20-12

Last-modified: 2011-05-30 (月) 21:53:06

イリオスVSオルエン?再び

マーティ「ふぁいとぉ~~~!!!!」
ダグダ「いっぱぁ~~~つ!!!!」
崖から落ちそうになったマーティがロープにしがみつき、ダグダが豪腕で引き上げる。
しっかし、こういうCMなら人気のあるバアトル使えばいいのによ。一般人使って安くあげやがった。
フリージからがっぽり制作費もらってるクセにケチな社長だ。

俺たちはフリージのSドリンクのCM撮影にマレハウト山脈に来ていた。
岩の落ちてくる危険な場所だ。
ちなみに俺はロープで崖から吊るされている。アングルの関係で下からダグダを撮るためだ。
クソ、生きた心地がしねえ。
本来カメラはユアンの担当なのに、マレハウトでガチムチを撮ると聞くと仮病使いやがった!あのクソガキ!

シャナム「カーット!よしこんなもんだろう」
ダグダ「ガハハハハハ!まさかワシにTV出演の依頼がくるとは!これはエーヴェルがワシに惚れる日も近いな!」
マーティ「お…俺もTVに出れるんスよね?ワクワクするっスよ!」
タニア「じゃあ昼メシにしよーぜ!さっき射ち落としたばっかの鳥肉だぞ!」
セーラ「つーかさ社長、なんで私たちまで呼ばれてんのよ?」
シャナム「人手がないんだ、文句言うな」
セーラ「アシスタントなんてアイドルにやらせんなっつーの!」
ドロシー「ところで何か忘れてません?」
シャナム「オルエン様がおらん!大事なスポンサー様だ!早く探せ!」

崖の上からそんなやり取りが聞こえてくる。
イリオス「忘れてんのは俺だ!早く引き上げてくれ~!」
ちくしょう!いつまでロープで宙ぶらりんにしとく気だ?
くそ~業務用カメラって重たいんだぞ!

その頃オルエンは少し離れた高台にいた。
撮影に立ち会った後、物珍しい山を見て歩いていたのだ。
オルエン「まあ、これはなにかしら?」
台の上に岩が乗せてある。そばの看板には一言「押してくださいbyボルトアクス将軍」と書かれている。
オルエン「押せばいいのね、んしょっ」
体を預けて岩を押す。
岩は台座を離れ、麓へと転げ落ちていった。
オルエン「…?結局これはなんだったのかしら?」

シャナム「うお!岩が落ちてくる!?」
ダグダ「いかん!マレハウト名物落石だ!」
ドロシー「みんな逃げてー!」

イリオス「あん?上が騒がしいな!いいから早く引き上げろよ!」
その時上から岩が転げ落ちてきやがった!?
イリオス「うぎゃあああああ~~~!」
宙ぶらりんじゃ避けようがねぇ!
まともに直撃を食らった俺は崖下へと落ちていった。

シャナム「おお、オルエン様お姿が見えないので心配いたしました」
オルエン「ごめんなさい社長、こういう岩山は初めてだからつい物珍しくて…」
ドロシー「やっぱり貴族のお嬢様って感じですねオルエンさん」
セーラ「けっカマトトぶりやがって!」
タニア「なんにしても見つかってよかったよ、メシにしよーぜ!」
オルエン「まあ、イリオスが見当たらないわ、どうしたのかしら?」
ダグダ「そういえばおらんな」

崖下で岩に潰されてた俺が救出されたのはそれから二時間後だった…
くそう!やっぱりオルエンのヤツと近くにいるとロクでもない目にあってばっかりだ!
おまけにカメラはオシャカ!
撮影やり直しの上、カメラ代は給料から引かれるハメになっちまった!

オルエン「あの…社長、カメラ代は制作費に上乗せしてもらって大丈夫ですから…」
シャナム「いえいえ、うちのスタッフの不手際ですから、そこまでしていただいては申し訳ありません」
(この機にもっとフリージとお近づきにならねば)
イリオス「出してもらったっていいだろが!これは事故だー労災を要求するー!」
セーラ「うっさいわねぇ、ホレライブ、感謝しなさいよ」
オルエン「大丈夫イリオス?話には聞いてたけどマレハウトって本当に危険な場所なのね、
まさか自然の落石がおこるなんて」
イリオス「大丈夫なわけねえだろが!くそぉ3ヶ月の給料がパアだ…」
ああ…業務用カメラってのはくそ高ぇ…当分わずかな貯金切り崩しながら、
切り詰め生活だ…orz

あの悪夢の日から2ヶ月…水と米で食いつないでいたがついに水道も止められた…
ああ、腹減った…
ボロアパートの家賃に貯金は消えた。電気も止まった、好きなゲームもできねぇ…

