17-208

Last-modified: 2011-05-30 (月) 22:23:43

以前私が書いた「その名はAKJ」と話しが繋がっているので、先にそちらをご覧下さい。

第2章 妹の本道

―エレブ学園の休憩時間、フロリーナがリンの胸に抱きついて泣いていた。

フロリーナ「う、う、う、ふぇぇぇぇぇぇん」
リン   「もう、男の子にデート申し込まれたくらいで泣かないの」
フロリーナ「うう、だって、だって・・・ぐす・・・リン、いつもごめんね」
リン   「気にしないで、私達、親友でしょ?」
フロリーナ「う、うん、でも、リンって強くて頼りになって、お姉ちゃんみたい・・・」
リン   「え・・・・・・おねえ・・・ちゃん」
フロリーナ「うん、たまに思うよ、リンって私の3人目のお姉ちゃんみたいって」
リン   「・・・・・・」

―放課後、校門前

ロイ   「うわ、雨だ・・・」
リリーナ 「どうしよう、傘持ってきてない・・・」
リン   「はい、これ。リリーナも使って」
ロイ   「姉さん、傘持って来てたの?」
リン   「天気予報で雨だったから、一応ね。
      今朝家を出るの一番遅かったから、あなた達の分も
      用意したのは正解だったみたい」
ロイ   「ありがとう、助かったよ」
リリーナ 「ありがとうございます」
リン   「じゃあ、帰りましょう。あ、セリスとリーフにも渡したいから
      ユグドラルによってもいいかしら?」
ロイ   「うん、もちろん」
リリーナ 「ロイはいいなあ、こんなに綺麗で頼れるお姉さんがいて」
リン   「え?」
ロイ   「うん、いつもリン姉さんに助けられているからね。
      ぼくも姉さんみたいにしっかりしないとだめだなあ・・・」
リン   「・・・・・・」

―セリス、リーフと合流し、リンは帰宅した。

ロイ   「ただいま・・・って、シグルド兄さんの靴だ・・・もう帰ってるの?」
リン   「まだ夕方なのにめずらしいわね、なにかあったのかしら?」

―リビングに向かうと、ミカヤ、シグルド、エリンシア、エフラムの四人が、マルスを取り囲んでいた。
シグルドとエフラムは怒り狂っているが、マルスは涼しい顔をしている。

シグルド 「『【そうだ、きみがほしい】
       シグルド係長、ブリギッドさんに超ナンパ発言!!』
      マルス!!!会社にこんな新聞ばら撒いたのはお前だな!!」
マルス  「でも言ったのは事実でしょ」
シグルド 「あれは、ブリギッドの能力をうちの課で活かしてほしいという意味だ。
      愛の告白では断じてない!!」
マルス  「しらな~い、ぼくしらな~い」
シグルド 「この記事のおかげで私の評判はガタ落ちだ!!
      ディアドラにはデートをキャンセルされるし・・・
      うわあああああああああん」
ミカヤ  「マルス、シグルドに謝りなさい!!
      社内の評判はともかく、ディアドラさんに振られたら
      シグルドが一生独身になっちゃうわ!!」
マルス  「姉さんだって、嫁候補失格の烙印押したことあるくせに 注」
ミカヤ  「え、あ、いや、それは・・・」

注 詳しくは「乳戦争」(15-25)をご覧下さい。

エフラム 「マルス、貴様、アメリアに何を吹き込んだ?
      放課後、彼女が俺の教室に来て、
      『無理です、私、幼稚園児の服は着れないし、
       スクール水着だって水泳以外の目的では着ません!!』
      と叫んでいったぞ」
マルス  「わあ、そりゃすごい、兄さん、さぞかし注目を集めただろうね」
エフラム 「ああ、集めたとも、ターナとラーチェルの怒りの視線、
      クラスメートの軽蔑の視線をたっぷりとな」
マルス  「よ、憎いね、この人気者!!」
エフラム 「ミルラだけでなく、アメリアまで・・・貴様、許さん 注」

