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Last-modified: 2007-06-18 (月) 22:36:08

 それは、ある晴れた日曜日の朝のこと。
 事件は、主人公兄弟一家の同町内、マムクートが集まる竜王家から始まったのでした。

メディウス 「婆さんや、飯はまだかい」
イドゥン  「……朝ごはんならさっき食べたばかりです。それに、お婆様はとっくにお亡くなりですわ」
メディウス 「そうじゃったかのぅ」
ミルラ   「……」
イドゥン  「!!」
ニルス   「うわぁ、どうしたのミルラ、そんなに泣いて」
ミルラ   「エフラムが、エフラムが……」
ユリア   「エフラムさんが、どうなさったんですか?」
ミルラ   「ひぐっ、えぐっ」
ファ    「泣かないでミルラお姉ちゃん……うう、うわぁーん!」
チキ    「うわぁーん!」
ユリウス  「だーっ、もらい泣きするなお前ら、鬱陶しい!」
イドゥン  「……一体どうしたの、ミルラ?」
ミルラ   「エフラムが……」
ユリア   「エフラムさんが?」
ミルラ   「お前なんか邪魔だって……」
イドゥン  「!! ……詳しく教えなさい、ミルラ」
ミルラ   「は、はい……」
ニルス   (うわっ……イドゥン姉さん怒り狂ってる……)
ユリウス  (血の嵐が吹き荒れるぞこれは……)
ミルラ   「……わたし、今日もエフラムと一緒にジョギングしようと思って公園で待っていたのです」
ニルス   「そう言えば最近はミルラも付き合ってるんだったっけ」
ミルラ   「はい……それで、『わたしも一緒に走っていいですか』と聞いたら、最初はいつものように『あ
       あ、いいぞ』って笑って承諾してくれたのですが、途中で……」
ニルス   「途中で?」
ミルラ   「途中で……ううぅぅぅぅ……」
ファ    「うわーん、うわーん」
チキ    「ふぎゃーっ!」
ユリウス  「泣くなっつーに! そしてついでにブレス吐くなっつーに! とばっちりで僕と爺さんのHPが
       減ってるっつーに!」
メディウス 「うう、死んだ婆さんが川の向こうで手招きしとる……」
ユリア   「ユリウス兄様、そんな風に怒鳴ってはミルラも何も言えなくなってしまいますよ」
ユリウス  「う……すまん」
ユリア   「(ミルラの頭を撫でながら) それで、エフラムさんは途中で何と仰ったのですか」
ミルラ   「ぐすっ……走ってる途中で、きゅ、急に冷たい顔でこっちを見て、『俺は一人でトレーニングし
       たいんだ。ガキは邪魔だ、帰れ』って」
イドゥン  「……」
ニルス   「ああ、イドゥン、どこに行くの?」
イドゥン  「……ちょっと、エフラムさんのお宅まで行ってくるわ……」
ユリア   「イドゥン姉様、待っ……ああ、飛んで行ってしまわれました」
ユリウス  「飛竜石使ったな……かなり怒ってるぞあれは」
ユリア   「心配です……」
ユリウス  「ああ、そうだな」
ニルス   「そんなユリウスの本音は?」
ユリウス  「ユリアさえ無事ならぶっちゃけどうでもいいかなって」
ユリア   「お兄様……」
ユリウス  「はっ! い、いや、落ち着けユリア! 僕はお前の身を案じただけで……ちょ、ナーガの魔導書
       は止め……ギャーッ!」
ユリア   「……ニルス、わたしたちも参りましょう。セリス様……いえ、エフラムさんのお宅が心配です」
ニルス   「はーい。じゃ、皆も呼んでくるね」

 ~主人公家、食堂~

エリウッド 「うーん、気持ちのいい朝だなあ。おはよう皆」
シグルド  「おお、おはようエリウッド。今日は調子が良さそうだな」
エリウッド 「そうだね、昨日は珍しく何の問題も起きなかったから……いやあ、胃に痛みがないってのは実に
       快適だね」
リン    (それって要するにいつも胃を痛めているってことよね)
エイリーク (エリウッド兄上はいつも気遣いが細やかですし)
エリウッド 「今日は日曜だし、皆のことだからきっと出かけているんだろうね」
エリンシア 「そうでもないみたいですよ」
リン    「そうね。マルスにロイ、リーフとセリスはミカヤ姉さんと一緒にアニメ見てるし」
シグルド  「ヘクトルはまだ寝ていて、アイクは庭で素振り、エフラムは先程ジョギングから帰ってきたところ、か」
エリンシア 「セリカちゃんとアルムちゃんは台所で朝食の準備を手伝ってくれていますし」
シグルド  「ははははは、兄妹仲がいいというのは実にいいことだなあ」
リン    (うわ、シグルド兄さんこめかみに青筋が立ってる)
エイリーク (前回あんなこと(>>428-431)があったから、必死に自分を抑えておられるんですね)
エリウッド 「そっか、じゃあ今日は珍しく一家全員勢ぞろいなんだね」
シグルド  「そのようだな。折角だから、晩御飯は皆で焼肉でも食べに行くか」
ヘクトル  「焼肉と聞いては黙ってらんねえな!」
リン    「うわ、いつの間に起き出してきたのよヘクトル」
ヘクトル  「細かいことは気にすんな。それより焼肉だ焼肉。今日こそアイクの兄貴に勝って、エフラムとも
       雌雄を決してやるぜ……って、エフラムの野郎はどこに行ったんだ?」
エリンシア 「先程戻ってきてから、ずっと部屋に篭っているようですけど……ちょうど朝ごはんが出来そうだ
       から、呼んできていただけないかしら、ヘクトルちゃん」
ヘクトル  「へいへい」

 ~居間~

ミカリン  「行くわよユンヌ。ベアードモンスターに必殺魔法グリーン・ウインドを!」
ユンヌ   「駄目よミカリン、グリーン・ウインドは威力が低くてカキーンとNO DAMAGEだわ!」
ミカリン  「また? なんかこの魔法役に立ってなくない?」
ユンヌ   「雑魚を蹴散らすのには一番じゃない」
ミカリン  「でも肝心のベアードモンスターに効かないんじゃねえ。なんだか涙目になりそう」
ユンヌ   「泣いちゃ駄目よミカリン! くじけずに立ち向かうのよ」

ミカヤ   「涙目になりそうなのはこっちだわ……」
リーフ   「うーん、まさか魔女っ子? ミカリン第二期が始まるなんてなあ」
ロイ    「出回ったDVDが何故か評判になって、ファンの人たちが続きを作ってくれって熱烈な署名活動
       を行ったんだって」
セリス   「凄いなあ、ミカヤ姉さんは人気者なんだねえ」
マルス   「マニア受けするんだろうぶげぇ!」
ミカヤ   「……姉さんが怒らないと思ったら大間違いよマルス」
マルス   「クソッ、リン姉さんの影響か最近皆遠慮がなくなってきたな……」
リーフ   「それはそうと、第一期とは設定がずいぶん違うみたいだねこれ」
ミカヤ?  「その通りよ!」
リーフ   「うわっ、急に出てこないでよユンヌさん」
ユンヌ   「ふふんっ、ようやく始まったのね魔女っ子? ミカリン第二期! いろいろと手回しした甲斐があったわ」
マルス   「相変わらず暇な女神様だね……」
ユンヌ   「とんでもない。これはアスタテューヌ教の布教活動も兼ねてるのよ」
リーフ   「え、これが?」
ロイ    「よく分かりませんけど……」
ユンヌ   「それは後で説明してあげる。そんなことより今は魔女っ子? ミカリンの解説ね」
セリス   「ミカリンにお友達が出来たんだよね」
ユンヌ   「そう。魔法の人妻マジカルエスリーナと魔法のロリッ子サナサナと」
リーフ   「ロリっ子とか言っちゃ駄目でしょいろいろと!」
ロイ    「って言うか、魔法の人妻って……」
ユンヌ   「後継者が見つからないから未だに引退できないのよ。ちなみに今年で(ダキュンダキュン!)才になるわ」
ロイ    「なんて残酷な……」
リーフ   「その歳であのピンクにフリフリのコスチュームはきついよね……」
ユンヌ   「視聴者には内緒だけど実は子持ちなのよ」
リーフ   「なんでそんな嫌な設定ばっかりくっつけるのさ!」
セリス   「え、そんなに嫌かな……だって、ミカヤ姉さんがいつも言ってるじゃない。女の人はきらきらし
       た心さえ持っていれば永遠に少女なのよって」
マルス   「その発言の是非はともかく、ミカヤ姉さんの心がきらきらしているとはとてもぎゃあ!」
ユンヌ   「あ、ごめん、今のパンチはミカヤの意思ね」
マルス   「へっ、いいパンチだぜ……」
ロイ    「そんなことやってる間にミカリンが敵の……ベアードモンスター? を、倒したみたいだね」
リーフ   「黒いアークオープスみたいな外見だなあ」

一つ目怪物 「うぬう、またしても邪魔しおったな魔女っ子? ミカリンめ!」
ミカリン  「魔女っ子ミカリンがいる限り、この世に悪は栄えないわ!
エスリーナ 「さあ、さっさと退散しなさいベアードモンスター! でないとこのコスチュームから着替えられ
       ないでしょ!」
サナサナ  「もう二度と来るでないぞベアードモンスターめが!」
一般人A  「そうだそうだーっ!」
一般人B  「ありがとうサナサナーッ!!」
一般人C  「萌えーっ! ロリッ子萌えーっ!」
サナサナ  「うう、相変わらずこの視線は苦手じゃ……」
一つ目怪物 「おのれーっ、覚えておれよ。必ずや全世界の性犯罪者どもを撲滅してくれるわ、このロリコンどもめ!」
一つ目少女 「このロリコンどもめーっ!」

リーフ   「どういう捨て台詞なのこれ!?」
ユンヌ   「あれはベアードモンスターって言って、世界中からロリコンを撲滅しようとしてる悪の怪物なのよ」
マルス   「ロリコンを撲滅……いい人なんじゃないのそれって」
ユンヌ   「とんでもない。『ロリコンどもを撲滅するためにはどうするか。ロリコンどもを倒してもまた第
       二第三のロリコンどもが現れる。故に、ロリコンどもを撲滅するためには、奴等の愛でる対象で
       あるロリっ子を全滅させればよろしい』というとんでもない思考の持ち主なのよ」
リーフ   「極端すぎるよ!」
マルス   「変な敵だなあ」
ロイ    「製作者インタビューによると、『遺伝子的に反社会的な嗜好を持たざるを得ない人々に、果たし
       てこの社会で生きる資格があるのかどうかを追及するのがテーマだ』ってことらしいけど」
セリス   「凄いなあ、深いテーマなんだね」
リーフ   「いやすっごい無理矢理な理屈に聞こえるんだけど」
マルス   「ひょっとして、今のインタビューの内容も」
ユンヌ   「ええ、そう喋るように指示しておいたの」
リーフ   「どこまで手を伸ばしてるんですかあなたは……」
マルス   「ユンヌさん、ぜひその洗脳術を伝授していただきたいんですが……」
ユンヌ   「駄目よ、これは混沌の女神ユンヌのみが操れる魔法なんだから」
マルス   「ちぇっ、案外ケチくさいなあ」
ユンヌ   「マルスちゃんも人のこと言えないでしょ。それじゃ皆、また来週も見てねー」
ミカヤ   「……ふう。ユンヌったら本当に急に来るんだから」
リーフ   「お帰りミカヤ姉さん。いつも大変だね」
ミカヤ   「ふふ、本当は言うほどでもないんだけどね。さ、朝ごはん食べちゃいましょう」

シグルド  「ふむ。姉上がモデルのテレビ漫画ですか」
リーフ   「シグルド兄さん、今時テレビ漫画は……」
ミカヤ   「ご飯の前にその話題は止めてほしいんだけど」
リン    「ユンヌさんの悪戯心にも困ったもんね」
ロイ    「いや、今回のことは悪戯って訳でもないみたいだよ」
リーフ   「そう言えば、布教活動とか言ってたっけ。どういうことか聞きそびれちゃったけど」
エイリーク 「アニメで布教活動、ですか? つまり、宗教的な内容のアニメなのですね」
リーフ   「……そんな風には見えなかったけどなあ」
ロイ    「ロリコンどもめ、とか言ってたしね」
リン    「何それ……ああ、ロリコンと言えばエフラム兄さんはまだ二階から降りてこないの?」
マルス   「その連想はひどいんじゃないですかリン姉さん」
リン    「しまった、つい……」
マルス   「普段人に『変な言いがかりはよしなさい』とか言ってるリン姉さんが、単に子供に好かれるだけ
       のエフラム兄さんをロリコン呼ばわり……あーあ、ひどいなあ。こういうの二枚舌って言うんだ
       よねリーフ」
リーフ   「なんでそこで僕に話を振るのさ」
ヘクトル  「エフラムならもう少しで来るってよ。なあ、先に食っちゃ駄目か? 腹減ってぶっ倒れそうだぜ」
リン    「駄目よ。せめて朝ご飯だけは皆揃って、って言うのが我が家の決まりでしょ。アイク兄さんだっ
       てまだ素振りしてるし」
アイク   「(ガラッと庭先のドアを開けながら)すまん、遅くなった」
エリンシア 「大丈夫ですよ……? なんだか、外から羽音のようなものが聞こえますけど」
アイク   「別に、大したことじゃない」
エリウッド 「小鳥でも飛んでるのかな? ははっ、今日は気持ちのいい朝だからね」
リーフ   (うわっ、エリウッド兄さんが歯を光らせて爽やかに笑っている)
ロイ    (久々の王子様モードだね。竜王さん家のニニアンさんもこれでメロメロになったって評判の)
エリウッド 「どれ、小鳥達に餌でもあげようかな(ガラッ)」

 アンギャー! バッサバッサ、ゴオォォォォォーーーー!

