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Last-modified: 2011-06-04 (土) 12:47:44

もはやスレの末端に近いここでこっそり続きの投下をしてみる
前回(>>309-313)

虹シグルド捜索兼討伐を開始して幾ばくか経ち、更に日も傾き
西日が橙色に照らす中、東を見れば、ほんのわずかだが藍色の空が見えるようになり、
肝試しの四番手達(+仕掛け人の三人組)が未だに奮闘している頃
他の家族達は相変わらず木の下でのんびりと思い思いの時間を過ごしていた
日が西にかなり傾いてしまったため木陰の向きも変わるわけだが
心地よい風も吹いているのも幸いし、影に居ずとも過ごしやすい気候になっていた
主に草場に横になっている面々が多かったので、四番手達が廃ビルに入って少ししたとき
エリンシアが一度家に戻り、少々今更だがシートを持参し
木陰の雑草が生い茂っているところにシートを広げ始めたので、
さっきまでその辺で横になっていた者はその上に改めて横になる
元々自然が好きなリンはもちろん、他の面々も自然は嫌いな方ではないため
草場に横になってても一向に構わなかったのだが、
同じシートの上で家族でのんびり雑魚寝してみるのも悪くなかったのだ
エリンシア「どうせだから飲み物も持ってきましたわ」
ヘクトル「お、麦茶だ」
エフラム「ありがたい、何か飲みたかったところだ」
どうやらシートと一緒に飲料も持参してきたらしい
感謝の言葉を述べつつ、各々麦茶を受取る
ミカヤ「出かけに作ったアレ…じゃないわね、時間的にちょっと早いもの」
エリンシア「はい、まだちょっと味が薄かったので…元々あったものを」
シグルド「うん、これもなかなか旨い、そのまだ出来てない麦茶も楽しみだ」
エリンシア「多分、終わって帰る頃には丁度よくなってるかもしれません」
エリウッド「それは楽しみだなぁ」
それぞれ自分のペースで飲料を口に流し込んでいく
一気に飲み干したり、少しずつ飲んだり…
その内の前者であるアイクは飲み終わるなりラグネルを手に立ち上がった
アイク「ふう、さて一息ついたところでまた訓練でもするか」
セリカ「どれだけやれば気が済むのよアイク兄さん…」
この場に会する一同が思った事を代表してセリカが口にした
セリス「…僕もちょっとだけ体動かそうかな」
ヘクトル「お、なんか珍しいな」
セリス「そう?」
アイク「どうせなら一緒にやるか?」
セリス「うーん…じゃあ、お願いしようかな」
アイク「わかった」
セリス「…加減はしてよね?」
どこか一抹の不安を感じながら、アイクが何故か持ってきていた練習用の剣を貸してもらい
セリスはアイクと共に少し離れた場所へ移動した

外でこのような平和な時間が流れている最中、廃ビル内では捜索と討伐という正反対な状況だった…

―廃ビル内部―

ロイ「でりゃあ!」
虹シグルド「グッ」
2Fのある部屋からガインッ、という音が響き渡る
音の正体は紛れなくロイの攻撃を受けた虹シグルド
どうやら1Fで難を逃れた後は2Fに行っていたようだ
アルム「それにしても…討伐開始してからどのぐらい攻撃加えたのかな?」
ロイの攻撃を受け、こちらに飛んできた虹シグルドに軽く打撃を与えながらアルムは疑問を投げかけた
ロイ「どうだろ…他の階でどれだけ攻撃加えたかなんてわかんないし…あっ」
壁に虹シグルドがめり込んでいった、慌てて部屋からでて追うが天井に光が入っていく光景しか見えなかった
アルム「ありゃ、逃げちゃった」
ロイ「なかなかしぶといなぁ」
光が消えていった天井の一角を見据えながらぼやく二人
マルス曰く、本来なら五発ぐらい攻撃を加えれば壊れるとのことだが…
あれから結構時間が経過している、その間他の2チームが全く遭遇していない可能性は低いだろう
先ほど加えた攻撃は二発、時間的にそろそろ破壊できてもいい頃である
ロイ「もしかして耐久力あげたかなルーテさん…」
アルム「その予想が的中なら要らないことしてくれたね…」
どこか重いため息をつき、再び二人は暗い廊下を歩きだした…

―3F―

リーフ「そろそろ壊れてもいい頃のはずだけど」
マルス「そうだね…そろそろ…ん?」
急に少し遠くの床が光りだした、この廃ビルで光るものなど今は一つしかない
リーフ「あ、いた」
マルス「まだ壊れてなかったんだね」
床から徐々に光が出てくる、どうやら2F組から逃げた直後にはち合わせたようだ

