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Last-modified: 2008-04-08 (火) 16:29:19

ぼくたちバレンシア生まれ

マイセン 「お前達、どうしても行くのだな?」
グレイ  「当然だよ、じっちゃん」
ロビン  「都会で一旗上げるんだ」
クリフ  「おれはまあ、二人が心配だし……」
グレイ  「おいおいクリフ、そんなんでどうすんだよ! 昨日言っただろ、三人で都会のナウい女をゲットするんだってさ!」
クリフ  (……なんなんだ、この変なテンション?)
ロビン  (ほら、こいつ最近クレアと上手くいってないからさ……)
グレイ  「とにかく、俺たちは都会で一旗上げる! そのためにまずは働ける場所の下見に行くんだ!」
マイセン 「うむ……まあ、お前達はまだ若いからな。外の世界を見ておくのも悪くはなかろう。
      泊まる場所はアルムの家だったな?」
グレイ  「おう。快く承諾してくれたぜ! やっぱり持つべきものは友達だよな!」
ロビン  (なに言ってんだ、ただでさえ兄弟多い家に三人も強引にねじ込んだくせに)
クリフ  (まあまあ……)
マイセン 「……気をつけてな。都会は恐ろしい場所だ。特に、我々バレンシアの村人にとっては、な」
クリフ  「? それ、どういう……」
グレイ  「おい、騎竜便が来たぜ! さっさと乗らないと次来るのは一週間後になっちまう」
ロビン  「じゃ、行くか」
クリフ  「ああ、うん……それじゃあマイセンのじっちゃん、行ってきます」
マイセン 「うむ……着いたら一言連絡を寄越すのだぞ」

 ~紋章町、中心地区~

グレイ  「ひゃー、すげーや、人がいっぱいでビルも高い! さすがに都会は違うねえ」
ロビン  「あんまり騒ぐなよ、田舎者だと思われるぜ」
クリフ  「実際田舎者じゃないか……で、これからどうするんだ? とりあえずアルムの家に行く?」
グレイ  「おいおいクリフ、何言ってんだよ。まだこんなに日が高いんだぜ?」
ロビン  「観光でもするのか?」
グレイ  「バカ言うな、そんなおのぼりさんみたいなこと出来るかよ」
クリフ  「いや、実際おのぼり……」
グレイ  「都会に来たら、やることは一つ! ナンパだよ、ナンパ!」
クリフ  「な、ナンパァ!?」
ロビン  「おいおい……いくらクレアと上手くいってないからってお前……」
グレイ  「うるせえ! あんな田舎女の子となんざ知るか! チクショウあの女め、こっちが下手に出ればいい気に……」
クリフ  (……どうする?)
ロビン  (どうする、ったってなあ……グレイが面倒ごとに巻き込まれるのを黙って見てるわけにも……)
グレイ  「なーに、心配すんな。噂じゃ、バレンシアの村人は都会じゃ引っ張りだこって話だぜ?」
クリフ  「ええ!? 本当かい?」
グレイ  「本当だって。今に可愛い女の子が俺らに声を」
???  「おい、お前達」
グレイ  「ほら、み……ろ……」

 グレイが振り返った先には、雲を突くような大男がズーンと仁王立ちしていたりして

三人   (デケェーッ!!)
アイク  「……? どうした、俺の顔に何かついているか?」
クリフ  「あ、い、いえ、別に……」
ロビン  「え、えーと……お、俺たちに、何か……?」
アイク  「いや……ふむ……」

 かすかに眉をひそめながら、謎の大男は大きな手でグレイの体をあちこち触り始める。

グレイ  (な、なんだ、なにされるんだ俺!? と、都会は怖すぎるぜぇーっ!)
アイク  「なるほど。やはりそうだ」

 大男は、やたらと感心した様子で頷いた。

アイク  「お前」
グレイ  「は、はい!?」
アイク  「いい体してるな。グレイル工務店に入らないか?」
グレイ  「は……?」
ミスト  「ちょ、ちょっと、お兄ちゃん!」

 栗色のロングヘアを揺らしながら、可愛らしい女の子が息を切らして走ってくる。

グレイ  (うお、めっちゃ俺好みの……!)
ミスト  「す、すみません、ウチの店員が……ちょっとお兄ちゃん、一体何やってるのよ!?」
アイク  「何って、勧誘だ。人手が足りないからどこかから引っ張ってこないと、とお前だって言ってたじゃないか」
ミスト  「だからってあんな誘い方ないでしょ! 誤解されちゃうよあれじゃ!」
アイク  「誤解? あの勧誘をどう誤解するって言うんだ?」
ミスト  「そ、それは……と、とにかく、あれはもうダメだから!」
アイク  「しかし……」

