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Last-modified: 2013-11-06 (水) 23:38:04

 今日も今日とてビラクに追われて逃げるヘクトル。

ヘクトル「ハァッ、ハァッ……! ち、チクショウ、逃げ切れねえ……! もう駄目か……!?」
????「ヘクトル、こっち!」
ヘクトル「!? だ、誰っ……!」
????「いいから、早く! 掘られたいの!?」
ヘクトル「ッ……ええい、一か八か……!」

 数秒後。

ヘクトル「……フー、行ったか……ありがとよ、助かったぜ……あ?」
ファリナ「な、なによ?」
ヘクトル「……いや、まさかお前に助けられるとはな……」
ファリナ「あたしじゃ悪いっての!? あんたが必死に逃げてるから知り合いのよしみで」
ヘクトル「あー、分かってる分かってる。実際助かったぜ、ありがとよ」
ファリナ「べ、別に。分かればいいのよ、分かれば」
ヘクトル「ったく、何で俺がこんな目に……」
ファリナ「……いっつもこうやって逃げ回ってるわけ、あんた?」
ヘクトル「あ? そりゃそうだろ。マジ勘弁してほしいぜ、このままじゃ青春時代に一生残る深刻なトラウマができちまう」
ファリナ「ふ、ふーん。あたしはてっきりまたそういう趣味があるのかと」
ヘクトル「ねえよ! 俺はノーマルだ!」
ファリナ「……そう主張するぐらいなら、す、好きな女の子とかいるわけ?」
ヘクトル「あ? ……いや、今はいねえけどよ」
ファリナ「っしゃ!」
ヘクトル「? ……しっかし、こんな路地裏にこんな隠し通路があったとはな」
ファリナ「フフン。驚いたでしょ? 仕事柄結構こういう裏道知ってんのよね」
ヘクトル「どんなバイトしてんだお前」
ファリナ「なんでもいいでしょ。……これからもこういうことが続くんだったら、まあ今後も助けてあげなくもないわよ?」
ヘクトル「おー、そりゃ助かるぜ、よろしく頼む」
ファリナ「一回二千ゴールドでね」
ヘクトル「高ぇなオイ!」
ファリナ「これでも割引してんのよ、知り合いのよしみで。それとも掘られた方がいい?」
ヘクトル「ッ……クソッ、足下見やがって……」
ファリナ「……ま、今後は金次第で助けてあげるから安心しなさいよ。
     いい、あくまでも金目当てなんだからね。そこんとこ勘違いしないでよねっ」
ヘクトル「……? 分かってるよ、お前も仕事(?)だしな。助けてもらった分はちゃんと払うって」
ファリナ「え……い、いや、分かればいいのよ、分かれば!」
ヘクトル「おう。じゃあな」
ファリナ「……じゃあね……フーッ、終わったか」
リン  「お疲れ様。さすがの手際ね、凄腕のファリナさん」
ファリナ「こっちこそ、一応……アドバイスありがとうって言っとくべきかしら」
リン  「気にしないで。利害が一致しただけだものね」
ファリナ「……まあ、いいんだけどさ」
リン  「? なに?」
ファリナ「……あんた的には、ヘクトルとフロリーナをくっつけたくなくてこういうことやってるわけでしょ?」
リン  「まあ、そうなるかしらね」
ファリナ「だったら素直にヘクトルをあの……ビラクだっけ? あいつにやっちゃえばいいんじゃないの?」
リン  「……あのね、ファリナさん」
ファリナ「な、なに?」
リン  「常識的に考えてみて? どこの世界に心の底から嫌がってる兄弟を同性愛者に差し出す奴がいるっての。BL本じゃあるまいし」
ファリナ「……」
リン  「ヘクトルにそういう趣味があるって言うなら別だけど、本気で嫌がってるし、さすがにねえ……え、どうしたのファリナさん」
ファリナ「いや……あたし今、何かに突っ込まなきゃいけない気分になったんだけど……」
リン  「……? よく分かんないけど」
ファリナ「うーん……」
リン  「ともかく、頑張りましょう! お互いの目的を達成する日まで!」
ファリナ「ああ、あたしなんか物凄く面倒なことに巻き込まれてる気がするわ……!