3-442

Last-modified: 2007-11-09 (金) 23:28:14

実は全部チェイニーの仕込み

 

夢を見ていた気がした。 闇夜に向かう黄昏時に二人、大きな橋でずっと話していた気がする。 泣くそいつをひたすら慰め、泣き止んだそいつは言った。
「ユリウス・・・・・・僕、君の事が・・・・・・」

 

「うわーっ!?」
「五月蝿いですよ。」
「ぐぇっ!!」

 

 起きて早々妹のナーガ、目覚ましとしては手痛い一撃。目覚めスッキリというより凄く眠くなる。

 

「はい、リフ薬。お早うございます、ユリウスお兄様。今日も磨きがかかっていますね。」
「(リフ薬飲み終えて)ん、美しさか?策謀か?」
「意味不明具合です。では遅刻したくないので、私はこれで。」
「胸無いくせに・・・・・・。」
「何か言いましたか?」
「イエ、アリマセン。」

 

 そういって部屋から出て行く音がして、いつも通りの朝のやり取りは終わった。何だかんだ言いながらもユリアは僕を起こしに来る。
 素直じゃない奴だ。

 

「いや、それはユリウス様の壮絶な勘違いです。」
「黙れフィーア、お前いつから鷺の民になった。」
「ユリア様と話した後のユリウス様が考えることなんて想像が容易ですよ。」
「まぁいい。それより飯だ。あと制服取り出せ、学校行く。」
「承知しました。」

 

 五月蝿い執事とのやり取りも終え、朝食をとり、学校へ向かう。僕の登校は遅い。ユリアに比べて起きるのが遅いのも理由だが、最大の理由はあの変な家に住むいけ好かない女男だ。小さい頃はよく遊んだものだが今では殆ど遊ばない。学校に一緒に行ったのも遠い昔の話だ。
 こうなったのは中学に入った頃からだろうか。
 あいつを見ているうちに僕は苛立ちを感じるようになった、思い出すだけで胸の鼓動は歪み、頭が痒くなるようになった。だからなるべく会わないようにしていたのだ。
  #br
「畜生め・・・・・・。」

 

 あぁ何か変な気分になってきた。そういえば夢にあいつが出てきた、気持ち悪い。
 どれもこれもセリスのせいだ。

 

そんな思いを抱えながら学校に着いた。憂鬱な朝の喧騒、くだらんことで騒ぐ同級生。
『餓鬼どもが』
 周りのアホどもを見て、ユリウスは気付いた。
『セリスがいないな。』

 

「お前ら、さっさと座れ。」
 担任のオイフェが入ってきた。相変わらず似合わない不自然な髭だ。
「出席とるぞ、アーサー!」
「はい。」

 

 学友(笑)らの名前が呼ばれ、セリスの順番になった。 というか、今の僕の関心はそれだけだ。それしか聞いていない、他の奴なんてどうでもいい。

 

「セリスは風邪で休みだ。」

 

 その一言が響いた瞬間、魔法で移動する音と学校を破壊する気ではないかという衝撃波とともに何かが通り過ぎた。
 ユリアとラナオウがいなくなっていた。多分見舞いにいったんだろう。 ユリアを持っていくな、セリスめ。
 しかしその三人がいないだけなのだ。僕の一日はいつもと変わらない単調な繰り返しとなる。 そんな感じで放課になった。人ごみをかきわけ帰ろうとした僕に

 

「ユリウス、ちょっと待て。」
 何だオイフェ。
 俺がおそらくは凶悪な仏頂面で振り返ったら道が開けてオイフェとの対面を手伝った。余計な真似を。

 

「ユリウス、お前セリスの家の近くに住んでいるよな。」
「その紙は?」
「授業参観の案内書だ。届けてくれ。」
「1週間後だろう。風邪なんてすぐ治るんだ、別に届けるほど急ぐ必要は無いだろう。」
「そういわずに頼む。なっ」

 

 YESと答えないといつまでも拘束されそうだ。そう直感した僕は紙を奴の手からひったくり、家路についた。

 

 我ながらお人よしだ。面倒くさいと思いながらも結局来てしまった。どうやら僕も実はいい人なのかもしれない。
(ヒーニアスと同じか、吐き気がする。)
 無性に気分が悪くなったので案内書を叩きつけて帰ることに決めた。ついでにユリアも持って帰ろう。無理だろうけど。
 扉を開けようとした瞬間。

 