 言い争う二人の前で、村人三人組は顔をくっつけ合う。

ロビン  (どうする? 今の内に逃げるか?)
グレイ  (バーカ、なんで逃げる必要があるんだよ。あんな可愛い子とお知り合いになれるチャンスなんだぜ?)
クリフ  (えぇ!? で、でも、どう考えたって怪しいよ……!)
グレイ  (虎穴にいらずんば虎子を得ず! ここは一つ……)
???  「あのー」
グレイ  「なんだよ、今いいとこ……」

 と、グレイが振り返った先には……

セリス  「あ、そうなんですか、ごめんなさい、取り込み中ならあとに……」
グレイ  「やあどうもお嬢さん、バレンシア一のいい男、グレイです。以後お見知りおきを」
セリス  「え、お嬢さん……? えーっと、まあいいや、ちょっと、お話がしたいんですけど、お時間はよろしいですか?」
グレイ  「ははは、もちろんですとも。ささ、立ち話もなんですから、適当にどこかのお店でゆっくり……」
セリス  「そうですか。ラナー、この人たちが話を聞いてくれるってー!」
ラナ   「……」
グレイ  (う、うおっ!?)
ロビン  (な、なんだこの……お、女の子!?)
クリフ  (う、動けない! 威圧感で一歩も動けないぞ……!)
ラナ   「……さすがセリス様! 人を見る目がございますわ!」
セリス  「そう? よかったぁ。なんだかね、この人たちならいい弓使いになれる! そんな気がしたんだよ!」
ラナ   「そうですわね……という訳で……あなたたち?」
三人   「は、はい!?」
ラナ   「ユングヴィ家直属の精鋭弓部隊、バイゲリッターに入隊するつもりはありませんこと?
     今なら三食昼寝付きで……」
ヘクトル 「おーっと、そうはいかねえぜ!」
グレイ  「うわ、またなんか出た!?」
リン   「ごめんねセリス、いかに弟といえど、ここは譲れないわ!」
セリス  「兄さん、姉さん!? 一体……」
エリウッド「……すまないね君たち。見たところ中学生ぐらいだけど……」
クリフ  「は、はあ。まあ、そうですけど……?」
ヘクトル 「お前ら、エレブ高に進学する気はねえか? 見たところなかなかいい体つきだ、
      今ならスポーツ特待生で学費免除になるかもしれねえぜ」
ロビン  「はあ……?」
リン   (……なんでわたしたちがこんなことしなくちゃならないのよ!?)
ヘクトル (仕方ねえだろ、単位は新入生の勧誘活動と引き換えだって脅されてんだから!)
エリウッド(……教師がそんなことしていいんだろうか……ああ、胃が痛い……!)
グレイ  「い、いったい……」
ロビン  「なにが」
クリフ  「どうなって……?」
アイク  「おいお前達、悪いが、そいつらには俺が一番に声をかけたんだ」
ラナ   「まあセリス様のお兄様。こういうことは、本人達の意志を優先するべきですわ」
ヘクトル 「そうだぜ兄貴。そういう訳でお前ら、どれを選ぶんだ、あぁ?」

 三方から物凄い視線で睨まれて、動けなくなってしまう村人三人組。と、そこへ……

バーツ  「君達! タリス家の戦士団に入らないか!?」
ウルフ  「いや、それよりもオルレアン家の狼騎士団に騎兵として」
マリク  「カダインの魔道学院に入学する気はありませんか?」
ツァイス 「ベルン署の竜騎士団は、常に君達のような前途有望な若者を待っている!」
バース  「重騎士の魅力を知れ! オスティア家重騎士団は、君達を歓迎する!」
リオン  「僕と共に闇魔法を極めるつもりは」
セーラ  「そんなのはどうでもいいからエリミーヌ教団に入信しなさい! 悪いようにはしないわ!」
ロイド  「任侠一家『黒い牙』で、庶民の味方として働いてみる気はないか?」
ギース  「海はいいぞ! 一緒に黄金色の海に吠えてみようじゃねえか!」

グレイ  「ななな、なんなんだ一体!?」
ロビン  「ど、どうして俺たちみたいな何の変哲もない村人に、こんな人数の人たちが……!?」
クリフ  「ととととと、とにかく、にに、逃げないと大変なことに……!」

 三人は顔を見合わせて、一斉に逃げ出した。

バーツ  「逃げたぞ!」
ウルフ  「追え!」
セーラ  「って言うか、邪魔しないでよねあんたたち!」
ツァイス 「なんだと!?」
ギース  「やるか!?」

 こうして、紋章町中心街において、数多の集団が矛を交えることになったわけで。

 ~路地裏~

クリフ  「はあ、はあ、はあ……ま、参ったなあ、逃げてる内に二人とはぐれちゃったよ。
      仕方がない、先にアルムの家に向かって……」
エフラム 「……おい、そこのお前」
クリフ  「は、はい!?」
エフラム 「……何故だろうな。お前から、物凄い潜在能力を感じる、ような気がする……」
クリフ  「え、えーと……」
エフラム 「……血が滾る……!」
クリフ  「は?」
エフラム 「槍を取れ」
クリフ  「えぇ!?」
エフラム 「なに、軽く手合わせするだけだ。お前の才、俺のこの手で確かめさせてくれ……!」
クリフ  「な、なんなのこの人~っ!?」

