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Last-modified: 2011-06-09 (木) 22:19:04

342 :シレジアの風が涙に沁みる:2009/01/07(水) 02:31:18 ID:eB3jVK76
最終話 宴のあとに残されたものは(前編)

ティニー 「セティ様・・・わたし、セティ様のことを、お慕いしております」
セティ  「ほ、本当か!?」
ティニー 「はい・・・ですから・・・わたしの全てを・・・あなたに、捧げます」
セティ  「ティニー・・・」

―そうして私達は手を握り、見つめあい、1つになってゆく・・・。

セティ  「ううん、ティニー・・・そんなとこさわっちゃらめ~」
フュリー 「・・・」
セティ  「うふふふ・・・ティニーはかわいいな、私の宝物ら」
フュリー 「・・・・・・」
セティ  「あれ、ティニー、そんなに胸大きかったっけ?
      でも、かまわないぞ、ティニーの胸なら私はだいす」
フュリー 「いい加減にしなさーーーーーい!!」
セティ  「ぐはぁ!!」

―頭部に強い衝撃が走り、目の前のティニーが消え、代わりに拳を握り締めた緑髪の女性が現れた・・・。

セティ  「あ、あれ、ティニーは?」
フュリー 「まったくもう・・・」

―辺りを見回すと、そこはフュリーさんのアパートだった。

セティ  「あれ、どうして、ここに?」
フュリー 「昨夜のこと覚えてないの?」

―あ、そういえば、竜王家への賠償金の処理が大体片付いたこともあり、昨夜は飲んだくれたのだ。
涙目グリーンに始まり、色々ハシゴをして、最後はクレインと自棄酒、そして例のごとく酔いつぶれたのだった。

セティ  「フュリーさんが、潰れた私をここまで運んでくれたのですね」
フュリー 「ええ、夜も遅かったし、あなたのお屋敷まではちょっと距離があったから、
      とりあえず、私の部屋で寝かせたのよ」
セティ  「す、すいません・・・」
フュリー 「夢の中で女の子口説いてるんだから、やっぱりあなたもあの人の弟ね・・・」
セティ  「ちがいます、あらゆる意味で違います」

―私はティニーの手すら握ったことがないんです(涙)

フュリー 「そんなことよりも、大丈夫?昨夜も相当飲んでいたでしょ。
      まだ未成年なんだし、あまりにも体に悪いわよ」
セティ  「うう、でも、つい・・・」
フュリー 「仕事が辛いのね」
セティ  「仕事だけじゃありませんが、まあ、色々とありまして・・・」
フュリー 「それで自棄になって飲んじゃう、と」
セティ  「はい・・・」
フュリー 「ふう・・・セティ・・・」

―フュリーさんは、私の肩と頭に両腕を添えると、そのまま自分の下に引き寄せ、抱きしめてくれた。

フュリー 「辛いことがあったら、お酒に逃げる前に、まずは私のところに来るの、いい?」
セティ  「いや、でも、これ以上ご迷惑をおかけするわけには・・・」
フュリー 「私たち、家族じゃないの?」
セティ  「いや、でも・・・」
フュリー 「わかった?」
セティ  「はい・・・」
フュリー 「ふふふ、いい子ね・・・」

―そういって、頭をなでてくれた。この優しさに何度救われたことか・・・。

343 :シレジアの風が涙に沁みる:2009/01/07(水) 02:32:05 ID:eB3jVK76
セティ  「・・・あの・・・」

―さて、こうして安らぎを得たことだし、目覚めてから目に付いて仕方のなかった「モノ」について、疑問を解決しよう。

フュリー 「・・・どうしたの?」
セティ  「ひとつ、伺ってもよろしいですか?」
フュリー 「なあに?」
セティ  「それ・・・何ですか?」

―私が指差した「モノ」、それは一言で言えば「人間の干物」だった。
人間からありとあらゆる水分を抜かない限り、ああはならない。
大人か子供か、男か女か、元がどんな人間だったかは、そのモノの外見からは全く見当がつかない。
ただ、そのモノの頭と首にまかれたターバンとマフラーは、あきらかに見覚えのあるものだった。

