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Last-modified: 2011-06-05 (日) 16:16:22

良ネタのラッシュの最中しれっと続き投下
前回(前スレ859-863)

ロイ「その状態になって気分はどう?」
リーフ「良くない、でも内から力を感じるよ、強大なものをね」
嘘ではない、湧水のように次から次へと溢れてくるのを感じる
アルム「アイク兄さんは確かその力を使って大天空使ってたよね…使ってみれば?」
リーフ「使い方がわからない、確かな力を感じるけど、それだけ」
ロイ「仮にリーフ兄さんが使ったら緑の居酒屋のマスターと同じ技になりそう」
リーフ「消極的な領域かい」
アルム「あまり違和感ないね」
自分の周囲に半透明な怪しい色の領域を展開し、その中心で奇妙に舞うのだ
その領域に入ったものは術者の欝な気にあてられ、
感覚がマヒしたり、頭の上に花が咲いたりと様々な効果を与える…
リーフ「我ながらはまってると思うけど、とりあえず褒めてないよね?」
ロイ「あ…いや、その」
リーフ「大丈夫、使うと多分今の例みたいな技になりそうな気はしてたから」
アルム(そんなあっさりと…苦労してるんだなぁ)
失言だと気づいたロイは思わず動転してしまったが、
本人は全く気にしてないらしく、手をヒラヒラさせながら笑顔のままだった
その様子が自分の普段のポジションがどんなものか受け入れてしまってるように見え
アルムは思わず同情してしまった、気にしてないようなのでロイも安堵する
ロイ(大丈夫、いつかは報われるよ、リーフ兄さん…!)
同時に心の中で握り拳を作りながら涙を流すロイ、リーフの未来に幸有れ
リーフ「それにしても早くこの状態どうにかしたいな、いっそ使っちゃいたいけど…」
アルム「うーん…どうすればいいのかな?」
ロイ「マルス兄さんが来たら聞いてみれば?」

――「生憎だけど、君には使用できないと思うよ」
突如階段の方から声が聞こえた、
コツコツと靴音を鳴らしながら影からその姿が徐々に現れる、マルスだった

リーフ「あ、マルス兄さん、おかえり」
アルム「おかえりー、それで使えないってどういうこと?」
マルス「ただいま」
笑顔で返すマルス、右手には赤い旗が一つ、他には何も持っていなかった
マルス「君たちの疑問に関してだけど、リーフも感じるでしょ? 強大な力を」
リーフ「うん、すごい力…」
もう一度自分の体を見るリーフ、相変わらず謎のオーラを発しているが、
先ほども述べたが確かに湧き上がるような力がある
マルス「力というのは強大なものであるほど不安定だ、
    そんな不安定な力が誤って発動したらどうなるかわからない」
ロイ「だから大会参加者だけに使用方法が教えられるってこと?」
うーん…とマルスは頭をかきながら言い淀んでいる、適切な言葉を探しているようだ
やがて口を開き、こう言った
マルス「使用方法というより資格かな」
アルム「資格…」
オウム返しのようにアルムが口にした資格、という言葉

マルス「そう、資格、これがないものはスマッシュボールは扱えないんだ
    僕が今日こんな場所にスマッシュボールを持ち出したことで、
    トラブルがあって大会関係者でない人が力を得たとしても大丈夫なようにね」
ロイ「強すぎる力は己を滅ぼす…よくあるフレーズだよね」
マルス「力を得るってことは代償が伴うってことさ…」
リーフ「ねぇ、なんか真面目な話の最中悪いけど…ってことは僕一生このまま?」
おずおずと話に割り込んだのはリーフ、先ほどの会話の内容から自分なりに導いた結論が正しいか問う
もちろん否定してほしいという態度は全面的に出したつもりだった、それに対するマルスの回答は
マルス「うん」
間を開けずの清々しいほどの即答と笑顔だった
リーフ「あっさり肯定しないでよ! どうすんのコレ!! しかもそんな笑顔で!」
マルス「冗談冗談、後でちゃんとどうにかするから」
リーフ「脅かさないでよ…本当に」
胸に手を当て安息するリーフ、いまいちこの兄の発言は本気か冗談かわからない
マルス「おっと、そうだ」
アルム(?)
突如思い出したかのように女性二人組の方へ歩み寄るマルス、
厳密に言うとリンの所へ…しかも何故か背後から気付かれぬように
ロイ(またロクでもないことを企んでるんじゃ…)
数秒後、ロイの予想は的中することになる