今日は休みだが金がないし、動くと腹が減る…
イリオス「…く…くそ…しんどい…明日の分の米食っちまうか?」
い…いや…いかん…明日食うものが無くなる。…しかし、一日一握りの米じゃ限界だ…
耐えかねた俺は、自給自足に出ることにした。竹をぶった切って釣竿を作ると川原でミミズを捕まえる。
そう、釣りをするんだ。

釣り糸を垂れる俺…釣れねぇ……い…いや、釣りは根気だ…
しばらく待ってるとなんかかかった!大きい!
イリオス「逃がすかぁ!うおりゃあ!」
最後の力を振り絞って引き上げる!…やったぜ上がった!
リーフ「あいたたた!釣りか、しまった!」
イリオス「げっ!川の中で何してやがんだ!」
リーフ「いや、魚を捕ってたんだよ、魚屋に卸そうと思ってね。そしたらちょうどお腹がすいた所に
ミミズを見つけたからつい食いついちゃったよ」
見ると奴は籠を抱えてる。泳ぎながら魚を捕まえていたようだ。
イリオス「ええい、俺のミミズ食いやがった代わりにその魚よこせ!」
リーフ「やだよ!僕だって半日がかりで集めたんだ!」
野郎、脱兎のごとく逃げ出しやがった!…今の俺にそれを追う力はなかった…

オルエン「じゃあフレッド、ここで待っていてね」
フレッド「かしこまりました、お嬢様」
私はお嬢様が小汚いボロアパートの2階にあがっていくのを見送ると、いつものように密かにお嬢様を追う。
それがボディガードたる私の役目だ。
本来ならこのような平民のアパートにお連れしたくはなかったのだが、お嬢様のご意思ではやむをえない。
オルエン「最近なぜかイリオスが元気ないみたいなの…痩せちゃってて心配だわ…
そうだ!なにか栄養のある物を用意して持っていってあげましょう!」
ちなみにお嬢様は平民を苦境に追い込んだ落石が、ご自分の手によるものとはお気付きになっていない。
まあ、どうでもいいことだが。
…そういうわけで、メイドに弁当を用意させ、平民めのアパートに届けに来たわけだ。
そのような事、下男にでもお任せくださいと申し上げたのだが、是非ご自分でお手渡しされたいとの事。
……お優しい方だ…だが私はカラオケボックスで平民めが仕出かそうとした事を忘れてはいない。
注意せねば…

オルエン「この扉、ドアノッカーついてないのね…ごめんくださーい」
だが、返事はない。平民めは留守のようだ。
私は正直ほっとした。あまりお嬢様に卑しい者を近づけたくはない。
だが、お嬢様は…。
オルエン「あら?開いてる、お邪魔するわねイリオス」
そして平民の部屋に上がっていかれた。私はいつものように壁紙に身を隠すとその後を追う。
火消しに大金払って教えてもらった能力だ。お嬢様に気付かれたことはない。
オルエン「ここがイリオスのお家?…ひょっとして物置と間違えたのかしら…」
そういって小首をかしげられるお嬢様。お嬢様は平民の暮らし向きなどご存知ない。
もっともそんなものを知る必要もないが。

とりあえず私はお嬢様のお目汚しになるような物を、素早く片付けた。
エロ本と洗濯してないパンツだ。こんな汚らわしい物をお目にかけるわけにはいかない。

オルエン「イリオス、お留守なのかなあ…少し待ってみよう…」
そういってお嬢様は埃っぽい畳の上にお座りになる。くそ、この部屋掃除してないな!
お嬢様がご病気にでもなったらただじゃおかんぞ!

イリオス「…葉っぱにまで食い物を取られた…もう駄目だ…こうなりゃ恥も外聞も捨てて、
墓で供え物でもあさるか…」
俺はヨレヨレになりながら墓地へ向かう…そしてゾンビやスケルトンにフクロにされた…
畜生!いつもならあんな連中にやられたりしねぇのに!

結局なにも得ることが出来ずにアパートに帰る…くそ、これもフリージのCM撮影なんかに参加したからだ!
オルエンの奴に悪気がなくても、アイツと関わると不運な事ばかりおきやがる!
イリオス「…?アパートの前に止まってるのはオルエンの高級車じゃねぇか?」
…くそ…俺は自転車も持ってねぇってのに…それよりアイツが来てんのか?
俺は2階の俺の部屋に戻る。そういや鍵かけ忘れてたな。

部屋ではオルエンの奴がちゃぶ台に突っ伏して寝ていた。
イリオス「…俺の汚い部屋が掃除されてやがる。まさかコイツがやってくれたのか?」
フレッド「…掃除したのは私だ。こんな汚い所にお嬢様を置いておけんからな」
イリオス「うわぁっ!いきなり背後から話しかけんなよ!?」
フレッド「…それより遅いぞ平民!お嬢様が待ちくたびれてお休みになってしまったではないか」
イリオス「そういやコイツ何の用だよ」
フレッド「オルエン様とお呼びしろ!…フン、お嬢様のお心遣いありがたく頂戴するんだな、
だが思い上がるなよ、平民が」
言うだけ言うと野郎は偽装用の壁紙柄の布の裏に入りやがった。なに考えてやがんだ?

