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Last-modified: 2011-06-04 (土) 12:24:06

リーフ  「今日も酷い目に遭ったなぁ……。また帰りが遅くなっちゃったよ」
 例の4人の目の前で偶然通りかかったアルテナにル○ンダイブをかまし、その場にいた全員にフルボッコにされた帰り。
 リーフは手形のくっきりついた頬をさすりながら帰宅した。
リーフ  「ただいまー。……あれ?」
 普段なら先に帰った女性陣や、セリス辺りが笑顔で出迎えてくれるのだが。
 家の中はしんと静まり返っていた。
リーフ  「誰も居ないなんて珍しいな」
 キョロキョロと周囲を見回しながら居間まであがる。
 すると、テーブルの上に一枚メモが置いてあるのに気が付いた。
リーフ  「なになに?『風呂屋 根霊羅巣に行って参ります。
今日は半額サービスデーだそうですよ。このメモを見た方
是非この機会にお出掛けしてみてはいかがでしょう。エイリーク』か。
      皆これ見て出掛けちゃったのかな」
 リーフも一瞬半額、の響きにくらりと来たが。
リーフ  「……いや、やっぱり金払って風呂なんて入れない」
 持ち前の貧乏症が邪魔をし、自然と留守番を決め込んだ。
 と、その時。

????「こんばんは」
 軽く言っているのだが、よく通る男性の声が玄関に響き、リーフの耳にも届く。
リーフ  「あ、こ、この声は!」
 リーフが足早に玄関に向かうと、そこには全身黒っぽいスーツに身を包んだ茶髪の青年が立っていた。
リーフ  「キュアン師匠!」
キュアン 「おお、リーフ……って君、大丈夫か!? 随分ボロボロだな!」
リーフ  「いつもの事ですからどうって事ないです。
      そんな真面目に心配してくれるのは、今や師匠だけですよ」
キュアン 「いつもの……ああ、例のあの子達にやられたのか。
      最近顔を見なかったから、今頃どうなっているかと案じてはいたが」
リーフ  「この通り生きていますとも!」
キュアン 「まぁ君は随分とタフだしな。本人が大丈夫と言うなら心配しない事にしよう。
      さて、私はシグルドが帰っていれば顔でも見るか、と思って
      ついでに寄らせてもらったんだが、まだのようだな」
リーフ  「はい。仕事か、もしかしたら温泉行ってるかもしれませんけど。
      ま、玄関先じゃなんですから上がってって下さいって、師匠!
      お茶位出しますよ!」
キュアン 「いや、この後は議会で勝負がつかなかったラケシスと
徹底的に討論をしてやろうと思っていたからもう……と言うか
何だ、先程から師匠、師匠と」
リーフ  「嫁がいる勝ち組は、漏れなく僕にとっての師匠です!
是非女性を落とすその手練手管、ご教授願いたいぃー!!」
 ズザー
キュアン 「スライディング土下座!?
あのなぁリーフ、私は別にプレイボーイでも何でもないから
教えられる事なんて一つもないぞ。
第一私にはエスリンしか目に入っていないからな」
リーフ  「そのエスリンさんをどうやってゲットしたのかが知りたいんですぅ!!」
キュアン 「困ったな。そういう事はクルトさんとかエルトみたいな
      もっとモテる奴に聞いてくれないか?」
 リーフの勢いに気圧され、後頭部をなんとなくバツが悪そうにポリポリ掻くキュアン。
 しかしふふ、と小さく笑うと、屈んでリーフの肩に手を置いた。

キュアン 「君は若いんだ、焦る事なんかないんだぞ」
リーフ  「え……」
キュアン 「時機がくればおのずと答えは見えてくるさ」
 肩をぽんぽん、と叩くとキュアンは立ち上がる。
キュアン 「君の年上好みにとやかく言うつもりはない。
      ただ君には折角好いてくれている子達がいるんだろう?
      一度彼女達についてじっくり考えてみるのもいいと思うぞ」
リーフ  「うう、で、でもっ、でもっ……!」
キュアン 「男がウジウジするな、全く。
      よし分かった、温泉でもつかりながらゆっくり語ろうじゃないか」
リーフ  「あ、根霊羅巣の入浴券」
キュアン 「一っ風呂浴びてから敵の屋敷に乗り込むつもりだったから
      一枚しか持っていないが、今日は半額らしいからな。
      一言言えば一枚でも入れてもらえるだろう」
リーフ  「あ、ありがとうございます。でもいいんですか?」
キュアン 「何、遠慮することはない、二人で使った方が得だしな」

