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Last-modified: 2007-09-10 (月) 01:32:40

1ねんこんとんぐみ ゆんぬ

 

 ~ある日の兄弟家~

 

ミカヤ  「ふう……今日はなんだか気だるいし、占いの仕事は休みにして家でのんびり……はっ!」

 

 突如カッと目を見開いたかと思うと、ガクリとうなだれるミカヤ。次に頭を上げたとき、彼女の顔には能天気な笑みが浮かんでいる。

 

ミカヤ? 「んっふっふ、自由と混沌の女神、ユンヌちゃん参上! ってな訳で早速、アイクー……」
マルス  「待てい(ガシッ)」
ユンヌ  「ま、マルスちゃん!? 何をするの、離しなさい!」
マルス  「離しませんよ。いいですかユンヌさん、一度きっちり言おうと思ってたことですけど」
ユンヌ  「な、なによ?」
マルス  「ミカヤ姉さんの体を使ってアイク兄さんに迫るのは止めてください。
      アイク兄さんが朴念仁のフラグクラッシャーだからいいものを、
      普通だったら大問題ですよこれは。二人は姉弟なんですから」
ユンヌ  「むー。何よマルスちゃんったら、急に常識的になっちゃってー」
マルス  「常識がどうのって以前に、人の姉の体を使って変態的行為に及ばれるのが非常に不愉快なだけです」
ユンヌ  「なによー、腹黒のくせにー」
マルス  「何とでもお言いなさい」
ユンヌ  「ツンデレー! 姉萌えー!」
マルス  「……さて、そろそろお帰り願いましょうか」

 

 と、マルスが懐から取り出したメダリオンを見て、ユンヌは悲鳴を上げる。

 

ユンヌ  「ひぃぃぃぃぃぃっ! いやぁっ、押入れはいやぁっ!」
マルス  「……分かってくれましたか。ともかく、ミカヤ姉さんの体に乗り移ってるときに
      過剰にアイク兄さんにベタベタするのは止めてください。いいですね」
ユンヌ  「むー。姉弟同士がいけないって言うんなら、アルムちゃんとセリカちゃんはどうなのよー?」
マルス  「過剰な兄弟愛ってことで」
ユンヌ  「兄弟のことになると限りなく判断が甘いわねマルスちゃん……」
マルス  「……と言うか、アイク兄さんに迫りたいってだけんら、別にミカヤ姉さんの体使わなくてもいいでしょうに」
ユンヌ  「えー、だって、アイクに鳥類を愛でる趣味があるとは思えないしー」
マルス  「じゃなくて。アスタルテさんと同じみたいに、あなただって人間形態あるんでしょう?」
ユンヌ  「人間形態? ……まあ、一応あるけど……」
マルス  「じゃ、それ使えばいいじゃないですか」
ユンヌ  「えー、でもー……」
マルス  「いいからほら、試しに今ミカヤ姉さんの体から抜け出して人間形態取ってみてください」
ユンヌ  「……分かったわよ。それじゃ……」

 

 と、ミカヤの体から抜け出した青白い光が、人間の姿をとる。

 

マルス  「……」
ユンヌ  「……」
マルス  「……何というょぅじょ」
ユンヌ  「ょぅじょって言うな! 体は子供だけど頭脳は大人なのよ!」
マルス  「バーローw ……と言うか、あなたの場合頭脳も大人とは言い難いです正直」
ユンヌ  「バーローw ……とにかく、これでわたしが人間形態でアイクに迫れない訳が分かったでしょ?」
マルス  「そうですね。アイク兄さんはエフラム兄さんと違ってロリコンじゃありませんし」
ユンヌ  「そうなのよ。アイクったらエフラムちゃんと違ってロリコンじゃないもの」
ミカヤ  「ナチュラルにエフラムのことをロリコン扱いしちゃダメよ、二人とも」
マルス  「おや、お目覚めですかミカヤ姉さん」
ミカヤ  「元々意識失う訳じゃないし……それよりも、二人ともダメよ、エフラムをロリコンなんていっちゃ」
マルス  「えー、だって、あれはどう見てもロリコンですよ」
ユンヌ  「そうよー。今日だってたくさんのょぅじょに『おおきくなったらエフラムおにいたんのお嫁さんになるーっ!』
      とか言われて囲まれて困り果ててたし」
ミカヤ  「……ひょっとして、ちっちゃい女の子にだけ作用するフェロモンでも放ってるのかしらあの子は……」
マルス  「ちなみにそのょぅじょ軍団は、怒り狂ったミルラにブレスで駆逐されてますた」
ミカヤ  「ちょ、その現場どこ!? 止めにいかなくちゃ!」

 

 ~一時間後~

 