ピ…ガガ…ディア…ビー…ドラ

マルス「…なんかノイズが」
リーフ「壊れかけてるのかな?」
ちなみにここまでの攻撃回数は
リーフが2回、マルスが1回、リンが1回、エイリーク…も一応1回(ダメージはないだろうが)
先ほどのロイとアルムの攻撃を加えれば合計7回にはなる
元々スマッシュボールは内に秘められた力の解放のため、それなりに壊しやすく作られているものだ
加えて原料は未だにわからない、ゆえに物質の耐久を上げるのもそう簡単ではないと思われる
仮に耐久を上げることに成功したとしてもそこまで強化はされていないだろう
リーフ「なんにせよ壊れかけてるのなら好都合だね、トドメさしちゃおう」
マルス「あ…ちょっとだけこれ持ってくれる? 落としちゃ駄目だよ」
リーフ「え、こんなときに? まあ、いいけど」
マルスから袋を一つ手渡される、
少し重量があったが片手で持てる重さだった
リーフ(落とすな…か、何か大事なものでも入ってるのかな)

ガシッ

リーフ「へ…ガシッて、マルス兄さん? なんで首根っこ掴んでるのかな?」
いつのまにかマルスの右手がリーフの首根っこをしっかりと掴んでいた
人間だれしも急に首を掴まれれば何事かと思うのが普通である
首が掴まれてる故首が回らないのでリーフは顔を正面に向けたまま問う、
視界にあるのは先ほどより暗い廊下と虹シグルドだけ
マルス「どうせだから今までにない壊し方してみようよ」
リーフ「まあ、それはいいけど、それと僕を掴むことに何の関係があるの」
言葉の上では平静を装ったリーフだったが
どう考えても嫌な予感しかしない、正面を向いたままなのですぐ隣にいる兄の表情は伺えないが
さっきの楽しそうな声色からして何かよからぬ事を考えてるのはこれまでの経験上からわかる、
そしてその経験を積んで肥えた自分の直感が警報を鳴らしている、逃げろ…と
マルス「じきに分かるよ」
リーフ「いや、わかりたくない、だから離して、そしてこのまま目標に近付かないで、ねぇ!?」
マルスが歩みを進め始めた、目標とは言わずもがな虹シグルドである
マルスの歩調に合わせてリーフも歩くことになる、虹シグルドは視界の中心から動かないが
その背景となっている廊下の見える範囲が徐々に狭まっていく…どう考えても確実に近づいている
振りほどこうと思ったが片手が持たされた荷物で塞がってる、
人間というものは大抵荷物は利き手に持つ傾向がある、今のリーフも例外ではなかった
利き手でないもう片方の手では力がうまく入らず振りほどく事が出来ない
リーフ「荷物持たせたのはこのためかぁー!
    しかも掴まれてるの首根っこからして壊し方が絶対マシじゃない、離してー!」
マルス「うん、それ無理」
リーフ「何で!? しかもなんか凄い楽しそうだし! ちょ、走り出さないで、アッーー!!」
マルスが足を速めた…実際は早足程度なのだがリーフには相当なスピードに感じたらしい
どの道歩く速度がどうであれ進めば対象との距離は縮むのだが…
リーフの視界にある虹シグルドが徐々に大きくなっていく、イコール目前に迫っている状態
マルス「逝けええぇぇぇぇ!!」
リーフ「漢字変換最悪! って、ぎゃあああああぁぁ!!!」

バキィンッ!

すさまじい音が響いた、リーフに何があったかはご想像にお任せします

虹シグルド「ディアドラ…スマ…ナイ」

パリンッ…

――砕けた、一瞬だけ辺りに虹色の欠片を散らせて…

マルス「終わり、か」
リーフ「この人でなしー…」
マルスは大きく息を吐いた、事が終わったからだろう
一方リーフは床にへばっていた、漫画だったらヒヨコが頭の周りを回っているだろう
マルス「いやぁ、お疲れ様」
リーフ「まあ、もう慣れっこだからいいけどね…」
痛む箇所を摩りながらリーフが体を起こしたとき、
視界の端に移った自分の体の異変に気づいた