 ぶー ばきゃ ぶぼおおおおおおお

 

 扉を壊してはっぱが飛んできた。その姿は正にルイージロケット。鼻血を出して飛ぶ能力を身につけたか、おめでてー。こいつが鼻血出すのなんて日常茶飯事、扉を開ける労力を使うことにならなくてよかった。そのまま飛んでいって星になったはっぱは無視して家に入れば
「「きゃーっ!!!?」」
 今度は甲高い悲鳴だ。
 セリス・・・・・・まさかユリアとラナオウになんかやったのか?いよいよ本性現しやがったか。
 本性晒したセリスをボコボコにすればユリアも少しは見直すだろ。ニヤニヤしながら2階に上がり、奴の部屋の扉を蹴り開ける。そこには俯いて顔が見えないセリスとラナオウ、部屋の主である・・・・・・
「えーっと、お前誰だ?」
「あ、ユリウス、お見舞いに来てくれたの?」
「何で僕の名前を知っている・・・・・・?」
「だって、ユリウスは僕の憧れだもの。」
「そうか、それは嬉しいな。で、お前誰?」
「えー!?セリスだってば!」

 

  なんだってーーーーーーー!

 

ちょっとまて、これはおかしい。
「いやいやいや、待て、何だそのけしからん大きさの胸は。」
「先週ね、寝ようとしたら急に具合が悪くなったんだ。胸が苦しくて呼吸もできないくらいに。
 それでついさっき目が覚めたら胸が大きくなってたの。」
「何か変なもんでも食ったか?」
「別に何も・・・・・・ノールさんから林檎貰って食べたよ。是非食べてくれって。」
「OK犯人はそいつか・・・・・・ところでお前ブツはどうした。」
「ブツって?」
「いや男っていうのは股にブツがついているはずだ。バベルの塔とも呼ぶ。」
「え?ユリウスには何かついてるの?」
「・・・・・・。」
 状況はなんとなく飲み込んだ。胸が大きくなったのは林檎はどうやら変な薬が入っていた、という

 

ことで・・・・・・性別に関しては
「つまりお前は最初から女だったと?」
「そうなのかなぁ?」
 こいつだったら在り得るな。
「・・・・・・これ案内書だ。帰るぞ、ユリア。ラナもとっとと帰れ。」
「「・・・・・・。」」
「え?せっかく来てくれたんだからもうちょっと話そうよ!」
「一応病みあがりみたいだから休んでおけ・・・・・・僕もちょっと休みたい。」
「え?そうなの。じゃあ無理しないでね。」
「・・・・・・あぁ、じゃあな、セリス。」

 

 そして僕は家に帰った。

 
 

「まさか・・・・・・女だったとはな。」

 

 その夜、僕はこれから奴とどう対応していくか考えていた。とはいってもこんな状況に陥ってどう

 

すればいいかわからない。
「前まで男として対応してきた奴が女の子でしたーってなってもな。
 性格は前と変わっていないようだし、ここはいつも通りでいいか。
 それに所詮セリスだし。
 女と分かればユリアがセリスに依存することはなくなるだろ。考えれば考えるほどいいことづくめ

だだ。
 ・・・・・・でもわりと可愛かったな、でもセリスだしな、でも可愛かったな、でもセリスだしな、でm

 

 (無限ループ。)

 

 朝。

 

 ユリアはいつも以上に早く家を出た。寝られなかった僕は機嫌が悪いが、一応学校へ行く。
 ふらふらする頭に苛立ちながら教室へ入る。
 ピシィッ

 

 教室の雰囲気が違う。何だこの張り詰めた空気!辺りを見回すと皆が皆同じ方向を見ている。
 どうやらセリスをじっと見ているようだ。まあ僕には関係ないと思い席に座ると、皆の視線を集め
ている奴がこっちに向かってきた。
「あ、ユリウス、おはよう!」
 男物の制服にけしからんサイズの胸のラインをきっちり強調させたセリスに挨拶された。
「っ!!?」
「どうしたの、ユリウス?」
 危なかった。オチソウダッタ。そして目の前を向くと
「ぶっ!?」
 ナチュラル寄せされた胸の谷間が見えた。
 ぷ~。いつもどおりのたいおうはむりかもです。ぽてんしゃる!
「???」
「あー、セリス。具合はどうだ?」
「ん、ちょっとだるいけど大丈夫。」
「そうか、よかったな。」
「あ、心配してくれたの?」
「ばっ、んなわけが」
「ありがとうユリウス!(ぎゅっ)」
「 ! ! ! ! ! 」
 むねがあたってる だきつかれてる
 いつもどおりのたいおうはむりです。ぽえーん。
「は、はなれろあつくるしい」
 壮絶な棒読み。
「あ、ごめん。」
 舌をちょっとだして、えへへと笑うセリス。常軌を逸する破壊力。
 そしてその行動はギリギリの均衡を保っていた皆の理性を見事にぶっこわした。
「も、もう我慢できん!」「畜生!ユリウスばっかり話しやがって!」「何ずっと話してるのよ!私

