Z001102

Last-modified: 2009-11-10 (火) 01:55:13

     どらごにっく★あわー!
  ~竜を退治するだけの簡単なお仕事です~

初期情報
No.Z001102 担当:鷺ノ宮アンネローゼ
              黒川実
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 リングウィネズはウェールズ地方にある、現代のイギリスには珍しい深い森を擁する小さな村だ。
 ドラゴンの出現以来、空気が美味しいことだけがとりえの辺鄙な村を訪れる観光客は絶えてなく、数百年に及ぶ自給自足のサイクルを崩すような災厄に襲われることもなかった。
 世界がドラゴンとの戦いに巻き込まれていく中で、この村だけは世間の流れから取り残されたような、穏やかで退屈な日々が続いていたのだ。

 何十年、何百年でも続きそうな平穏が突如として破られたのは2009年12月のこと。
 リングウィネズの森に薪を拾いに行った村人が、森の中をうろつく、体長50m前後の黒いドラゴンに遭遇し、命からがら逃げ帰ったのを皮切りにして、次々と目撃者が現れた。

「――調査隊の報告を待つなぞと、悠長なことを言っている場合ではない! 早急に現地へ戦力を派遣すべきだ!」
 セルゲイ・アラヴェルドフ[-・-]元大佐は、拳に怒りを込めて、目の前のデスクに叩きつけた。
 デスクの主であるWBAイギリス支部の支部長は、苦虫を噛み潰したような顔でため息をつく。
「そうはいうがね、肝心のリングウィネズの村長がペポペポの会にお任せすると言っているし、死者や怪我人は出てないんだろ?
 まだ目標のトラウマも不明だし、もう少し色々と分かってから行動したほうが……」
「相手は知能の低い野生の獣でも、銃で撃てば死ぬ人間でもなく、ドラゴンなのに?」
「ドラゴンだからこそ、だろうな」
 セルゲイの鋼色の瞳で睨みつけられて、支部長は疲れたようにため息をついた。
「ペポペポの会の創設メンバーは、ドラゴニック・アワーが始まる前から、魔術だの、錬金術だのと、本気で信じていたような頭のおかしい連中だぞ?
 確か先代総帥は、ドラゴンとの和平交渉についてWBA総会で演説をぶった真性のXXXXだ」
 支部長は何を思い出したのか、顔をしかめながら酷いスラングを吐き捨てた。
 今回の黒いドラゴンが遭遇した人間に危害を及ぼしていないと聞いて、グリーン・オールウェイズの悲劇以来、ずっと大人しかった穏健革新派の残党が、ユニオンの内外からやって来て、大喜びで調査隊に加わっているらしい。
「……つまり、横合いから殴りつけになんか行けば俺たちは“和平の芽を潰した血に飢えた戦闘狂”と謂われない批難を受ける恐れがあるんだよ。連中が痛い目を見てから出動するぐらいでちょうどいい」
 いい薬なんだと呟いて、これで終わりだとばかり背中を向ける上司に、セルゲイは奥歯を噛みしめて一礼し、靴音高く部屋を出た。

 支部を出ると仲間たちが待っていた。
 彼らはWBA直属のベオウルフではない。
 過去の対ドラゴン戦で作戦行動を共にしたことのある様々なユニオンのベオウルフたちだ。
 それぞれ今回のリングウィネズの噂を聞かされ、危惧や懸念を抱いたものらしい。
「大佐、支部長はなんだって?」
 セルゲイが無言で首を横に振るのを見て、戦友たちは、それぞれのやり方で落胆を示す。
「調査隊に参加した穏健派たちが痛い目を見るまで放置して置けってところかな?」
「おい、やめてくれ、俺の同僚もリングウィネズにいるんだよ」
「調査隊メンバーは、ベオウルフなんだから自分で自分の身ぐらいは守れるだろうよ」
「問題は村の連中だな」
 重い沈黙。ドラゴン災害の悲惨さは、ドラゴンと戦った経験を持つ者ならば誰でも知っている。
 英国の片田舎にある美しい村が灰燼と化すのを、手をこまねいて眺めているわけにもいかない。
「――体長50mのドラゴン相手に、この人数じゃ少しばかり心もとない。各自、まわりで使えそうな連中を集めて、備えておいてくれ」
「だな、連絡が入ってから動くんじゃ間に合わん」
「トリガーの手入れも怠るな、いざ本番では壊れて動けませんでしたなんて洒落にもならねえ」
「……本当は、私たちの心配が、杞憂に終わるのが望ましいんですけどね」
 ぽつりと呟いた声に全員が口を噤み、セルゲイが静かに頷いた。
「全くその通りだ。しかし、対ドラゴン戦において最悪を覚悟して備えておくのは悪いことじゃない」
 そして往々にして、状況というのは予想を超えた最悪の事態に発展していくものだ。

     ◆     ◆     ◆

 直談判の翌々日、セルゲイからの連絡で集まったベオウルフたちは、セルゲイが用意した大型車両に乗り込み、挨拶もそこそこに情報交換を始める。
「状況は」
「現地にドラゴン災害発生、現地に、調査隊として向かっていた連中が交戦中だそうだ」
「やっぱり例の黒いやつか」
「いや、それなんだが……情報が錯綜しているが、二頭目が現れたんだそうだ、新しく白いのが」
「何事ですか、それは」
「報告側が混乱しているようでな、20m級の黒い個体と、30m級の白い個体が出現して、その場で戦闘が発生したらしい」
「どちらも炎のブレス使用、まだトラウマは不明だが白いほうにはチャクラムと日本刀が、黒いほうは火の魔法が、それぞれ効果が薄かったとのことだ」
「リングウィネズ周辺を哨戒していたUNDEOの部隊によれば、ソルジャー級のドラゴンが数体、森へ向かっているとの報告もある……なんだこりゃ、俺が知らねえ間に、最前線はイギリスまで北上してきやがったのか?」
 異常だ。
 明らかに何か異常な事態が発生している。
 セルゲイは眉間に皺をよせ、鋼の瞳で周辺地図を眺めながら呟く。
「炎のブレスか……厄介だな」
 空気が乾燥した冬場のイギリスで火災が起きればただでは済まない。
 ましてや周囲は森だ。早急に食い止めなければ、大惨事になる可能性が高い。
「……しかも、森に現れた二体は、動きから見るにコマンダー級の可能性が高いんだとさ……おまえ、遺書は書いてきたか?」
「おうよ、ベオウルフになったときから貸し金庫にちゃあんと預けてあるぜ!」
 そう簡単に死ぬつもりはねえがなと、陽気に笑う狩人たちを乗せて、車はスピードを上げて、一路、真夜中の道をリングウィネズへと走る。
 このうち何人が、生きて明日の朝日を拝むことができるのか。
 セルゲイは一瞬、無言で目を閉じ、一人でも多く戦友が無事に生還できるようにと祈った。
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■関連選択肢
A011100 セルゲイと一緒にドラゴン退治に向かう
(担当:鷺ノ宮アンネローゼ/地域:109)
備考:リングウィネズの森に出現した二頭のコマンダードラゴンと戦うための行動選択肢です。攻撃対象を「黒」「白」「どちらも」の3種類の中から選んで、忘れずに明記してください。記入を忘れた場合、マスターがランダムで攻撃対象を決める場合があります。セルゲイに用事のある方もこちらへ。

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