注 詳しくは、「潔白の証明 2nd Season 最終話」(14-296)をご覧下さい。

エリンシア「マルス、あなたという人は・・・
      エフラムは優しいから、小さな女の子を守ろうとしているだけなのです。
      それをあなたはいかがわしい意味でばかり解釈して・・・」
マルス  「じゃあ、エリンシア姉さんが筋肉好きなのも、
      いかがわしい意味じゃないんだ。
      純粋に、崇高に、一片の性的欲望もなく、筋肉をめでているんだね?
      そう言い切れるんだよね?」
エリンシア「え、あ、いや、それは・・・」

―マルスの口八丁に乗せられ、今一歩怒りきれないシグルドたち、その中にリンが割って入った。

リン   「兄さん達、口で何を言っても無駄よ。マルスには、こうするのよ」
マルス  「げ、それは、いや、やめて」

―リンはマルスの頭を強引に前に倒し、右脇でマルスの首を抱え込み、一気に締め上げた。
いわゆる「ギロチンチョーク」である。

マルス  「あ、あががががががががああああああ」
リーフ  「相変わらず見事な締め技。
      僕もアマルダさんあたりにやってもらいたいなあ・・・」
リン   「マルス、何をしたかお姉ちゃんに正直に話して御覧なさい。
      新聞ばら撒いたのも、アメリアに吹き込んだのも、
      皆あなたの仕業なんでしょ」
マルス  「ぞ、ぞうでず、ぜ、ぜんぶぼぐのじわざでず」
リン   「そう、じゃあ、後始末もしなくちゃね。
      明日一番で、訂正記事を配るのと、
      アメリアに本当のことを話すの、約束できる?」
マルス  「は、はい、や、やぐぞぐしまず・・・・」
リン   「兄さん達、これでいい?」
シグルド 「ああ、誤解が解ければいい」
エフラム 「・・・まあいいだろう」
エリンシア「私達の言うことは全然聞かなかったのに、
      リンちゃんの言うことはすぐ聞くのですね・・・」
ミカヤ  「仕方ないわ、年下組は皆リンに頼りきりだから」
リン   「え?」
ミカヤ  「でもこうしてリンが姉として弟達の面倒を見てくれているから、
      わたし達も楽ができるのよね」
シグルド 「リンは姉としての役割を見事果たしているな」
リン   「・・・・・・・・・そ れ よ !!(グキッ!!)」
マルス  「ぎゃあああああああああ!!ぐへ・・・」
リーフ  「あ、首逝った・・・」
リン   (見えた、見えたわ、『少女の証明』の突破口が!!
      ようし、そうときまったら、早速・・・)
ロイ   「ねえ、とりあえずマルス兄さんを放してあげたら?
      多分、今、息してないと思うよ・・・」
リン   「あ・・・・・・」

―自室に戻ったリンは、タンスの服を物色しながら、思考をめぐらせていた。

リン   (考えてみれば、私って15人家族の9番目、5人いる女の中では4番目、
      つまり、全体で見れば立派な『妹』なのよ。
      それなのに、私のポジションは、マルスを締めたり、ロイの面倒を見たり、
      フロリーナを守ったり、テンプレでは『肝っ玉母さん』って書かれたり、
      明らかに『姉』になってるわ。
      セリスなんて本編じゃどう勘定しても私より年上なのに、 注
      気づいたら弟になってるし・・・。
      『年下の面倒を見るリン姉さん』・・・こんな役ばっかやらされているから
      私は老けて見られるのよ。
      それがわかれば、打開策は見えるわ・・・。
      つまり、これから私は『 妹 キ ャ ラ 』になればいいの!!)

注 聖戦とトラキア776で微妙に設定が違うので、断言はできないが、
セリス誕生はグランベル暦758年~759年、
(760年開始の5章で、「セリスはまだ2歳になっていない」という発言がある)
セリスの挙兵(6章開始)が778年、
(キュアン死亡が761年で、セリス挙兵はシグルド死亡から17年後)
よって、6章開始時のセリスは18~20歳となる。
公式の資料集か何かで正確な答えが出ていたらごめんなさい。
      
リン   (妹キャラは、無邪気で、守られて、甘えてという少女の役柄、
      15歳で9番目の私がやったって、おかしくはないわよね。
      このスレで妹キャラが定着すれば、私は完全な少女になれるわ!!)
      そうと決まったら、服もかわいいのを選ばないとね。
      本格的なのは後で買い揃えるとして、
      とりあえず今日はこれと、これ・・・下着も替えちゃえ)

