ロイ 「あれ、でもエリンシア姉さんって、一応ジョフレさんと付き合ってるんでしょ?」
エリンシア「ええ、そうね」
リーフ 「でもあんまり会ってないよね?」
エリンシア「ジョフレも社会人になりたてで仕事が忙しいから。仕方がないわね」
リン 「寂しくないの?」
エリンシア「フフ。大丈夫よ、リンちゃん。ジョフレはマメな人だから、よくお手紙をもらうの」
リーフ 「手紙!? この時代に!?」
マルス 「メールじゃないんですね」
エリンシア「ええそうよ。ちょっと古臭いかしらね」
ロイ 「でも、どうしてわざわざ手紙で?」
エリンシア「クリミア大学を卒業したときにね、二人で決めたのよ。
ジョフレは仕事、わたしは家事と皆のお世話でお互い忙しくなるけれど、それはどちらも誰かのためになる大切なこと。
だからお互い成長して、しっかりとした精神的な余裕を持てるようになるまでは、あまり頻繁に連絡を取らないようにしようって」
リン 「え、話の繋がりがよく分からないんだけど……」
リーフ 「だよね。普通そういう大変な時期だったら、むしろ毎日でも話してお互い支え合おうって流れになるんじゃ……」
エリンシア「そうね。けれど、わたしたちはそうしてしまったらお互いに依存してしまいそうで怖かったのよ。
相手に寄り掛かりすぎないように、かと言って離れすぎないように。そういう距離の取り方をしたかったのね」
ロイ 「それで手紙ってわけか……」
エリンシア「そう。一般的なあり方とは少し違っているかもしれないけれどね。
わたしたちはそれぞれ自立した一人の人間でありたいと思っていたから、このやり方が一番合っているのではないかと思っているのよ」
リーフ 「……つまりネタとして描かれなかっただけで、この32章もの間、二人の愛情は陰でひっそりと慎ましく育まれていたわけか……」
ロイ 「あ、もしかして」
エリンシア「どうしたの、ロイちゃん」
ロイ 「いや。たまに家に来るネサラさんとエリンシア姉さんが仲良さげに話してたのって、ひょっとして……」
エリンシア「フフ……ええ、そうよ。ネサラさんにはね、お互いの手紙を届けてもらえるように頼んでいるの」
ロイ (また駄賃はコイン一枚なんだろうな……)
リーフ (相変わらず安っぽい王様だ……)
エリンシア「そんなわけだから、私のことは心配しなくても大丈夫よ。時間があるときはデートもしているから」
ロイ 「うーん、さすがの安定感だ……」
リン 「わたしも見習いたいものだわ……」