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Last-modified: 2007-07-23 (月) 00:09:42

ベルン署捜査日記~逆転兄弟~

 

~エレブ地区、ベルン署~

 

ツァイス 「た、大変ですよ先輩、姉さん!」
ミレディ 「どうしたのツァイス、そんなに慌てて……」
ツァイス 「どうしたもこうしたも……事件ですよ、事件!」
ゲイル  「ほう……詳しく話してみろ、ツァイス」
ツァイス 「痴漢事件です、痴漢事件!」
ミレディ 「痴漢!? なんて破廉恥な……!」
ゲイル  「見過ごす訳にはいかんな。で、被害者は?」
ツァイス 「……この少女たちです……」

 

 出された写真は、マリア、ティナ、マリーシアのもの。

 

ミレディ 「……これは……」
ゲイル  「……事件現場は?」
ツァイス 「……トラキア地区です……」
ゲイル  「……」

 

~兄弟家~

 

ゲイル  「という訳で、君を補導しに来た訳だが」
リーフ  「ちょ、なんでそうなるんですか!?」
ツァイス 「しらばっくれても無駄だぞ!」
ミレディ 「そうよ。あなたがたびたびトラキア地区に出没しては女性を追い回していたと、
      いくつも目撃証言が上がっているのだから」
リーフ  「ご、誤解ですよ! あれはきれいなお姉さんたちに僕の純粋な愛を説いていただけで」
ゲイル  「ともかく、話は署で聞かせてもらおう。ツァイス、連れて行け」
ツァイス 「ハッ」
リーフ  「ちょ、ちょっと待って! た、助けてーっ!」

 

 待 っ た ! !

 

マルス  「……」
リーフ  「ま、マルス兄さん……!」
ゲイル  「……何かな?」
マルス  「……犯人がリーフだと決め付けるのは、完全に的外れなのではないかと思いますが……?」
ツァイス 「バカな……トラキア地区で痴漢だぞ、この少年以外に容疑者はいない!」
マルス  「……どうでもいいけど凄い理屈ですねそれ……まあ、今はそのことはいいですけど」
ゲイル  「フ……だが、我々の公務を妨害しようというのだ、それなりの証拠は持っているのだろうな?」
ロイ   「に、兄さん……?」
マルス  「……」
ゲイル  「……やはり、ないか。当然だな。まあ詳しく取り調べれば新たな事実も浮上するかもしれないし、
      ここは大人しく連行……」

 

 異 議 あ り ! !

 

マルス  「(バン!)弁護側には、リーフが犯人でないと証明する証拠品があります!」
ツァイス 「な、なんだって……!?」
ミレディ 「そんな……こんな短期間に、そんなものを用意できるはずがないわ……!」
ゲイル  「フ……ならば見せてもらおうか、その証拠品とやらを……」
マルス  「……いいでしょう。今からお見せします」
ロイ   (……って言うか、弁護側って何だ……?)
マルス  「これが……リーフが犯人でないと証明する証拠品です!」

 

 く ら え ! !

 

ツァイス 「これは……」
ミレディ 「写真……のようね」
マルス  「ええ。エスリン、セルフィナ、アルテナ……皆、リーフが
      トラキア地区で連日追い掛け回していた女性たちの写真です!」
リーフ  「って何で僕がナンパしてる女の人たちのことマルス兄さんが知ってんの!?」
マルス  「フ……この紋章町で、僕の目から逃れられるなどと思わないことだ!」
リーフ  「怖ぇーっ! っつーかその写真後でくれ!」
マルス  「一枚50Gで手を打とう!」

 

 異 議 あ り ! !

 

ゲイル  「フ……何を出すかと思えば。語るに落ちたな、マルス君!」
マルス  「……どういうこと、でしょうか?」
ゲイル  「何を主張するつもりなのか知らんが、こんな写真を出しては、
      リーフ君が白昼堂々女性を追い回すような人間だと証明しているようなものだぞ?」

 

 異 議 あ り ! !

