Z001306

Last-modified: 2009-11-10 (火) 00:03:46

     どらごにっく★あわー!
  ~竜を退治するだけの簡単なお仕事です~

初期情報
No.Z001306      担当:菅野紳士
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「先輩、なんですかこれ……?」
 自分の放り投げた白球を見つめ、【あなた】はため息まじりにそう呟く。
 緩やかな弧を描いて飛んで行くボールは、やがて同僚である先輩ベオウルフの手の中へ。
 すると先輩は、再び【あなた】へとボールを投げ返す。
 こんなことをくり返して、かれこれ二〇分が過ぎていた。
 ここがドラゴンと戦う戦場の真ん中だというにもかかわらず。
「なにってお前、キャッチボールも知らないのか?」
「いや、キャッチボールは分かりますけど……。それを今、ここでやっている理由が分からないのです」
 周囲を見渡し、肩をすくめる。
 幸いと言っていいのか、とりあえず今のところドラゴンの姿は見当たらない。
 だからといって、キャッチボールで時間を潰していていいわけでもないと思うが。
「えっと確かムーヴの修行のために、先輩にここまで連れて来られたと思うのですが」
「そうだよ。お前も少しはベオウルフらしくなってきたんだ。そろそろ新しいスピリットの使い方を覚えてもいいころだと思ってな」
 ムーヴとは修練を積んだベオウルだけが使えるようになるとされる奥儀のこと。
 効果は様々だが、どの技も一撃でドラゴンを倒すほどの威力があるとか。
ムーヴを覚えるからには、やはり実戦で目にするのが一番分かりやすいと思ってな」
「はあ、それでこうして野球の練習をすることになったのですか?」
 いつまでもくり返される、ボールと言葉のキャッチボールに、【あなた】は今一度、大きなため息を吐くのだった。
「俺さ、こう見えても昔は、野球少年だったんだぜ。甲子園にも出場した。プロからのスカウトもあったんだ」
「はあ、そうですか……」
「だからさ、今でもその頃の癖が染みついてんだよ。こうやって軽く肩慣らししておかないと、どうも調子が狂うんだ」
「それはドラゴン退治の話ですか、野球の話ですか?」
「両方だな」
 そう言って、先輩が投げ返すボールを掴もうとしたとき。
 【あなた】は辺りが急に、暗くなったことに気がついた。
 その理由は、空を見上げるとともに分かる。
 ドラゴンだ。
 頭上を覆う巨大な影の正体は、翼を広げた飛竜だったのだ。
 【あなた】たちを見つけた飛竜は、大きく口を開けて咆哮。そして敵意をそのままこちらにぶつけてくるように、勢いよく火の球を発射した。
 慌てて飛びのく【あなた】の足元で火球が炸裂。
 地面に大きなクレーターを作る。
「来ましたよ、先輩!」
 すぐさまボールを投げ捨て、拾いに走ったのは【あなた】のトリガー。
 大木を削り出して作った、巨大な『棍棒』だった。シンプルだが、それゆえに分かりやすい破壊力を持った、【あなた】自慢の相棒だ。
 一方、先輩がトリガーとしている武器も、同じく棍棒。
 ただし形状は全体的に細身で、重さより振りやすさを優先した円錐型のデザイン。ちょうど野球のバットによく似ていた。
「ドラゴンと対峙したときのこの緊張感。よく似ているんだよな。――甲子園、三回戦。九回ツーアウト満塁。一打出れば、逆転のチャンスってときに、打席に立ったのは俺だった。あのときのマウンドにいたピッチャーの気迫。さすがの俺もぶるっちまったぜ」
 ドラゴンを目の前にしながら、先輩は落ち着いた様子で素振りを数回。時折、首をかしげながら、納得のいくスウィングを探している。
「そんなことしている場合じゃないですよ。早く……」
「静かに! 打席に立った後は話しかけないでくれ!」
 トリガーを片手に膝をつく先輩の声は、真剣そのもの。どうやらふざけているわけではないらしい。
 奇妙なほどにぴんと張り詰めた緊張感に、【あなた】は黙って先輩の様子を見守った。
 精心統一を終えて、ゆっくり立ち上がる先輩。それからドラゴンをじっと睨みつけ、静かに棍棒を構えた。
 美しく洗練されたそのフォームは、バッターボックスに立つ野球選手そのものだった。
「まさか……」
 一抹の不安に【あなた】が息を飲み込む瞬間。
 ドラゴンは再び火の玉を吹いた。奇妙な構えで威嚇する先輩に向けて。
「危ない!」
 【あなた】が声をあげる間もなく、炎は吸い込まれるように先輩のもとへ。
 避けなければやられる。
 しかし先輩は微動だにしない。タイミングを計るかのように、微かに棍棒の先端を揺らすだけ。
「あのときの俺は、結局、空気に飲まれてバットを出すことさえできなかった。――だが、今の俺は違う」
 そして鋭く振り抜かれた先輩の棍棒が、かーんと軽快な音を鳴らした。
 撃ったのはドラゴンの火球。痛烈な当たりとなったそれは、一直線にドラゴンのもとへと帰っていく。
 打球はそのままドラゴンを飲み込み、巨大な火柱へと変わった。
「どうだ、これがムーヴってやつだ!」
「………」
 言葉にならなかった。【あなた】は目の前で起きた出来事に、ただただ唖然と口を開けるばかり。
 ドラゴン火球をトリガーで打ち返すなんて芸当、見たこともない。
 目の前で黒こげになったドラゴンの死体が、今でも信じられなかった。
「渾身のフルスイングで、相手の攻撃をそのまま打ち返す、まさに必殺技! 名づけて『グランドスラム』だ!」
「グランドスラム……、ですか」
 あっけに取られてしまったものの、確かにすごい技には違いない。
 現に目の前のドラゴンは、先輩の特大ホームランの餌食となって、見事に丸焼けになっている。
 さしもの凶暴な竜も、自分の攻撃で自滅するなどとは、考えてもいなかっただろう。
 これは冗談でもなんでもなく、ドラゴンを倒すための本物のムーヴなんだ……。
 会心のスウィングができたと満足げにうなずく先輩の横顔を見て、【あなた】はそう確信するのだった。
「もちろん、この技が使えるのは俺やお前みたいに、棍棒をトリガーにしている奴だけだ。お前が今のを見て、興味を持ったかは知らないが、教えてほしければいつでも言え。みっちり特訓してやるからな」
 足元に転がったボールを拾い直し、先輩が不敵な笑みを浮かべる。
「それはムーヴの話ですか、野球の話ですか?」
「………」
 なぜか返答のない先輩に、いささか不安になるものの……。【あなた】の中ではすでに答えは決まっていた。
 【あなた】の出した結論は――

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「マスターより」
 この初期情報ムーヴの紹介用テキストです。各シナリオとは関係しませんので、ご了承ください。

『グランドスラム』
 野球の打者のようなフォームから放つフルスイングで、敵やドラゴンのブレスを吹き飛ばす荒技です。

■関連行動選択肢
M018800 ムーヴ修得の旅に出る
(担当:???/地域番号:???)
備考:ムーヴ修得のための専用の行動選択肢です。一定の確率でムーヴの習得に失敗します。またムーヴをすでに修得している場合、より習得に失敗しやすくなります。
 希望するムーヴがある場合は、その名前をアクションシートに記入ください。高い確率で希望のムーヴを獲得できます。
 なお、無記入や存在しないムーヴ、トリガーの合わないムーヴ名が記入されている場合、取得できるムーヴはランダムとなります。
 また、この行動選択肢のリアクションは、基本的に小説形式ではなく、PCの描写はありません。

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