エリウッド 「……」
アイク   「ちょっと、飛竜の群が我が家の上空を不気味に旋回しているだけだ」
リーフ   「大問題じゃないですかァーッ!」

カイン   「おお見ろアベル、ちょっと大きいだけで何の変哲もない民家の上を、大量の飛竜が飛び交っているぞ!」
アベル   「むうっ、あれはもしや戦闘竜!」
カイン   「知っているのかアベル!?」
アベル   「うむ。聞いたことがある。我が紋章町最大の名家『竜王家』の娘、イドゥン嬢が操る竜軍団の話
       を。イドゥン嬢の影から出でて影へと消える、意思なく命もなき擬似マムクート軍団! 個体の
       戦闘力こそ本物のマムクートに劣るものの、神竜地竜暗黒竜を除いた全種の竜により構成される
       その戦闘力は、小国の軍隊ならば軽く滅ぼせるほどのものだという……」
カイン   「戦闘竜……なんとも恐ろしい存在のようだな。しかし、それが何故こんなところに?」
アベル   「分からん。だが何にせよ恐ろしい事態になることは間違いなかろう……」

エリウッド 「ふ、ふふ、フフフフフ……」
ロイ    「うわぁ、あまりの事態にエリウッド兄さんが真っ白になっちゃった!」
リーフ   「この人でな……じゃなくって、しっかりしてよエリウッド兄さん!」
エリウッド 「ふふふ、そうだよね、何の事件もない穏やかな休日なんて、この一家に限ってあり得るはずな 
       かったんだ……ああ、懐かしい胃の痛みが戻ってきたよ……」
ロイ    「エリウッド兄さん、気を確かに!」
リン    「それより、今はあの飛竜を何とかしないと……っていうか、アイク兄さん!」
アイク   「なんだ?」
リン    「あんなのが飛んでるんだったらもっと早く教えてよ!」
アイク   「別に、大したことじゃないと思うけどな」
リン    「アイク兄さんはいつもそうやって!」

 ボオォォォォォッ!

ヘクトル  「うおっ、あの飛竜ども、こっちに向かってブレス吐いてきやがった!」
エイリーク 「どうやら、こちらに並々ならぬ敵意を持っているようですね……」
エリンシア 「あらあら困りましたわね、折角朝ごはんが出来たところでしたのに」
リーフ   「いや、そういう問題じゃないと思うけど」
セリカ   「アルム見て、恐ろしい竜の群……それに、凄く怒ってるみたい」
アルム   「大丈夫、セリカのことは僕が守ってみせるよ」
セリカ   「ううん、わたしだって戦えるわ。お願いアルム、あなたの背中、わたしに預けて」
アルム   「セリカ……」
セリカ   「アルム……」
シグルド  「……どうやら竜の前に片付けなければならないものがあるようだな……」
ロイ    「そんなことしてる場合じゃないよシグルド兄さん!」
セリス   「とにかく、今は身を守らないと。ヘクトル兄さん、物置から皆の武器を」
ヘクトル  「おう、任しとけ!」
セリス   「ミカヤ姉さんはリワープで、エリンシア姉さんは天馬で近所の人たちに危険を報せてあげて」
ミカヤ   「分かったわ」
エリンシア 「皆様、お気をつけて」
セリス   「僕はエフラム兄さんを呼んでくるよ」
ロイ    「相変わらず、こういうときのセリス兄さんの指揮は完璧だね」
エイリーク 「ええ、さすが☆三つですね」
リーフ   「……どうせ僕は軍師抜きだと☆が一つもない男ですよ……」
ロイ    「落ち込んでる場合じゃないよリーフ兄さん!」
アイク   「……皆、何をそんなに騒いでるんだ?」
リン    「あのねアイク兄さん、いい加減この状況を」
アイク   「飛竜なんて」

 と、ラグネルを振って上空に衝撃波を飛ばすアイク。
 首を落とされた飛竜の死体が落ちてきて……

リーフ   「うぎゃあああああ!(ぷちっ)」
ロイ    「うわぁ、リーフ兄さんが倒壊した壁ごと潰されちゃった!」
リーフ   「この人でなしーっ!」
アイク   「こうやって、叩き落とせばいいだけだろう」
マルス   「そんなこと出来るのはアイク兄さんだけだってば」
アイク   「心配するな。普通の飛竜よりはずっと弱いぞこいつら。落ち着いて対処すれば大丈夫だ」
マルス   「(双眼鏡を覗き込みながら)んー、でも、飛竜だけじゃないみたいだよ。あっちからは火竜と魔
       竜と氷竜が群をなして……全部ウチに向かってくるみたいだね」
ロイ    「うわ、本当だ。どうしよう」
アイク   「決まっている。全部片付けるぞ」
エイリーク 「そうですね。こんなことで死者を出す訳には参りません」
アイク   「……さっきから飛竜が衝撃波で何匹か叩き落されているのを見ると、向かいの漆黒の騎士も協力
       してくれているらしいからな。何とかなるだろう」
リン    「はぁ……折角の休日だっていうのに、結局何かしら問題が起きるのね」
エリウッド 「ははは……諦めようよリン。きっとこれが僕らの運命なんだ……はぁ」
ロイ    (また後で兄さんに胃薬を買ってきてあげなくちゃな……)
ヘクトル  「おら皆、武器取ってきたぜ!」
エイリーク 「はい(ジークリンデ装備)」
エリウッド 「ありがとう(デュランダル装備)」
リン    「仕方ないわね(ソール・カティ装備)」
ロイ    「事情はよく分からないけど(封印の剣装備)」
マルス   「こんなところで死ぬっていうのも馬鹿らしいしね(紋章ファルシオン装備)」
セリカ   「頑張りましょうね、アルム(ライナロック装備)」
アルム   「そうだね、必ず生き残ろう(外伝ファルシオン装備)」
ヘクトル  「残らず叩き落してやるぜ!(アルマーズ装備)」
リーフ   「……(ドラゴンキラー装備)」
ヘクトル  「よっし、そんじゃ」
リーフ   「ヘクトル兄さん……なんで僕だけドラゴンキラーなの? ブラギの剣は?」
ヘクトル  「あ? だってお前、特効がある分ドラゴンキラーの方が有利だろうが」
リーフ   「……そうだよね。いや、いいんだ別に。僕なんか量産武器がお似合いなのさ……ブラギの剣だっ
       て別に僕専用じゃないし」
リン    「へこんでる場合じゃないでしょ! 気合入れなさい、気合」
シグルド  「では皆、命を落とすなよ! 必ず全員揃ってこの食卓に戻ってくるんだ!」
全員    「おーっ!」

 ~主人公家 二階~

セリス   「ああ、皆、もう戦い始めたみたいだ。僕もエフラム兄さんを連れて早く行かなくちゃ」

 コンコン、と部屋をノックするセリス

セリス   「兄さん、エフラム兄さん! 外が大変なことになってるんだ……エフラム兄さん!?」

 ~主人公家周辺~

イドゥン  「……」
アイン   「……」
イドゥン  「配置完了……そうですか。では、総攻撃を開始しなさい」
アイン   「ギョイ……」

 ~主人公家 庭~

ミカヤ   「遅れてごめんなさい」
エリンシア 「付近住民の皆さんの避難、完了いたしましたわ」
シグルド  「よし、では二人はアイクと協力して飛竜の相手に回ってくれ」
ヘクトル  「おし、んじゃエイリークとマルスは俺と一緒に火竜の相手だ」
エリウッド 「リンとロイは僕と一緒に魔竜の相手を」
アルム   「じゃあ、僕らはシグルド兄さんと一緒に氷竜を片付けよう」
セリカ   「ええ、頑張りましょうね、アルム」
リーフ   「……シグルド兄さん、僕は何を?」
シグルド  「他の皆が討ち漏らした竜に止めを刺してくれ」
リーフ   「……ふふ、分かってるよ、残り物が回ってくるだけ有難いと思わなくっちゃね。ポジティブシン
       キングポジティブシンキング」
ロイ    (あんまり前向きでもない気がするけど、突っ込んでる余裕がないや……)
シグルド  「よし、では皆、互いにフォローしつつ、戦闘開始!」
全員    「おーっ!」

アイク   「ふんっ(と、上空に衝撃波を飛ばす)」
ミカヤ   「(レクスオーラを放ちながら)アイク、エリンシアに当てないように気をつけてね」
アイク   「ああ、分かっている……むっ」
漆黒の騎士 「……(デーッデッ! デーッデッ! デーッデーッデッデッー! (漆黒のテーマ)」
アイク   「漆黒の騎士……」
ミカヤ   (騎士様……相変わらずBGM流さないと登場できないのね……)
漆黒の騎士 「……私も協力しよう」
アイク   「……あんたにはいろいろと言いたいことがあるが……まあ、助かる」

ヘクトル  「(火竜のブレスを避けつつ)へっ、デカブツめ。これなら目を瞑ってたって避けられるぜ。オラァ!」
エイリーク 「火竜の巨体を一撃で吹き飛ばす……さすがヘクトル兄上、凄まじいお力です」
マルス   「ははは、馬鹿力って言うのはまさにあのことだよね」
エイリーク 「マルス……大丈夫ですか? あなたはこういった直接的な戦闘は苦手でしょう」
マルス   「まあ、ヘクトル兄さんたちに比べるとさすがに見劣りしますけどね……
       でも大丈夫、対策はバッチリです」
エイリーク 「対策、と言うと」
マルス   「この闇のオーブさえあれば、僕は誰にも負けはしません!」
エイリーク 「……それは、使っても大丈夫なのですか?」
マルス   「平気平気。こんな物に意識を飲み込まれるほど、僕の精神力はヤワではありませんよ」
エイリーク 「……」
マルス   「(火竜に突進しつつ)最高に勃起モンだぜ! こっちだけズルして無敵モードだもんなぁ!」
エイリーク (……不安です)

エリウッド 「大丈夫かい、リン、ロイ。僕らは他の皆に比べると力が強いとは言い難い。
       お互いにフォローし合いながら戦うんだ!」
ロイ    「うん。まず僕が封印の剣で間接攻撃を仕掛けて魔竜を怯ませて」
リン    「わたしが素早い動きで敵の目をひきつけ」
エリウッド 「その間にこっそり接近した僕が、デュランダルで止めを刺す! これなら反撃も喰らわずに済む」
ロイ    「……ふう。こうやって一体一体潰していけば、何とかなりそうだね」
リン    「そうね。ちょっと面倒だけど、なるべくばらばらになるのは避けないと」
エリウッド 「はぁ……それにしても、何だって休日にこんなことを……
       ああ、この戦闘が終わったとき、僕らの家は原型を留めているんだろうか……」
リン    「家よりもまず先に自分達の命を心配した方がいいような……まあいいけど」
ロイ    「エリウッド兄さん、胃薬どうぞ」
エリウッド 「ああ、ありがとうロイ。いつも済まないねえ」
ロイ    「それは言いっこなしですよ。お互いにフォローしながら戦うんでしょう?」
エリウッド 「そうだな……おっと、また新しい魔竜だ。ブレスに当たらないように気をつけよう!」

アルム   「クッ……氷のブレスのせいで気温が下がってる……長くは戦えないかもしれないな」
セリカ   「大丈夫よアルム。ライナロックは炎の魔法。わたしと一緒ならずっと戦っていけるはずよ」
アルム   「ああ、ありがとうセリカ。やっぱりセリカは頼りになるね」
セリカ   「ううん、わたし、アルムがそばにいてくれなければ、
       きっと怖くて震えてることしか出来なかったと思う」
アルム   「そんなことないさ。支えてもらってるのは僕の方だよ。セリカがいてくれるから、僕は戦えるんだ」
セリカ   「……ありがとう。すごく嬉しい。なんだか心がぽかぽかする」
アルム   「セリカ……」
セリカ   「アルム……」
戦闘氷竜  (……アツクルシイナア。ヒョウリュウノカラダニ、コノクウキハドクデスヨ)
シグルド  「……」
戦闘氷竜  (オッ、アッチノヤツハヒトリ……クラエ、コオリノブレス!)

 シュウウウウウウウウウ……!

戦闘氷竜  (ヤッタ、チョクゲキダ……! コレデヤツハコオリヅケニ!)
シグルド  「……なんだこれは」
戦闘氷竜  (……! バ、バカナ! コオリノブレスハゼッタイレイド! ニンゲンニタエラレルハズガ……!)
シグルド  「(一歩、一歩と歩きながら)なめているのか貴様は。この程度でこの私の、この私の……!」
戦闘氷竜  (ヒ、ヒィィィィィィィ!)
シグルド  「怒りの炎が消せるとでも思ってるのかァァァァァァァァァァッ!」

 ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ、ズバシュッ!

