていたものだ。お腹をすかせたプッシー・キャットがね、道具屋の前で立ち往生していたから買ってあげたのさ
フ）あっ、ああああああ……
マ）─さてと。どうしようか
フ）えっ？
マ）妹さん、君と言う１杯に幾万もの金を支払ってきたのだよ。……正直、持て余していてね
フ）そっ、そうなの
マ）─これだけあれば、広い店がもてるな。何処かのマルガリータとシャーリー・テンプルを食わせても、十分すぎる額だ
フ）……何が、言いたいの？
マ）私のカクテル、飲みたくないか？　キールにカシスソーダ、ジントニックでも良いぞ？
フ）そんな、何が言いたいのかさっぱり分からないわよ！？
マ）あー酒言葉は流石に分からないか。ファルシオン。こういう時に言って良い物か分からないが
フ）……うん
マ）妻になって、くれないか？　勿論ちびも一緒だ。私の人生、君に捧げたいのだ
フ）そんな、今の私にそんな
マ）ダメ、かな？　君と言うカクテルを、ずっとずっと輝かせたいんだ。一人の作り手として、いや、一人の夫として
フ）……いいの？　本当に良いの？　目を病み、この身一つな私でも？
マ）ああ、問題ない。私の人生、君以上の１杯には、な
フ）─うふ。うふふふふふ。
マ）さて。君の答えは？

ファルサン、ひざまずく
フ）何も出来ないかもしれません。足手まといかもしれません。ですが─私もこの身、貴方に一生捧げます。
マ）ありがとう。そういってくれて有難うファルシオン。
フ）うん。私もよ。有難う、マスター
マ）ははは。何時までマスターって言っているんだね。ま、いいか。ほれ、早速だが
マ）/point 愛する妻の手 ごつごつした手を合わせると、強く握り締めた

フ）あっ
マ）お腹、すいてるんだろう？　ちびには先に、食べてて貰っているから。一緒に、行くぞ。ファルシオン
フ）もう……/// はい。あなた

フ）「ファルネーゼ公爵家」の長女、ファルシオン
フ）貴族の地位も名誉も武勇も財産も失った彼女
フ）─しかし、そのお陰で得た、大切なもの
フ）人は決して、失うだけじゃない。涙の後には必ず、楽しいことが待ち受けているのですから
フ）彼女の結末の一つ、皆様の心には何が残りましたか？
フ）彼女の航海はこれで終わりではありません。その手に握った大切な二つの手、きっと彼女を輝く未来へ導いてくれるでしょう
フ）以上です。御覧頂、有難う御座いました