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Last-modified: 2013-11-06 (水) 22:48:05

387 :王子様、お姫様:2010/11/14(日) 22:15:49 ID:pZdmzpCw

エフラム「おいお前たち、ルネス女学院に殴り込みをかけにいくぞ」

ロイ「なに言ってんの兄さん」
リーフ「落ち着け兄さん」
エフラム「これが落ち着いていられるか! こうしている間にもエイリークは……!」
ロイ(え、なに、ルネス女学院がテロリストに占拠されたとか?)
リーフ(いや、そんな話は全然聞いてないけど……)
ロイ「……ねえ兄さん、殴り込みをかけに行くのはいいけど、せめて事情ぐらいは説明してくれないかな」
エフラム「ええいまどろっこしい……! これを見ろ!」

 と言ってエフラムがちゃぶ台に叩きつけたのは、一枚の新聞紙。

ロイ「えーとなになに、ルネス女学院新聞、『あのエイリーク様に恋人発覚!?』……あー、なるほど」
リーフ「もう大体読めちゃったね……」
エフラム「全く、男子禁制のルネス女学院ならエイリークの安全が脅かされることもなかろうと思って安心していたら……!」
ロイ「いや、だからって殴り込みとか……」
エフラム「そんな悠長なことを言っている余裕はない! 今すぐその不埒な野郎を捕まえて串刺しにして町中を引きずりまわしてやる……!」
ロイ(ねえ兄さん、僕たまに不思議なんだけどエフラム兄さんこれでよくウザがられないよね?)
リーフ(エイリーク姉さんも基本天然だからね……二人の性格があってこその不思議な均衡なわけですよ)
エフラム「何をのん気に話しているか! さあ行くぞ、お前たち!」
ロイ「はいはい……」
リーフ「まあ暇だからいいけどね」

 ~ルネス女学院正門付近~

リーフ「……で、僕たちは今女学院正門付近の植え込みに隠れているわけですが」
ロイ「……これ見つかったら通報されても文句言えないよね正直」
エフラム「家族を守るためならば手段など選んではおれん」
リーフ「はいはい」
ロイ「……で、実際これからどうするの?」
エフラム「この新聞によると、その『恋人』とやらは正門の守衛に『図書館を借りたい』と申し出てまんまんと女学院内に侵入したとのことだ」
ロイ「へえ。外部の人でも図書館借りられるんだね」
リーフ「うん。ルネス女学院の図書館はかなり歴史が古くて蔵書も豊富だからね。
    ファード学院長の意向もあって、一般人にも図書館だけは開放されているそうだよ。
    もっとも、それ以外の区画には立ち入り禁止で、下手に変なとこ入ると警備員が飛んでくるけど」
ロイ「……あんまり聞きたくないんだけど、なんでそんなに詳しいのリーフ兄さん」
リーフ「そりゃもちろん前に試したからだよ。残念ながらルネス女学院のお姉さまたちとは仲良くなれなかったけどね!」
ロイ(……たまにこの人を警察に突き出すのが家族としての務めなんじゃないかって思うよ)
エフラム「全く、ルネス女学院が学徒の味方であるのをいいことに女学生をナンパしようなどと……生かしてはおけん!」
ロイ「ねえ兄さん、その人って本当にエイリーク姉さん目当てだったのかなあ?」
エフラム「そうに決まっている! この新聞によれば、図書館の入口付近で親しげに話す二人の姿が目撃されたそうだからな」
ロイ「うーん……いくらエイリーク姉さんがいい人でも、見知らぬ男とそんなに気軽に話すものかな……?」
リーフ「エイリーク姉さんなら分かんないけどね。ちなみにエフラム兄さん、その男ってのはどんな人だったの?」
エフラム「ああ。なんでも長身に赤毛、甘いマスクに爽やかな笑顔の王子様系男子、だそうだ」
ロイ「……気のせいかな、どっかで聞いたことあるような気がするんだけど、そのプロフィール」
リーフ「奇遇だねロイ、僕もだよ」
エフラム「全く……! 何が王子様系だ! ちょっと顔がいいのを武器に女をナンパしてばかりのナヨナヨしたチャラ男に違いない。
     今日捕まえたら俺がこの手で似合いの面に整形させてやる……!」
ロイ(ねえリーフ兄さん、万一のときのためにベルン署のゼフィール署長に連絡取っ手おいた方がいいかな?)
リーフ(いや、多分大丈夫だと思うけど……)
エフラム「……ムッ!? あれか……!?」