エフラム 「……で、何とかミカヤ姉さんが止めてくれた訳だが……一体どうしたんだ、ミルラ」
ミルラ  「……いつの間にか闇のオーブが手の中にあったのです」
エフラム 「それならまあ仕方がないな」
マルス  (都合のいい言い訳だな……)
ユンヌ  「……決めたわ!」
マルス  「何を?」
ユンヌ  「エフラムちゃん! ロリコンのあなたに、是非とも聞きたいことがあるの!」
エフラム 「……ロリコンではないが、何だ?」
ユンヌ  「ロリコンにしか分からないことよ! ロリコンの中のロリコン、ロード・オブ・ロリコンのエフラムちゃんになら、きっと答えられるはず!」
エフラム 「……魔物特攻って負の女神にも適用されるんだったかな……」
マルス  「エフラム兄さん、ジークムントはしまってくださいよとりあえず」
エフラム 「前置きはいいから、本題に移ってくれないか?」
ユンヌ  「うん。あのね、ょぅじょが最も魅力的に映る方法を伝授してほしいのよ!」
エフラム 「何故俺に聞く」
ユンヌ  「いつもょぅじょに囲まれてるロリコンのエフラムちゃんだもの、それぐらい知ってるはずでしょ!」
エフラム 「……それともドラゴンキラーとかの方がいいのか……」
マルス  「剣使えないでしょ兄さん」
エフラム 「何を勘違いしているのかは知らんが、俺にそんなことを聞くのは筋違いだ」
ユンヌ  「そんな! エフラムちゃんがロリコンだってことは皆知ってるんだから、今更隠したり恥ずかしがったりする必要なんてないのに」
エフラム 「……そう言えば外伝ファルシオンは神殺しの剣だったな……」
マルス  「剣使えない上にアルム専用だから尚更無理だよエフラム兄さん」
エフラム 「……とにかく! この際だから誤解のないように言っておくが、俺は断じてロリコンではない!」
ユンヌ  「えー」
マルス  「えー」
エフラム 「マルスまでなんだ!? 全く、ロリコンだのシスコンだの、あれこれと噂を立てられて、俺も正直迷惑」
ミルラ  「……エフラム、わたしのこと嫌いですか……?」
エフラム 「な、なに!?」
ミルラ  「だって今、年下の女の子に好かれるのは迷惑だと……」
マルス  (おお、見てくださいよユンヌさん、服の裾をつかむ+見上げる+涙目のコンボですよ!)
ユンヌ  (くっ、やるわねミルラちゃん! これぞ自分の体の小ささを活かした攻撃だわ!)
エフラム 「ミルラ、誤解するな。俺は妙な噂を立てられるのが迷惑なのであって、決してお前のことが嫌いなのでは」
ミルラ  「……でも、エフラムはわたしに優しくしてくれるからロリコンだなんて言われてます。
      それが迷惑だということは、本当はわたしに優しくしたくない=わたしが嫌いということに……」
エフラム 「か、考えすぎだ!」
ミルラ  「じゃあ、わたしのこと好きですか?」
エフラム 「え? あー、それは……」
ミルラ  「……やっぱり嫌いなんですね。分かりました、もういいです……」
マルス  (おお、子供らしい無茶な理屈+イジケ虫のコンボ!)
ユンヌ  (見て、エフラムちゃん、顔中脂汗だらけだわ!)
エフラム 「……ミルラ、すまなかった。確かに、何も知らん連中が何を言おうがどうでもいいことだな……」
ミルラ  「……じゃあ、わたしのこと好きですか?」
エフラム 「もちろんだとも」
ミルラ  「嬉しいです……」

 

マルス  「……こんな調子だからロリコン呼ばわりされるんですよ、エフラム兄さんは……」
エフラム 「女子供に優しくするのは当然のことだ」
マルス  「またそうやって開き直って……」
ユンヌ  「素晴らしいわ!」
マルス  「え?」
ユンヌ  「ミルラちゃん! わたしに是非とも、あなたのテクを伝授してちょうだい!」
ミルラ  「え? え?」
ユンヌ  「ああ、その年でもう男を虜にする技術を身につけているだなんて……!
      あなたこそ女の中の女、俗に言うファム・ファタルだわ! よっ、この悪女!」
ミルラ  「わ、わたし、悪い女ではないです……」
ユンヌ  「くぅーっ! その保護欲をそそる怯えた眼差し、たまんないわね!
      なるほど、これならロリコンのエフラムちゃんが落とされない訳ないわ! いやー、納得納得」
エフラム 「止めるなマルス! この腐れ女神の体を串刺しにしてやる!」
マルス  「落ち着いてくださいってばエフラム兄さん!」
ユンヌ  「そんな訳で、これからしばらくミルラちゃんに付き添って、男を落とす幼女のテクを学んじゃおうと思いまーす☆」
ミルラ  「た、助けてください、エフラム……!」
ユンヌ  「かーっ、いいねーその表情、たまんねー!」
マルス  「どこのエロ親父ですかあんたは」

 

 ~そんなこんなで一週間ほど後~

 

ミルラ  (びくびく)

 