リーフ「何コレ!?」
自分の体が謎の光を発しているのだ
本人は気づいていないが瞳の色も黄色になってしまっている

マルス「実質破壊したのが君だからスマボが君に宿ったんだね」
リーフ「なんか気味悪いなぁ…アレが宿ってるわけだし」
マルス「気にしない気にしない、そうだ、さっき渡した袋は?」
リーフ「あ…袋落としちゃった」
廊下の片隅に先ほど渡された袋が転がっていた、心なしかリーフの顔が青ざめる
マルス「いいさいいさ」
リーフ「あれ、落としちゃ駄目って念を押されたから、何か言われるかと思ったんだけど?」
マルス「だって中身アイク兄さんが暴れた時に壊れた壁の破片だもの」
リーフ「はぁ!?」
マルスが袋を持ち上げ、袋の口を下へ向け、逆さまにする
すると大小様々な壁の破片が重力に従って床に衝突した
マルス「要は君の手を封じられればよかっただけ」
リーフ「たったそれだけのために!?」
マルス「まあまあ、楽しませてもらったお礼に何か奢るから、
    とりあえず他の階の人たちを1Fの…入口付近の受付台辺りに集めてくれる?」
リーフ「すぐに?」
マルス「うん、時間的にもそろそろ終わりにしないとね」
リーフ「この謎の発光体状態で?」
マルス「そうそう」
リーフ「…その間マルス兄さんはどうするの?」
マルス「ちょっと4Fに用があるから、それじゃ」
それだけ言うとマルスは4Fへ向かって走り去ってしまった…
リーフ「あ、ちょっと…! こんな状態で声かけたら絶対何か言われるよ…」
半分諦めにも似た感情を抱きながらまずは2Fへと足を向ける
リーフ「波瀾万丈の肝試しだったなぁ…大半がトラブルだった気もするけど」
とりあえず討伐完了の知らせをするために下り階段へ向かう
次にやる機会があるのであれば、今度は通常通りで普通な肝試しを行いたいと思うリーフだった

その後、1F、2F捜索組に謎の発光体状態で呼び止めに向かったら
その奇妙な有様に全員にまず引かれたのは言うまでもない
瞳の色が黄色になってしまってる事もその時指摘され
トイレにあった少し割れた鏡を覗き込んでリーフは一人苦笑いするしかなかった

―4F―

マルス(ん…これなら)
場所は変わってここは4Fの物置、使用回数残り少ない武器などが残留していたあの部屋である
まだ微かに窓から入る光を頼りに、
マルスは部屋の荷物をガチャガチャと音を立てながら漁っていた
むき出し状態の剣や槍、つまり刃物で怪我をしそうになり
途中冷汗を掻くこともあったが、目的の物を見つけ、それを手にする
マルス(うん、いい感じの剣だ)
手にしていたのは一振りの両刃剣、使用回数が残り少ないだけで、まだ切れ味が残っている
おまけに鞘も見つかった、ついでなのでその鞘に剣を納め、剣を手に腰を上げる

フゥ…

マルス(!)
鞘に納めた剣の柄を手にし、部屋に鞘と剣の擦れる音を響かせながら
剣を引き抜き、後を振り向き刃を向ける、流れるような動作だった
マルス(…?)
しかし壁以外何もなかった
マルス(妙だな…何か気配がしたんだけど)
それもただの気配ではない、背筋に寒気が走るような…
だが辺りを見渡しても何もないし、きっと今日の疲れが出てきたのだろうと自己解決し
剣を鞘に再び納め、扉へ足を向ける
マルス「よいしょっと…! なんでこんな重い扉にしたんだか…」
ちょっと愚痴を吐きつつ、重い扉を開ける
マルス(あとは旗を取って、1Fへ向かえば終わりっと…)
廊下へ出て、重い音を立てて閉まった扉を背に旗の置いてある場所へ足を向ける

―――くすくす…

その後誰もいなくなったその部屋に、誰かが笑っているような…そんな声がした

―1F―
ロイ「マルス兄さんまだかな?」
リーフ「多分、時間的にもう終わらせるって言ってたから旗を取りに行ってるんだと思う」
エイリーク「もう日が暮れそうですからね」
アルム「お腹空いてきた、考えてみればそろそろ夕飯時だよ」
リン「とりあえず待つしかないわ」
入口の受付台付近で待ちぼうけ状態の五人
その辺の壁に寄り掛かる者、待ち人がいつ来るか階段の方を見ている者
待っている間の姿勢は様々だった
リン「エイリーク姉さん? 受付台をさっきから見てるけどどうかしたの?」
今上記で挙げた二例のどちらの行動もとっていなかったエイリークにリンが話しかけた、
エイリークが先ほどから受付台を見ているのだ
エイリーク「いいえ、何も?」
リン(…?)
受付台を見るその瞳の奥になんらかの感情が宿っているのはわかった
しかし笑顔で何でもないと返されてしまってはこれ以上言及はできなかったので
疑問符を浮かべるばかりのリンだった
エイリーク(また肝試しをここでする機会があったらよろしくお願いしますね…)
どうやらすっかり感情移入してしまったようだ
そんな女性二人を余所に男性三人はというと…
ロイ「それにしてもリーフ兄さん、すごい状態だね…」
アルム「写真撮りたくなるね」
リーフ「言わないで、撮らないで」
アルム「はは、ゴメンゴメン」
内にスマボを宿し、怪しさ爆発の外見となったリーフが話題の中心となっていた