にもよこしなさい!」
「お、落ち着けお前ら!」
「ユ、ユリウス、皆恐いよ、どうしちゃったの?(ぎゅっ)」
「「「「「「!!!!!!!!!!」」」」」」

 

 メティオとブリザードとサンダーストームとパージとイクリプスが教室に同時に吹き荒れた、よう
な気がした。
「セリスは女になった!これで俺達は容赦なくハァハァできる!」「セリスが男であることを恨む日
々は終わりを告げた!」「これであいつは俺の嫁!!」「ウーハー! む し ろ 男 の 頃 か
 ら 俺 の 嫁 ! ! ! 」

 

 やばい、ディ・モールトやばい。教室のボルテージは最高潮、治まる気配は無い。
 このままではセリスは色欲に取り付かれた学友(笑)どもに食われてしまう。
 ってなんで庇っているんだ僕は、こいつがどうにかなろうと僕には関係g
「黙らんか貴様ら!!」
 ラナオウの気のこもった一喝。一瞬静まる教室、こいつがこのまま事態を沈静化させてくれるのか
と思ったのだが
「セリス様を薬を盛って意識が朦朧としているときに襲って既成事実をつくってなし崩し的に結ばれ
て一生一緒の部屋で過ごすのは私だ!!!」
 もっとまともじゃねぇ!
「な、ふざけるな!女同士なんて!つーか既成事実なんて作れないだろ!」
「この町にそんな常識は通用せぬわ!」
「常識っていうか良心で考えろ!」
「GYAAAAAWOOOOO!!!!」
 勇敢にも発言したアレスは見事な咆哮で吹っ飛んだ。
「何を言っているのやら、女だからこそ燃えるんじゃないか・・・・・・。」
 け、ケダモノ・・・・・・。
「いい加減にしたらどうです?」 
 ここで今まで口を閉じていたユリアが口を開いた。女になったセリスを友人として庇うのか、いや
そうに違いない。そうだろう妹よ!
「マンフロイに協力させて洗脳したセリス様を頂くのは私ですわ!!」
「うおーーーーーーい!!逃げるぞセリスっ!」
 これどういうヤンデレ!!?
 とりあえず僕はセリスの手を掴み窓から飛び降りて校庭に下りた。背後から光が瞬時に追ってくる 、
どうやら窓から出る選択をした僕の判断は正しかったらしい。後ろを見ると教室から煙が立ち上っ
ていた。おそらくナーガと気の塊がぶつかりあったのだろう。それで相殺できるとかラナオウはどん
だけなんだ。
 こうしている間にも学校の破壊は進む進む。どうやらあの2人が頑張っているらしい、激しさをま す戦闘のとばっちりはこっちにも飛んできた。
「セリス、よけろ!」
「くっ・・・・・・駄目だ、避けきれない・・・・・・!」
「えぇいくそっ!!」
 慌ててミィルで気を打ち消した。病み上がりとはいえども動きが鈍くないか?・・・・・・そうか姉のエ
イリークとかいうのよりもある胸のせいか。
「ユリウス、ありg「礼は後だ!怒りのナーガが飛んできたら僕では絶対に庇いきれない!逃げるぞ !」
 世はまさにユグドラル学園戦国時代。おそらくあの2人が本気で戦えばユグドラル区全体に被害が 及ぶだろう。
 なのでここは逃げることを選択した、そう、誰も追ってこないような場所へ。