戦闘氷竜  (ア、イタッ、チョ、ヤメ、マジイタイッテコレ! シャレニナラネエッテ!)
シグルド  「チクショウチクショウ、兄さんは絶対許さないぞ、
       兄妹同士なんて異常なんだぞ社会倫理に反してるんだぞウワァァァァァァァァン!」
アルム   「シグルド兄さん、凄い張り切りようだね」
セリカ   「家族のためにならどこまででも頑張れる人だもの」
アルム   「……僕だって、セリカのためになら竜の百体や二百体、怖くもなんともないさ」
セリカ   「わたしだって、アルムと一緒なら一万の竜だって退けられると思うわ」
アルム   「セリカ……」
セリカ   「アルム……」
シグルド  「ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょう、チクショォォォォォォォォ!」
戦闘氷竜  (モウヤダコノヒトォォォォォォォ!)

リーフ   「……あ、この竜まだ生きてる。あ、こいつも。こいつもそうか……」

 ドス、ドス、ドス……

リーフ   「皆は華やかに活躍してるのに、僕だけこんなところで残り物の処理かあ……」

 ドス、ドス、ドス……

リーフ   「……将来は屠殺業者にでもなろうかな、僕……」

 ~主人公家周辺~

イドゥン  「……攻めあぐねているようね……」
アイン   「……」
イドゥン  「……でも、抵抗は無意味です。私がいる限り、戦闘竜はいくらでも作り出せる……」

 イドゥンの影から、のっぺらぼうのマムクートが多数、ずぶずぶと姿を現す。

アイン   「……イケ」

 アインの命令と共に、竜に変化しつつ主人公家に向かっていく戦闘竜たち。

イドゥン  「……ミルラを泣かせた男は、絶対に許さない……」

 ~再び主人公家~

エリンシア 「……! 姉様、大変です! また竜の増援が……」
ミカヤ   「本当? まずいわね、このままだとジリ貧だわ……」
アイク   「関係ない。ただ前に進む、それだけだ」
ヘクトル  「戦は数だよ兄貴! さすがにこの人数じゃ辛いぜ」
エリウッド 「周辺一帯は焼け野原だね……この家だけ残ってるのが凄く不自然だよ。
       これ、ひょっとして僕らが全部弁償させられるのかなあ……ああ、胃痛と共に眩暈が」
シグルド  「気を確かに持つんだエリウッド……ところで、セリスとエフラムは?」
ロイ    「そう言えば戻ってきてないね」
リン    「でも二階に様子を見にいく余裕なんてないわよ……あれ、そう言えばマルスもいないわね」
エイリーク 「……マルスならあちらで高笑いしながら無抵抗の火竜を虐殺しているところで」
リン    「あの馬鹿……」
ヘクトル  「とりあえず、上空の飛竜だけでも何とかしねえとな。頭を押さえられちゃ、目の前の敵に集中できねえよ」
アイク   「それに関しては、俺に策がある」
漆黒の騎士 「ほう」
アイク   「リーフ、こっちに来てくれ」
リーフ   「なに? 屠殺スコアなら60を超えたところだけど。生肉食べる?」
アイク   「それは後だ」
ロイ    (後で食べるつもりなんだ……)
アイク   「そんなことよりお前の出番だぞ。最前線で飛竜を倒してくれ」
リーフ   「え、本当!? ようやく日陰者の僕にも出番が」
アイク   「そうか、やってくれるか。では」

 ニア そうび

   ラグネル
 ニア ブラザーアーチⅡ改 9
   ブラザーアーチ   0
   シスターアーチ   0

リーフ   「え、アイク兄さん何故僕の襟首を引っつかんで……というか、何か凄い既視感が」
アイク   「いけぇっ!(ブゥン!)」
リーフ   「ギャアアアァァァァァァァァアアァァァァッ~~~~~~……!」
ロイ    「方位445……! 凄い、リーフ兄さんが正確な弾道で飛竜に向かっていって……」

 ゴイ~ン! ヒュウゥゥゥゥゥゥン……ドサッ。

ロイ    「うわぁ、飛竜に頭突きしたリーフ兄さんがボロ雑巾みたいになって落ちてきちゃった!」
リーフ   「この人でなしーっ! ……あ、頭が割れるように……」
リン    「ちょ、大丈夫リーフ!? エリンシア姉さん、すぐにリライブを」
アイク   「……」
ロイ    「何か不満そうだね兄さん」
アイク   「いや、俺の予定では、うまく飛竜に飛び乗ったリーフが、華麗な八艘飛びを披露しながら
       次々と飛竜の首筋にドラゴンキラーを突き立てる大活躍を見せるはずだったんだが。
       何故こんなことになったんだろう、おかしいな」
リン    「おかしいのは兄さんの頭よ!」
エリウッド 「あああ、そんなこと言ってる内にまた新たに竜の増援が……」
漆黒の騎士 「……いや、違うな」
リン    「え!?」
ロイ    「本当だ、あの竜の群、今までとは違うみたいだ……!」

 ~主人公家、上空~

チキ(竜) 「わぁ、メチャクチャだぁ」
ファ(竜) 「めちゃくちゃだぁ!」
ユリア(竜)「……イドゥン姉様、相変わらず怒ると見境がありませんね……」
チキ(竜) 「どうするの、ユリアお姉ちゃま」
ユリア(竜)「イドゥン姉様にお気を静めて頂かねばなりませんが……まずは、この戦闘竜の群を何とかしましょう」
ファ(竜) 「やっつけちゃえばいいんだ!」
ユリア(竜)「ええ。本体には何ともありませんから、手加減は無用ですよ。怪我をしないように気をつけてね」
二人    「はーい!」
ユリウス(竜)「……はぁ。やる気出ないなあ。いや、待てよ。このドサクサに紛れてセリスを始末……」
ユリア(竜)「……お兄様?」
ユリウス(竜)「は、はい!?」
ユリア(竜)「……お兄様の背中にはいつも私がいるということをお忘れなく……」
ユリウス(竜)「……それは相棒的な意味? それとも憲兵的な意味?」
ユリア(竜)「1対9ぐらいの割合です」
ユリウス(竜)「やった、一割は僕の背中を守ってくれる的な意味なんだ!
        イヤッホォォォォォォォッ! 愛してるよユリアァァァァァッ!」
ユリア(竜)「……駄目なお兄様……」
クルトナーガ(竜)「じゃあユリア、僕らも行くね」
ユリア(竜)「はい、申し訳ありませんクルトお兄様。折角の休日ですのに」
クルトナーガ(竜)「いいんだよ、気にしなくて。僕としても、エフラムの真意が知りたいところではあるし……
       それに、久しぶりにアイクやミカヤたちとも会いたいしね」
アムリタ  「クルト、早くしてちょうだい。アイク殿が戦っているのなら、私のセネリオも加勢にくるはず……!」
クルトナーガ(竜)「……姉上は本当に彼がお好きですね」
アムリタ  「私のセネリオ……
       サークル『とても優秀ですから』との合併誌表紙はあの子のヌードで決まりだわハァハァ」
クルトナーガ(竜)「……それじゃ、行ってくるよユリア……」
ユリア(竜)「はい、お願いいたします」
ミルラ   「……エフラム……」
ユリア(竜)「……ミルラ、ちゃんとお話しなければ分からないこともあります。怖いとは思いますが」
ミルラ   「はい……お願いします、お姉ちゃん」
ユリア(竜)「もちろんです。振り落とされないように、しっかりつかまっていてくださいね」
ミルラ   「はい……!」

ニルス(竜)「ふいー、ようやくここまで来たよ。氷竜の僕らに陸上活動はキツイよねニニアン」
ニニアン(竜)「……エリウッドさま……」
ニルス(竜)「聞いてないし。ねえ、エリウッド様なら大丈夫だよニニアン。あのデブ剣さえ持たなければの話だけど」
ニニアン(竜)「……早くお助けしなければ……!」
ニルス(竜)「……いいけどさ、エリウッド様に会うときは人の姿に戻った方がいいと思うな。
       百年の恋も一気に冷めるよこれ」
ニニアン(竜)「……! 今のニルスの言葉を聞いて、いいことを思いついたわ……」
ニルス(竜)「いいことって?」
ニニアン(竜)「……エリウッドさま、今参ります……!(ドタドタドタドタ)」
ニルス(竜)「……疲れちゃうよね、本当。まあいいや、久しぶりにリンディス様の太股で眼福に浸れるし」

ヤアン(竜)「……バヌトゥ、別に無理せずとも良かったのだぞ。火竜族ならばゴートもいることだし」
バヌトゥ(竜)「なんのなんの、若いものにはまだまだ負けませんぞ。ところでワシの火竜石はどこだったかのぅ」
ゴート(竜)「今は化身中ですから火竜石はありませんぞご老体」
バヌトゥ(竜)「おお、そうじゃったそうじゃった、いつも失くすものじゃからつい、のぅ」
ヤアン(竜)「……メディウス爺様と茶でも啜っててくれ、頼むから……」

メディウス(竜)「バアサンヤ……」
戦闘火竜  「ギャ?」
メディウス(竜)「ヒトチガイ……」
戦闘魔竜  「ギュ?」
メディウス(竜)「コレモチガウ……」
戦闘氷竜  「ギョ?」
メディウス(竜)「ドコイッチマッタンジャ、ナーガバアサンヤ……」

カイン   「おお見ろアベル、見たこともない珍しい種類の竜が勢ぞろいだぞ!」
アベル   「むぅ、あれはもしや竜王軍……!」
カイン   「知っているのかアベル!?」
アベル   「うむ、聞いたことがある。紋章町に危機訪れしとき、美しい鱗を持つ竜の軍団が現れるという」
カイン   「それがあの竜の群なのか……!」
アベル   「おそらくな。彼らは町の守護者にして影の支配者。だが自らが持つ圧倒的な力が人の心を脅かす
       のを恐れ、普段はその本性を竜石に封じ、普通の人々と変わらぬ生活を営んでいるのだという。
       そのコミュニティが、今現在竜王家と呼び表されている集団なのだそうだ」
カイン   「ということは、今回の件はやはりこの町に危機が迫った結果だという訳か」
アベル   「そうだろうな。まだまだ今回の事件の終わりは見えないぞ、カイン」
カイン   「そうか……ところでアベル」
アベル   「なんだカイン」
カイン   「わたしたちは何故、こんな危険なところに留まって無駄話を続けているのだろう」
アベル   「……分からん。だが何故かここで解説を続けなければいけないような気がするのだ……」

 ~主人公家~

ヘクトル  「うおぉ! スゲェ、あの二体の竜、圧倒的な強さだぜ」
エリンシア 「あれは神竜という種類の竜ですね……霧のブレスには数多の竜を退ける力があるそうです」
ロイ    「火竜や氷竜もいるね……今までのとは大きさも強さも段違いだ」
アイク   (あの黒竜……ひょっとして、クルトナーガか?)
シグルド  「美しいな。状況も忘れて見入ってしまいそうな荘厳さだ」
ミカヤ?  「全くもう、竜王家の皆ったら、こんなことでいちいち大騒ぎするんだから……」
リン    「その口調……ひょっとして、ユンヌさん?」
ユンヌ   「そうよ。よく頑張ったわね皆。いろいろ大変だったけど、もう大丈夫」
ロイ    「じゃ、やっぱりあの神竜たちは味方なんだね」
ユンヌ   「そう。皆、あなた達がよく知る人たち。それに、他の助けも来てくれたみたいよ」
ロイ    「他の助け?」

ノイッシュ 「シグルド様ぁぁぁぁぁぁっ!」
アレク   「落ち着けよノイッシュ、アーダンが遅れてるぜ」
アーダン  「ふぅ、ふぅ……なあ、俺達が行って役に立てるのかよ?」
ノイッシュ 「何をいうか、大恩ある上司に報いるためにも、今こそ我らの力を見せるとき!」
アレク   「気合入れすぎだろ正直……」
ノイッシュ 「うおぉぉぉ、グリューンリッター、総員突撃ぃぃぃぃぃっ!」
アレク   「はぁ……疲れるね全く」

カイン   「おお、見ろアベル、時代錯誤の騎士団が行くぞ!」
アベル   「むぅ、あれはもしやグリューンリッター……!」
カイン   「知っているのかアベル!?」
アベル   「うむ、聞いたことがある……グランベル総合商社春の大武術大会において、毎年他部署のロート
       リッターと優勝を争う、バランスに優れた剣軍団のことを。シグルド係長を長に置くその軍団は、
       少数精鋭ながらも侮れない実力を持っているという」

ラナ    「おほほほほほ、さあ皆、アローストームで飛竜どもを根こそぎ落としておしまい!」
アンドレイ 「イエス、マム!」
スコピオ  「総員射撃開始ぃーっ!」
ミデェール 「勇者の弓を放て!」
レスター  「キラーボウもだ!」
ディムナ  「鉄の弓も遠慮なく撃ち尽くすんだ!」
ブリギッド 「こんなところでイチイバルなんか使ったら修理費がひどいことになるんだけど……」
ファバル  「大丈夫、今頃パティが火事場泥棒してるから……はぁ、我が妹ながら……」
ラナ    「ほほほほ、見なさいマナ、飛竜がゴミのようだわ!」
マナ    「ああラナ様、お下がりください、こんなところにいては危険です」
ラナ    「馬鹿なことを。わたしがいなくて誰が皆を鼓舞するというの?」
マナ    「ですが、もしもブレスがこちらに向いたら」
ラナ    「おう当ててみよ! 紛い物の竜のブレスが当たるものかよ!」
マナ    (さすがラナオウ様、素晴らしい闘気です……!)
パティ   「ただいまお兄ちゃん。ほーら、今日も大量大量。やっぱ止められないねこの商売」
ファバル  「商売じゃないだろ……」
ブリギッド 「全くこの子は……」
パティ   「何さー。それにしても、聖弓持ってるのに相変わらず目立ってないねお兄ちゃんたち」
ファバル  「あのなパティ」

アンドレイ 「ははは、それにしても面白いように落ちる」
ラナ    「まるでトンボとりでもしているようね!」
アンドレイ (台詞取られたァーッ!)

