どらごにっく★あわー!
~竜を退治するだけの簡単なお仕事です~
●初期情報
No.Z000607 担当:上原聖
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【きみ】は用があって喜多路町[きたじちょう]に向かっていた。
この辺りは近年、ドラゴンの侵略が増えるようになり、【きみ】が知る街並みとは、すっかり景色が変わってしまった。
多くの人々はこの近くで一番大きな町である喜多路町に移ってしまい、辺りに残っているのは廃墟ばかり。
乾いた風が通り抜ける他、物音一つ聞こえてこない。
そんな静寂に包まれたゴーストタウンの中を、【きみ】は足早に歩いていく。
こんな場所でドラゴンに襲われてはひとたまりもない。早いところ、町まで急がないと。
そう思って、あと三時間も歩けば喜多路町、というところまで辿りついたころだろうか……。
ふいに【きみ】は、奇妙な風の音を聞いた。
鳥が翼を羽ばたかせるよりも大きな、風が渦巻く音。
「まさか……」
嫌な予感に駆り立てられるようにして、【きみ】は廃墟の影に身を隠した。
目の前に数十頭のドラゴンが舞い降りて来たのは、その直後だった。
強い。
一目見て、それが分かった。
一番弱いドラゴンにも瞬殺されてしまうであろうことを、【きみ】は即座に理解した。
一頭のドラゴンが低く唸る。
その唸り声に、鋼のように鈍く輝く色の、尾まで入れたら30メートルはあろうかというドラゴンが目を細めて喜多路町の方角を見つめている。
コイツがボスだ。間違いない。
無数のドラゴンたちに囲まれ、胸を張る鋼色のドラゴン。
ジェネラルドラゴン……。その中でも、相当の存在!
どちらにせよ、見つかったら終わりだ。
【きみ】はトリガーを手に、深呼吸する。
巨大なドラゴンたちは、そんな【きみ】に気づくことなく何やら唸り声を立てていたが、鋼色のドラゴンがいぶかしげな顔(多分)をして、こちらを向いた。
見つかった?
いや、まだ気づかれてはいない……!
そんな【きみ】の考えもむなしく、鋼色のドラゴンは、鼻先の角から雷撃を放出した。
稲妻が建物を粉砕する。
慌てて飛び出る。
気がついた時には、【きみ】はドラゴンに取り囲まれていた。
「人間」
「……な、なんだ」
「あそこに町がある。あの町の町長は宝石を集めていると言う噂は本当か?」
喜多路町町長の田中兼男[たなか・かねお]が、名代の宝石コレクター……現在はドラゴンの身体に埋まっている宝玉と呼ばれる美しい石を集めていることを【きみ】は知っていた。
まさか、彼を狙って?
「……宝玉を取り戻すのか?」
ドラゴンの宝玉はドラゴンの死体から取るしかない。だから、宝玉コレクターは大量のベオウルフを雇って身を守っている。しかし……これだけの大勢のドラゴンから田中を……喜多路町を守りぬけるのか?
「いやいや、宝玉なんぞどうでもいい。俺が欲しいのは宝石だ。貴様ら人間などに呆気なく殺された雑魚どもの宝玉など、どうでもいい」
その言葉を聞いたドラゴンたちが唸りあう。
うちの一頭のドラゴンが、鋼色のドラゴンに向かって激しく唸った。
鋼色のドラゴンは目を細め、そのドラゴンを見る。
一瞬、緊張が走る。
先ほど、建物を粉砕した以上の雷撃が、鋼色のドラゴンに反抗したらしいドラゴンを直撃した。
ドラゴンが鈍い音を立てて倒れる。
仲間を? 殺した?
ふん、と鼻息を吐いて、鋼色のドラゴンが辺りを一瞥すると、残ったドラゴンたちは頭を下げて服従の姿勢を示した。
このドラゴンは、強い。
今、死んだドラゴンもおそらくはジェネラル種。それを一撃で……。
「……ふん。俺に逆らうからだ」
黒焦げになった死骸をちらりと見て、鋼色のドラゴンは【きみ】に向き直った。
「それで? あの町に宝石はあるのか?」
「……言えない」
「フン。そうか。あるというわけか」
そこまで言って、鋼色のドラゴンは口元をゆがめた。どういう表情だろう?
「宝石はいいぞ。俺たちドラゴンと同じだけの年月をかけて作り上げられた芸術品。俺はそれを集めている。……今まで集めてきた宝石は、まさに、俺の生きてきた証そのものだ。だから、俺はこの地球にあるすべての宝石が欲しい」
「宝石を手に入れて……人間を皆殺しにするつもり……?」
「いやいや。俺は人間を尊重する。宝石を見つけ出したのが人間なら、それを輝かせるのも人間だからな」
ドラゴンが? 人間の命などなんとも思っていないはずのドラゴンが、人間を尊重する?
ドラゴンは再び口を歪めた。もしかして……笑っているのか?
