Z000603

Last-modified: 2009-10-22 (木) 09:18:21

     どらごにっく★あわー!
  ~竜を退治するだけの簡単なお仕事です~

初期情報
No.Z000603       担当:上原聖
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 その日、喜多路町[きたじちょう]は炎に包まれた。
 家々が燃え、ビルが音を立てて崩れ落ちていく。鳴りやまないサイレンの音と、住人たちの悲鳴。
 駆けつけたべオウルフや自衛隊を待ち構えていたのは、十数匹となるドラゴンの群れ。
 その光景はさながら戦場の真っ只中だ。
 立ち上る熱気と騒音の中で、べオウルフとドラゴンたちは、果てしない死闘が繰り広げていた。

 ――そんな景色を窓に映すのは、喜多路町の山の手に建てられた大きな邸宅。町長、田中兼男[たなか・かねお]の住む家だった。
「町長! 町長は居られますか!」
 ドアを蹴破る勢いで秘書が部屋の中へと飛び込んでくる。
 しかし、部屋は無人だ。
 こうなると、あの人はあそこにしかいない。
 私室の奥、特別な部下だけが入ることが許された大金庫室。
 秘書は鍵がかかっていない金庫の扉を肩で押して開くと、辺りを見回した。
 ルビーにサファイア、ダイヤモンド。眩く輝く宝石の装飾品を並べた室内に、人の気配は感じられない。
 いや、姿は見えないが、無人ではない。
 目を凝らしてみれば、宝石で飾られた黒檀の机が、ポルターガイストのように、がたがたと震えている。
 やがて机の下から這い出てきたのは、初老を過ぎた小柄な男性だった。
「ばか者、大声を出すんじゃないよ。ドラゴンに見つかったらどうするつもりだ」
「す、すいません、町長。しかしべオウルフたちが応戦していますゆえ、ここにいる限り安全かと」
 窓越しの離れた戦場と田中とを交互に見つめ、秘書が思わず肩をすくめる。
「ふん……。分かったものじゃないね。大体、べオウルフってのはドラゴン退治の専門家なんだろ? そいつらに任せたってのに、町がめちゃくちゃじゃないか」
「話によると、どうやら奴らはある目的のためにここへ来たらしく」
「目的?」
「はい、実は町長がコレクションしている宝石が、奴らの狙いだとのことです」
 その言葉を聞いて、田中の顔から血の気が引いた。
 名家の生まれである田中は世界有数の大金持ちであるとともに、宝石コレクターとしても名を馳せる人物。
 その趣味はとどまることを知らず、近頃は「宝玉」と呼ばれる、竜の体内から取れる美しい石にまで手を出しているのだ。
 以前からこれが竜の恨みを買うのではないかと噂されていたのだが、いざ、こうしてドラゴンが群れをなして現れたとなると、馬鹿話とは言っていられない。
「差し出がましいようですが。いっそ、奴らに宝石を渡してしまった方がよろしいのではないでしょうか」
「なんだって!」
「ドラゴンたちも目当ての宝石が手に入れば、それ以上の攻撃を続けるとは思えません。ここは一つ、町を守るためと思い……」
「バカを言わないでおくれ! 宝石はあたしの命だよ。宝玉だって……、集めるのにどれだけ金を掛けたと思っているんだい!」
「し、しかしですね。今は一時の猶予もありません」
「そんなこと関係あるかい! あたしの宝石は誰にも渡さないよ!」
「町長はご自身のお命と宝石、どちらが大切なのですか」
「宝石に決まっているじゃないか!」
 なんのためらいもなく即答。これには秘書も呆れ、開いた口が塞がらなかった。

 それから数時間が過ぎ。ようやくドラゴンの撃退に成功したという話が、田中の耳へと届く。
 しかしその代償として聞かされた報告は、町長としては耳の痛い内容だった。
 町は半壊。火の手は今も残っており、急ぎ消火活動が進められている。
 べオウルフたちの被害も甚大だ。多くが先の戦いで傷つき、しばらくは安静を余儀なくされている状態だった。
「うぅむ……、これほど手痛い目に遭うとは」
 復旧活動が進められる喜多路町の様子を窓越しに眺め、田中と秘書はそろって肩をすくめていた。
「今回はなんとか撃退に成功しましたが、これでドラゴンが諦めたとは思えません。もし再び、ドラゴンたちが群れをなして襲って来るようなことがあれば……」
「言われなくたって、そんなこと分かってんだよ! ぼさっとしてないで、新たにべオウルフたちを派遣させないか。次の襲撃に備えるんだよ」
「分かりました、ただちにご連絡を」
「――あっ、ちょっと待ておくれ」
 秘書を呼び止め、田中が神妙な顔を作る。
「その前に、クリームヒルト・ラボラトリーに連絡しておいてくれないかい」
「えぇ、それはもちろん。全てのユニオンに伝わるように……」
「そうじゃないよ。竜退治の依頼は当然として、それと別に倒したドラゴンの死体の引き取りを頼むんだよ」
「はっ?」
「あそこはドラゴンの研究をしているとかで、死体を高く買い取ってくれるからね。そこに回せば、あたしの手元に金が転がってくるだろ。その金でベオウルフたちに報酬を払えば一石二鳥じゃないか」
「は、はぁ……」
 名代のしみったれ。大金持ちとは思えない、どケチぶり。
 転んでもただでは起きないその精神に、秘書は呆れを通りこして、ある種の感動を覚える心持ちだ。
「なに、佐土原[さどはら]代表に言えば、すぐに話は付けられる。あたしはクリームヒルトのスポンサーだからね。顔が効くんだよ」
「わ、分かりました」
「あと、宝玉だけはこっちに残してもらえるよう、伝えといておくれよ。あれは私のものだ」
 本当に転んでもただでは起きない男。田中兼男。
 彼にとっては、目の前に迫る喜多路町の危機も、金と宝玉を集めるチャンスに見えているのかもしれない。

 数日後、各ユニオンにベオウルフ召集の依頼状が届いた。
 実力を過信するベオウルフ、金を欲するベオウルフ、ただドラゴンと戦いたいベオウルフが、喜多路町に向かって集まりだした。
 その中には、草薙の有数の実力者、佐倉良輝[さくら・よしてる]の名があった。
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「マスターより」
 どもども。始めましてもお久しぶりも、こんにちは。上原聖[かみはら・せい]と申します。喜多路町でドラゴン退治をしたい方は、以下の行動選択肢をお選び下さいまし。

A010600 喜多路町でドラゴン退治
(担当:上原聖/地域:117)
備考:喜多路町町民だと言う方、引っ越して来られた方は、町民となれます。

A010603 喜多路町で田中兼男町長の部下としてドラゴンと戦う
(担当:上原聖/地域:117)
備考:喜多路町町民だと言う方、引っ越して来られた方は、町民となれます。

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