ファバル  「……あれに勝てると思うか?」
パティ   「ごめん、無理」
ブリギッド 「……一応名家のはずなんだけどね、ウチ……」

カイン   「おお見ろアベル、特攻服の集団から弓の嵐が飛んでいるぞ!」
アベル   「むぅ、あれはもしや罵射気裏通多亞(バイゲリッター)……!」
カイン   「知っているのかアベル!?」
アベル   「うむ、聞いたことがある……ラナオウという女子中学生に率いられた、天下無敵の弓使い暴走族
       のことを。その気迫と騒音は夜の紋章町を席巻する勢いだという。あの聖弓が描かれた旗は、付
       近住民の恐れと蔑みの的なのだそうだ」

フィオーラ 「ああ、ひどい有様だわ……エリウッドさま……!」
フロリーナ 「リン……!」
ファリナ  「クソッ、出遅れたーっ! これじゃ町役場からの契約金減らされちゃうよお姉ちゃん」
ユーノ   「相変わらず商魂たくましいわねファリナちゃんは」
ティト   「でも仕方ないわね、今月も金欠だし……」
シャニー  「ロイ君にいいとこ見せる大チャンス! よーしっ、頑張るぞっ!」
ミネルバ  「兄上、分かっておりますね?」
ミシェイル 「承知しているとも。敗者は勝者に従う。当然のことだ。
       せいぜい、あのエイリークとかいう小娘の手助けをしてやるさ」
パオラ   「いい、カチュア、エスト。呼吸を合わせるのよ、呼吸を」
カチュア  「分かっております。マルス様のためにも、ここはなんとしてでも」
エスト   「ねーねー姉さん、わたし、あっちの方に行ってもいい?」
パオラ   「エスト、あなたはまたそういう勝手なことを」
エスト   「だって、あっちの方にアベルが」
パオラ   「分かりました、そっちはわたしが受け持ちますから二人は予定通りに」
エスト   「あっ、ずるーいっ! 待ってよ姉さん!」
カチュア  「……全然呼吸が合ってない!」
アシュナード「フハハハハ、戦だ戦、心が躍るわ!」
ラジャイオン「……わたしは出来れば竜王家の方に参加したいのだが……」
アシュナード「んー? 聞こえんなぁ? 敗者の言葉など聞く耳持たぬわ!
       黙って飛べ、この腐れトカゲめが!」
ラジャイオン(クソッ、この化け物に竜形態で敗れたばかりに、妹たちには冷たい目で見られるわ親族には
       なめられるわ、婚約者には無視されるわ……わたしはなんて不幸なんだ!)

カイン   「おおアベル、見ろ、飛行兵の集団が飛竜と戦い始めたぞ!」
アベル   「むぅ、あれはもしや飛天連合……!」
カイン   「知っているのかアベル!?」
アベル   「うむ、聞いたことがある。紋章町には空を飛ぶ者たちの間に交わされた盟約が存在するという。
       その規則は戦時の連携から救助活動の役割分担、果ては日常生活における空中移動のエチケット
       まで、細部に及ぶと言われている。まさに鉄血で結ばれた空中要塞なのだという」

グレイル  「ふむ、これは凄いな……」
セネリオ  「アイク……!」
ミスト   「お兄ちゃん……!」
グレイル  「よし、皆、手分けして敵を片付けろ。ボーレ、腕はなまっていないだろうな」
ボーレ   「任せてくれよ団長。豆腐職人として生まれ変わった俺の力を見せてやるぜ!」
グレイル  「では、グレイル工務店員、散会だ!」
ヨファ   「……と、勢いごんで来たはいいものの……ボーレ、本当に大丈夫なの?」
ボーレ   「ふふん、任しとけよ。試しにあの飛竜を落としてやる」
ヨファ   「……えーと、ボーレ、その豆腐がたくさん入った桶は一体……」
ボーレ   「豆腐の角に頭ぶつけて死ねェェェェェェッ!(ブゥン!)」
ヨファ   「何やってんのォーッ!?」

カイン   「おおアベル、見ろ、あの若者が豆腐を投げつけて戦っているぞ!」
アベル   「むぅ、あれはもしや豆腐屋ボーレ……!」
カイン   「知っているのかアベル!?」
アベル   「うむ、聞いたことがある。紋章町の片隅で開業しているという幻の豆腐屋。かつて『柔らかさ』
       を極めたという戦士が開いているその豆腐屋には、他では絶対にお目にかかれない素晴らしい豆
       腐が置かれているという」

ニイメ   「おお、見よ者ども、竜の行進など滅多に見られんぞ」
レイ    「ふふん、なかなか壮観だね」
ソフィーヤ (……ロイ様、ご無事で……)
ペレアス  「早く行きましょうニイメ先生。ミカヤたちが心配です」
ニイメ   「分かっとるわい。さあ皆の衆、我らの手で空を闇色に染めてやろうではないか」

マリク   「まずいな、これは相当怪我人が出ているはずだぞ……」
クロード  「これは酷い……エリス殿、すぐにオームの杖の用意を。シルクは聖なる泉の水を手配して下さい」
エリス   「はい」
シルク   「分かりました!」
マリク   「マルス様はどこだろう……早くこのファイアーエムブレムをお届けせねば」

リリーナ  「ロイ、ヘクトルさん……!」
ボールス  「急ぎましょう」
オージェ  「そうですね、このままでは手遅れになります」
バース   「ウェンディ、腰に力を入れろ。そんなことでは火竜に蹴り飛ばされるぞ」
ウェンディ 「は、はい……!」

ニーナ   「カミュ……!」
シリウス  「わたしはシリウスという者。カミュなど知らぬ……」
ハーディン 「ニィィィィナァァァァッ! やはりまだカミュのことをォォォォ!」
プリシラ  「レイモンド兄様……」
ルセア   「レイモンド様……」
レイヴァン 「……二人とも、そんなに引っ付くな。動けんだろう」

 ~以下省略~

カイン   「おおアベル、見ろ、全部まとめてあれは何だ!?」
アベル   「むぅ……あれはもしや、
       日陰の闇魔法集団、全自動蘇生組合、オスティア重騎士軍、不毛な痴話喧嘩団体etcetc……」
カイン   「知っているのかアベル!?」
アベル   「うむ、聞いたことがある。面倒くさいので説明は省くが」
カイン   「なるほどな。しかしお前は何でも知っているのだなアベルよ」
アベル   「世辞は止せ。全部本の受け売りだ……」

サザ    「ミカヤは俺が守る! (カキーン!)」

カイン   「おおアベル、見ろ、あそこで緑色の青年が火竜にNO DAMAGEで涙目だぞ」
アベル   「むぅ、あれはもしや……」
カイン   「知っているのかアベル!?」
アベル   「……いや、知らん。多分戦闘に巻き込まれたシビリアンだろう。同盟軍色だし」
カイン   「ああ、緑色の青年が空気のように軽々と吹っ飛ばされたぞ!」
アベル   「むぅ、あれはもしや緑風……!」
カイン   「知っているのかアベル!?」
アベル   「……いや、ただなんとなく言ってみただけだ」

 (この時点での便乗ネタ1-488

 ~主人公家~

ヘクトル  「っつーか多すぎだろ援軍!」
ロイ    「どこから集まってきたんだろう皆……」
リン    「我が家の交友関係の広さが窺い知れるわね……」
エリウッド 「空では飛竜たちと飛行兵軍団の乱舞、地では火竜と騎士や傭兵のぶつかり合い……」
リーフ   「これうまく撮影して編集すれば、『紋章大戦争』とかって映画に出来そうだね……」
エイリーク 「凄まじい光景……まるで古の人竜戦役のようですね」
セリカ   「なんだか怖いわ、アルム……」
アルム   「大丈夫だよセリカ、僕がついてる」
セリカ   「アルム……」
アルム   「セリカ……」
シグルド  「……ごめん皆、兄さんもう我慢の限界だよぅ……?(ビキビキィッ)」
エリンシア 「お兄様、お気を静めてください」
アイク   「……しかし、気のせいか一向に敵が減る気配がないな……」
ユンヌ   「気のせいじゃないわ。そして、敵が減らない理由はもうすぐ分かる……!」

 ヒューン……バッサバッサ、ドスン!(ベキベキベキベキッ!)

リーフ   「ぎゃああああああ!(ぷちっ)」
ロイ    「うわぁ、リーフ兄さんが楽しい我が家ごと金色の巨大な竜に押しつぶされちゃったーっ!」
リーフ   「この人でなしーっ!」
エリウッド 「い、家が、家が……っ! ローン、借金、えへ、えへへへへへへ……」
リン    「ちょ、エリウッド、気を確かに!」
ヘクトル  「しっかりしろエリウッド! 姉貴、レストだレスト!」
ユリア(竜)「こんにちは皆様、お騒がせして申し訳ありません」
リーフ   「お騒がせどころの話じゃないよ!」
ユリア(竜)「すみません、急いでいたものですから」
ロイ    「ってこの声……ひょっとして、ユリアさん?」
ユリア(竜)「はい、ごめんなさい……ご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、わたしたちは実は竜に化身できる一族でして」
アイク   「……元の姿が竜なんじゃないのか?」
ユリア(竜)「あ……そうですね。普段人の姿ばかりですから、つい忘れそうになります」
ヘクトル  「んなこたどっちでもいいんだよ……ってーことは、あれか? つまりこの騒ぎはあんたらの身内の仕業ってことか?」
ユリア(竜)「そのことに関しては……ミルラ、説明をお願いします」
ミルラ   「(ユリアの背から降りつつ)はい……」
ロイ    「ミルラちゃんが知ってるんですか?」
ミルラ   「……はい……」
ヘクトル  「おっし、じゃ、説明してもらおうか。何が原因だ、この馬鹿らしい騒ぎはよ」
ミルラ   「……あの……えっと……その……」
リン    「馬鹿、そんな言い方したらこの子が怯えちゃうでしょ」
ユンヌ   「ごめんね、このお兄ちゃん頭空っぽだから」
ヘクトル  「……この野郎……」
ロイ    「まあまあ、抑えて抑えて。ついでに言うと、女の人に『野郎』はないよ兄さん」
シグルド  「うむ、確かに、もう少し女性に対する態度を改めるべきだなヘクトルは」
セリカ   「……なんだか全然説得力を感じないわ」
アルム   「ダメだよセリカ、そんなこと言っちゃ」
エリンシア 「皆さん、ミルラちゃんが頑張って説明しようとしているんですから、静かに聞かなければ」
ユンヌ   「話してくれる?」
ミルラ   「……はい。実は……」

 ~説明省略~

ミルラ   「それで、怒ったイドゥンお姉ちゃんが……」
ヘクトル  「……」
リン    「んー……」
エイリーク 「……にわかには信じがたい話です……」
ユリア(竜)「ミルラがこんな嘘を吐くような子でないことは、わたしが保証します」
ヘクトル  「別に、疑ってる訳じぇねえよ」
リーフ   「ただ、あのエフラム兄さんが……となると、ちょっと信じられないよね」
ロイ    (どっちかと言うと、家に押しつぶされたはずなのにぴんぴんしてる
       リーフ兄さんが信じられないんだけど……)
リン    「まあ、何にしても本人に直接聞けば分かることよね」
ヘクトル  「だな。ったく、相変わらず人騒がせな奴だぜ」
リーフ   (ヘクトル兄さんが言っていいことじゃないと思うけどなあ……)
シグルド  「それで、エフラムはどこに行ったんだったか……」
リーフ   「……あのさ、誰も突っ込まないから黙ってたんだけど」

 気まずげに後ろを指差すリーフ。全員が無言でそちらを見ると、
 ユリア(竜)に無残に押し潰された楽しい我が家の残骸が。

エリウッド 「……ああ、こんな騒乱の中でも、お日様は惜しみなく光を下さるのだなあ」
リン    「現実逃避は駄目よエリウッド」
リーフ   「エフラム兄さんとセリスは二階にいたんだよ!?
       その上にユリアさんが降りてきたんだから、今頃ぺしゃんこに……」
ユリア(竜)「え? でも、人の気配はしませんでしたが……」
ヘクトル  「なんで分かるんだよ?」
ユリア(竜)「それは……」

アベル   「聞いたことがある。竜王家のユリア嬢は、竜に化身する力の他にも、まるで巫女のような不思議
       な力を持っているのだと。彼女の体には卓越した魔法の才が宿っていて、それが様々な奇跡を可
       能にするのだという」
カイン   「……急にどうしたんだアベル?」
アベル   「……分からん。何故か不意に、説明しなければならない気分に襲われたのだ……」