「……そうだな、貴様、先に行って、ドラゴンが宝石を狙ってきていると言ってはどうだ。もし差し出して、俺の気分がよければ、町は無事かも知れんぞ。どうだ?」
こいつは、なぜこんなことを言うんだ? そもそもドラゴンの言うことなど信用できない。宝石を差し出したとしても、喜多路町はさっきまで隠れていた建物のように雷撃で粉砕されるだろう。
そんなこと、させるわけには行かない。
「……冗談じゃない。ベオウルフのプライドにかけても、ここで貴様らを止めてみせる」
【きみ】はトリガーを構えた。
ここから町までは遠くはない。
少しでも戦いを長引かせれば、これだけの数のドラゴンが集まっていることに気づいてくれるはずだ。
たとえ一撃でやられたとしても、ドラゴンの放つ雷撃なら遠くからでも気づけるはず。
捨て駒になる。
それしか、選択肢はない。
「さあ、かかって来いよ! こっちのトリガーは貴様の弱点かも知れないぞ?!」
震える声を叱咤し、がくがくする膝に力を入れ、【きみ】は勝ち目のない戦いに身を投じる決意をした。
鋼色のドラゴンはそんな【きみ】を目を細めて見ていた。
やがて、咳き込むような声を立てた。
しばらくそうやって、ぐうっと首を伸ばし【きみ】の視線に自分の視線を合わせる。
「貴様はベオウルフか」
「そうだ! 貴様を倒せる存在だ!」
「フン……」
【きみ】の目をドラゴンの青い目が覗き込む。
「俺は以前、宝石鉱山を守るために雇われたベオウルフから、自分たちは我らドラゴンから人間どもを守るために戦うのだと聞いた。しかし俺はそんなもの絵空事だと思っていた。実際、そいつは鉱山を見捨てて一人逃げ出したしな。ベオウルフもただの人間、結局は自分自身のために戦うのだと思っていた。しかし……」
ドラゴンは小さく首を振って、一瞬目を閉じ、口元を歪ませた。
「いや、貴様のようなベオウルフもいるものだな。実力不足と分かっていながらも人間どもを守るために命を捨てる、か……。嫌いではないな。むしろ美しいと感じる」
別のドラゴンが怒ったように吼える。
鋼色のドラゴンそちらを見る。吼えたドラゴンは慌てて口をつぐんだがもう遅い。
鋼色のドラゴンははカッと口を開いた。再び鼻先の角から雷撃が発せられ、ジェネラルドラゴンを消し炭に帰る。
このドラゴンは……なんなんだ?
人間を尊重し、ベオウルフと分かっていて【きみ】を殺さず、そして歯向かう仲間を平気で殺す。
ドラゴンの消し炭を睨むと、鋼色のドラゴンが再び【きみ】の目を覗き込む。
「俺はあの町の宝石を手に入れる。あそこの町長は加工済みの宝石をたくさん集めているという話だからな。それを邪魔するなら、誰であろうと死あるのみだ」
「こっちは邪魔をするつもりだぞ!」
【きみ】に構わず、鋼色のドラゴンは大声で吼えた。
びりびりと振動が辺りに伝わった。
最後尾にいた一頭が、他のドラゴン数頭を連れて飛び去っていった。
「な、何を!」
やがて、喜多路町から稲妻と黒煙と叫び声が上がった。
「!」
【きみ】は駆け出そうとしたが、頭の上に置かれた鋼色のドラゴンの爪がそれをさせてくれない。
しばらくして、飛び立っていったドラゴンたちが戻ってくる。
鋼色のドラゴンは【きみ】を見た。
「町長は、命より宝石が大事と言ったらしいぞ?」
「よ……よくも喜多路町を……!」
「おいおい。俺は滅ぼしてなどいないぞ? 町の半分くらいを焼いただけだ」
そして再び唸り声。ドラゴンたちが一斉に頷く。
「俺たちはこれで去ろう。喜多路町には見張りを置いた。宝石をどこかに運び去ろうとしたら好都合、そこを奪ってやればいい。一応伝えたが貴様からも伝えておけ。俺の目的は宝石なのだとな」
「……た、戦わないのか?」
「戦ったところで宝石が手に入るわけでなし、時間の無駄だ。それに人間は生かして使うものだ。ヘレナ[-]やブラッド[-]のような若造にはわからんだろうが」
そうして【きみ】の頭の上から爪をのけ、ぐっと翼を伸ばし、気づいたように【きみ】を覗き込む。
「貴様、名は?」
【きみ】は震える声で名乗った。
「そうか。俺はギーク[-]……いや、ここではこの呼び名は相応しくないな」
ドラゴンは首を回してなにやら言った。周囲のドラゴンが唸る。
「ああ、そうだった。前に俺を見た人間は、俺を『ウムガルナ[-]』と呼んだ。俺はそれが気に入っている。俺を呼ぶときはそう呼べ。貴様なら……もしかしたら酔狂にも喜多路町を守ろうとするかも知れんし、その時会えるかも知れんしな。ま、貴様がそれまで生きていればの話だが」
そうしてウムガルナは高々と吼えて、無数のドラゴンたちを連れて、何処ともなく去っていった。
緊張から解放されて、【きみ】はようやく全身汗でぐっしょりなのに気づいた。
ウムガルナを名乗る、ジェネラル級のドラゴン。
どれほどの実力なのか。
喜多路町を自分が守りきれるのか……。
とにかく、【きみ】は――。
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「マスターより」
どもども。始めましてもお久しぶりも、こんにちは。上原聖[かみはら・せい]と申します。ウムガルナと戦いたい方は、以下の行動選択肢をお選び下さいまし。
A010604 喜多路町でウムガルナと戦う
(担当:上原聖/地域:117)
備考:喜多路町町民だと言う方、引っ越して来られた方は、町民となれます。ウムガルナはいつ出てくるか分かりません。
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