―タンスの中から服と下着を取り出したリンは、制服のブラウスを脱ぎ、スカートを外した。
次に、リンが下着に手をかけたその時・・・

ヘクトル 「なあ、漫画貸してくれ・・・ねえ・・・か・・・」
リン   「!!!!!!!」

―ノックもせず、ドアを開けてヘクトルが部屋に入ってきた。
無論、リンは下着姿、それも半分脱げている状態である。

リン   「あ・・・あ・・・」
ヘクトル 「え、あ、いや、その・・・わわわわ、悪かった。
      わざとじゃない、悪気はない、これからは気をつける!!
      頼む、だから、マーニカティは勘弁してくれ!!
      いくら俺でもあれは痛いんだ!!」

―身の危険を感じ、必死に謝るヘクトル。
確かに、昨日までのリンであれば、マーニカティを抜き、滅多切りにしていただろう。
しかし、今日の彼女は違った。

リン   「//////////」
ヘクトル 「????」

―リンは両腕で胸元を隠すと肩をすぼめ、俯いてしまった。
そして、頬を赤らめ、潤ませた上目遣いで、こう言った。

リン   「も、もう、ノックぐらいしてよ~~~
      お兄ちゃんの・・・えっち(はあと)////////」
ヘクトル 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
      ・・・・・・・・・・おぇぇぇぇぇぇぇ・・・」

―ヘクトルは口を手で押さえ、その場にしゃがみこんだ。

リン   「ちょ!!何よ、その反応は!!!???」
ヘクトル 「無い・・・それは無い、それだけは無い」
リン   「『無い』って三回も言うな!!
      わ、私はあなたの妹なんだから、普通じゃないの!!」
ヘクトル 「だからってお前・・・いや、もう、理屈とかそういう問題じゃない。
      とにかくだめ、アウト、ありえない。
      バースのHPがカンストするくらい、
      サザが漆黒に騎士に勝つくらい、
      エフラムが熟女好きになるくらい、
      とにかくマジであ り え な い !!」
リン   「何もかも否定するなぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ヘクトル 「げ、結局、マーニカティかよ!!
      やめろ、ばか、ぎゃああああああああ!!」
リン   「フロリーナとか、ファリナとか、妹にばっか手を出してるくせに!!」
ヘクトル 「それは関係ねえ、っていうか、あいつらを見ているからこそ、
      さっきのはありえないっていうか、いや、嘘です。
      許してくれ、ぎにゃあああああああああああ!!」
リン   「うがあああああああああ!!」
エリンシア「リンちゃん、なんですかその格好は?
      家の中とはいえ下着姿で剣を振り回すなど、
マルス  「本当、姉さんは野生児なんだからさ・・・」
ロイ   「いや、まず注意すべきなのは、家の中で剣を振り回すことじゃない?
      あと、ヘクトル兄さんの心配もしようよ・・・それと、マルス兄さん生きてたの?」

―ヘクトルを処刑したリンは、気を取り直してエリウッドの部屋へ向かう。

リン   「入っていい?」
エリウッド「いいよ、どうしたんだい?」
リン   「勉強でわからないところがあるの。ここなんだけど・・・」
エリウッド「ああ、これはね、まずこの関係同士で方程式を立てるんだ、
      そうすると、Xの値が出る、あとは、大丈夫だよね?」
リン   「うん、ありがとう。すらすら解けちゃうなんてすごいわ」
エリウッド「まあ、一応高校生だしね」
リン   「勉強できて、学校での仕事をこなして、家のお手伝いして、
      本当、リンの自慢のお兄ちゃんだね(はあと)」
エリウッド「う、ぐ、ああああああああ!!」

―突如、エリウッドが胸と腹を押さえて、うめき声を上げた

リン   「え、ど、どうしたの、お兄ちゃん!?」
エリウッド「ほ、ほ、ほほほ、発作が・・・胃が・・・心臓が!!」
リン   「えええええええ!!??」
ミカヤ  「どうかしたの・・・って、エリウッド、しっかりして!!
      癒しの手!!」
エリウッド「・・・あ・・・あ・・・ふぅ・・・」
リン   「え、これって、ひょっとして・・・私のせい?」
エリウッド「リンディス、僕は胃も心臓も弱いんだ。
      だから、呪いの言葉を言うなら、
      せめて前もって知らせてくれないかな?」
リン   「呪い!?え、私が妹らしくするのって、呪いなの!??」