コンッ
リン(?)
マルス「お、乗った乗った!」
リンの頭に赤い旗が置かれる、綺麗にバランスが取れているようで揺れもせず落ちない
リンの髪の色が緑なので赤は反対色となり、よく目立つ
リン(…)
マルス「いやー意外とあっさり乗るものなんだn…アイダダダダ!!!」
自分の頭から即行で旗を取り、マルスに綺麗に関節技を決めるリン
リン「何子供みたいな事してんのよアンタは!!?」
マルス「痛い痛い!! リン姉さんもこれぐらいで怒る時点で子どm…ギャアアアアア!!」
ロイ(真性のアホだ…)
エイリーク(相変わらず仲が良いですね)
アルム(なんで懲りないかなー…まあ、なんとなく理由はわかるけど)
リーフ(何度見たかなぁ…マルス兄さんがリン姉さんに締め上げられるのって)
繰り広げられてる事は非常にバイオレンスだが、
見る人(エイリークとか)が見れば微笑ましいやりとりとなる、奇妙な光景をしばし傍観する他四名
やがて決着がついたのかリンが旗を手に四人の元へ来た、
マルスの末路に関してはわかりきってるので割愛させていただく
リン「さて、そろそろ帰りましょ」
アルム「う、うん」
エイリーク「わかりました、それではお先に失礼しますね」
ロイ「あ、うん…お疲れ様ー」
どこかすっきりした表情のリンを先頭に4番手達が廃ビルを後にした
リーフ「マルス兄さーん、生きてるー?」
マルス「う…今日も生き延びる事が出来た…」
ロイ(最初からやらなきゃいいのに…)

しょうがないのでマルスに傷薬を使ってやるロイ
ある程度回復したところでマルスがゆっくりと体を起こす
マルス「生き返ったぁー」
ロイ「とりあえずこの後どうするの?」
リーフ「まず僕をどうにかして…」
さっきからずっと発光体状態のリーフは心の中で泣いていた…
マルス「ああ、そうか…ロイ、外で待ってる皆に
    片付けとかは僕達がやっとくから、肝試し終了、お疲れ様って伝えてくれる?
    僕とリーフで後始末するから君も帰っていいよ」
ロイ「え、二人じゃ大変じゃない?」
マルス「大丈夫大丈夫、すぐに終わるから」
リーフ「うん、この程度なら二人でどうにかなりそう、気にしないで」
ロイ「んー…じゃあせめて荷物だけ持っていこうか?」
マルス「ああ、そうしてくれるとありがたいかな」
リ―フ「討伐後、皆を呼びに行く時に思い出してここに持ってきてあるよ」
ロイ「わかった、これだね…よっと」
三人が持参した使わなかった仕掛けやらを詰め込んだ各袋を手にするロイ
結構重いが二人に片付けを任せることを思えば対した重さに感じなかった
ロイ「じゃあお言葉に甘えるよ、今日はお疲れ様ー」
マルス「お疲れ様ー あ、そうだ、スマッシュボールに関しては他言無用だよ」
リーフ「お疲れー、荷物よろしくね」
ロイ「了解、任せてー」
荷物を手に、ちょっとよたつきながらロイも廃ビルを後にした
…廃ビルから出るところを全く事情を知らない人が見たら彼を盗賊と思うかもしれない

肝試しは終わり、ロイに他の家族達に言伝を頼み、
これで現在廃ビルに居るのはマルスとリーフの二名のみとなった
マルス「さてと、まずは君のスマッシュボールだ」
リーフ「待ってました! 早くどうにかして!」
長く待ちわびた事にようやく触れられたことに、目を輝かせるリーフ
現在目が本当に輝いている状態でマルスに期待の眼差しをおくるのを一旦マルスは手で制した
マルス「少し待って、どうにかするにあたって必要なものがある」
リーフ(?)
階段の方へ走っていくマルス、姿が見えなくなってから数秒後ぐらいに再び戻ってきた
その手には剣と小さな袋があった、剣は4Fから持ってきたあの剣である
リーフ「ちょ、何する気!?」
マルス「誤解しないように、君を斬るためじゃないよ」
いきなり武器を手に戻ってきたマルスにリーフは危機感を覚え逃げようとしたが
返されたマルスの言葉に安堵し、居住まいを正した
リーフ「じゃあ何のために?」
マルス「まあ、すぐにわかるよ」
右手で柄を掴み、左手で鞘の真ん中を掴むマルス
そのまま右手だけを動かし、凛とした金属音を響かせながら
鞘から剣を引き抜くと鞘はその辺に放ってしまう、
どこかから差し込むわずかな光がその剣の金属独特の光沢を見せる

リーフ「なんか大丈夫と言われても不安なんですけど、本当に僕に使わない?」
マルス「だから君に使うわけじゃないって、とりあえず動かないでね」
リーフ「う、うん…」
マルス「あとちょっと痛い目に遭うけど許してね、じゃあいくよ!」
リーフ「え! そんなの直前に言わないd、ゴフッ!」
突如リーフをマルスの拳が襲った、
リーフが痛みを感じると同時に何かが抜けそうな感覚がすると思ったら
次の瞬間には今まで感じていた強大な力が抜けていた
そして…ほぼ真っ暗な空間にデジャヴを感じる虹色の光が視界に飛び込んできた
虹シグルド「ヤッフー!」
リーフ「げ! 復活しちゃった!」
マルス「そこだっ!」
虹シグルド復活と同時にマルスは手にしていた剣で的確に虹シグルドをとらえた
虹シグルド「コノヒトデナシー…」
パリンッ…と再び虹シグルドは破壊され、
剣が一閃する頃には虹シグルドはまた消失してしまった
マルス「うまくいったか…」
リーフ「おお、今度はマルス兄さんがオーラを発してる」
さっきまでのリーフの状態がマルスに移った、言いかえればスマボがマルスに宿ったのだ
マルス「よし、これで…」
リーフ「え、どこ行くのマルス兄さん?」
まだその形を保っている剣を手に急に歩き出すマルスをリーフが慌てて追う
ついていった先には…
リーフ「ここって…」
マルス「そう…」