ヘクトル  「……ってーことは、なにか? 二階にエフラムとセリスはいなかったと。そういうことか?」
ユリア(竜)「ええ、もちろんです。セリス様……いえ、人様がいらっしゃるところになど、絶対に降りませんから」
リーフ   (……その割にはさっき僕思いっきり押し潰されたんだけど、多分言わない方がいいんだろうな……)
シグルド  「くっ……二人は一体どこに……!?」
ユンヌ   「……それよりも今は、イドゥンちゃんを静める方法を考えた方がいいんじゃないの?」
リン    「でも、二人が」
ユンヌ   「二人がどこにいるにしても、戦闘竜さえ引っ込めば、危険はなくなるじゃない?」
ロイ    「あ、そうか。確かに、その後で探した方が安全だね」
エイリーク 「……ミルラ」
ミルラ   「は、はい……」
エイリーク 「兄上のあなたに対する暴言をお詫びする資格は、私にはありません。ですが、今だけは禍根を忘
       れてほしい……おそらく、イドゥンさんはあなたの言葉にしか耳を貸さないでしょう。この混乱
       を収められるのは、あなたしかいないのです。どうか、無力なわたしたちに力を貸してください、ミルラ」
ミルラ   「え、あの……わたし……その……」
エイリーク 「(ミルラの肩にそっと手をかけながら)ゆっくり喋っても大丈夫ですよ。落ち着いて、ね?」
ミルラ   「……わたし……皆さんに、謝らなくてはいけないのです……
       わたしがあんなことで泣いてしまったばかりに……こんな、ことに……」
ユリア(竜)「ミルラ……」
ミルラ   「(涙を拭いながら)でも、わたし……頑張りたいです……お姉ちゃんのことも止めたいし、エフ
       ラムにも……もしも、わたしが今までずっとエフラムの邪魔をしていたのなら……ちゃ、ちゃん
       と、謝って、お別れ、言いたいです……」

 堪えきれずに泣き出すミルラを、エイリークが抱きしめる。
 他の面々もそれぞれの顔に労りや励ましの微笑を浮かべて、小さな竜の少女を見つめた。

シグルド  「……よし。では皆でイドゥン嬢のところへ行くとしようか」
ユンヌ   「場所は分かるのよね、ユリアちゃん?」
ユリア(竜)「はい。ですが、イドゥン姉様は見境を失くしておられるので、近づくことは難しいです」
アイク   「つまり、道を作れということか。望むところだ」
ヘクトル  「任しとけよ。竜の百匹や二百匹、軽く吹っ飛ばして……」
ユンヌ   「待って」
リン    「どうしたの?」
ユンヌ   「力ずくで進むよりは確実な方法があるわ」
リーフ   「……まさか、アイク兄さんが誰かを投げ飛ばすとか、そういうのじゃ……」
ユンヌ   「え、そんな馬鹿なことしてたの?」
リーフ   (馬鹿なことって言われた……)
ユンヌ   「もちろん違うわ。もっと確実な方法。でも、そのためにはロイちゃんとマルスちゃんの協力が必要なの」
ロイ    「え、僕?」
ユンヌ   「そうよ。それに、マルスちゃんも」
リン    「……マルスはあっちで闇のオーブ装備して火竜イジメの真っ最中なんだけど……」
ユンヌ   「あらら。相変わらずお茶目ねマルスちゃんたら」
リーフ   「お茶目で済む問題かな……」
ユンヌ   「困ったわね、この作戦には封印の剣と封印の盾が必要不可欠なのよ」
ヘクトル  「封印の盾っつーと、普段はアカネイア高校の校章になってる(>>243)あれか」
ユンヌ   「そう。たまーにマルスちゃんが持ち出したりしてたみたいだけど、今回もそうだったのね」
リン    「……あの馬鹿、後でお仕置き決定ね」
マリク   「マルス様……! あれ?」
ロイ    「あ、マルス兄さんの友達の……」
マリク   「はい、マリクです……マルス様は、こちらにはいらっしゃらないのですか?」
エリンシア 「マルスちゃんは、あちらでおいたの最中ですわ」
マリク   「あ、ああ! しまった、すっかり闇のオーブに心を囚われてしまっている!」
エイリーク (……予想通りですね)
マリク   「困ったな。なにかの役に立つかと思って、残りのオーブとファイアーエムブレムを持ってきたのに……」
リン    「ちょうどよかったわ。マリク君、それ、ちょっと貸してくれる?」

マルス   「ふははははは、来るなら来い火竜どもめ! 今宵のファルシオンは血に飢えているぞーっ!」
リン    「って、しっかり闇のオーブ色に染められてるんじゃないわよ!(スパーン!)」
マルス   「いたぁ!? り、リン姉さん、どうして!? 今の僕には誰も攻撃できないはず……」
リン    「これよ、これ。光のオーブ、借りたのよ」
マルス   「げっ……や、やあリン姉さん。リン姉さんの艶やかな髪は炎によく映えますね」
リン    「見え透いたお世辞言ってる場合じゃないの!
       いい、いろいろ言いたいことはあるけど、ひとまずあんたにも協力してもらうからね」

イドゥン  「……状況は?」
アイン   「……ヨク、ナイ。エフラムトイウオトコモ、ミツカラナイ」
イドゥン  「……あの一家族のために、町中がこれほど大騒ぎするのは予想外だった……
       でも、わたしは退かない。必ず、ミルラを泣かせた男を見つけ出してみせる……」
アイン   「……ウ」
イドゥン  「……? あれはなに? 妙な光に、戦闘竜たちが退けられている……?」

ロイ    「……凄い、あの竜たちがこちらに一歩も近づけないなんて……」
マルス   「うーん、封印の盾にはこんな効果もあったんですねえ」
ユンヌ   「そうよ。封印の盾は竜の気を静める力を持ち、封印の剣は主の思いに応じてその力を変化させる……
       この二つの相乗効果により、わたしたちの周囲に戦闘竜が近寄れない結界を作り出しているのよ」
ヘクトル  「……理屈がさっぱり分からねえ」
エリウッド 「……つまり、封印の剣を使って、封印の盾の力に指向性を与えた訳ですね?」
エイリーク 「なるほど。封印の盾だけでは、この周辺にいる竜全てに悪影響を与えてしまうから」
エリンシア 「対象を戦闘竜だけに絞り、なおかつ私たちの周辺にのみ、結界を張り巡らしているのですね」
ユンヌ   「そういうことよ」
アイク   (……話を聞いてもよく分からんが……)
ヘクトル  (……黙っといた方が良さそうだな)
リン    「……何でも出来るのね、ユンヌさんって」
ユンヌ   「ふふん、これでも一応混沌の女神ですからね」
リーフ   (言動は馬鹿っぽいのになあ……)
ユンヌ   「……」

 ニア そうび

   緑風バリアー    --
 ニア ブラザーアーチⅡ改  8

リーフ   「って、ちょ、ユンヌさん何を……ぎゃあああああああぁぁぁぁぁ~~……」
ロイ    「何やってるのユンヌさん!?」
リン    「ああ、リーフが結界の外に集まってた戦闘竜の群に飲み込まれて……!」
ユンヌ   「なんかね、リーフちゃん、折角の機会だから自分を鍛え直したかったんだって」
アイク   「ほう。見直したぞリーフ」
ヘクトル  「やるなあいつも。見ろよ、なかなかいい身のこなしだぜ」
ロイ    「いや、どう見ても必死に逃げ回っているようにしか見えないんだけど……」
ユンヌ   「(ま、しばらくそこで反省するのねリーフちゃん……)
       さ、そんなことやってる内に、困ったちゃんが見えてきたみたいよ」
ミルラ   「……イドゥンお姉ちゃん……!」

 ~紋章町上空~

ユリア(竜)「……皆さんがイドゥン姉様の下に辿りついたようです……」
ユリウス(竜)「はあ。ようやくこの馬鹿騒ぎも終わりか……」
ユリア(竜)「まだ気は抜けませんよお兄様。エフラムさんも未だに見つからないですし……」
クルトナーガ(竜)「暴走してた戦闘竜は大体片付いたみたいだよ、ユリア」
ユリア(竜)「クルトお兄様。アムリタお姉様は……」
クルトナーガ(竜)「……セネリオのところに置いてきたよ。あっちは嫌がってたけど……」
ユリウス(竜)「……相変わらず迷惑な人だな……」
クルトナーガ(竜)「ニルスやニニアンも、町の人たちを守りながら戦闘竜を倒してるみたいだ」
ファ(竜) 「ユリアお姉ちゃん!」
チキ(竜) 「お姉ちゃま、戦闘竜さんたち、なんだか大人しくなってるみたい」
ユリア(竜)「……そうですか。それでは、化身を解いて地に降りましょう、皆さん。
       まだ気になることはありますが、今はひとまず……」
ユリウス(竜)「泣き虫な妹の成長を見守ってやる、か」

 ~竜王家~

ヤアン   「……む。どうやら騒ぎが収束に向かっているようだな」
ムルヴァ  「皆は無事だろうか」
ヤアン   「ふん、案ずることはなかろうよ。この程度の些事で傷を負うほど、我ら竜族の力は落ちてはいない」
ムルヴァ  「……」
ヤアン   「……とは言え、兄者とて娘の成長は見たかろう?」
ムルヴァ  「……どういう意味だ?」
ヤアン   「現場に分家のソフィーヤがいるようでな……我が分身を介して、この水晶玉に映像を繋いでもらう」
ムルヴァ  「……覗きとは、趣味が悪いのではないか?」
ヤアン   「妙な言い方をしないでもらおう。ほれ、昔テレビで放映していただろうが。
       『初めてのお使い』とかいう。ああいった感覚で楽しめばよいのだ」
ムルヴァ  「……その番組、見ていたのか、ひょっとして?」
ヤアン   「昔、チキの名前で応募したのだが、選考に漏れてしまってな……残念だ。
       まあともかく、黙って見ているがいい。可愛い娘の成長振りを、な」

アイン   「……キタ」
イドゥン  「……あなたたちは、何故邪魔をするのです。わたしは正しいことをしようとしているというのに」
ヘクトル  「おいおい、この馬鹿騒ぎのどこが『正しいこと』だってんだよ」
イドゥン  「……大切な妹が、誰かに泣かされて帰ってきた……
       姉であるわたしが厳重に抗議を行い、謝罪を求めるのは当然のこと……」
マルス   「それにしたってこの騒ぎはやりすぎでしょう」
イドゥン  「何故ですか。家族のために全力を尽くす……それは、『人』も『竜』も変わりないはず。
       あなたたちとて、自分の兄弟が傷つけられれば怒りを覚えずにはいられないでしょうに」
アイク   「……否定はせん」
アルム   「でも、このやり方はいくらなんでも度が過ぎてますよ」
セリカ   「もう少し、穏便に済ませる方法もあったんじゃないですか」
イドゥン  「分かりません。わたしはあまり物を知らない……わたしに出来ることは、
       ミルラを泣かせた相手を全力であの子の前に引きずり出し、這い蹲らせることだけ……」
ヘクトル  (うおっ……スゲェ気迫だな)
リン    (口調が淡々としてる割に言ってることが凄い過激だし……相当怒ってるわね、これは)
シグルド  (ロイよ……お前の話では、もっと穏やかな女性だったのではないかね、この人は?)
ロイ    (いや、いつもは凄く大人しい人だよ……静かすぎるぐらい。
       多分、表現が下手なだけで感情の波は激しいんじゃないかな)
ユンヌ   「あちゃー、まずいわね。イドゥンちゃんの怒りに呼応して、
       周囲の戦闘竜の力も上がってきてるみたい」
マルス   「うわっ、本当だ。なんか結界が今にも破られそう」
ロイ    「ユンヌさん、なんとかならないの!?」
ユンヌ   「うーん、封印の盾の力をもっと解放すればなんとかなるんだろうけど……」
ロイ    「けど?」
ユンヌ   「そうすると、この周辺一帯の竜が全部消し飛ぶ可能性が」
マルス   「……いざとなればそれも止む無しで」
リン    「マールースーッ!」
マルス   「うわっ、ちょ、お仕置きするにしても状況を考えてくださいよリン姉さんあいだだだだだっ!」
アイク   「……! いかん、結界が破れるぞ……!」
シグルド  「まずい、皆、応戦の準備を……!」
ミルラ   「待ってください!」
イドゥン  「!! ミルラ、どうしてここに……」
ミルラ   「イドゥンお姉ちゃん、もう止めてください。こんなの、よくないです」
イドゥン  「ミルラ……でも」
ミルラ   「お姉ちゃんが心配してくれるの、とても嬉しいです。ありがとうございます。
       でも、こういうのは駄目です。本当は、わたしが自分で頑張らなくちゃいけないことだったんです。
       何もせずに泣くだけじゃなくて、怖くてもちゃんとエフラムと話すべきだったんです」
イドゥン  「……」
ミルラ   「……わたしのために頑張ってくれたのに、ごめんなさい、イドゥンお姉ちゃん。
       でも、もう大丈夫です。わたし、自分で頑張りますから……
       だから、いつもの優しいお姉ちゃんに戻ってください」
イドゥン  「……」
エリンシア 「これは……」
エイリーク 「竜たちが、静かになっていく……」
イドゥン  「……アイン」
アイン   「……ギョイ」

 アインが頷くと同時に、紋章町全域に散らばっていた戦闘竜たちが、瞬時に地面を這う「影」に姿を変えた。
 その影たちは一斉に地面を這ってイドゥン自身の影に集合し、飲み込まれる。
 アインもまた、影に姿を変えてイドゥンの影に潜り込んだ。

ロイ    「……凄い」
ヘクトル  「あのデカい竜全部、本当にこの細い女の中に入ってたんだな……」
シグルド  「まさに人体の神秘……」
ロイ    「いや、それは微妙に違うと思うけど……」
エリンシア 「……何も、聞こえなくなりましたわね」
エイリーク 「はい。ようやく、今回の騒乱も終焉を迎えたようです」
イドゥン  「……」
ミルラ   「……お姉ちゃん」
イドゥン  「……わたしは、また何か間違えてしまったのかしら……」