フュリー 「ああ、あれね。ふふふ・・・お察しの通りよ」
セティ  「つまり・・・兄上?」

―いくら風の王子とはいえ、乾燥しすぎでしょう。

フュリー 「ふふふふふふ・・・。
      聞いたわよ、去年の暮れに、竜王家のお嬢さんをナンパしたんですってね・・・」

―先ほど私を抱きしめてくれた、母性溢れる表情は消えていた。

フュリー 「姉様やシルヴィアくらいだったら、まあ、私も我慢するんですけど・・・」

―実際、マーニャさんとは3人で楽しもうとしてましたよね・・・。

フュリー 「いくらなんでもそれ以上は許せないというか、
      ハーレムも3人が限界というか、
      しかもそれでセティにまで苦労をかけるのなら、
      もうこれは見過ごせないというか・・・」
セティ  「さ、3人まではいいんですか?」
フュリー 「そのラインについてはあきらめたわ」

―テ、ティニーもそんな感じなのだろうか?

フュリー 「だから、シルヴィアがお仕置きしてたのに、私と姉様も混ぜてもらったのよ」

―兄上をシルヴィアさんに引き渡したあの後、そんな惨劇が・・・。

フュリー 「いつもなら謝れば許すんですけど、今回は徹底して痛めつけたから、
      少しは懲りると思うわよ・・・ふふ、ふふふふふふ・・・」

―怖!やっぱり、この人には逆らわないようにしよう・・・。

セティ  「ええっと、その、元に戻してもらえませんか、
      ちょっと話したいこともありますし」

―自分でこういったが、あれ、元に戻るの?っていうか、生きてるの?

フュリー 「ちょっと待っていなさい」

―そう言って、フュリーさんは兄上の干物をつかむと、バスルームに行き、干物を湯船に放り込んだ。
しばらくすると・・・

レヴィン 「ぷはーーーーー、し、死ぬかと思った」
セティ  「生きてたんかい」

―さ、さすがは一度死んで生き返った男・・・。

344 :シレジアの風が涙に沁みる:2009/01/07(水) 02:32:42 ID:eB3jVK76
レヴィン 「フュリー、俺はインスタント食品じゃないんだぜ」
フュリー 「知りません、あれほども浮気はしないといいながら、
      竜王家のお嬢様をホテルに連れ込んで・・・」
レヴィン 「だから、あれは、食事しただけだって」
フュリー 「スイートルームの鍵まで用意していたくせに・・・」
レヴィン 「うぐ・・・」
フュリー 「それに、あなたのせいで、セティに多大な負担がかかっているのですよ、
      少しはそういったことも考えてください」
セティ  「そうだ、そうだ、もっと言え!!」

―なんだかんだで我々兄弟は彼女に頭が上がらない。だから、こうして弾劾しているときは、一方的になる。

レヴィン 「はいはい、わかったわかった、もうしないから」
フュリー 「どうだか・・・」
レヴィン 「信用ねえなぁ、俺」
セティ  「そんなことよりも兄上、
      あなたのせいで、我々は多額の賠償金を竜王家に支払うことになりました」
レヴィン 「ああ、それは聞いた。なんだ、払えないのか?」
セティ  「いえ、それについては支払いも、会計の修正もすべて終わりました」
レヴィン 「なんだ、もう終わってるのか。
      いやあ、お前は本当に優秀だなあ・・・俺が仕事しなくてもいいんじゃ・・・」
フュリー 「ジロリ」
レヴィン 「え、あ、その、で、何か問題あるのか?」
セティ  「叔父上達への弁解が、まだ・・・」
レヴィン 「ダッカーとマイオスか・・・」

