Z001304

Last-modified: 2009-10-20 (火) 01:55:49

     どらごにっく★あわー!
  ~竜を退治するだけの簡単なお仕事です~

初期情報
No.Z001304      担当:菅野紳士
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「――えぇ、本日はムーヴについてお話したいと思います」
 ホワイトボードに殴り書きされる教官の文字を眺めながら、【あなた】は気の抜けたあくびを一つした。
 ここはユニオンが建設した新人ベオウルフ講座の教室。言わば、ベオウルフのための教習所だった。
 訓練所といっても、大それた設備があるわけではない。小さな部屋を支部から借りて、ホワイトボードと長机。それに教官を務めるベテランの先輩ベオウルフがやってくるだけ。
 講義の内容も、トリガーの性質はどうだとか、ドラゴンとの戦い方はどうだとか。簡単に説明してもらえるだけだった。
 一応、入団したからにはと、毎日顔を出しているものの、淡々とした講義は【あなた】にとって退屈以外の何物でもなかった。
 あぁ、こんなことをしている間にも、戦地では多くのベオウルフたちが、ドラゴンと戦っているというのに……。
 早く実戦に出られないものだろうか。
 そんな愚痴を胸中で押し殺し、【あなた】は今日も睡魔と格闘するのだった。
「さて、君たちはムーヴについて、なにか知っているかな?」
 教官の質問に生徒の一人が立ち上がる。
「ベオウルフが訓練を積むことで扱えるようになる奥儀のことです」
「その通り。ムーヴとはベオウルフの持つスピリットの力を最大限に引き出すことで、様々な奇跡を起こす技だ。例えば、とてつもない怪力を発揮して相手を攻撃したり、魔法のような力を発動させたりだ」
「教官、質問です。魔法と言うのは、杖のトリガーの人たちが使う技と同じものなのですか?」
 と、今度は別の生徒が挙手。
 こうして見渡すと、案外、真面目な生徒は多いようだ。
 そんな生徒たちの熱意に、教官も嬉しそうにうなずきながら。
「良い質問だね。確かに杖のトリガーによる攻撃は、ベオウルフのスピリットを利用したものと言える。そういう意味では、同じものと言えるだろう。だが、ムーヴはそれをさらに強力にした技だ。もちろん、ドラゴンに対して与えるダメージも、より大きなものとなるだろう」
 そう言うと、教官は【あなた】の顔をじっと見つめる。
「君、悪いけど、こっちに来てくれないか」
「――えっ?」
 これは完全に不意を突かれた。
 ぼんやり霧の掛った頭が一瞬で晴れ、【あなた】は慌てて立ち上がる。
 居眠りしかけていたのがバレたか。
 微かなざわめきとともに、他の生徒たちの視線が自分に集中していることが、胸の辺りをちくちくさせた。
「あ、あの……。なんでしょうか」
 説教のひとつでももらう覚悟で【あなた】が、顔を強張らせる。
 しかし教官はそんな【あなた】の顔を見て、ぷっと吹き出し。
「はっはっは、そんな緊張しなくてよろしい。別に難しいことを頼むわけじゃないよ」
「えっ? あぁ、そうですか……」
 どうやら教官は【あなた】を上がり症と勘違いしているらしい。
 とりあえず怒られる心配はなくなったと、胸をなで下ろすとともに、一体なにをやらされるのかと、今度は別の不安が過ぎる。
「君、これを持っていてくれないか」
 そう言って、教官が差し出したのは、数十センチ四方の厚めの板。
 よく武術家などが、稽古やデモンストレーションとして、素手で割ってみせる木の板だ。
「君は見たところ、私と同じ『素手』のトリガーのベオウルフみたいだからね。こういうのは一応、経験者にやってもらった方が安心できる」
 周囲を見渡し、【あなた】は小さくうなずく。
 ここにいる生徒たちは、全員、席の片隅に自分の使用するトリガーを立てかけているのだ。
 旧式ライフルやランスは一目で分かる。見た目に小さい手裏剣なども、机の端で筆記具と一緒に並んでいる。
 複葉機がトリガーのベオウルフでさえ、傍らにフライト用のゴーグルが置いてあるのだ。
 そんな中とあって、きれいな【あなた】の机の上を見て、素手のトリガーと理解したのだろう。