―リビングでリンは頭を抱えていた。

リン   (何、何なの、なんでヘクトルもエリウッドも拒絶反応示すわけ??
      ・・・ま、まあ、考えてみれば、あの2人は
      本編だと、私の恋人候補だしね。
      いきなり妹って言われても戸惑っちゃうのも無理ないかも・・・。
      となると、ここはやっぱり別作品の人が・・・)

―その時、玄関のドアが開く音がした。

エリンシア「アイクが帰ってきたようですね」
リン   「!!あ、わ、私が迎えにいくわ」

―リンが玄関に向かうと、アイクが色々と荷物を抱えていた。

リン   「おかえりなさい、随分な大荷物ね」
アイク  「ああ、サナキ社長の旅行土産らしい。実は玄関の外にもまだある。
      取ってくるから、ラグネルを持っていてくれないか、重いから気をつけてくれ」
リン   「うん、いいよ」

―アイクはラグネルをリンに手渡したが、予想以上の重さに、リンは思わず手を滑らせてしまい、
ラグネルは大きな音を立てて、床に落ちた。

リン   「きゃ!!」
アイク  「気をつけろ!!床に穴が開くぞ」
リン   「ご、ごめんなさい」
アイク  「これから気をつけてくれればいい」
リン   「うん、いつもドジでごめんね、お兄ちゃん、えへ(はあと)」

―少々顔を赤らめ、ペロッと舌を出すリン、そして・・・

アイク  「・・・・・・・・・(バタン)」

―気を失い、その場に倒れるアイク。

エリンシア「い、今の音は・・・きゃああああああ!!」
セリス  「どうしよう、脈拍が停まりかけてる!!早く、治療を」
リン   「そこまでなるの!!??」
リーフ  「レスト&リカバー!!」
セリス  「・・・うん、大丈夫。脈拍は正常に戻ったよ」
エリンシア「ほ・・・よかった・・・」
リーフ  「姉さん、頼むから自重して。妹キャラ演じる姉さんとか、十分凶器だから」
リン   「何で!?実際妹だからいいでしょ!!
      ちょっと可愛く『お兄ちゃん』って言って何が悪いのよ!?」
アルム  「あのねえ、姉さん。
      アイク兄さんはね、普段からミストさんっていう、
      純度100%の正統派妹キャラと接してるの。
      だから、可愛くて、しっかりしていて、守るべき対象で、
      そういう穢れない妹像が既に兄さんの頭の中にできているわけ」
セリカ  「そんな無菌状態の兄さんに、似非妹、それも似合わないことこの上ない
      リン姉さんが『お兄ちゃん』なんていってきたら、
      精神に異常をきたすことは火を見るより明らかなの。
      だから自重して、土台、姉さんに妹キャラは無理なのよ!!」
リン   「う、う・・・うわあああああああああん」

―リンは泣きながら玄関を飛び出した。

リン   「何よ、何よ、皆してありえないだの、呪いだの、凶器だの言って・・・
      見てなさいよ、絶対に萌え萌えの妹キャラになってやるんだから!!」

―リンが向かった先は、大きな屋敷だった。
屋敷の持ち主はノディオン家、つまりラケシスの自宅である。
そして、その地下にはAKJの本部があるのだ!!

リン   「しょ、正直ここだけには来たくなかったけど・・・
      で、でも、ここならきっと、妹キャラになる方法を教えてくれるはず、
      完全な妹に、少女になるためには、もうここしか・・・」

―リンは門の前の呼び鈴を鳴らす。すると、1人の男性が門の前に現れた。

イーヴ  「当家に何か御用ですか?」
リン   「あ、あの、私、兄弟家のリンディスといいます。ラケシスさんにお会いしたくて・・・」
イーヴ  「ナンナ様のご婚約者リーフ殿のご家族の方ですね。どうぞ、こちらに」
リン   (いまさりげなくとんでもないこと言わなかった?)