―その名前を聞いて、さすがの兄上も少々顔が真面目になる。
ダッカーとマイオス・・・先代当主の弟で、我々の叔父にあたる2人だ。
以前より、兄上が家督を継いだことを不満に思い、
何かにつけては、我々をシレジアから追い出して、我が物にしようと画策している。
今回の賠償問題はまさにうってつけの機会なのだが、なぜか向こうから動きはない。

フュリー 「そのことについては、先ほどホークさんがこんなものを置いていったわよ」
セティ  「ホークが?」

―フュリーさんがテーブルの上に置いたもの、それは、招待状だった。

レヴィン 「俺たち兄弟あてか・・・何々・・・
      1月×日、午後7時より、新年を祝う会を催しますので、
      ぜひご参加下さい・・・だとよ。
      ×日って、今日じゃないか」
セティ  「めずらしいですね、叔父上たちが我々を招待するなどと・・・」
レヴィン 「あのオッサンたちのことだ、俺たちをつるし上げようって魂胆だろ。
      ああやだやだ、こんなんだから、俺は吟遊詩人のほうが性にあってるんだよ」
セティ  「違います、あなたのそれはただの遊び好きです」
フュリー 「家督争いが嫌なだけなら、浮気する必要はないですしね」
レヴィン 「お前らなあ・・・」
セティ  「いずれにせよ、これは今日の19時までに対策を立てなければいけませんね。
      今、6時だからあと13時間、やれるだけのことはやりましょう」
レヴィン 「面倒くさい、俺パス~~~」
フュリー 「レヴィン様、この剣が目に入りませんか?」

―第3話冒頭でシルヴィアさんが見せたレヴィンキラー(仮)だ・・・。

レヴィン 「げ!!それ、この間のお仕置きで使い切ったはずじゃ・・・」
フュリー 「スペアたくさんあるらしくて、一本頂いてきました。
      私、姉様、シルヴィア、それぞれが所持していますのでお忘れなく」
レヴィン 「セ、セティ、お、お兄ちゃんも仕事したくなったな~」
セティ  「では、急ぎましょう。フュリーさん、ご迷惑をおかけしました」
フュリー 「屋敷まで送るわ」

345 :シレジアの風が涙に沁みる:2009/01/07(水) 02:33:24 ID:eB3jVK76
―フュリーさんの天馬で屋敷にもどった我々は、部屋にこもり、対策を練った。
賠償金についての報告、説明はもとより、
ありとあらゆる質問や、責任追求に対する回答と対策をつくり、それを頭に叩き込んだ。
フュリーさんのお叱りが効いたのか、兄上が協力的で、かなりスムーズに進んだのは幸いだった。
17時を回るころには、一通りの対策を立てることができたのだ。

セティ  「ふう・・・とりあえずはこれでいいでしょう。
      パーティーですからそんなに本格的にはしないでしょうし」
レヴィン 「うう~~もう嫌だ、これで今年は一切仕事したくねえ・・・」
セティ  「何言っているんですか、さあ、そろそろ支度しましょう」

―我々はそれぞれの部屋に戻ると、パーティ用の正装に着替え、玄関へ向かった。

フィー  「お兄ちゃん達、見て見て」

―玄関ではすでに母上とフィーが支度を済ませていた。
フィーもパーティ用のドレスアップ姿だ。
普段元気な姿しか見ないが、こうしてドレスアップすると、随分大人っぽく見える。

セティ  「素敵だよ、もう一人前のレディだな」
レヴィン 「ああ、これなら男もほっとかないぜ。
      お前、パーティで変な男に引っかかるんじゃないぞ」
フィー  「えへへ~~」
ラーナ  「ふふふふふ、家族揃ってパーティなんて、久しぶりね」
セティ  「母上、今日は絶対に失言は控えてください」
ラーナ  「はい・・・」
レヴィン 「おい、セティ、魔道書はどうする?」