マルス  「と、女好きな弟が、男性と肩を組みながら
      二人で和気あいあいと家を出て行った訳ですが」
ロイ   「どうしようマルス兄さん。
      僕たちとんでもない物見ちゃったんじゃ……」
 家の前の電柱に身を隠しながら、寄り道で帰りが遅くなっていたマルスとロイが青ざめる。
マルス  「しかしこれは面白い、写真に収めておけば後で色々と利用出来そう――」
 ガシッ
マルス  「え?」
 二の腕を背後から掴まれたマルスが振り返ると、珍しく顔をしかめたセリスが立っていた。
 セリスも生徒会の仕事で遅くなっていたようである。
マルス  「セリス! いつの間に」
セリス  「駄目だよ邪魔しちゃ」
マルス  「いや、邪魔っていうか……」
セリス  「リーフ、前言ってたんだ。キュアンさんといると
      まるでお父さんといるみたいだって」
ロイ   「何だ、お父さんか。良かった……」
セリス  「? うん。僕らは本当のお父さんを知らないじゃない?
      だから兄弟には言い難い事、色々相談してるみたいだよ」
マルス  「リーフ……」
 マルスはリーフがどんな低俗な相談を持ちかけているかなど大方予想はついたが、何となく、構えていたカメラからは手を離す。
マルス  「確かにキュアンさんは、リーフを刺したりぶん投げたり突いたりしないからね。
      自然と安心出来た訳だ」
ロイ   「片や町議会議員、片や普通の中学生であんまり接点ないのにね?」
セリス  「ああ、ロイはあんまり覚えてないかもしれないけどシグルド兄さん達が高校生位までは
      よくウチにキュアンさん、エルトシャンさんとかと遊びに来てたんだよ。
      その時僕やリーフも構ってもらってたんだ」
ロイ   「あ~、何となく覚えてるかも」

シグルド 「くっ!」
セリス  「あ、シグルド兄さ――」
マルス  「うっ!?」
ロイ   「!!」
 セリスに続けて、更にシグルドも帰って来た。ただその両頬を止め処なく涙が伝い、先に来ていた兄弟3人をどん引かせる。
シグルド 「お前らの話は聞かせてもらった! すまないリーフぅー! 私ではやはり父の代わりは無理だったのかーー!」
セリス  「わ、な、泣かないで兄さん!」
マルス  「やれやれ、いい大人が道端で号泣しないで下さいよ、みっともない」
シグルド 「うっ、うっ、私は一体これからどうしたら」
セリス  「大丈夫だよ、リーフだって口には出さないけど兄さんの事信頼してるよ! 僕だって兄さんの事、お父さんみたいに思ってるもの!」
ロイ   「ぼ、僕も僕もっ!」
マルス  「勿論(大黒柱的な意味で)僕もですよ」
シグルド 「ぅお前らーーー!!」
 ガッシィー!!

ミカヤ  「家の前で円陣組んで何やってんのかしら、あの子達」
エイリーク「さ、さあ……?」
リン   「まさか悪だくみの相談じゃないでしょうね」
エリンシア「シグルドお兄様の姿も見えますし、それは大丈夫ではないかしら?」
セリカ  「シグルド兄さんだって怪しいわよ。私はセリスの方が信頼出来るけど。ねぇアルム」
アルム  「そうだねセリカ」
リン   「あんた達、そんな事言ってるとまたティルフィング飛んで来るわよ」
セリカ  「大丈夫よ、最近気付いたの。リーフがいる限り、私達には絶対当たらないから。ねーっ!」
アルム  「ねーっ!」
リン   「それもそうね」
 家の前で団子になっている4人を、事情を知らぬ風呂帰り陣は冷ややかな目で見てしまうのだった。

 因みに脳筋三人組は、それぞれ思い思いに修行していたそうな。

その後

エリウッド「がぼがぼがぼ」

リーフ  「げっ、エリウッド兄さんが温泉に沈んでいるぅー!?」
キュアン 「リーフ! 早く店員呼んで来い!」
リーフ  「助けて店員さん!」
ゴーゴン 「キシャァァァア!」
リーフ  「駄目です、言葉が通じません!」

 でもちゃんと助けてくれました。

エリウッド「ごほっ、ごほっ……あ、ありがとうございます、店員さん……!」
ゴーゴン 「キシャー」←優しく背中を擦ってあげている。
キュアン 「うーむ……人は見かけに寄らないものだな」
リーフ  「……」
キュアン 「ん、どうした、リーフ」
リーフ  「蛇髪のおねいさん……! あ、新たな恋の予感かもしれない……!」
キュアン 「その発想はなかった」