マルス   「いや全くその通ぶげぇ」
リン    「ちょっとは雰囲気読みなさい」
マルス   「やだなあ、ちょっとした冗談ですよ、冗談」

ミルラ   「そんなことないです、全部わたしのために……」
ユリア   「そうですよ、イドゥン姉様は、間違ったことなど何一つしておりませんわ」
クルトナーガ「それに、幸い死人は出ていないようだし」
ユリウス  「それが一番信じられないな……」
マルス   「おや、竜王さん家の皆さんがお揃いで」
チキ    「マルスのお兄ちゃん!(抱きつき)」
ファ    「ロイのお兄ちゃん!(抱きつき)」
マルス   「おっと。はは、久しぶりだねチキ」
ロイ    「ファも、相変わらず元気そうだね」
ニルス   「……(キョロキョロ)」
エリウッド 「ニルスじゃないか。どうしたんだい、こんなところで」
ニルス   「あ、エリウッドさま。あの、ニニアン来てない?」
エリウッド 「え? いや、見かけてないけど……どうして?」
ニルス   「そっかー……うーん、おかしいなあ」
エリウッド 「……というか、君たちはどうしてこんなところに……」
ニルス   (あ、いけない、エリウッドさまは僕たちが竜族だってこと知らないんだっけ。ばれちゃったかな)
エリウッド 「……ひょっとして、ニニアンもこの騒ぎに巻き込まれたのかい!?」
ニルス   「あー、うん。まあ、そんなとこかな」
エリウッド 「大変だ……あんなか弱い女性がこんな騒ぎに巻き込まれて、怪我でもしたら……!」
ニルス   「いや、その心配は絶対ないと思うよ……ああ見えてすっごくたくましいからさ、ニニアンは」
エリウッド 「なんだって?」
ニルス   「そうだなー、ニニアンのたくましさはさ、具体的に言えば、火竜なんか目じゃないぐらいなんだよ」
エリウッド 「ニルス、こんなときにそんな冗談を……ニニアンが心配じゃないのかい?」
ニルス   (『うん、全然』……なんて、この状況じゃ言えないよなあ)
ユリウス  (……なんでウチの一族はこの一家にやたらと縁があるんだ……。
       クソッ、セリスめ、ユリアは絶対お前には渡さないからな!)
シグルド  「まあ、何にせよめでたしめでたしだな。後はいなくなったエフラムとセリスを探して、
       エフラムから事情を聞き出すだけだ」
ミルラ   「エフラム……」
イドゥン  「……皆さん」
ロイ    「ちょ、イドゥンさん!?」
マルス   (土下座だ……!)
リン    (マルスも真っ青の見事な土下座だわ……!)
ユリア   「お、お姉様、何もそこまで」
イドゥン  「いいえ。わたしは皆さんにご迷惑をおかけしたようです。謝罪するのは当然のこと……」
ヘクトル  (なんつーか、凄く今更に聞こえるのは気のせいか?)
マルス   (これだけのことしでかしておいて、ねえ)
リン    (すごくずれた人よね、何ていうか……)
アイク   「……別に、謝ってもらう必要はない」
ミルラ   「そうです、お姉ちゃんはわたしのために……謝らなくてはならないのは、わたしです」
イドゥン  「でも……」
アイク   「謝るよりも、まずするべきことがあるだろう」
イドゥン  「するべきこと?」
アイク   「街がひどい状態になっているからな。瓦礫の除去に建物の再建。やるべきことはまだまだある」
イドゥン  「……確かに、お詫びするならそれが一番……わたし一人の力でどれだけかかるかは分かりませんが」
ユリア   「いえ、今回のことは竜王家全体の責任でしょうから」
ユリウス  「え、僕らも手伝うの?」
ユリア   「……お嫌なのですか?」
ユリウス  「ははは、まさかね。大事な姉上のためならたとえ日の中水の中ですよチクショウ」
マルス   「んー、というか、街の再建ならもっといい方法がありますよ」
リン    「なによ。また変なこと言い出すんじゃないでしょうね」
マルス   「いやいや。多分、皆さんに満足していただけると思いますよ、これなら」

アイク   「……なるほど、考えたなマルス」
ヘクトル  「戦闘竜総動員で後片付けか。これなら重機もいらねえし、金もそんなにはかからねえだろうな」
エイリーク 「先程まで町を破壊していた竜が、今度は人と共に復興作業に従事する……不思議な光景です」
ロイ    (……どちらかと言うと『シュール』って言った方がいい気がするけど)
マルス   (まあ、細かいことは気にしない)
シグルド  「しかし、街の再建が早く終わるとしても、問題は心の方だな」
エリンシア 「そうですね。今回の事件で、竜王家の方々に対する風当たりが強くならなければいいのですが」
ユンヌ   「あー、それは、大丈夫なんじゃない?」
ロイ    「なんか、自信満々だねユンヌさん」
ユンヌ   「そりゃそうよ。だって、いつも謎の黒鎧やら変形大剣回転男やら黒竜に乗った人外やらが
       好き勝手に暴れまわってる街だもの。こんなの日常風景の一つに過ぎないわ。
       多分皆、ニ三日もすればすっかり忘れて元通りの生活に戻ってるはずよ」
ロイ    (確かにその通りだ……と納得できるのが凄く嫌だなあ)
ユンヌ   「大体、街を半壊させたぐらいで責められてちゃ、この町じゃ暮らしていけないわよ。
       痴話喧嘩のたびにフォルセティの余波による突風にハリケーン、
       ファラフレイムによる気温の異常上昇と干ばつが起きるのよ?
       なし崩し的に普通の人たちも刃物やら魔法やら遠慮せずに振り回しまくりの飛ばしまくりなんだから、
       誰か一人を責め始めたら町の全人口の九割ぐらいが問答無用で刑務所送りになるはずよ」
リン    「……そういう言い方すると完全な無法地帯よね、ここって」
ユンヌ   「似たようなものよ」
ロイ    「そんなアッサリ!」
ユンヌ   「さ、そんなことよりも、早くエフラム君とセリスちゃんを探しましょうよ」
ヘクトル  「そういやそうだったな。ま、あいつらもすぐに出てくるだろうけどよ」
ミルラ   「……」
エイリーク 「大丈夫ですよ、ミルラ。兄上が何を考えているのかは分かりませんが、話せば分かることもあるでしょうから」
ミルラ   「……はい。わたし、今度こそ頑張ります……!」
ロイ    (……と言うか、誰も戦闘竜の群の中でぺちゃんこになっているであろうリーフ兄さんのことは気にしないんだなあ……
       『リーフなら大丈夫だろ』とか思ってるんだろうけど、薄情というべきか信頼されているというべきか……)
シグルド  「よし、では皆、手分けしてエフラムとセリスを探して……」

???   「その必要はない」

ヘクトル  「!?」
リン    「瓦礫の上に誰か……あ、あのシルエットはまさか!」
ミルラ   「エフラム……!」

ロイ    「……エフラム兄さん、ひょっとしてずっとあの瓦礫の影で登場のタイミングを窺ってたのかなあ」
マルス   「そういう無粋な突っ込みは控えるべきだよ、ロイ」

エフラム  「久しぶりだな、皆」
リン    「……いや、今朝会ったばっかりなんだけど」
セリス   「ああ良かった皆、無事だったんだね」
ヘクトル  「セリス! お前、今まで一体どこに……」
セリス   「二階にエフラム兄さんを呼びに行ったら、『ここは危ないから避難していよう。
       皆も逃げたみたいだしな』って言われたから……あれ、皆も逃げてたんじゃないの?」
アイク   「いや、戦闘竜の群と戦っていたぞ」
ロイ    「そう。それで今ようやく片がついたところで」
イドゥン  「エフラム……! ミルラを泣かせた男……!」
ユリア   「いけませんわイドゥン姉様。さ、ミルラ、エフラムさんとお話なさい」
ミルラ   「……エフラム」
エフラム  「……ミルラか」
ミルラ   「……エフラム……あの、わたし……」
エフラム  「すまなかったな、ひどいことを言って」
ミルラ   「え……」
エフラム  「だが許してほしい。あれもお前のためと思ってやったことだったんだ」
ロイ    「……どういうこと?」
エフラム  「ミルラは子供だ。そして、子供というのは力を持たない無防備な存在だ」
エイリーク 「……それは、そうですね」
ロイ    (竜に変身できる子供を無防備とは言わないんじゃないかなあ……)
エフラム  「にも関わらず、近年子供を狙った卑劣な犯罪が後を絶たない。
       その数は増える一方だ。つまり、この国の男は総じてロリコン化しつつある!」
リン    「ちょ、それはいくらなんでも結論が性急すぎるわよ!」
マルス   「そうだよ、世の中にはリン姉さんみたいなのが好きな熟女マニアも多数
       いたいいたいリン姉さん肘で頭をグリグリするのは勘弁!」
リン    「やかましい! 空気読みなさい!」
エフラム  「そこで俺は考えた。子供をロリコンの魔の手から守るためにはどうすればいいか。
       残念ながら、正常な大人が常に子供を守ってやることは物理的に不可能だ」
ロイ    「そりゃまあそうだろうね」
ヘクトル  「っつーか、常時子供に付きまとってる大人がいたらそっちの方がやべえだろ」
エフラム  「よって、子供達は自分で自分を守る意識を持たなければならない。その意識を育てるためには、
       まず『大人は怖い』という認識を植えつけることが必要不可欠!」
エイリーク 「……それで、ミルラにあんなひどいことを?」
エフラム  「その通りだ!」
ロイ    「理屈が無茶苦茶すぎるよ!」
シグルド  「そうだな、確かに妙な嗜好を持つ大人が増えているのは事実だが」
エリンシア 「いくらなんでも、やり方がおかしいと思うわ、エフラムちゃん」
セリス   「うん、僕もそう言ったんだけど、兄さん聞いてくれなくて」
ヘクトル  「おいエフラム、お前なんか変なものでも食ったんじゃねえのか?」
アルム   「そうでなければ誰かに操られているとか」
セリカ   「正気に戻ってエフラム兄さん!」
エフラム  「黙れ! 大体お前らは子供を甘やかしすぎる。そんなだからあまりに素直すぎて悪い大人に騙さ
       れる子供が増えるんだ。もっと子供の将来を真剣に考えろ、このロリコンどもめ!」
マルス   「……ん?」
セリス   「……あれ?」
ロイ    「……なんか、さっきの台詞どっかで聞いたような……」
ユンヌ   「ついに正体を現したわね!」
ロイ    「うわ、ユンヌさん。どうしたの急に。っていうか、今までどこに……」
ユンヌ   「ごめんねロイちゃん、真の敵の姿を明らかにするために、準備していたのよ」
ロイ    「真の敵……ってことは」
リン    「この人、エフラム兄さんじゃないの?」
ユンヌ   「いいえ、間違いなくエフラム本人よ。ただ、正気ではないけどね」
ロイ    「うん、それは見れば分かるよ」
ユンヌ   「エフラムは操られているのよ」
エフラム  「何を言っている。俺は正気だ。子供の未来を守るために行動している」
ユンヌ   「ええ、あなた自身はそう思っているでしょうね。でも本当は違うわ。
       あなたは、その弱者を守りたいという純粋な思いにつけ込まれて、
       知らず知らずの内に思考の道筋を狂わされているの」
エフラム  「一体何を……」
ユンヌ   「さあ、正体を現しなさい!」