 

マルス  「……それは、写真に写っている人物をよく見てから言ってもらいましょうか?」
ゲイル  「……人物、だと……?」
マルス  「ええ。これが、今回の痴漢事件の被害者です」

 

 マリア、ティナ、マリーシア。

 

マルス  「……そしてこれが、リーフが追い掛け回していた女性たち……」

 

 エスリン、セルフィナ、アルテナ。

 

マルス  「……二つを見比べて、何か気づくことはありませんか?」
ゲイル  「……! 年、か……!」
マルス  「そうです。リーフが追い掛け回していたのは、皆年上……
      そう、つまり、この写真は、リーフが年上の女性にしか興味がないことを示しているのです!」
ゲイル  「グ、グゥゥゥゥゥッ……!」
ツァイス 「だ、だが、マルス君!」
マルス  「なんでしょうか?」
ツァイス 「アルテナ、セルフィナさんはともかく……このエスリンという女性は、明らかに童顔じゃないか!」
ミレディ 「そうよ! むしろこのエスリンさんのお顔が、リーフ君が年下にも興味を示していたことを証明……」

 

 異 議 あ り ! !

 

マルス  「……残念ながら、それはあり得ないんですよ」
ゲイル  「あり得ない、だと……?」
マルス  「ええ。それを証明する証拠品もあります」
ゲイル  「面白い。見せてもらおうか?」
マルス  「もちろんです。その証拠品は……これです!」

 

 く ら え ! !

 

ゲイル  「……これは……エスリン女史の詳細なプロフィール……?」
マルス  「そうです」
リーフ  「後でくれ!」
マルス  「100Gで手を打とう」
ロイ   (……この刑事さんたちは、何故目の前で個人情報漏洩という
      あからさまな犯罪が行われていることに興味を示さないんだろう……)
マルス  「さて、ゲイル刑事……エスリン女史のプロフィールについて、何かお気づきになりませんか?」
ゲイル  「……! か、家族構成、か……!」
マルス  「そうです……家族構成、夫:キュアン。意味は分かりますね?
      そう、つまり、エスリン女史は人妻だったのです!」
ゲイル  「グ、グゥゥゥゥゥッ!」
ツァイス 「か、彼女が人妻だったからどうしたというんだ!? そんなことには何の意味も」
ゲイル  「いや……それは違うぞツァイス……」
ツァイス 「せ、先輩……?」
ゲイル  「……人妻、というのは、女性のいやらしさ、大人っぽさを計るときには極めて重要な要素だ……!
      事実、ミレディも俺と結婚してからはいやらしさが三割ほど増したのだからな!」
ミレディ 「やだもうゲイルったら、こんなところで……」
ロイ   (……のろけられてしまった)
マルス  「そう……人妻、というのは女性のいやらしさ、大人っぽさをアップさせる重要な肩書きです。
      そして、人妻であるという条件は、彼女の童顔に今までとは全く違う側面を与えるのです!」
ゲイル  「お、幼な妻……!」
マルス  「そう、エスリン女史は童顔でありながら大人のお姉さんの魅力も兼ね備えているという、
      矛盾した要素を見事に持ち合わせた、幼な妻という人種だったのです!」
ロイ   「幼な妻を人種と言い切っちゃったよこの人!」
マルス  「しかも、エスリン女史はまだ結婚して一年にも満たないラブラブ新婚状態!
      最近では夫キュアンを喜ばせようと黒ガーターの下着なんか装備しちゃって、
      そのいやらしさは天井知らず! 夜のベッドでもそりゃもうハッスルハッスル」

 

 ブバァァァァァァァッ!