「じゃあ今から、ムーヴを使ってみせるから、後ろを向いてくれるかい」
「後ろですか?」
「大丈夫。万が一、失敗したって君もベオウルフだ。ちゃんと身体は鍛えているだろ」
 ははっ、と背中越しに聞こえる教官の笑い声が、余計に不安な気持ちを駆り立てさせた。
 本当に何をやらされると言うのか……。
 このときばかりは、自分のトリガーが素手であることを後悔してしまった。
 それから後は、教官の息吹きしか聞こえてこなくなった。
 教室のざわめきも、いつしかしんと静まり返っている。生徒たちの固唾を飲んだ表情が、【あなた】の方へと向けられていた。
 そして――。
「チェストォォッ!」
 気合を込めた掛け声とともに、教官の拳が【あなた】の背中を打ち付けた。
 その瞬間、【あなた】が握りしめていた木板が、破裂音とともに砕け散ったのだ。
 思わず、生徒たちがもらした驚きの声と悲鳴。
 もちろん、【あなた】も心境は同じだった。
 今、確かに教官に殴られたのだ。それも手加減なしの全力の一撃であることは、背中から伝わった殺気で分かる。
 しかし拳の触れた感触こそあれ、背中に痛みはまったくない。そして背中の身代わりとなったよう、持っていた木板が割れたのだ。
 いや、割れたなどという程度ではない。
 板は跡形もなく吹き飛んでしまっていた。破片すらほとんど残っていない。
「なんだ、今の……」
 武術にもそれなりに心得があると自覚していた【あなた】であっても、こんな技は見たことがない。
 まさしく人には真似できない神業だった。
「――と、まあ。今のが私のムーヴ。『鎧通し』だ」
 深呼吸にも似た大きなため息を吐き、教官が【あなた】の背中を叩く。
「相手に拳を打ち付けた瞬間、衝撃をずらし、相手の体内に集中させる技だ。今の状況だと、君の背中がドラゴンの外皮。そして君に持たせた木板が心臓だと思ってくれればいい」
「外皮を抜けて、相手にダメージを与える技……」
 この技がドラゴンに使われているときを想像して、【あなた】は息を飲む。
 武器の利用ができない素手トリガーでドラゴンを倒すのは、並み大抵のことではない。
 鎧のような厚い鱗を砕くために筋力を鍛え、なんとかダメージを与えるのだ。
 しかしこの技があれば……。いくら屈強なドラゴンと言えども、体内までは装甲で出来ているはずがない。
 己の拳一つで強敵に立ち向かう自分の姿を頭に浮かべ、【あなた】は身体に熱が帯びてくるのを感じる。
「教官」
「うん、どうした?」
「今の技、錬習すれば使えるようになるのですか」
 退屈だとばかり思っていた講義が、これほど興味を引かれることになるとは思わなかった。
 真剣な【あなた】の眼差しに応えるように、教官は顎に手を当てると。
「もちろん、可能だとも。君が素手トリガーのベオウルフであり、私の授業をちゃんと学んだのだとすれば、必ず身につけることができる」
「そうですか」
 教官の言葉に小さくうなずき、あなたは拳を握りしめる。
 やるべきことが見つかったのだ。【あなた】が今、心から頑張りたいと思ったことは――

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「マスターより」
 この初期情報ムーヴの紹介用テキストです。各シナリオとは関係しませんので、ご了承ください。

『鎧通し』
 高速で放たれる拳の一撃で、外皮を抜けて相手に衝撃を送り込む技です。

■関連行動選択肢
M018800 ムーヴ修得の旅に出る
(担当:???/地域番号:???)
備考:ムーヴ修得のための専用の行動選択肢です。一定の確率でムーヴの修得に失敗します。またムーヴをすでに修得している場合、より修得に失敗しやすくなります。
 希望するムーヴがある場合は、その名前をアクションシートに記入ください。高い確率で希望のムーヴを修得できます。
 なお、無記入や存在しないムーヴ、トリガーの合わないムーヴ名が記入されている場合、修得できるムーヴはランダムとなります。
 また、この行動選択肢のリアクションは、基本的に小説形式ではなく、PCの描写はありません。

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