2-12

Last-modified: 2007-06-15 (金) 22:11:18

おねいちゃんのおひざ

 

エリンシア 「あ、ロイちゃん」
ロイ     「なに、エリンシア姉さん? お使いかなにか?」
エリンシア 「ううん、そうじゃなくて……ちょっと、こっちへいらっしゃい」
ロイ     「? いいけど、一体なに……うわっ、ちょ、何するの姉さん!」

 エリンシアはソファーに座りながら、ロイを無理矢理自分の膝の上に抱きかかえた。
 男とは言えまだまだ子供と言っていい年頃、その上平均的な体格よりも多少背が低く華奢なロイは、
 少々窮屈ながらも姉の両腕の中に収まってしまう。

エリンシア 「ふふ……やっぱり、昔よりずっと重くなったわね、ロイちゃん」
ロイ    「あ、当たり前だよ……僕もう中学生だよ? は、離してよ」
エリンシア 「どうしてそんなに嫌がるの? 昔はセリスちゃんと一緒に私のお膝を取り合いっこしてたのに」
ロイ    「それは、今よりずっと子供の頃の話だよ」
エリンシア 「じゃあ、もう姉さんのお膝の上は嫌い?」
ロイ    「べ、別に嫌いって訳じゃ……」
エリンシア 「それじゃ、もう少しこのままで、ね?」
ロイ    「うー……わ、分かったよ……」
エリンシア 「……」
ロイ    (……は、恥ずかしいなあ。エリンシア姉さんはまだ僕のことちっちゃい子供だとでも思ってるのかな?
       あああ、こんなところマルス兄さんやヘクトル兄さんに見つかりでもしたら、後々までからかわれて……)
エリンシア 「……ロイちゃんは、やっぱり男の子ね。昔と同じで、お日様の匂いがするもの」
ロイ    「……それは、僕がまだ子供っぽいってこと?」
エリンシア 「ううん。そういうことじゃないのよ。ただ、ね……」
ロイ    「わっ、ど、どうしたのエリンシア姉さん、急に泣きだりして」
エリンシア 「……ふふ、ごめんなさいね、嬉しかったものだから、ついね」
ロイ    「嬉しいって……何が?」
エリンシア 「あんなに小さかったロイちゃんが、こんなに大きく、元気に……それに、優しい男の子に育ってくれて」
ロイ    「……」
エリンシア 「でも、そうね。ロイちゃんももう小さな子供じゃないんだもの。
       もうすぐ、本当に私のお膝の上から離れていってしまうのね」
ロイ    「……やっぱり、そういうのって寂しい?」
エリンシア 「……とても嬉しいのだけど、ほんの少しだけ寂しい……そんな、我が侭な気分。
       でも、それでいいの。ロイちゃんは男の子だもの。
       いつまでも姉さんのお膝の上では、物足りなくて我慢できなくなるのが自然なのよ。
       私にはロイちゃんをずっと縛りつけておく権利なんてないし、そうするつもりもないわ」
ロイ    「……でも、多分、忘れないと思うな」
エリンシア 「……? 何を?」
ロイ    「だって、ここはこんなに暖かくて、居心地がいい場所なんだもの。
       僕はもうすぐ姉さんの膝の上にはいられないぐらいに、大きくなってしまうかもしれないけど……
       この暖かさをくれたエリンシア姉さんのことは、絶対に忘れないよ。
       どんなに遠くに行っても、きっとこの暖かさを覚えていて、いつかは帰ってくると思う」
エリンシア 「ロイちゃん……」
ロイ    「……ははは、何言ってるんだろ、僕。我ながら恥ずかしいな……」
エリンシア 「……」
ロイ    「わぁっ、な、泣かないでよ姉さん。大袈裟すぎてこっちが恥ずかしくなるよ」
エリンシア 「うふふ……やっぱりロイちゃんはロイちゃんね。いくつ歳を取っても変わりない、とっても優しい男の子」
ロイ    「……あ、あの、姉さん。この姿勢でそんなに頭を撫で回されるのはさすがに……」
エリンシア 「だって、ロイちゃんをお膝の上に乗せられるのは後少しだもの。
       今の内にたくさん可愛がって、もっと私のこと覚えていてもらわなくてはね」
ロイ    「だ、だからって……ちょ、止めてってば姉さん!」

ミカヤ   「……くぅ、エリンシアったら、なかなか素敵なおねいちゃんぶりだわ。
       これは長女としてわたしも負けていられないわね……」
???   「ただいま」
ミカヤ   「あ、いいところに……ちょっと、こっちへいらっしゃい」

 ~三十分後~

ミカヤ   「……ぐぅっ……!」
アイク   「……」
ロイ    「うわぁ、アイク兄さんを膝の上に乗せたミカヤ姉さんがヤバ気な顔色になっているーっ!?」
リーフ   「この人でなしーっ! っていうか、何やってんのアイク兄さん!?」
アイク   「いや……膝の上に乗れと言われたから、そうしているんだが……」
ミカヤ   「……ふ、ふふふ……こ、これでわたしも素敵なおねいちゃん……!」
ロイ    「何言ってんのーっ!?」
リーフ   「ミカヤ姉さんの顔色がレッドゾーンを突破して危険すぎる土気色に!」
ロイ    「アイク兄さんも少しは疑問に思ってよこの体勢!」
アイク   「いや……てっきり、そういう訓練なのかと思ったんだが。違うのか?」
リーフ   「んな訳あるかーっ!」
ミカヤ   「……あ、アイクは、もうわたしのお膝の上には収まらない男なのね……」
ロイ    「見れば分かるでしょうがそんなこと!」
リーフ   「あああ、ミカヤ姉さんの目玉がじょじょにひっくり返っていく……!」
ロイ    「あ、アイク兄さん、降りて降りて!」
アイク   「……しかし、『わたしがいいと言うまで降りちゃ駄目よ』と言われていてな」
ミカヤ   「……」
リーフ   「いや、もう既に何か言える状態じゃないってば!」
アイク   「だが、自らの意思で自分の限界に挑んでいる人間を止めることは、俺には出来ん。礼儀に反するからな」
ロイ    「礼儀とかそういう問題じゃないから! うわぁ、潰れる、潰れるぅーっ!」

<おしまい>

 

便乗ネタ2-14