―母上やフィーに聞こえないよう、小声で兄上が言った。

セティ  「どうせ会場は武器持ち込み禁止ですから、置いていきましょう」
レヴィン 「でも敵陣真っ只中だぜ」
セティ  「今日のパーティには各地区の名士が参加します、
      そんな場所で手荒な真似をするはずもないでしょう」

―大体、今回はこちらに賠償金という「非」があるのだ。
伯父上達も、その非をついて、我々の責任を追及するほうがよっぽど得のはず、
わざわざ手荒な真似をする理由がない。

レヴィン 「なんか、心配だな・・・」
セティ  「その辺はホークたちに任せましょう。
      そういうことでホーク、後は頼んだぞ」
ホーク  「お任せ下さい」
セティ  「それでは出発しましょう」

―我々4人は、会場へと向かった。
場所はエレブグランドホテルのアネックス(別館)だ。
エレブグランドホテルは、紋章町屈指の高級ホテルで、その名の通りエレブ区にあるのだが、
シレジアにパーティ会場を別館として持っており、伯父上達は新年になると、パーティをそこで催している。
去年まで我々4人は呼ばれていなかったため、今回がはじめての参加となる。

レヴィン 「へえ~ここがアネックスか・・・はじめてきたな」
セティ  「私は何回か来たことがあります」
フィー  「うわ~、すご~い」
ラーナ  「さすが紋章町で最高のホテルが経営してるだけはありますね。」

―30分後、我々は会場に到着した。
歴史的建造物をおもわせる見事な外装はいつ見ても圧倒される。
4階建てで1階と2階をあわせて大ホールとなっており、3階は小ホール、4階は休憩室になっているはずだ。
外は公園になっていて、有名な芸術家作のオブジェや銅像が数多く飾られている。

346 :シレジアの風が涙に沁みる:2009/01/07(水) 02:33:58 ID:eB3jVK76
クブリ  「招待状を拝見してよろしいですか」
セティ  「どうぞ」
クブリ  「これはこれは、シレジア本家の方々、ようこそおいでくださいました。
      まもなく、主催者より挨拶がありますのでお急ぎ下され」
セティ  「・・・わかりました」

―妙だ、この男、言葉こそ丁寧だったが、所々の振舞いが高級ホテルの従業員とは思えない。
人手不足で、急遽アルバイトでも雇ったのか?

フィー  「わあ、すごーい」

―パーティホールは、外装以上に華やかだった。
丁度、主催者のダッカーが乾杯の挨拶をするところだ。

ダッカー 「皆様、新年明けましてございます。
      皆様と、我々シレジア家の発展を祈って、乾杯」
一同   「乾杯」
セティ  「さあ、叔父上に挨拶をしにいきま」
フィー  「わ~、あれ、おいしそう」
ラーナ  「あら、コノートの奥様、おひさしぶり」
レヴィン 「レッツ、ナンパ!!」
セティ  「・・・」

―仕方ない、私1人で行こう。

セティ  「叔父上、おめでとうございます」
ダッカー 「ほう、セティではないか」
マイオス 「ふん、竜王家と不始末を起こしたというのに、
      よくも宴に参加できたものだ」

―呼んだのはそっちだろ・・・と言いたくなるがこらえる、この程度の嫌味は覚悟の上だ。

セティ  「それについては、昨日までに全て処理いたしました。
      経営の方に影響はありません」
ダッカー 「まあいいだろう、今夜は堅苦しい話は忘れて楽しんでくれ」
セティ  「ありがとうございます。それでは失礼します」

―思ったよりあっさり解放してくれたな。
もっとねちねちと弱みを突かれるものだと思っていたが・・・。

シルヴィア「あれ、セティじゃない」
セティ  「シルヴィアさん・・・」

―叔父上のもとを離れると、シルヴィアさんが声をかけてきた。

セティ  「あなたも招待されていたのですか」
シルヴィア「うん、お客じゃなくて踊り子としてだけどね。
      あとでとっておきの踊りを見せてあげるから」
セティ  「それは楽しみですね」
シルヴィア「悪いけど、レヴィンの監視お願いね。
       あいつ、絶対ナンパしてお持ち帰りを狙ってるから」