 今僕達はテリウス地区のオルリベス大橋にいる。
 落石の聖地と呼ばれ、絶対にリブローが効果を示さないとされている危険極まりないマレハウト山
脈を越え、落とし穴の聖地と呼ばれたここなら、おそらく誰も追ってこないだろう。どうやってたど
り着いたか?ロプトウスなめんな。
「ユリウス、その」
「礼はいらない、それよりも休ませてくれ。」
「ユリウスは僕が男だと思っていたときもいつも世話を焼いてくれてたよね。」
 いや、それはユリアと引き離そうとしていたらお前のペースに持っていかれただけなんだけども。
 まぁ、なんていうか。
「お前は放っておけないんだ。人を疑うことを知らないからいつの間にか歪んでいるかもしれない。
 そうしたらユリアが悲しむからな。」
「ユリウスは・・・・・・」
「あ?」
「ふふっ、ユリアのことを大切に思っているんだね。」
「当然だ。」
「僕はそんな他人思いの君が昔から好きだった。」
「・・・・・・・・・は?」
「ユリウス・・・・・・僕君の事が好きなんだ。
 僕が見ていたのは、ユリアじゃなくてユリウスだったんだ。」
「おい・・・・・・。」
「男の子だった頃は憧れだったんだ、こんな風になりたいって、でも今の僕はね。」
「ユリウスを愛してしまったようじゃってことかよ・・・・・・。」
 油断した。ここにも一匹のホモがいた。
 いや、でもこいつ女だったんだよな。
「でも、君はユリアのことを見ていた、僕はそれが我慢できなかった。でも諦めるしかなかったんだ 、男だから。

だけど、僕は女の子だった。」

 あぁそうなんだよこいつは女だったんだよ!
「ユリウス・・・・・・聞かせて。」
 でもこいつはなんだか弟みたいなやつででも本当は妹で?????
「ユリウスは、僕の事好き?」
 僕の顔を覗き込むように見てくるセリス、病み上がりの顔は疲れもあり赤く、目には涙が浮かんで いた。
 これを見た瞬間、理性が本能という落石で押しつぶされた。
「えぇい!セリス!」
「・・・。」
「お前は僕が一生面倒みてやる、黙ってついちぇこんかい!」
「ユリウス――――」
 噛んだ。恥ずかしい。
「――――信用していいんだね?」
「当然だ、僕も男だ、自分のことを慕っている女を無下には扱うわけにはいかないだろう。」
「――――だったら、キス・・・・・・してよ。」
「はい?」
「その反応、キスしたことないんだね。」
「なっ、僕はそんな子供じゃない!」
「ふふっ、大丈夫だよ、僕もしたことないから。」
 なんだこいつなまいきだけど
 だけど
 だけど
 DAKEDOせっきょくてきだなかわいいやつめ ぐへへへへ(本能)

 

「そんじゃあ、き、キスするぞ。」
 セリスは目を瞑って、僕がやりやすいように顔を上げる。
 こんなに可愛い奴だったんだな・・・・・・しみじみ思う。こいつをこのまま見ていたいが、それでは駄
目なんだろう。
「いただきます・・・・・・。」
 僕も目を瞑り、唇を合わせに向かい
(やっべこいつ良い匂いするやっべ僕心臓バカバカいってるやっべやっべやっべ)
 マヌケなこと考えた瞬間

 

 ぱしゃっ

 

 正面から聞こえたマヌケなシャッター音が耳に刺さり、白い閃光が瞼を貫いた。
「うわっ!?」
 閉じた目を開いて、そこにあったのは

 

[ドッキリ成功]
   |
   |
 の看板をもったチェイニーだった。

 
 

「おい・・・・・・。」
「くけけけけけけけ、ひっかかったな馬鹿め、死ね、社会的に死ね。」
「本物のセリスは?」
「あぁ、アイクさんの修行に付き合ってるよ。男を磨きたいんだとさ。」
「ふむ。なんでこんなことやったんだ?」
「マルスに頼まれたんだ。セリスちゃんの皆勤賞のためっていうのと、あとは」
「あとは?」
「ノールさんに頼まれたんだ、ユリウス×セリスの普及の為。まぁ流石に俺は801は専門外だからせめ
て演じやすい姿にしたけどな。報酬はたっぷりと貰ったぜ、しばらく遊んで暮らせるんじゃないか?
 お前ら兄妹喧嘩で家壊しまくってるからこの位で金が貯めれるんだったらいいだろ、むしろ尻拭い
している側としては感謝して欲しい位だぜ。
 だからそのロプトウスは今すぐにしまえ。」
「ごめん、それ無理♪」
「ですよねー☆」

 

 どがーん(聖戦の限界を超えた3倍仕様の必殺)

 

『実は全部チェイニーの仕込み・完』