 

ロイ   「うわぁ、リーフ兄さんの鼻から明らかに致死量以上の血の噴射が!」
リーフ  「この人でなしーっ!」
ツァイス 「ま、待て、何故彼女の夜の営みについてマルス君が知っているんだ!?」
ミレディ 「そうよ、これは明らかに問題……!」
マルス  「(バン!)そんなことは……
      今 は 一 切 、 重 要 で は あ り ま せ ん ! ! 」
ツァイス 「ぐぅ……!」
ミレディ 「た、確かにそうね……!」
ロイ   (強引に誤魔化したァーッ!? さ、さすがマルス兄さん、場の空気を完全につかんでいる……!)
ゲイル  「……」
マルス  「……もうお分かりになりましたね?
      年上好きのリーフが、エスリンさんからかもし出されるエロオーラに気づかないはずがない。
      つまり、リーフの年上好きが、彼が今回の痴漢事件の犯人ではないという、確固たる証拠になっているのです!」
ゲイル  「……確かに、そうかもしれん……」
ツァイス 「せ、先輩……?」
ゲイル  「……ツァイス、リーフ君の縄を解いてやれ。彼は無実だ」
リーフ  「……よ、良かった……あ、鼻血出しすぎたせいでふらつく……」
ゲイル  「ミレディ、輸血の手配を」
ミレディ 「ハッ」
ロイ   (輸血なんて我が家じゃ絶対やらないのに……普通にいい人だなこの刑事さん……)
ゲイル  「……しかし、ここに来て捜査はまた振り出しに戻ってしまったようだな」
ツァイス 「そうですね。一体、この痴漢事件の犯人は……」
ゲイル  「……! 待てよ、年上好きが犯人でないということは、逆に言えばロリコンが犯人ということに……!?」
ツァイス 「あ……そ、そうか、確かに今回の事件の被害者は、皆年よりは幾分か幼い感じだし……!」
ゲイル  「……そして、この家には確かロリコンと噂される男が一人いたな……」
ロイ   (ゲッ、またなんか変なことに……!)
ゲイル  「マルス君、悪いがエフラム君を容疑者としてここに召喚……」
エフラム 「……俺を呼んだか?」
ロイ   「自分から出てきちゃったーっ!?」
ゲイル  「うむ。エフラム君、君に痴漢の疑いが……」

 

 待 っ た ! !

 

マルス  「……残念ながら、エフラム兄さんも今回の事件の犯人ではあり得ません」
ゲイル  「ほう……そこまで断言するからには、何か証拠があるのだろうな?
      このロリコン男が、今回の事件の犯人ではないという証拠品が!」
エフラム 「……オイ、人の家に上がりこんで人をロリコン呼ばわりするこの無礼な連中は何者だ?」
ロイ   「ちょ、エフラム兄さん落ち着いて! ジークムントしまって!」
マルス  「もちろん、証拠品はあります」
ゲイル  「では、提示してもらおうか」
マルス  「はい。エフラム兄さんが今回の事件の犯人ではないという証拠品は……これです!」

 

 く ら え ! !

 

ゲイル  「これは……」
ツァイス 「また、写真……か?」
マルス  「そうです。これが、今回の事件の被害者達の写真」

 

 マリア、ティナ、マリーシア。

 

マルス  「そしてこれが、エフラム兄さんがロリコンだと噂される原因になっている幼女たちの写真です」

 

 チキ、ファ、ミルラ。

 

マルス  「これらを見比べて、何か気づくことは……?」
ゲイル  「……年、か……!」
マルス  「そう……被害者達がせいぜい中学生程度であるのに対して、
      エフラム兄さん周辺の幼女たちは、小学低学年……下手をすれば幼稚園児!
      つまり、エフラム兄さんはストライクゾーンが極めて低い、
      筋 金 入 り の ロ リ コ ン だ っ た の で す ! ! 」
ゲイル  「グ、グゥゥゥゥゥゥッ!」
エフラム 「……」
ロイ   「お、抑えて、抑えてエフラム兄さん!」
マルス  「筋金入りのロリコンであるエフラム兄さんにしてみれば、
      今回の事件の被害者達は完全に欲情の対象外!
      ほとんど初老に差し掛かった女と言っても過言ではありません!
      つまり、エフラム兄さんが彼女達を追い掛け回して破廉恥な行為に及ぶという可能性は、
      完 全 に 、 ゼ ロ で あ る と 断 言 で き る の で す ! ! 」
ゲイル  「グ、グゥゥゥゥゥゥッ!」
ツァイス 「せ、先輩……!」
ゲイル  「……どうやら、我々の負けのようだな、マルス君……」
マルス  「……負けも勝ちもありません。僕はただ、まごうことなき 真 実 を、提示してみせただけですから」
エフラム 「……俺がロリコンだというのが、真実……」
ロイ   (こ、怖ぇーっ! エフラム兄さんが魔王もかくやという凄まじい怒気を放っている……!)
ゲイル  「しかし、だとすれば、今回の事件の犯人は一体……?」
マルス  「それは……おそらく、この人物ではないかと思われます!」