―リンは応接間に案内されると、そこには既にラケシスがいた。

ラケシス 「リンディスさん、こんばんわ」
リン   「こんばんわ、こんな時間にすみません」
ラケシス 「構わないわ。それで、私に会いたいって、何の用かしら?」
リン   「じ、実は、私・・・AKJに入会したいんです!!」
ラケシス 「え、え、えええええ!?本当、それ、本当なの!?」
リン   「は、はい。以前プリシラさんに誘われたときは断ったのですけど・・・
      それから、自分の本当の気持ちに気づいたんです。
      私が愛するのは・・・兄だけなんだって(嘘)」
ラケシス 「キキキキキキ、キタワァァァァァァァァァ!!」

―席を立ち、ガッツポーズをするラケシス、
そんな彼女を見て、でまかせを言っているだけのリンは少々不安になった。

リン   (妹のことを教わったらすぐ帰るつもりだったんだけど・・・)
リン   「そ、それで、入会は・・・?」
ラケシス 「全く持って無問題、我がAKJは兄を愛する妹は誰一人拒みません。
      ちょっと待ってて、今幹部全員呼び出すから!!」
リン   「え、そ、そこまでしなくても・・・」

―数分後、幹部3人が到着し、リンは地下の本部へと案内された。

ティニー 「リーフ様のお姉様がまた入会してくださるなんて、感激です」
クラリーネ「これで兄弟家の会員は3人、素晴らしいことですわ」
ティニー 「う、うう・・・私は、今、とても感動しています。
      ついに、真実の愛に目覚めてくださったのですね・・・うう・・・」
リン   (な、なんか大事になってない?)
ラケシス 「早速だけど、入会手続きを済ませるわね。ティニー、お願い」
ティニー 「リンディス様、まずは聖名、
      つまりあなたが愛する兄の名前を教えてください」
リン   (え、ど、どうしよう・・・適当にヘクトルとか言っておけば・・・
      ああ、でも後で面倒なことになりそうだし、本人に知れたら、何言われるか・・・)
クラリーネ「恥ずかしがることはありませんわ、我々は同志なのですから」
リン   「いや、あの、その・・・ええっと・・・」
プリシラ 「・・・は!!?まさか、リンディスさん・・・」
リン   (げ!!ば、ばれたかしら!?)
プリシラ 「リンディスさんは、ヘクトルさんとエリウッドさん、
      一度に2人のお兄様を同時に愛してしまったのですね!!」
リン   「はい?」
クラリーネ「まあ!!2人のお兄様を同時に!!?」
リン   「ちょっと、まだなにも言ってない・・・」
ラケシス 「何の問題もないわね、妹が兄を愛するのは当然のこと、
      それなら、2人の兄がいるのなら、2人同時に愛するのは、
      ごく自然のことではなくて?」
リン   「いや、その理屈はおかしい」
ティニー 「そうですね。では聖名はヘクトル、エリウッドの両名で。
      それでは最後に聖言、つまり、お兄様への愛の言葉をお決め下さい」
リン   「あ、愛の言葉!!!??え、あ、その・・・『お兄ちゃん、大好き』で」
ティニー 「飾らない、素敵なお言葉だと思います」

ラケシス 「手続きが済んだわね、最後に、儀式を行うわ」
リン   「儀式?」
ラケシス 「簡単よ、私につづけてこの言葉を言ってくれればいいわ
      ・・・(深呼吸をする)『兄が嫌いな女子なんていません』!!」
リン   「え、えええ!!」
クラリーネ「さ、恥ずかしがらずに、『兄が嫌いな女子なんていません』」
プリシラ 「いつ聞いても素晴らしい響きですね。『兄が嫌いな女子なんていません』」
ティニー 「慣れると気持ちよくなってくるんですよ。『兄が嫌いな女子なんていません』」
リン   「あ、あにが・・・きらいな・・・じょ、じょしなんて・・・い、いま・・・せん」
ラケシス 「おめでとう、これであなたは正式にAKJの一員よ」
リン   「あの、早速で悪いんですけど、相談がありまして・・・」
プリシラ 「恋敵の抹殺ですね。
      すぐに、ペガサス三姉妹とニニアンに暗殺者を送ります」
リン   「ちょ、ちょちょちょちょっと待って。違うの、そうじゃないの!!」
ラケシス 「シグルドがあなた達の愛を認めないのね。
      わかったわ、すぐに精鋭の暗殺者集団を・・・」
リン   「それもちがーーーーーーう!!」
クラリーネ「それでは、どんな相談ですの?」
リン   「実は、私とエリウッドとヘクトルって兄妹だけど、
      今まで対等に接してきたから、いまいち『兄と妹』という実感がなくて・・
      でも『男と女』とも言い切れない、中途半端な関係なんです(←すべて出任せ)
      それに、私自身、妹としての自覚をもてなくて・・・(←ここは本心)
      ですから、私に妹としても振る舞いや作法を教えてほしいのです」
ティニー 「なるほど、深刻な問題ですね。でも大丈夫です、すぐに解決できますよ」
リン   「ほ、本当!!」
クラリーネ「ええ、研修をお受けになれば、すぐに妹としての素養が身につきますわ」
リン   「研修?」
プリシラ 「新規の会員の方には、いくつかの研修を受けてもらっています。
      そこで、妹の基本的振舞や作法を学んでいただくのです」
リン   「え、そ、そんなのがあるんですか?」
プリシラ 「はい、セリカさんも入会の際には受けてもらいました」
ティニー 「でもエイリークさんはまだなんですよね、本人が受けたがらなくて・・・」
リン   「ま、まあ、エイリーク姉さんは本編でも妹だから・・・」
ラケシス 「それでは早速はじめましょう、プリシラお願いね」
プリシラ 「はい、リンディスさん、こちらへ」
リン   (やったわ!!これで私も妹キャラよ!!)