オルエン「…ふぇ?なんの騒ぎ…?」
今の騒ぎで目が覚めたようだ。
イリオス「なあ、何の用だよ?」
オルエン「あっイリオス!ごめんね勝手に上がっちゃって!」
正直コイツに会うとまたろくでもない目に合いそうで不安なんだが。

オルエン「はい!これ!お弁当!」
イリオス「へ?」
俺はつい間抜けな声をあげちまった。
オルエン「最近イリオス元気ないみたいだから用意してきたの」
イリオス「わざわざ俺のためにか?」
コイツが天使に見えた。ありがてえ!これで餓死しなくてすむ!
しかし、こうまでしてくれるってやっぱコイツ俺に気があるんじゃ…
オルエン「だって大切なお友達だもの」
にっこりといい笑顔で返しやがった。まあ、そんなもんだよな。

ありがたく俺は弁当をがっつく事にする。うめぇ!生き返る!
どれも俺の人生に無縁な山海の名物ばかりなんだろうな!とにかくうめぇ!

俺ががっついてる間、オルエンの奴はニコニコと楽しそうに俺が食ってる姿を眺めている。
弁当は5分ですっからかんになった。美味かったぜ…

オルエン「思ったより元気そうでよかった!…それじゃそろそろ帰るね」
イリオス「…もう帰るのか?茶くらい出すぜ」
オルエン「お休みの日は門限がうるさいの、平日はお仕事って事で大目に見てくれるんだけどね」
イリオス「…ああ、だからこないだのカラオケんときは遅くまで遊べたのか」
コイツお嬢様だからな…そういう事なら引き止めちゃ悪いか。
オルエン「それじゃまたね!」
イリオス「ありがとよ!助かったぜ!」
車まで送ると手を振る俺。オルエンはフレッドのドアサービスで後部座席に乗る。
フレッドの野郎いつの間にか車に戻ってやがった。
やっぱりコイツ忍者なんじゃねえか?

オルエンを見送った俺は部屋に戻ると弁当の味を思い起こす。
イリオス「ああ…美味かったぜ…俺もいつか貴族になって毎日美味い物食えるようになってやるぜ…」
しかし、いいやつだよなぁ…
友達ってもここまで心配してくれるとは…
アイツといるとロクなことがないなんて思って悪かったよなぁ…
どれも善意でしてくれてる事なんだしよ…

そんな事を思いながらふとんをしく。明日も早いんだ。
その時俺の体は異常を感じ取った。
イリオス「ふぐぉ!」
は…腹が猛烈に痛み出しやがった!?
ぐきゅるるるるるる!
何故だ!?腹壊すような物食った覚えは…

その時、俺はオルエンが俺を待つ間、弁当を置いてた場所を思い出した!
たしか棚の所に置いてたよな?…窓から直射日光のあたる…
それにアイツ何時間待ってたんだ?その間、あの弁当は夏の日差しをモロに浴び続けたのか!?
前言撤回!やっぱヤツに関わるとろくな目にあわねぇ!
イリオス「ぎゃあああああああ!!!!正露丸正露丸!!」
慌てて薬を飲むが時すでに遅し……
俺はトイレの住人となり、折角得た栄養は全て体の外に出しちまった…
やせこけて骸骨のような有様だ……こういう時はなんて言うんだっけ?

セネリオ「酷い有様です」

お嬢様は帰り道の車の中で、しきりに平民に施しをされたことを語っておられた。
オルエン「それでね、イリオスってばとっても喜んでくれたのよ!
病気じゃないかって心配してたけど、元気そうでよかったわ」
フレッド「それはようございました」
平民めが、お嬢様のお慈悲を自分への恋愛感情などと勘違いしてはいないだろうな。
まあ、今頃下痢に苦しんでいるであろうが、それをあえてお嬢様に申し上げる必要は微塵もない。
あの場で弁当が痛んでいる事を伝える程、私はお人好しではないし、
私は車で待ってることになってたんだからな。

それにしてもお嬢様は本当にお優しい方だ。かつてのご学友とはいえ、
あんな下賎な振る舞いをする者にも施しをされるとは。
カラオケボックスの件を思い出すとハラワタが煮えくり返る。
お嬢様は世間にどれほど狼がいるかご存じない。
もっともそんな下賎な事を知る必要もない。
私が命を賭けてお守りするからな。

お嬢様の笑顔に心慰められながら、私は車を屋敷へと向かわせるのだった。

終わり