 

 く ら え ! !

 

ゲイル  「また写真か……誰だ、この汚らしい髭面の男は?」
マルス  「彼はレイドリック……トラキアで黒衣の男爵などと呼ばれている、破廉恥極まりない男です。
      テロ集団ベルクローゼンとの繋がりも噂される、少女好きの変態だとか」
ゲイル  「少女好き、だと……!?」
マルス  「ええ。以前、マリータという少女の着替えを覗いていたのがバレて通報され、
      協力者らしき暗黒司祭のレスキューで逃げたという過去の事実もあります」
ロイ   (なんか凄くショボいな、テロ集団ベルクローゼン……)
ゲイル  「……行くぞ、ツァイス、ミレディ!」
ツァイス 「ハッ!」
ミレディ 「了解!」
ゲイル  「……すまないなマルス君。協力に、感謝する……!」
マルス  「いえ……お勤めご苦労さまです。これ以降も、協力は惜しまないつもりです」
ゲイル  「フ……それは実に心強い。では、また会おう!」

 

 颯爽と去っていくベルン署刑事三人組。

 

ロイ   「……なんか微妙に空回りしてる人たちだったなあ……」
マルス  「……よし、これでベルン署にパイプを作る足がかりが出来たっと」
ロイ   「うわ、そんなのが目的だったんだ!? ……しかし、なんだか凄くずさんな捜査だったよねえ」
マルス  「まあ、紋章町の犯罪件数は、大小合わせて洒落にならないほど多いからね。
      一つ一つの事件をそんなに細かく捜査してる余裕がないんだろう。
      ゼフィール署長からして『疑わしきは罰せよ』って信条らしいし」
ロイ   「さすが紋章町、警察関係者もクレイジー&フリーダムか……」
マルス  「いやー、それにしても、家族の疑いが晴れてよかったよかった。これにて一件落着だね!」
エフラム 「そうだな。ところでマルス、ちょっと裏庭で手合わせしてくれないか……?」
マルス  「……えーっと、何故そんな風に怒っていらっしゃるんでしょうか、エフラム兄さん……?」
エフラム 「別に。お前は実に立派なことをした。俺が怒るはずないだろう」
マルス  「……それにしては、右手に握られたジークムントえらく物騒な気配を放っているんですが……」
エフラム 「気のせいだろう? お前は俺がロリコンであるという 真 実 を提示しただけだものな?」
マルス  「あの、ちょ、エフラム兄さん、そんな風に襟首をつかまれると服が伸びて……」
エフラム 「大丈夫だ、どうせその服はボロボロになるからな。多少伸びたって全く気にする必要はない」
マルス  「え、ちょ、待っ……だ、誰かーっ! 弁護士、弁護士を呼んでくれーっ!」
エフラム 「お前に弁護士を呼ぶ権利はない! そのことを、今からたっぷりと教え込んでやる!」
マルス  「ク、クソッ、なんなんだこの状況……! 理不尽だ!」
ロイ   「いや、普通にマルス兄さんが悪いと思うよ……」
マルス  「いーや、僕は断固抗議するぞ! そうだ、こんな状況には……!」

 

 異 議 あ り ! !

 

<おしまい>