―ご名答、っていうか、すでに実行中です。

シルヴィア「ナンパしていたら、即あたしに知らせなさい、
       ナイフ投げの的にしてやるから」
セティ  「ま、まあ、善処はします」

―そうは答えたものの、今日は彼女の味方はできない。
各地区の名士、さらに叔父上達がいる前で、兄上の恥をさらすわけにはいかないのだ。

347 :シレジアの風が涙に沁みる:2009/01/07(水) 02:34:49 ID:eB3jVK76
???? 「あら、セティ」
セティ  「君達は・・・」

―次に私に声をかけたのは、ナンナ、ミランダ、サラ、つまりはリーフの嫁候補達だ。

ナンナ  「セティ、あけましておめでとう」
セティ  「おめでとう、君達も呼ばれていたのか」
ミランダ 「ええ、お父様達が都合で来られないので、
      代わりに私達が参加することになったのよ」
サラ   「大人たちがお世辞言い合ってるだけで、つまんないけどね」
ナンナ  「サラ、そんなこと言わないの」
セティ  「リーフも来ているのか?」
ナンナ  「いいえ、リーフ様はいらしていません」
サラ   「このスレの設定じゃ庶民だからね」
セティ  「そうか・・・」

―ちょっとほっとしてしまった。

セティ  「ところで、テ、ティニーはいないのか?」
ミランダ 「ティニーでしたら・・・」
ティニー 「あ~~~、セティ様ら~~~」

―声をする方を振り向くと、ティニーがいた、ドレスアップした彼女は一段と美しい。
ただ、顔が赤く、足元もおぼつかない、どうやら酔っている様だ。

ティニー 「セティ様~」
セティ  「!!!!」

―ふらついた彼女が私によりかかってきた。
生まれて初めてティニーの体に触れることができた。
とても嬉しい。

ミランダ 「まったくこの子ったら、一口飲んだだけでこうなのよ」
ナンナ  「もう、こんなに弱いなんて知らなかったわ」
サラ   「と、いうわけで、ティニーのことよろしく」
セティ  「え?」
ナンナ  「こんなに酔っていたら不埒な殿方に何されるかわからないから、
      誰かがついてあげないとね」
ミランダ 「でも私達、これから他のところにも挨拶しなければいけないので、
      かまってあげられないのよ」
セティ  「いや、しかし・・・」
サラ   「嬉しいくせに」
セティ  「う・・・」
ナンナ  「それじゃあ、お願いするわね」
サラ   「あなた自身が『不埒な殿方』になっちゃダメよ」
―そう言って、3人は去り、私とティニーだけが残った。

セティ  「ティニー、とりあえず、会場から出よう」
ティニー 「はい~~~」
―そう言って、3人は去り、私とティニーだけが残った。

セティ  「ティニー、とりあえず、会場から出よう」
ティニー 「はい~~~」

―私達2人はホールを出て、4階に上った。
4階は休憩室になっている。
ホテルと同様に部屋がならんでいるので、空いている部屋を探していると、
兄上が見知らぬ女性を連れて部屋のドアから出てきた。

348 :シレジアの風が涙に沁みる:2009/01/07(水) 02:39:13 ID:eB3jVK76
セティ  「兄上!!」
レヴィン 「なんだ、セティ・・・お前も一人捕まえたみたいだな」

―兄上はどうやら「事後」のようだ。
あれだけナンパはしないとフュリーさんに誓ったはずなのに・・・。
っていうか、シルヴィアさんがきているの知っているのだろうか?