 と、エフラムの陰に隠れて、落ち着かなげに周囲を見回しているミルラ。

 

マルス  「いやー、怯えてますねー、ミルラ」
ミルラ  「うう……怖いのです怖いのです、闇の中からあの人がじっとこちらを見つめているのです……」
エフラム 「……おい、あの外道女神を何とかせんと、ミルラの心に拭い難いトラウマが植えつけられてしまいそうなんだが……」
ユンヌ  「やだもーエフラムちゃんったら、相変わらず過保護なんだからー」
ミルラ  「ひぃっ!」
マルス  (ホントに凄い怯え様だな……)
エフラム 「……オイ」
ユンヌ  「大丈夫よー。もう観察終わったしー」
ミルラ  「ほ、本当ですか……?」
ユンヌ  「ホントホント。いやー、この一週間ありがとうねーミルラちゃん。とってもいいょぅじょっぷりだったわー」
ミルラ  「え、ええと……」
ユンヌ  「気に入った! 台所でエフラムをファックしていいぞ」
ミルラ  「……? エフラム、ふぁっくってなんですか?」
エフラム 「止めるなマルス、あの有害指定女神を塵一つ残らず消滅させてやる!」
マルス  「大丈夫ですよ兄さん、意味さえ教えなければいいんですから!」
ミルラ  「エフラム、知っているのですか。ふぁっくってなんですか、教えてください」
エフラム 「だ、ダメだ! さすがにそれは、まだお前には早すぎる!」
ミルラ  「……じゃあいいです。お家に帰ってお姉ちゃんたちに聞きます」
エフラム 「そ、それはもっとダメだ!」
ミルラ  「じゃあ教えてください」
エフラム 「い、いや、それは……グオォォォォォォ! 俺は一体どうすればいいんだぁぁぁぁ!?」

 

ユンヌ  「ふっふっふ……これで準備は整った! アイクロリコン化計画の発動よ!」
マルス  「はあ。で、具体的にどうするんです?」
ユンヌ  「ふふ……まずはこのリコーダーつきの赤いランドセルを背負って……」
マルス  「……」
ユンヌ  「スカートの中はもちろんくまさんパンツ! 自然かつ派手にすっ転ぶ訓練も万端!
      で、泣き喚きながら『おにいちゃーん!』とこう抱きついてと。
      無論、保護欲をそそる表情も角度も既に研究済み!
      これならロリコンじゃない男でもょぅじょにトキめかずにはいられないはずよ!」
マルス  「さいですか」
ユンヌ  「おーほっほっほっほ、これでアイクは攻略したも同然!
      待ってなさいマルスちゃん、姉萌えのあなたのために、もう一人お姉ちゃんを増やしてあげるわーっ!」

 

 と、高笑いしながら飛び出していくユンヌ。

 

マルス  「……ふーっ、行ったか……」
エフラム 「……マルス、どういうつもりだ?」
マルス  「何がです?」
エフラム 「いつものお前なら、もうとっくにあのイカレ女神をメダリオンに閉じ込めているだろうに」
マルス  「いやー、端で見てて面白かったんでついつい」
エフラム 「……本気で言ってるのか?」
マルス  「いや冗談、冗談ですから、まずはそのレギンレイヴをしまってください」
エフラム 「……で、どういうつもりだ?」
マルス  「すぐに分かりますよ。アイク兄さんの異名をお忘れですか?」
エフラム 「なに……?」
マルス  「まあ、大人しく待っていましょうよ」
ミルラ  「エフラム、ふぁっくって」
マルス  「……こっちも何とかしなくちゃいけませんし……」
エフラム 「……とりあえずリオンにスリープ持って来させるか……」

 

 ~一時間後~

 

ユンヌ  「……」
マルス  「あ、エセょぅじょが帰ってきた」
エフラム 「……? なんだか、妙に憔悴した様子だが……」
ユンヌ  「……マルスちゃん、わたし押入れに引きこもるから……」
マルス  「ちょ、へこみ過ぎ」
エフラム 「……何があったんだ一体……?」
ユンヌ  「……『おにいちゃーん』って言ってアイクに抱きついたら、
      『どこの子供だ。迷子か。交番に連れて行ってやろう』って……」
マルス  「ほうほう。それで?」
ユンヌ  「いくらユンヌだって説明しても信じてくれなくて、挙句の果てに
      『誰に聞いたのか知らんが、ユンヌはそんなんじゃないぞ。
       ユンヌはもっと鳥っぽい。と言うか、鳥だ』って……」
マルス  「うわぁ……」
ユンヌ  「……アイクにとって、わたしは鳥……よく分かんない鳥の霊……
      女として認識されてすらいなかったわたし……(シュウゥゥゥゥゥゥ)」
エフラム 「……ぶつぶつ呟きながらメダリオンに入ってしまったな……」
マルス  「ホント、アイク兄さんのフラグクラッシャーは地獄だぜ! フゥハハハーハァー!」

 

終われ。