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Last-modified: 2007-06-14 (木) 22:22:08

ミカヤ  「珍しいわね、エフラムがわたしの仕事のこと知りたがるなんて」
エフラム 「いや、俺じゃなくてな」
ユリア  「こんにちは」
ミカヤ  「竜王さん家のユリアさん?」
ユリア  「はい。実は、妹たちの学校で『働くお姉さん』という題の宿題が出たそうで」
ミルラ  「……よろしくお願いします」
チキ   「お願いしまーす!」
ファ   「しまーす!」
ミカヤ  「そういうこと……」
エフラム 「ミルラ経由で俺に伝わってきてな……すまん、迷惑か?」
ミカヤ  「大丈夫よ。いつもマルスがメディウスお爺さんをいじめているお詫びもしなくちゃならないし」

エフラム 「……で、駅前に来た訳だが……ミカヤ姉さんは何をしてるんだ」
ユリア  「布をかけた机の前で椅子に腰掛けて……」
ミルラ  「占い師さんです」
ファ   「ファ、あの札読めるよー! えっとね、……の……の……」
チキ   「『銀の髪の乙女』って書いてあるね」
ファ   「ぶぅー! ファだって読めたのにぃー!」
ミルラ  「……あの占い師はエフラムのお姉さんだったのですか」
エフラム 「知ってるのか、ミルラ?」
ミルラ  「はい……学校でも、よく当たると評判ですから」
エフラム 「そうなのか」
ミルラ  「でも、占ってもらった子の様子がちょっとおかしくなるという噂も……」
エフラム 「……なんだか嫌な予感が……」
チキ   「あ、お客さんが来たみたい」
ファ   「頭になんかつけてる人だーっ! 変なのーっ!」

ハーディン「貴方が巷で噂の『銀の髪の乙女』か」
ミカヤ  「はい、そうですけど」
ハーディン「是非とも、その、わたしの恋愛運を占ってもらいたいのだが」
ミカヤ  「分かりました」
ハーディン「『おぬしはニーナを愛してしまったようじゃ』とかそういうのはなしにしてほしい。
      そんなことは分かりきっているのでな」
ミカヤ  「大丈夫です。あなたの行く末について、神様に聞いてみましょう」
ハーディン「神様?」
ミカヤ  「はい。では……スゥゥゥゥゥゥ……キエェェェェェェェェ!」

エフラム 「何やってるんだ姉さん!?」
チキ   「うわーん、うわーん!」
ファ   「怖いよーっ!」
ミルラ  「ああ、チキ、ファ、泣かないでください……」
ユリア  「あの、エフラムさん、ミカヤさんは何を」
エフラム 「分からん。静かになったところを見ると、どうやら終わったようだが……」

ミカヤ  「……」
ハーディン「……だ、大丈夫か、乙女殿?」
ミカヤ? 「うんっ、大丈夫よ!」
ハーディン「!? ほ、本当に大丈夫か? なんだかずいぶん雰囲気が変わったような……」
ミカヤ? 「細かいこと気にしちゃ、めっ! 女の子に嫌われちゃうぞ♪」

エフラム 「……」
ユリア  「あの、エフラムさん。どうして槍を構えていらっしゃるんですか?」
エフラム 「あ、ああ。すまん、なんだか無性に突き殺したくなってきてな」
ミルラ  「駄目ですよエフラム。お姉さんは大事にしないといけません」
エフラム (姉だからこそ……姉だからこそ……!)

ミカヤ? 「えーと、それで、ニーナさんとラブラブになれるかどうか知りたいのよね、おじさん?」
ハーディン「ら、ラブラブ……あー、ごほんっ、まあ、低俗な言い方をすると、そうなる、かもしれん」
ミカヤ? 「きゃーっ、真っ赤になっちゃって、可愛いおじさん。
      大丈夫。わたしはユンヌ、混沌の女神。分からないことなんて一つもないわ」
ハーディン「ユンヌ……?」
ミカヤ? 「そういう訳で、後はよろしくねアスタルテ」
ハーディン「アスタルテ?」
ミカヤ? 「(ガクッ)……神託を欲しているのは貴様か」
ハーディン(ま、また雰囲気が変わって……!?)
ミカヤ? 「私はアスタルテ。完全なる女神。負の女神に代わって、貴様に正しき道を指し示すもの……」
ハーディン「ほ、本当か? ではどうすればニーナは私のものに……」
ミカヤ? 「汝には力強さが足りぬ。それでは女の心をつかむなど夢のまた夢……」
ハーディン「つまり強引にいけと……しかしだな、女性に対して失礼な真似は……」
ミカヤ? 「その押しの弱さが汝の敗因……だが案ずるな、私の力を持ってすれば……キエェェェェェェェ!」

 ビカーッ!

エフラム 「目が光った!?」
チキ   「……」
ファ   「……」
ミルラ  「ああ、チキとファがすっかり大人しくなってしまいました」

ハーディン「……」
ミカヤ  「……いかがでしたか、お客様。なんだかとても目が赤くなったようですけれど」
ハーディン「いやいや……さすが銀の髪の乙女。素晴らしいご神託だった」
ミカヤ  「それはよかったです。神託が下る最中わたしは意識を失っていますので、
      神様がどんなことを仰ったのかは分かりませんが……」
ハーディン「生まれ変わったような清清しい気分だ。
      今ならカミュもグラディウスも恐るるに足らん。乙女、これはほんの礼だ」
ミカヤ  「まあ、こんなにたくさん。ありがとうございます」
ハーディン「ふはははは、待っているがいいニーナ! お前の夫が今行くぞ!」

エフラム 「……」
ミルラ  「……」
ミカヤ  「ふぅ。今日もいい仕事したわ。夕飯はご馳走よ、エフラム」
エフラム (ときどきミカヤ姉さんが大金を持ってくるのにはこんな裏があったのか……)

エフラム 「……なあミカヤ姉さん。悪いことは言わないから、こういう仕事は」
ミカヤ  「ありがとうエフラム。わたしが奇異の目で見られるのを気遣ってくれるのね。でも大丈夫」
エフラム 「いやそうじゃなくて」
ミカヤ  「わたし、自分のこの力が嫌いだった。でも皆の頑張る姿を見て考えを変えたの。
      力そのものが悪い訳じゃない、いいことに使えばいいんだって」
エフラム (凄く止めにくいな、これは……)
ミカヤ  「わたしが助けた人たちから、今もお礼の手紙が来るのよ。
      ゼフィールさんとかアルヴィスさんとかネルガルさんとか……」
エフラム (巷で評判の危険人物ばっかりだぞ、その面子)
ミカヤ  「ところで皆、どう? 『働くお姉さん』、書けそう?」
チキ   「(ビクッ!)うわーん!」
ファ   「怖いよーっ!(タタタタタタタッ)」
ミルラ  「ああ、チキ、ファ、待ってください……」
ミカヤ  「……どうしたのかしら? 変な子たちね」
エフラム (まさに、答えは神のみぞ知る、だな)
ユリア  (……使えるかもしれません。
      『ククク、マンフロイサマニサカラウモノ、ミナコロス』と、こういう感じで……)