レヴィン 「ん?ティニーじゃないか、ほう、酔わせてお持ち帰りとは
      お前も古典的な方法使うなあ・・・」
セティ  「ち、違います、少し酔っているみたいなので、
      部屋で休ませるだけです」
レヴィン 「はいはい、そういうことにしておきましょう。
      ま、頑張れよ~」

―そういって兄上と女性は去っていった。
今の話がティニーに聞かれたら、と心配したが、どうやら彼女は既に眠っている。
ドアを開けると、中は高級ホテルの宿泊室そのままだった。
灯りをつけ、彼女をベッドに寝かせた。

ティニー 「zzzzzzzz」

―ティニーは無防備な姿をさらしたまま、眠っている。
それを見て私は息を呑んだ・・・。
こ、この部屋には、私と彼女の2人っきりしかいない。
しかも彼女は眠ったまま、こ、これはチャンスなのでは・・・。

セティ  「って、な、何を考えているんだ、私は!!?」

―大きく首を振って、欲望を振り払う。
眠った女性をどうこうしようなどと、最低ではないか。
ああ、でも・・・私はもう一度ティニーの姿を見た。
端正ながら幼さを残した顔は赤く染まり、
イブニングドレスからは染みひとつない肌が惜しげもなくさらされている。
さらに寝た体勢が悪かったため着衣は相当乱れたようで、
裾は捲れあがって太ももは丸出しだった。

セティ  「ぐ、ぐおおおおおおお」

―私は頭を抱えて苦悩した。
こ、こんな状態の彼女と2人っきりで、理性を保てというのか?
うう、どうせ誰も見ていないし・・・いや、まて、セティ、
愛しい女性の体をこんな形で手に入れて満足か?
お前のティニーに対するそんなものだったのか?
聖戦士の誇りはどうした!?
それではケダモノではないか!!

ティニー 「ううん・・・」

―ティニーが寝返りを打ってうつぶせになった後、
すぐにもう一度寝返りを打って仰向けになった。
今の動きで肩紐が外れ、胸の上半分が丸出しになった。
はい、無理です、理性なんて保てません。
私はケダモノです、はい。

349 :シレジアの風が涙に沁みる:2009/01/07(水) 02:42:56 ID:eB3jVK76
セティ  「キ、キスだけなら・・・」

―身をかがめ、ティニーの肩を掴んだその時、彼女の目がいきなり開いた。

ティニー 「・・・・・・」
セティ  「!!!!!!いや、あの、その、これは・・・」

―終わった・・・私はそう思った。
しかし、その後の彼女は思わぬ行動に出た。

ティニー 「・・・・・・ふにゃあ~」

―なんと彼女は起き上がって私に抱きついてきたのだ。

セティ  「え、え、ええええええ!?」

―何がなんだかわからない、一体何が起こっているのか。
ただ、これだけははっきりと言える、今私は、
最 高 に 幸 せ だ !!

ティニー 「うふふふふ・・・ぎゅ~~~~」

―ティニーはさらに強く抱きしめてきた、どうやら、まだ酔っているらしい。
しかしそんなことはどうでもいい、
こ の 至 福 の 時 と 比 べ れ ば。

ティニー 「えへへ~」

―抱きつきながら、上目遣いで私を見つめてくるティニー、ああ、
神 様 あ り が と う。

ティニー 「ん~~~~」

―ゆ、夢か、これは夢か?
ティニーは目をつぶり、唇を軽く突き出して、私の顔に近づいてきた。
こ、こここここここ、ここここここ、こここここれは、
キ ス の お ね だ り !!
ここまで不幸の連続だった私に、ようやく僥倖が舞い降りてきたのだ!!
涙が出るのを必死にこらえる、このチャンスを逃してはならない。
私は目を閉じ、彼女に顔を近づけた。
うう、感激だ。あまりの嬉しさにこの身が爆発しそうだ。
2人の唇が重なり合おうとしたそのとき・・・

