13-15

Last-modified: 2008-10-19 (日) 13:28:41

15 名前: 飛び出せ棺桶姫 [sage] 投稿日: 2008/08/30(土) 00:14:20 ID:bLoi/+lR
注意・今更言う必要もない気がしますが、このネタには新・暗黒竜終盤のネタばれが含まれます。
    ですので、そういうのを見たくない方はスルーしてくださるようにお願いします。

 家に帰ってきたら庭に棺桶が置いてあった。

リーフ  「……なぜ?」

 まじまじと見つめる。
 どこからどう見ても棺桶である。
 触ってみるとひんやり冷たい、石の棺だ。
 叩くとごつごつ音がして手が痛く、全身の力を込めて踏ん張ってみても全然持ち上がらない。
 無駄な努力の結果にぜいぜいと息をつきながら、リーフは顎を伝う汗を拭う。

リーフ  (……可能性として考えられるのは、なんだろう。
      「これも修行の一環だ」とか言ってアイク兄さんが墓場から持ってきた、とか、
      「これもワビサビの一環だ」とか言ってエフラム兄さんが墓場から持ってきた、とか、
      「これも信仰の一環よ」とか言ってセリカが墓場から持ってきた、とか)

 どれもあり得そうで怖い、と身震いしたとき、もっと身震いすべき出来事が起きた。
 なんと、棺の蓋がゆっくりと持ち上がったのである。

リーフ  (な、なんだ、いったい何が出てくるんだ!?)

 リーフは恐怖した。一体、こんな棺の中に何が潜んでいるというのか……?
 はたして、出てきたものは……

???  「……」

 棺の蓋を外し、ぼんやりした目でゆっくりと周囲を見回す人間。

リーフ  (う、美しい……!)

 女性、である。
 しかも、リーフ好みの美人で巨乳なおねいさんだ。
 その上どことなく冷めた美貌の持ち主で、こんな人に罵られてみてえ、と割と真剣に思える女性である。

リーフ  (しかしこの人、どこかで見たことがあるような……?

 長い緑色の髪と、特徴的な形のサークレットが印象的な女性。
 いったい誰だろう、と首を傾げていると、不意に女性がこちらを見て目をとめた。

リーフ  (あ……)

 ドキリとした。感情というものがほとんど窺えないほどに透き通った瞳に、ただただ吸い寄せられる。
 身動き一つできないリーフに向かい、その女性は静かに唇を開き――

16 名前: 飛び出せ棺桶姫 [sage] 投稿日: 2008/08/30(土) 00:15:45 ID:bLoi/+lR
???  「見てんじゃねーよ童貞」
リーフ  「……は」
???  「見んなっつってんだよアホが。日本語理解する頭もねえのかこの葉っぱ。
       オメーみてえな奴の汚ねー視線でわたしの肌が腐ったらどう責任とってくれんだコラ」

 平坦な口調と人形のごとき無表情で、マシンガンのような罵り言葉である。

リーフ  「……」

 リーフ、茫然自失。いきなり罵られたショックで口も利けない。そしてちょっと興奮した。
 女性の方は唐突に言葉を切り、そのまま何も言わずに、

???  「……ぐう」
リーフ   「ね、寝てる!?」
ユリウス 「あーっ! いたぞ!」

 背後から急に叫び声が聞こえて、何かと思って振り返ってみると、物凄い形相をしたユリウスがこちらに向かって突っ込んでくるところだった。

ユリウス 「悪い、邪魔するぞ!」

 案外礼儀正しいやつだ、と思う間もなく、彼は例の棺をのぞきこむ。

ユリウス 「こんなところにいたのか! おい、起きろ姉さん!」
リーフ  「姉さん!?」
ユリウス 「そう、我が家の長女、ナギ姉さんだ」
ナギ   「うう……そこにいるのはユリウスですか……?」
ユリウス 「そうだよ。なんでこんなところにいんのあんたは」
ナギ   「……ここはどこ?」
ユリウス 「僕らの知り合いの家。また棺ごと飛んできたなあんたは……」
リーフ  「棺ごと飛ぶ!?」
ユリウス 「そう。寝てる時に、念動力的な何かを発生させて棺ごとフヨフヨと紋章町内をさまようんだ。
      まあ一種の夢遊病みたいなもんかな」
リーフ  「なにその特殊すぎる病」
ユリウス 「一日22時間は寝る上にこういうことやらかすからなこの人は……」
リーフ  「じゃあさっき僕を罵ったのも寝言か」
ナギ   「……ユリウス、姉はもうダメです……あなただけでも逃げなさい。
      早く逃げないとスンバラリア星人が……」
リーフ  「なに人って?」
ユリウス 「気にすんな、寝言で変なこと言いまくるんだよこの人」
ナギ   「俺の怒りが有頂天……」
ユリウス 「まあそういうわけだから引き取っていく。騒がせたな」
ナギ   「三分だけ待ってやる」
ユリウス 「黙れ夢遊病患者め」

 ユリウスがパチンと指を鳴らすと、上半身裸のアインスとドライが駆けてきて、
 えっほえっほと掛け声をかけながら棺を担いで去って行った。
 ちなみにその間、ナギさんとやらはずっと寝こけてた。凄まじい睡眠欲である。

リーフ  「食欲ナンバーワンのイレース、性欲ナンバーワンのヘザー、睡眠欲ナンバーワンのナギ、か……紋章町もいよいよだな」

 リーフがつぶやいたとき、茫然とした表情のロイが入ってきた。

ロイ   「……兄さん、なんか今棺を担いだガチムチ兄貴が……」
リーフ  「かくかくしかじかこういうわけさ」
ロイ   「変な人もいるもんだねえ」
リーフ  「全くだよ……ところでロイ、僕は今ちょっと悩んでいるんだ」
ロイ   「なにがだい兄さん」
リーフ  「僕はチキに粉をかけておくべきだろうか。青田買いするべきなんだろうか」
ロイ   「兄さんってホント最低だよね」