―プリシラに案内された部屋は、先ほどの会議室より一回り小さいものだった。
その代り、机や椅子、黒板の他に、なぜか化学薬品や魔法道具が置いてあった。

プリシラ 「それでは、AKJによる妹研修をはじめます」
リン   「お願いします」
プリシラ 「この研修は三段階に分かれます。
      いずれも基本かつ大事な内容ですので、是非習得してください。
      ではまず、第一研修、『媚薬の作り方』です」
リン   「え?」
プリシラ 「媚薬は数ある誘惑の中でも、最も直接的な方法であり、
      数種類の使い分けは妹の基本となります」
リン   「ちょ、ちょっと待って!!」
プリシラ 「どうしましたか?」
リン   「なんで、媚薬が出てくるの?妹としての作法や振舞いじゃなかったの?」
プリシラ 「ですから、媚薬作りこそが、妹に求められる技術なのです」
リン   「エイリーク姉さんが受けたがらないわけだわ・・・
      あれ、じゃあ、セリカは受けたの、この研修?」
プリシラ 「いえ、セリカさんは第一研修はパスしました。
      『こんなことしなくても、わたしとアルムはラブラブなの
       それに、いざとなったらミラ神の力があるし』とのことです」
リン   (セリカ、それは『ミラ神様にお祈りします』程度の意味なの?
      それとも『ミラの力で洗脳します』という意味なの?)
プリシラ 「それでは調合方法ですが、まずリフ薬2リットルに・・・」

リン   「ええっと、私もパス!!私の魅力だけで兄2人をモノにしたいの」
リン   (わ、我ながら、よくこんな出任せが言えるわね・・・)
プリシラ 「なんて素晴らしい!!自分の魅力のみで勝負、これぞ妹の本道です!!
      私など、毎日兄様のお皿に少しずつ混ぜているというのに・・・
      薬に頼っている自分が情けないです」
リン   (レイヴァンさん、ご愁傷様)

プリシラ 「わかりました、第一研修はパスしましょう。
      それでは第二研修に移ります」
リン   (次はまともな内容でありますように)
プリシラ 「第二研修は『既成事実の作り方』です」
リン   「はい?」
プリシラ 「血のつながりや心のつながりはもちろん大事ですが、
      やはり恋愛では体のつながりが不可欠です」
リン   「ストーーーーーップ!!」
プリシラ 「どうしましたか?」
リン   「き、既成事実って、あの、その、・・・のことよね?
      な、なんでいきなりそっちに行くわけ?」
プリシラ 「愛し合う男女が、体の結びつきを求めるのは当然のことです。
      それに、1つの事実は時に全ての人間関係を覆す、
      強力な武器ともなります」
リン   「そりゃ、妹とそんなことしたら、周りはドン引きだわ。
      え、まさか、セリカは受けたの、この研修?」
プリシラ 「いえ、セリカさんは第二研修もパスしました。
     『そんなことしなくても、わたしとアルムは
      すでにしっかりつながっているから』とのことです」
リン   (セリカ、そのつながりは、血と心だけよね?)
プリシラ 「それでは具体的方法ですが、やはり最も効果的なのは
      夜、寝室に忍び込むことであり・・・」
リン   「ええっと、私もパス!!私と兄は既に十分つながっているから。
      支援会話もAだし、結婚エンドだってあるのよ」
リン   (これは本当のことよね)
プリシラ 「なんてうらやましい!!
      私など、毎晩兄さまの寝室に忍び寄っては
      耳元で愛の言葉をささやいているのに、
      結局ペアエンドは果たせぬまま・・・自分が情けないです」
リン   (レイヴァンさん、最近やつれていたのは
      そういうことだったのね・・・)

