Z001103

Last-modified: 2009-11-10 (火) 22:33:53

     どらごにっく★あわー!
  ~竜を退治するだけの簡単なお仕事です~

初期情報
No.Z001103 担当:鷺ノ宮アンネローゼ
              黒川実
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 リングウィネズは、ウェールズ地方にある、現代のイギリスには珍しい深い森を擁する小さな村だ。
 ドラゴンの出現以来、空気が美味しいことだけがとりえの辺鄙な村を訪れる観光客は絶えてなく、数百年に及ぶ自給自足のサイクルを崩すような災厄に襲われることもなかった。
 世界がドラゴンとの戦いに巻き込まれていく中で、この村だけは世間の流れから取り残されたような、穏やかで退屈な日々が続いていたのだ。

 何十年、何百年でも続きそうな平穏が突如として破られたのは2009年12月のこと。
 リングウィネズの森に薪を拾いに行った村人が、森の中をうろつく、体長50m前後の黒いドラゴンに遭遇し、命からがら逃げ帰ったのを皮切りにして、次々と目撃者が現れたのだ。
 当初、酔っぱらいが幻覚を見たのだと一笑に付していた村人たちも、目撃者の数がどんどん増えて、ついに村長が遭遇するに至ってやっと動いた。
 数年前、村に重病人が出た際に力を貸してくれたユニオン“ペポペポの会”へ連絡を取ったのだ。
 村からの知らせはユニオンの幹部会にかけられ、まず調査隊の派遣が提案された。
「現地の状況によっては、すぐに調査を打ち切り、討伐にかかれる人員で固めていこう」
「最前線のベオウルフたちが仕留めたドラゴンは、最近、殆どクリームヒルトに流れてしまっている。研究を進めるためにも押さえておきたいところだ」
「あちらは買い取り合戦になれば強いからな」
「ジャパンマネー神話は、ドラゴニックアワーでも健在というわけか」
「……我らが総帥も本部での役目をすべて放棄して前線を駆けずり回っておられるのだから、たまにはドラゴンの一頭も手土産にする甲斐性を期待したいところだが」
「ああ、それは確かに……」
 苦笑めいた雰囲気が会議室に満ちる。
 いつものように脱線しかけた幹部たちのお喋りをアーサー[-]は不機嫌そうに円卓を叩いて遮る。
「無駄話は各自の持ち場に帰ってからにしやがれ。調査隊派遣は確定事項として、WBAへの報告と、各ユニオンへの支援要請はどうする?」
 今日で丸三日、ほぼ仮眠しか取らずに働いているユニオンの総務統括殿は、普段に増して不機嫌だ。
 メガネの奥の底光りする緑の瞳で睨みつけられ、幹部たちは肩をすくめて雑談を打ち切る。
「WBAへの報告は必要だろう。報告義務を怠れば万が一の時に我々の立場が危うくなる」
「よその連中に支援要請は……横から来た部外者に折角の獲物を横取りされるのは不愉快だな」
「支援要請は必要ないだろうな、情報封鎖をすれば後々に禍根を残すが、個人レベルで情報を流せば、動くかどうかの判断は各ユニオンに任されるから、文句を言われる筋合いではない」
ユニオンレベルで動かれなければ、横取りされる危険性は低いんじゃないか?」
「調査隊を組織している我らが有利と言うわけだ」
「問題のドラゴンに関する情報は?」
「目撃情報から体色が黒、体長50m前後だとか」
「5……なんだそのでかさは、ジェネラルか?」
「生まれて初めて生でドラゴンを見たという素人の証言なら、かなり差し引くべきではないかしら?」
「相手の種別とトラウマが分かれば有利になるな」
「調査隊に最優先事項として通達しましょう」
 協議の結果、調査隊のリーダーは複数の幹部から名前の挙げられたサラ・ル・カレ[-・-・-]が任命され、すぐに現地へ向かった。

 ――あとは報告を待って、正式な討伐隊を組めば終わるはずだと、幹部の大半は信じていた。

     ◆     ◆     ◆

「……よりにもよって、あのフランス女に調査隊を任せるとは、うちの幹部は阿呆の集まりか」
 幹部会に出席した幹部の中で唯一、サラを隊長に任命することに難色を示したひねくれ者は、書類に判を押しながら、疲れ切ったため息を吐き出した。
 2009年の帳簿をまとめていた部下は、上司の声に籠もった疲労の響きに首を傾げる。
「ええと、サラさんっていうと確かあれっすよね、フランス支部お色気担当の」
「そんな部署はどこの支部にもねえよっ!」
 サラ・ル・カレはフランス支部に所属する団員で全世界に散らばる“ペポペポの会”支部の中でも、最弱、ユニオンのお荷物と噂されるフランス支部で唯一“ヒーロー”と呼ばれてもおかしくない戦果を挙げている人物である。
 ロマの血を引くエキゾチックな美貌と自由奔放な私生活のおかげで、ゴシップ誌に名前が出ることもあるという、色々な意味で有名な人物だ。
「でも腕前は確かっすよね? 大学ではドラゴンの生態を研究してたって聞いたことありますし」
 何故かアーサーとは犬猿の仲だと聞いているが、部下たちも理由は知らなかった。
 もしかすると百年戦争だとか、薔薇戦争だとか、そこらへんからの因縁なのかもしれない。
 さわらぬ上司に祟りなし。
 黙々と自分たちの仕事をこなしていた部下たちは突然、外線から飛び込んだ緊急連絡に青ざめた。

『リングウィネズの森に、ドラゴン出現』
『目標数2、報告にあった黒いドラゴンだけでなく白いドラゴンも出現して、森を焼いている』
『戦闘発生中、村に被害が出た模様』
『動きからコマンダードラゴンではないかと推測される』

 部下たちが震える手で取り次いだ電話を受けて、アーサーは忌々しげに口の端を歪める。
「……ああ、また厄介事を呼び込みやがったのか、あの厄病神め……おい、移動車両の手配を始めろ。救助に行く連中が揃ったら、すぐ出られるように、運転手も集めとけ。怪我人も出てるかもしれねえ、治療できるやつに声をかけてくれ」
 部下たちが慌しく散っていくのを見送りながら、アーサーはメーラーを立ち上げる。
「……すべてのベオウルフは第七階梯イプシマスになる可能性を持った金の卵、無駄遣いはできねえ」
 たとえそれが自堕落で自分勝手で面倒ごとばかり呼び込む厄介なフランス女であったとしても。
 アーサーは重いため息を吐き出して、ユニオンを支援してくれるスポンサーと、他のユニオンにいる数少ない知り合いたちに連絡を取り始めた。
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■関連選択肢
A011102 アーサーと一緒に仲間の支援に尽力する
(担当:鷺ノ宮アンネローゼ/地域:109)
備考:リングウィネズの森で活動する仲間の後方支援に徹するための行動選択肢です。アーサーに用事のある方もこちらへ。サポートではなく、現地で戦闘/調査を行いたい場合は、それぞれ行動選択肢「A011100」「A011101」を選んでください。

※リングウィネズ関連初期情報は全部で4本です。うち一本はユニオン専用選択肢に含まれています。興味のある方は探してみてください。

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