マルス「地下への扉さ」

目の前には開かずの間となっている地下へと続く扉があった、
今もなおその扉は固く閉ざされている
リーフ「ちょ…まさか」
マルス「そのまさかさ、ちょっと下がっててくれる?」
リーフ「了解」
リーフが後ろに下がったのを確認し、マルスは扉を見据え、剣を構える

――必 殺 の 一 撃 ! 

剣を上にかざし、光を発した次の瞬間目にもとまらぬ速さで扉との距離を詰める、そして…

ズガアァァァァンッ!!!

けたたましい音が廃ビル内に轟いた

リーフ「すごい威力…これがスマッシュボールの力…」
マルス「…ふぅ」
力を使い果たし、マルスの体からオーラが消える、真の意味でスマボは消失したのだ
さらば虹シグルド、フォーエバー…
マルス「うまくいったね」
満足げに微笑むマルス、固く閉ざされていた扉は吹っ飛び、地下へと続くその口をのぞかせた
手にしていた剣は威力に耐えられずヒビが入り、壊れてしまった

リーフ「さて、マルス兄さん、地下へ行こうか」
マルス「乗り気だね、どうかしたの?」
破損した剣をその辺に放りながらマルスは尋ねた
リーフ「乗り気も何も、肝試しの前に言ってたじゃないか、
    別件で僕に手伝ってほしい事があるって、だから…」
マルス(…)
まだリーフの言葉に続きがあると察し、マルスは沈黙を貫いた
予想通り、リーフは言葉を続ける、
リーフ「ロイを先に帰したのもこのためだったんじゃないの?
    スマッシュボールを破壊するときに僕を酷い有様にしたのも
    純粋に楽しむため…もあったかもしれないけど、
    本当の目的はマルス兄さんがスマッシュボールを宿すことで
    誰かに『とっとと使ってしまえ』と促されないようにするためじゃないのかな?
    この扉を開ける手段が無くなってしまうからね、
    加えてわざわざ地下への扉を開けるってことは地下に用がある以外に他ならない」
マルス「…ははは! 伊達に家族じゃないってことか、良い読みだ」
閉ざしていた口から笑い声を発し、いつものように何らかの意図を含んだ笑顔でなく
屈託のない笑顔で笑いはじめた、彼にしては少し珍しい笑い方にリーフは少し驚いた
やがて笑いを抑え、マルスは言葉を続けた
マルス「その通りだよ、君に手伝ってほしい別件というのは地下に関係している
    これまでの僕の行動の裏は君が今述べたとおりだよ、ただ…」
リーフ「ただ?」
マルス「一つだけ、ちょっとした穴があるな」
リーフ「穴?」
マルス「スマッシュボール破壊のため君を使ったのは楽しむためも
"あったかもしれない"じゃなく、楽しむためも"あった"んだよ」
リーフ(穴ってそこ!?)
思わず開いた口がふさがらないリーフ、この兄は根から腹黒なのだと再認識したのだった
リーフのその反応に満足いったのか、先ほど剣と一緒に持参した小さな袋を漁るマルス
マルス「はい、コレ」
唐突に手渡される少しだけ厚みのある若干大きめの一枚の布
リーフ「え、え? これ何?」
マルス「ハンカチだよ、見ればわかるでしょ」
リーフ「なんでこんなのを…」
マルス「あのね…僕達がこれから行くところは何年も閉ざされていた地下だ、
    地下ってことはほぼ密閉空間だ、どう考えても埃が充満してるでしょ」
リーフ「なるほど、納得」
二人でハンカチを鼻と口を覆うように身につける
埃が充満してる故目も辛くなるかもしれないが、目まで覆ってしまっては何も見えない
マルス「あまり長時間いると健康的によろしくない、迅速に済ませるよ」
リーフ「了解っと」
足を地下への入口へと向ける二人、何年も閉ざされていた空間へ足を踏み入れ…

――「ちょっと待ちなさい」
ようとしたその直後、二人の背後から声が聞こえた
リーフ(!!?)
マルス(この声って…!?)
思わず背後を振り返る二人、そこには
リン「どう見ても後片付けって雰囲気じゃないわね、何してるのよ?」
ジトっとした目で見る姉の姿があった
マルス「リン姉さん!? なんで…」

――「あのー…」
ここにいるのとリンにマルスは問おうとしたがもう一つの声にそれは遮られた
マルス「まさか、今の声は…」
セリス「えと、こんにちはー…」
リーフ「え、えー!?」
リンの背後から控え目に出てきた人物はセリスだった
地下への入口を前に何故か合流してきたセリスとリンに
マルスとリーフはしばらく絶句していた