 ユンヌが持っていた杖をかざした瞬間、エフラムの体を眩い光が包み込んだ。

エフラム  「ぐうううぅぅぅぅ!?」
マルス   「効いてる。凄い苦しみ様だね」
ロイ    「ユンヌさん、その杖は一体……!?」
ユンヌ   「レストの杖よ」
リン    「状態異常の範疇に入るんだあれ」
ロイ    「いくら何でも地味すぎない!?」
ユンヌ   「仕方ないじゃない、FEにはラーの鏡みたいなアイテムが存在しないんだから」
ロイ    「いや、せめて光のオーブとかその辺……」
エフラム  「ぐ……(バタッ)」
リン    「見て皆、倒れたエフラムの体から、何か黒いものが……!」
一つ目怪物 「ぐぅ……おのれ、このロリコンどもめ……」
ファ    「あーっ!」
チキ    「あれは!」
ミルラ   「まさか……!」
セリス   「間違いない!」
四人    「ベアードモンスターッ!」
リン    「……なに、そのベアードモンスターって」
ファ    「えーっ、リンのお姉ちゃん知らないのーっ!?」
チキ    「おっくれってるーっ!」
ミルラ   「……ベアードモンスターはミカリンの敵で、凄く悪い怪物なんです……」
セリス   「ロリコンを撲滅しようとしてるんだよ!」
リン    「……いいことなんじゃないの、それって」
セリス   「違うよ、人種差別は悪いことなんだから!」
リン    「え、でも」
マルス   「止めなよセリス、リン姉さんの年でヤングの話題についていくのはキツイテテテテテテ!」
リン    「……あんた、いっぺん死んでみる?」
マルス   「ちょ、おれ、このまんまじゃ折れちゃいますってリン姉さん!」
ユンヌ   「ふふん、とうとう姿を現したわねバックベア……じゃなくってベアードモンスターッ!」
一つ目怪物 「ユンヌ神よ、何故分かってくださらないのだ、私はアスタテューヌ神をお守りするために……」
ユンヌ   「お黙んなさい!」
ロイ    「え、ユンヌさん、あの怪物と知り合いなの?」
ユンヌ   「バッ……じゃなくて、ベアードモンスターは元々アスタテューヌ教の守護神。
       女神アスタテューヌを守護する存在なのよ」
シグルド  「なんと! では、あれも神だというのか!」
マルス   「うーん、それにしては、あの黒いアークオープスみたいな外見は禍々しすぎるような」
エイリーク 「ひょっとして、醜い姿に作ったアスタテューヌを恨んで、神々への復讐を誓ったとか……」
ユンヌ   「いいえ、確かに彼は私たちの列からは離反したけど、別に自分の姿が嫌だった訳ではないわ」
ロイ    「じゃ、どうして……」
ユンヌ   「何ていうか、経営方針の違いというか……まあいいわ、その辺は後で説明してあげる。
       とにかく、今はあいつを倒さないと。という訳で、出番よミカリン!」
ミカヤ   「……え、どうしたのユンヌ、急に鳥の形態に戻って」
ユンヌ   「何言ってるの。ベアードモンスターが現れたんだから、魔女っ子ミカリンが撃退しなくちゃ」
ミカヤ   「えぇ!?」
セリス   「そうだよミカヤ姉さん、今こそミカリンに変身して敵を倒すときだよ!」
ミカヤ   「いやあのねセリス、あれはアニメで」
セリス   「大丈夫だよ、僕、皆にミカリンの正体は秘密にしておくから!」
ファ    「お願いミカリン!」
チキ    「わたし達の町を守ってミカリン!」
ミルラ   「……エフラムを助けてあげてください、ミカリン……!」
四人    (キラキラキラキラ……!)
ミカヤ   「ああ、止めて、そんな目で見ないで子供達! 純粋な期待の視線が私の体に突き刺さる!」
ユンヌ   「さあミカリン、変身するのよ!」
ミカヤ   「いや、だからユンヌ、わたしは本当に……」
ユンヌ   「大丈夫よ、変身の呪文はさっきミカヤの頭の中に植えつけといたから!」
ミカヤ   「人の体に何してるのあなた!?」
セリカ   (……やっぱり邪神だわ……!)
アルム   「駄目だよセリカ、落ち着いて!」
ユンヌ   「ともかく、早く変身して戦うのよミカリン!」
ミカヤ   「ううう……でもほらわたし虚弱だし、あんな化け物と戦うのは体力的に……」
ユンヌ   「大丈夫、変身後のコスチュームに神の加護かけといたから! 体力UPもバッチリよ!」
ミカヤ   「そんなお気軽に使っていいの女神の加護!?」
ロイ    「相変わらずやりたい放題だねユンヌさん……」
一つ目怪物 「ぐははは、どうしたロリコンどもめ、来ないのならこちらからいくぞ!」
ミカヤ   「ううう……で、でも……あ、この呪文相当長いし、唱えてる間に攻撃されちゃうかも」
サザ    「ミカヤは俺が守る!」
ミカヤ   「サザ!?」
一つ目怪物 「ぬぅ、なんだこの緑色の奴は! ええい、ちょこまかと鬱陶しい……!」
カイン   「おお見ろアベル、先程のシビリアンが一つ目の怪物相手に大立ち回りだぞ!」
アベル   「むぅ、あれはもしや……!」
カイン   「知っているのかアベル!?」
アベル   「……いや、やはり知らん。要するに凄く動きが速いシビリアンなのだろう」
サザ    「どうした化け物、一発も当たってないぞ! 今度はこっちから(カキーン!)」
一つ目怪物 「馬鹿め、NO DAMAGEだぞこのロリコンめ!」
サザ    「クッ……だが、せめて避け続けて時間稼ぎだけでも……!」
ロイ    「凄いよサザさん、いつもの三倍以上のスピードだ!」
ミカヤ   (サザ……なんでこんなときだけ普通に役に立つのあなたは……!)
ユンヌ   「さあ、グリーン・ウインドが時間稼ぎをしている間に変身よミカリン!」
四人    「ミカリン!」
ミカヤ   「うううううう……ええい、もうどうにでもなれ!
       『キュートキューティキューティクル! とってもプリティな魔法の呪文で、
        ちょっぴり大人の魔法少女にな~あれ!』これでいいの!?」

 ボワン! と煙が弾けた先には、見覚えのあるコスチュームに着替えたミカヤの姿が!

ファ    「うわぁ!」
チキ    「すごぉーい!」
マルス   「うわぁ……」
ロイ    「すごぉーい……」
ミカリン  「うううぅぅぅ……背中に突き刺さる視線が痛い……!」
ユンヌ   「やったわミカリン、ピンク色を基調としたフリフリのドレスがとっても似合ってるわ!
       凄く似合ってるわよピンク色を基調としたフリフリのドレス!」
ミカリン  「なんで二回も言うのよ!」
ミルラ   「……でも仲間がいないです……」
セリス   「あ、本当だ!」
ファ    「ねーねーミカリンミカリン」
チキ    「魔法の人妻マジカルエスリーナと、魔法のロリッ子サナサナはー?」
ユンヌ   「サナサナは油をぶっかけられて不参加、マジカルエスリーナは育児休暇を取ってるの」
ロイ    「相変わらず嫌な設定……」
一つ目怪物 「ええい、鬱陶しいわこの緑が!」
サザ    「ぐはぁ!」
ロイ    「ああ、健闘空しくサザさんが吹っ飛ばされて宙を舞ったぁ!」
サザ    「み、ミカヤは俺が……ぐふっ」
ロイ    (……あれ、そう言えばリーフ兄さんはどうしたんだろ。やっぱ死んだのかな)
一つ目怪物 「む……貴様、何者だ!?」
ユンヌ   「ふふん、あなたの悪行もここまでよバック……じゃなくてベアードモンスター!」
ミカリン  「どうでもいいからさっさと終わらせましょうよ……」
ファ    「ぶーっ! 違うよーっ!」
チキ    「ミカリンいつものアレやってーっ!」
ミカリン  「え、アレって……?」
ミルラ   「……『魔女っ子ミカリンがいる限り、この世に悪は栄えないわ!』です……」
セリス   「決め台詞だよミカリン!」
ミカリン  「……フッ……魔女っ子ミカリンがいる限り、この世に悪は栄えないわ!」
ロイ    「ああ、姉さんが涙を流している……もうヤケクソだね」
マルス   「そりゃそうだ、死ぬほど恥ずかしいもんあれ。よし、今の内に写真を撮っておこう」
リン    「止めなさいっての」
一つ目怪物 「ぬぅ……そうか、あなたの入れ知恵かユンヌ神!」
ユンヌ   「もっちろん。さ、逃げるなら今のうちよバッ……じゃなくてベアードモンスター!」
ファ    「そうだそうだーっ!」
チキ    「やっつけちゃえミカリン!」
一つ目怪物 「おのれーっ! 純粋な子供達に間違った教育を施しおって、絶対に許さんぞこのロリコンどもめ!」
アイク   「……! 大気が震えている……!」
ヘクトル  「あんなナリでも本当に神様らしいな……! すげえ気迫だぜ!」
リン    「確かに、見かけはすごく馬鹿らしいけど……!」
エイリーク 「凄まじい戦いになりそうです……!」
ミカリン  「クッ……!」
ユンヌ   「大丈夫よミカリン、混沌の女神の力を信じれば必ず勝てるわ!」
ミカリン  「ええ勝ちますとも、こんな格好のまま死んでたまるもんですか!」

一つ目怪物 「……」
ミカリン  「……」
一つ目怪物 「……!」
ミカリン  「……!」
アイク   「……動く……!」

 どちらが勝ってもおかしくないこの勝負。その場の全員が固唾を呑んで事の推移を見守っていた、そのとき。

一つ目怪物 「……!? ぐ、ぐおぉぉぉぉぉぉぉお!?」
ミカリン  「えっ……ど、どうしたの!?」
リン    「ああ、見て! あの怪物の体から剣の切っ先が突き出てるわ!」
アイク   「誰かが後ろから刺したということか」
リン    「でも、一体誰が……」
エイリーク 「待ってください、あの剣身の形には見覚えがあります」
ロイ    「……あれは、ひょっとしてブラギの剣!? ということは、まさか」
リーフ   「その通り、僕さ!」
ロイ    「リーフ兄さん! 一体どうして!?」
リーフ   「遠くから見てたらなんか決戦が始まりそうな気配だったから、
       急いで家の跡に戻ってブラギの剣を取ってきたんだ!」
ロイ    「いや、そうじゃなくて……戦闘竜の群に踏み潰されて、死んじゃったのかと」

リーフ   「そう簡単に死ぬもんか、こんなネタスレでさ!」

リン    (……なんか……)
ロイ    (凄い説得力ーっ!?)
一つ目怪物 「ぐぅおおおおお……お、おのれ、ロリコンどもめ……!」
ユンヌ   「ふふん、あなたの負けねバック……じゃなくてベアードモンスター!」
ミカリン  「え、もう勝負ついちゃったの」
ユンヌ   「さあ、大人しく退散しなさい!」
一つ目怪物 「おのれーっ! 見ておれよ、必ずやこの世界から性犯罪者どもを撲滅してくれるわ、このロリコンどもめ!」

ロイ    「……行っちゃったね、ベアードモンスター」
リン    「……そうね。行っちゃったわね」
アイク   「……なんだかよく分からんが……」
ヘクトル  「これで、今回の騒ぎも終わり……か?」
リーフ   「イヤッホーッウ! ねえ皆、見た、見てくれた!? 僕が敵のボスをやっつけたよ!
       アイク兄さんでもヘクトル兄さんでもエフラム兄さんでもなく、この僕が!」
ファ    「……」
チキ    「……」
ミルラ   「……」
セリス   「……」
リーフ   「あ、あれ、なんか皆の視線が冷たい……?」
ファ    「つまんなーい!」
チキ    「ミカリンの活躍が見たかったのにぃーっ!」
ミルラ   「……台無しです……」
セリス   「……こういうの、よくないと思うな……」
リーフ   「そ、そんな、普段は優しいセリスまで!? 悪者を退治したんだから誰か褒めてくれても……」
ミカリン  「そうね、あなたはよくやったわリーフ」
リーフ   「ああ、ミカヤ姉さんだけは褒めて……」
ミカリン  「でも、せめてもう少しだけ早くしてほしかったなあ……わたしがこんなになる前に」
リーフ   「何言ってんの姉さん……ってうわぁ、その変な格好なにミカヤ姉さん?
       正直見てて痛々しいんだけど。駄目だよ、いくら外見が若いからって、少しは自分の年考えなくちゃ」
ミカリン  「……うわぁぁぁぁぁぁぁん!」
リーフ   「あ、行っちゃった……変なミカヤ姉さん」
ユンヌ   「……リーフちゃんってときどき凄く残酷よね」

カイン   「何となく白けてしまったなアベル」
アベル   「うむ、そうだな。町の復興作業に戻るとしようか」
ラナ    「あ、セリス様、私と一緒に材木運びを」
グレイル  「よし、それではグレイル工務店員は総出で町の復興作業に当たるように」
ボーレ   「腹減ってる奴がいたら豆腐やるぜー!」
ヨファ   「ボーレ、それさっき投げつけてたやつじゃ……」
エリウッド 「ああ、ニニアンが心配だ。探しにいこうニルス」
ニルス   「別に心配じゃないけど、そうだね、行こうよエリウッドさま」
イドゥン  「……それでは、わたしは戦闘竜を指揮して町を復興させましょう」
ファ    「ファも手伝うーっ!」
チキ    「わたしもーっ!」
ミルラ   「……エフラム……」
エイリーク 「……大丈夫です、気を失っているだけのようですから」
ミルラ   「……良かったです」
エイリーク 「兄上は、心の底からあなたのことを想っていたのですね」
ミルラ   「え」
エイリーク 「そうでなければ、あのような怪物に心を乗っ取られることなどなかったはずですから」
ミルラ   「……そうでしょうか」
エイリーク 「そうですよ、きっと」
シグルド  「まあ、何にしてもめでたいことだな」
セリカ   「あ……(ふらっ)」
アルム   「大丈夫、セリカ?」
セリカ   「ご、ごめんなさいアルム、急に力が抜けて」
アルム   「それだけ緊張してたんだよ。さ、あっちでしばらく休もう」
セリカ   「アルム……」
アルム   「セリカ……」
シグルド  「……さて、めでたいついでにちょっと運動しようかな」
エリンシア 「自重なさってくださいシグルドお兄様。さ、お家を立て直しませんと」
シグルド  「うううぅぅぅ……兄さん絶対認めないからなぁーっ!」

リーフ   「……な、なんだよ皆して! 僕が活躍するのがそんなにいけないの!?」
リン    「そんなことないわよリーフ」
アイク   「ああ。お前はよくやった」
リーフ   「ほ、本当?」
ヘクトル  「ああ。すげー卑怯くさかったけどな」
アイク   「今回のことで、人間としてのレベルが少し上がったようだな」
リーフ   「そ、そうかな?」
アイク   「ああ。見ろ」