『ド ガ ー ー ー ー ー ー ー ー ン』

外で本当に爆発が起こった。

後編に続く

すみません、レス数の関係で今回も前後半分けます。

350 :おまけ 天才軍師の憂鬱:2009/01/07(水) 02:47:31 ID:eB3jVK76
1レスあまったので、ビンゴに挑戦します。お題は22「影薄い」25「メタ的会話」です

セティ  「はあ、どうして私はこんなにも不幸で涙目なんだ・・・」
サイアス 「出番があるだけマシですよ」
セティ  「サ、サ、サ、サイアスどの、
      い、い、い、い、いつの間に?」
サイアス 「大体、原作のあなたはユグドラル屈指の勝ち組じゃないですか、
      それに比べて私などひどいものです。
      あなたと二者択一のおかげで
      私を仲間にするプレーヤーの少ないこと少ないこと・・・」
セティ  「そ、そういうメタ的発言はどうかと・・・」
サイアス 「はあ~~~(深いため息)」
セティ  「え、いや、あの、申し訳ありません」
サイアス 「別にあなたのせいだとは言ってませんよ」
セティ  (言ってるって)
サイアス 「まあ、あなたは前作の登場人物、
      それも王道カップリングで生まれた最強ユニット。
      どう見てもあなたを選びますね、それにくらべて私なんか・・・
      どうせ胡散臭い坊主としか思われていないんですよ・・・グス」
セティ  「そ、そこまで自分を卑下しなくても・・・」
サイアス 「唯一のとりえの指揮レベル☆10も、
      仲間になると3に下がっちゃいますしね。
      多分、それを見て23章やりなおした人もいるんでしょうね」
セティ  「いえ、流石にそんなプレーヤーは・・・い、いるかも」
サイアス 「兵種の少ないフリージ軍と違って、
      兵も出身地もバラバラのリーフ軍で、
      指揮10とか、土台無理なのですよ」
セティ  「お、お察しします」
サイアス 「それでもね、まあ、☆5位はなんとかいけたんですよ」
セティ  「え、そうなんですか?」
サイアス 「ですけど、難しさが魅力のトラキア776で
      出撃だけで15%も補正かけたら折角の難しさが崩れるでしょう。
      それで9%にしておこうと遠慮したんですよ
      私は自分の栄光より、『手ごわいシミュレーション』の名を
      折らぬ事を選んだのです」
セティ  「だ、だから☆3に抑えたんですね、素晴らしい配慮です」
サイアス 「ま、そんな私の配慮も、だれかさんが神器もってきたせいで
      台無しなんですがね」
セティ  「うぐ・・・」
サイアス 「速さと技に+20ってどういうつもりなんですかね?
      つまり命中と回避に40%の補正がかかるんですよ、
      6%の差で悩んだ私が馬鹿みたいじゃないですか」
セティ  「そ、そういわれましても・・・」
サイアス 「そういうことで今日も私は空気扱い・・・
      せっかくファラ直系なんて美味しい設定なのにこの影の薄さ・・・
      あ~あ、私もファラフレイムもってくればよかった」
セティ  「ご、ごめんなさい」
サイアス 「まあ、あなたに愚痴っても仕方ないですね」
セティ  (なら愚痴るな・・・とは流石に言えないな)
サイアス 「メタ会話ばかりでご迷惑をかけました、この後に約束があるので、これで失礼します」
セティ  「約束?」
サイアス 「私と同じく、対になるキャラのおかげで影がうすくなってしまった者達の集まりです。
      今回はユグドラルの者だけですが、結構来ますよ。
      私にイシュトー、スカサハ、ハルヴァン、イリオスが参加予定です
      あなたも参加しますか?」
セティ  「え、遠慮しておきます」
サイアス 「下には下がいる、ということをお忘れなきよう」
セティ  「・・・」
―そう言ってサイアスは去っていった。うーん、私など、まだまだ幸せなのかもしれない・・・。
「天才軍師の憂鬱」  完