 エフラムの緊迫した声に、ロイたちが正門の方を見ると、そこには守衛に何やら話しかけている赤毛の男の背中が。

ロイ「って、あれやっぱり……」
エフラム「先手必勝! 手槍をくらえぇっ!」
リーフ「ちょおま」

 リーフが止める間もなく、エフラムの投げた手槍が真っすぐに赤毛の男に向かって飛んでいく、と、

388 :王子様、お姫様:2010/11/14(日) 22:18:08 ID:pZdmzpCw

赤毛の男「うわっ、あぶなっ!?」

ロイ「おお、ナイスキャッチ!」
リーフ「避ければ正門に傷をつけると判断したからこそ敢えて華麗に手槍をキャッチ!」
二人「さすがエリウッド兄さん!」
エリウッド「……って、三人とも、こんなところで何を……?」
エフラム「それはこっちの台詞だ、エリウッド……!」
エリウッド「え?」
エフラム「まさか長身赤毛の爽やか王子様系イケメンとやらがお前のことだったとはな……!
     となると、白昼堂々神聖な女学院内でエイリークを口説いていたのもお前だったというわけだ!」

 エフラムはぷるぷると震えながらエリウッドに指を突きつけ、

エフラム「実の妹に浅ましい執着を抱くなど! 兄として男として、恥ずかしくないのかーっ!」
ロイ「一番言っちゃいけない人がそれ言っちゃった!?」
リーフ「落ち着け兄さん」
エリウッド「……なんだかよく分からないけど、一度落ち着いて話し合った方が良さそうだね……」

 ~ルネス近くの喫茶店~

エリウッド「……というわけで、ちょっと調べ物があってルネス女学院の図書館を借りていただけなんだよ」
ロイ「まあそうだろうね」
エリウッド「確かに図書館の辺りでエイリークと会って、今調べていることについてちょっと話をしたけど……まさかそんな噂になっていたとはねえ」

 いや参ったなあ、と言わんばかりに爽やかな笑みを浮かべるエリウッドと、テーブルを挟んだ向かい側で身を縮めているエフラム。

エフラム「……すまん、エリウッド。俺はまたてっきり……」
エリウッド「いやいや、謝らなくても大丈夫だよ。家族の身を案ずるのは立派なことさ。
      大切な人のためなら危険を顧みず飛んでいくなんて、いかにもエフラムらしいじゃないか。僕は少しも気にしていないよ」
リーフ(クッ、この爽やかな微笑み……! これで何人のお姉さま方が誑かされたことか……!)
ロイ(人聞き悪いよリーフ兄さん)
エリウッド「まあともかく、そういうことだから。一応誤解は解いてもらえるように、エイリークを通じて言っておくよ。それじゃ、僕はまだ調べ物があるから」

 エリウッドはそう言って席を立つ。颯爽とした身のこなしに、他の席に座っている女性客の視線は釘付けだ。

ロイ「……エリウッド兄さんっていつもあんなふうに見知らぬ女性の心を捕えているんだね。なんかこう、フラグメイカーって感じだよね」
リーフ「……うんなんだろう、今凄く突っ込みを入れなきゃいけない気分になっているんだけど……」
エフラム「クッ……しかし、今回は誤解だったからいいようなものを、実際にまたこんなことが起きんとも限らん! どうするべきか……!」
???「いっそ転校生として女学院に侵入すればいいんじゃない?」
エフラム「!! その手が!」
リーフ「こら、サラ。急に出てきて人の兄さんに変なこと吹きこむのは止めなさい」
サラ「はーい。でもリーフだって、この手を使えばお姉さまたちと簡単に知り合えると思うけど?」
リーフ「ははは、甘いねサラ。僕ともあろう者が、その程度の手を思いつかないとでも?」
ロイ(実行して失敗したことがあるわけか……マジ警察に突き出した方がいいな、この人……)

 ~オマケ~

エイリーク「まあ、そんなことが……我が高の新聞部のゴシップ好きにも困ったものね」
ロイ「うん……でも姉さん」
エイリーク「なに、ロイ?」
ロイ「恋人だと思われたぐらいだから、よっぽど仲良さげに話してたんだと思うんだけど……どう?」
エイリーク「どうかしら……エリウッド兄上とは話が合うから、普段もよくいろいろなことを話すのだけど」
ロイ「へえ。エリウッド兄さんと。なんか意外。どんなこと話すの?」
エイリーク「そうね。今はエリウッド兄上が調査されている、古代ドルーア文明の社会構造に関する考察を……」
ロイ(……なるほど。そりゃうちの兄弟じゃエリウッド兄さんぐらいしかいないよな、話合わせられるの。ある意味お似合いなのかもしれない……)