 ニア そうび

 ニア ラグネル     --
   ブラザーアーチⅢ 50
   ブラザーアーチ   0
   シスターアーチ   0

リーフ   「ⅡからⅢになって耐久値上がってるぅーっ!?」
アイク   「威力と射程も延びたぞ。よかったなリーフ」
リーフ   「ちっともよくないよ! って言うか、これ人間としてのレベルじゃないよね明らかに!?」
ナンナ   「リーフ様!」
ミランダ  「リーフ!」
サラ    「……リーフ」
リーフ   「あれ、どうしたの皆」
ナンナ   「リーフ様、どこか、お怪我は」
ミランダ  「リーフのことだからまた酷い目に遭ってるんじゃないかとしんぱ……じゃなくて!
       ち、違うわよ、わたしはただそんなあなたを笑いに来ただけなんだから!」
サラ    「(ビビビッ!)……受信したわ。リーフ、戦闘竜の群にもみくちゃにされたのね」
ナンナ   「まあリーフ様、相変わらずなんて運のない」
ミランダ  「情けないわね。ドラゴンキラー持てば竜の一匹や二匹何とかなるでしょ」
サラ    「……それでも何とかならないのがはっぱクオリティ……」
リーフ   「……ああそうさ、どうせ僕は何の活躍もできないはっぱ君さ!
       竜に踏み潰されて『この人でなしーっ!』って言ってるのが似合ってるんだ!」
ナンナ   「まあリーフ様……そんな風に仰らないでください。リーフ様にだっていいところはたくさんありますよ」
ミランダ  「そうね、たとえば……たとえば……あー、とにかく、いいところはたくさんあるわよ」
サラ    (……いじけてるリーフ、とっても可愛い……)
リーフ   「ちくしょおおおおぉぉぉぉぉっ!」
サラ    (……うっとり……)

エリウッド 「ああ、ニニアンは一体どこに……」
ニルス   「……あ、エリウッドさま、あれ」
エリウッド 「どうしたんだいニルス……あ、あんなところに見慣れない氷竜が!?」
ニルス   「……あー、とりあえず、行ってみない?」
エリウッド 「そうだね、ニニアンがあの竜に襲われていたら大変だ!」
ニルス   (……そういう意味じゃないんだけど)
ニニアン(竜)(……! エリウッドさま……!)
エリウッド 「クッ、なんて巨大な……! しかし、この竜が何だろうとニニアンに手を出させる訳には……!」
ニニアン(竜)「……待ってください、エリウッドさま……」
エリウッド 「そ、その声はニニアン!? まさか、この竜はニニアンなのか……!?」
ニニアン(竜)「……はい……申し訳ありません、わたしも竜王家の一員、氷竜なのです……」
エリウッド 「な、なんだってーっ!? ニルス、そうなのかい?」
ニルス   「うん。まあ、別に隠してた訳じゃないんだけど……」
ニニアン(竜)「ところが……先程の戦闘中に悪い魔法使いに呪いをかけられてしまい、
        人の姿に戻れなくなってしまいました」
エリウッド 「そ、そんな! 一体どうすれば……」
ニニアン(竜)「この呪いを解く方法は一つだけ……それは」
エリウッド 「それは!?」
ニニアン(竜)「……お、王子様の……あ、熱い、キッスを……」
ニルス   (うわ、ベタだ! ベタすぎるよニニアン! いい考えってこれのことだったのか!)
エリウッド 「王子様……困ったな、こんなところに王子様なんている訳が」
ニニアン(竜)「あ、いえ、そうではなくてエリウッドさまのことで……!」
エリウッド 「え、僕? でも僕は単なる一般市民で」
ニニアン(竜)「いえ、その、わたしにとっての王子様ということで……」
ニルス   (テンパりすぎて自爆してるよニニアン……それじゃ告白してるのと同じじゃないか)
エリウッド 「……良く分からないけど、つまり僕がニニアンにキスをすればいいんだね?」
ニルス   (そして気付かないエリウッドさま……鈍い、鈍すぎる!)
ニニアン(竜)「は、はい! ……あの、こんな化け物とではお嫌ですか……?」
エリウッド 「化け物だなんて……どんな姿になったってニニアンはニニアンだよ。
       さ、首をこっちに伸ばして。君のためになるのなら、キスぐらいは……」
ニニアン(竜)「ああ、エリウッドさま……」
フィオーラ 「危ないエリウッド様ぁぁぁぁぁぁっ!」
ニニアン(竜)「ぐえっ!?」
エリウッド 「ああ、ニニアンがファルコンナイトの突進で吹っ飛ばされた!?」
フィオーラ 「ご無事ですかエリウッド様!エリウッド様が氷竜に捕食されようとしているのが見えたもので……」
エリウッド 「いや、あれは氷竜だけどニニアンで……」
フィオーラ 「まあそうなのですか、私ちっとも気がつきませんでしたわおほほほほほ」
ニルス   「……大丈夫、ニニアン」
ニニアン  「……うう……ひどい……」
ニルス   「あー、ショックで人の姿に戻ってるし……まあ、回りくどい方法は使わない方がいいってことだね」

ミカヤ   「ひぐっ、ひぐっ……」
ユンヌ   「もー、泣かないでよミカヤ」
ミカヤ   「ほっといて! わたしはもう汚れちまつたのよ! 恥ずかしくて人様の前に顔を出せないわ!」
ロイ    「ミカヤ姉さーっん!」
ミカヤ   「う……うわぁぁぁぁぁぁん!」
ロイ    「ああ、逃げちゃった……もう、悪ノリしすぎだよユンヌさん」
ユンヌ   「んー、ごめんね。布教活動のいい機会だと思ったから、つい」
ロイ    「布教活動って……ああ、そう言えば『魔女っ子? ミカリン』自体が布教活動の一環とか何とか。
       結局さ、あれってどういう意味だったの?」
ユンヌ   「単純な話よ。まずね、アスタテューヌ教ではバッ……
       じゃなくて、ベアードモンスターが神の敵であると教えてる訳ね」
ロイ    「うん」
ユンヌ   「だから、アニメでも似たようなのを敵にしておけば、自然と彼への反感を育てることになる訳ね。
       現にミルラちゃんたちは話も聞かずに彼をやっつけろとか言ってたじゃない。
       あの子たちはいいアスタテューヌ教徒になるわね……」
ロイ    「ってそれ一種の洗脳じゃない!?」
ユンヌ   「んー、一種っていうか、モロに洗脳なんだけど」
ロイ    「認めないでよそんなアッサリ! ……と言うか、そもそも何であの人、アスタテューヌさんに反抗してるの?」
ユンヌ   「えっとね、最初は彼も普通にアスタテューヌ姉さんを守護してたのよ。
       でも、教団の教徒が増えるに従って、あることに気がついたのね」
ロイ    「あることって?」
ユンヌ   「ほら、アスタテューヌ姉さんもわたしも、基本形態は幼女じゃない?
       だから入信してくる男の人って大概ロリコンで、そうでない人もじょじょに……」
ロイ    「うわぁ……」
ユンヌ   「で、バッ……じゃなくてベアードモンスターは、
       自分が守護するアスタテューヌ神がそういう目で見られるのに耐えられなくなって、
       ロリコンどもに天罰を下し始めたのね。だから追放したの」
ロイ    「ちょ、ちょっと待って! それじゃ、あの人普通にいい人なんじゃないの!?」
ユンヌ   「何言ってるのロイちゃん。話聞いてなかったの?
       要するに、アスタテューヌ教徒の大半は姉さんかわたしハァハァなロリコン男なのよ?」
ロイ    「……だから?」
ユンヌ   「それなのにロリコンに天罰なんて下しちゃったら、教徒と貢物が減っちゃうじゃない!」
ロイ    「生々しすぎるよ!」

 ~で、一週間後の休日、早朝~

エフラム  「……この辺りもすっかり立て直されたな……さすがよく壊滅する紋章町、直るのも早い……
       しかし、今回は俺のせいで皆に迷惑をかけてしまった。精進しなければ……」
ミルラ   「……エフラム」
エフラム  「おおミルラ、久しぶりだな。よし、今日も一緒に走るか」
ミルラ   「……あの、エフラム」
エフラム  「なんだ?」
ミルラ   「……わたし、邪魔じゃ、ないですか……?」
エフラム  「……どうしてそんなことを聞く?」
ミルラ   「……わたし、体力もないですし、運動も苦手です……それなのに
       エフラムと一緒にトレーニングしたいって我が侭言って……
       わたし、エフラムの邪魔になっていませんか? もしそうなら、はっきり言ってほしいです。
       わたし、エフラムに迷惑はかけたくないです……」
エフラム  「……そうか」
ミルラ   「……」
エフラム  「なあ、ミルラ」
ミルラ   「……は、はい」
エフラム  「お前、ちょっと背が伸びたんじゃないか?」
ミルラ   「え……? そんなはずは……」
エフラム  「そうか、俺の気のせいかな……それとも、お前が大きく見えるようになったのか」
ミルラ   「……わたしが?」
エフラム  「そうだ。お前は成長しているよ。初めて会ったときはムルヴァ殿やユリア姉さんの背中に隠れて、
       ろくに話も出来なかったが……今は見知らぬ人間相手に、口ごもりながらでも喋れるようになったじゃないか」
ミルラ   「……それは……エフラムのおかげです」
エフラム  「いや、違うな。確かに、俺と出会ったことがきっかけの一つにはなったかもしれない。
       だが、ここまで成長できたのは、間違いなくミルラ自身が頑張ったからだ。
       本当に……お前の頑張りにはいつも驚かされるし、俺自身励まされもする。
       そんなお前のこと、邪魔だなんて思うはずがないだろう。お前だって俺の助けになっているよ、ミルラ」
ミルラ   「エフラム……っ!」
エフラム  「おい、泣く奴があるか……困ったな……」
ミルラ   「……ありがとう、ありがとうございます、エフラム……」
エフラム  「分かったから、泣き止めミルラ」
ミルラ   「……うう……でも、涙、止まらないです……」
エフラム  「そうか……じゃ、乾かしてやろう」
ミルラ   「え……きゃっ……」

 エフラムは、いつかのようにミルラを抱え上げ、肩車してやった。

ミルラ   「え、エフラム、下ろしてください……!」
エフラム  「駄目だ、お前が泣き止むまでこうしていてやる」
ミルラ   「もう止まりました、止まりましたから……!」

ミカヤ   「……ふふ」
シグルド  「うむ、一件落着だな」
エリンシア 「本当に……」
アイク   「全くだ」
エリウッド 「ああ、良かった。やっぱりエフラムはエフラムだね」
ヘクトル  「ケッ、似合わねえ真似しやがって」
エイリーク 「いえ、エフラム兄上は優しい人です……あの顔を見ていれば分かります」
マルス   「うーん、ますますロリコン疑惑がいてててて!」
リン    「あんたって子はなんでそう邪な目でしか物事を見れないの!」
セリス   「いいなあ、僕も将来、子供にあんな風に肩車してあげたいよ」
リーフ   (『それは自分で産むって意味?』なんて聞けないよな……)
セリカ   「見てアルム、ミルラちゃん、とっても楽しそう」
アルム   「エフラム兄さんも、凄く優しい顔だね」
ロイ    「……それはそれとして、僕たちはどうしてこう隠れてエフラム兄さんの様子を窺ってるんだろうね」
マルス   「そりゃ気になるからさ。それに、そうしてるのは僕たちだけじゃないみたいだよ」
ロイ    「え?」
マルス   「ほら、向こうの角を見てみなよ」

バヌトゥ  「ほっほーっ」
ムルヴァ  「……うむ」
ヤアン   「ククッ……あの内気な娘が、成長したものだな」
クルトナーガ「良かった……丸く収まったみたいだね」
ユリア   「ほらお姉様、エフラムさんは立派なお方ですよ」
イドゥン  「……そのようね……良かった、ミルラも楽しそう……」
ユリウス  「どうでもいいよもう……ふあー……ねむ……」
ニニアン  「……わたしも、あんな風にエリウッドさまに……」
ニルス   「いや、さすがに肩車はないでしょ体型的に……」
チキ    「うー……いいなあミルラお姉ちゃま……」
ファ    「ファもかたぐるましてもらうーっ!」
ユリア   「あ、駄目よファ、今出て行っては……」

ファ    「エフラムのお兄ちゃーっん!」
チキ    「わたしも肩車ーっ!」
ミルラ   「チキ、ファも……!」
エフラム  「何だお前達急に……竜王家の皆!? こっちには兄さんたちまで……!」
マルス   「うわっ、ばれた」
リン    「ごめんエフラム兄さん、ちょっと心配で……」
エフラム  「全く……」
シグルド  「はははっ、まあいいじゃないか、こうなれば皆揃って健康的にジョギングだ」
リーフ   「うえ、僕一抜けで……」
アイク   「駄目だ」
ヘクトル  「だな。お前はもっと体力つけた方がいいぜ」
ヤアン   「どれ、何なら我が竜王家に伝わる秘術を……」
リーフ   「いや、いらないですからそんなの!」
シグルド  「よし皆、あの朝日に向かってダッシュだ!」

ユリウス  「……なんか爽やかに締めようとしてるところであれなんだけどさ」
ユリア   「? どうなさいました、ユリウスお兄様」
ユリウス  「いや……一週間前の騒ぎの日から、メディウス爺さんを見かけないんだけど……」
ユリア   「……あ」

 ~竜の祭壇~

メディウス(竜)「バアサンヤ、メシハマダカイ」
地竜    「ZZZZZ……」
メディウス(竜)「……コレモチガウ……ドコイッチマッタンジャ、バアサンヤ……」

<おしまい>