プリシラ 「わかりました、第二研修もパスしましょう。
      それでは最後の第三研修に移ります」
リン   (今度こそまともな内容でありますように)
プリシラ 「第三研修は『恋敵の抹殺方法』です」
リン   「ちょ!!」
プリシラ 「恋敵抹殺はAKJ援助の中核ですが、
      できることなら自分の手で抹殺したいものですよね」
リン   「はい、そこまで!!」
プリシラ 「どうかしましたか?」
リン   「ねえ、これ、妹の研修よね?なんで抹殺とかなっちゃうの?」
プリシラ 「紋章町の兄にはなぜかほぼ100%、嫁候補がいるのが現実です。
      レイモンド兄さまだって、今日もあの憎きルセアと・・・」
リン   「ねえ、セリカはこれもパスしたのよね、そうよね!?」
プリシラ 「いえ、セリカさんも第三研修は熱心に受けていましたよ。
      『シルク、たかが1シスターの分際で・・・』とのことです」
リン   「セリカァァァァァァァァ!!」
プリシラ 「抹殺の方法について、毒や魔法でも結構ですが、やはり王道は刃物が・・・」
リン   「まって!!ねえ、なんでさっきからやたら物騒なのばかりなの?」
プリシラ 「私には特にそう感じませんが・・・」
リン   「媚薬だの既成事実だの抹殺だの、どう考えてもおかしいわ!!」

プリシラ 「ですが、これが妹のあるべき姿、最低条件なのです」
リン   「嘘!!」
プリシラ 「嘘ではありません、現にAKJ会員4128名のほぼ全員が
      これらの研修を受け、技術を習得しております。
      例外はエイリークさんくらいでしょうか」
リン   「ええ!!」
プリシラ 「それだけではありません、
      戸籍改竄、ヤンデレ化、無理心中など、より上位のスキル習得を
      率先して望む方もいるくらいです」
リン   「そ、そんな・・・」
プリシラ 「でも心配要りません、リンディスさんだって、研修を受ければ
      3日以内には確実にこれらの技術をマスターできることでしょう。
      それでは研修に戻ります、まずは肉体的抹殺の基本、
      『お兄ちゃんどいて!そいつ殺せない!』から・・・」
リン   「すすすすすす、すいません、やっぱり私、退会します!!」
プリシラ 「あ、リンディスさん・・・」

―リンは全速力でそこから逃げ出した、屋敷をでても、彼女はずっと走り続けた。

リン   「し、知らなかった、妹があんなに厳しいものだなんて知らなかった!!
      無理、私にはぜったいに無理ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

―疲れ果て、帰宅するリン。

リン   「・・・・・・ただいま」
ロイ   「あ、帰ってきた」
アルム  「あ、その、さっきはごめんね」
セリカ  「わたしも・・・言いすぎたみたい・・・」
リン   「ぐす・・・いいのよ、妹属性をつけようとか、私が馬鹿だったのよ。
      明日からは身の程をわきまえて、
      強くて頼れる、いつもの肝っ玉リン姉さんに戻ります・・・」
ミカヤ  「い、一体何があったの・・・?」

―自室に戻り、不貞寝するリン・・・

リン   「グス・・・少女に、歳相応の少女になりたいだけなのに・・・」

―若さを証明するために、妹属性を手に入れようとしたリンディス、
しかし、妹キャラの恐ろしさ、壁の厚さを痛感し、断念せざるを得なかった。。
そんな彼女が、歳相応の若さを取り戻し、自らが少女であることを証明することはできるのか?

終章へ続く