グレイ  「ちっくしょう、酷い目にあった……! だが俺はくじけねえぞ! 必ず可愛い子ちゃんとお知り合いに……!」
ウルスラ 「ねえ、そこのあなた?」
グレイ  「なんだよ……!? あ、いや……オホン。
      やあどうもお嬢さん、バレンシア一のいい男、グレイです。僕に、何かご用ですか?」
ウルスラ 「ええ、そうですわ。とっても素敵なお兄さん……?」
グレイ  (おお! よ、ようやっとまともなお誘い……! ここはしくじらないように……!)
ウルスラ 「あなたにとって、とてもいいお話がありますの……少し、お時間いただけますかしら?」
グレイ  「ええ、もちろんです! どど、どこでお話しましょうか?」
ウルスラ 「ウフフ……焦らないで。さ、こちらへどうぞ。この家の中へ……」
グレイ  「はーい……あれ? 扉閉まったら真っ暗に……
      って、なんだこりゃーっ!? いつの間にやら変な手術台に寝かされて、四肢を拘束されているーっ!?」
ソーニャ 「ふふふふ……よくやったわ、ウルスラ!」
ウルスラ 「ハァハァ……はい、ソーニャさま……ハァハァ……わわ、わたし、とっても頑張りました……!
      ほほほほ、褒めてください!」
ソーニャ 「よーしよしよしよしよしよしよし!」
グレイ  (ななななな、なんだ!? 何が起きてるんだ!?)
ネルガル 「クククク……ようこそ、ネルガルの実験室へ!」
グレイ  「はい!?」
ネルガル 「生まれながらにして数多の才能を有すると言われるバレンシアの村人……! 
       わたしは是非一度、解剖してみたかった!」
グレイ  「かかかかか、解剖ーっ!?」
ネルガル 「そうだ! 安心しろ、貴様のデータは新型のモルフに活かされることになる! そういうわけで早速……メス」
ソーニャ 「はい」
グレイ  「ちょ、ちょっと! だ、誰か、助けてーっ!」
ネルガル 「クククク、叫んでも誰も来んわ! さあ、大人しく……!」
???  「待ていっ!」

 声と共に壁が吹き飛ばされ、何者かが家の中に飛び込んでくる。

ネルガル 「むぅ……! 貴様は……!」
リーフ  「彼を離してもらおう……!」

 叫びつつ、リーフはウインドを小刻みに飛ばしてグレイの四肢を拘束していたベルトを切断する。

グレイ  「た、助かった……!」
リーフ  「おい、君!」
グレイ  「あ、ああ、助けてくれて……」
リーフ  「お礼なんてどうでもいい! そんなことより、教えてくれないか!?」
グレイ  「な、なにを……?」
リーフ  「どうやったら、君みたいに綺麗なおねいさんに狙われるようになれる!?」
グレイ  「はい!?」
リーフ  「ああ、僕もウルスラさんにこんな怪しげな実験室に連れ込まれて、アレな実験されてみてぇーっ!」

 と、リーフが身悶えしながら叫んだ瞬間、リワープの魔法で三人娘が現れる。

ナンナ  「リーフ様!」
ミランダ 「今日という今日は!」
サラ   「……自重してもらうわ……!」
リーフ  「ギャーッ!」
ネルガル 「ええい、人の研究室で好き勝手に……! 者ども、出会え出会えぃ!」
モルフたち「イーッ!」
グレイ  「うぎゃーっ! た、助けてーっ!」

ロビン  「はぁ、はぁ……くそっ、クリフとグレイは無事か……!? 俺も早いとこ、アルムの家に向かわないと……!」

 後ろを気にしながら路地裏を走っていたロビンは、ちょうど角を曲がってきた誰かと正面衝突してしまう。

シーダ  「きゃっ」
ロビン  「うわっ……ご、ごめんなさい!」
シーダ  「いたたたた……だ、大丈夫です。お怪我はありませんか?」
ロビン  「い、いえ、そんな……すみません、前をよく見てなくて……」
シーダ  「こちらこそ……あら」

 お嬢様然としたその少女に唐突に手を取られて、ロビンは大いに慌てふためいた。

ロビン  「あ、あのっ!?」
シーダ  「まあ大変、ここ、血が出てますわ。転んだときに切ってしまったのね……」
ロビン  「え? あ、ああ、かすり傷ですよ、こんなの……」
シーダ  「ダメです、ばい菌が入りますから……とりあえず、これを」

 と、天馬のマークがついた絆創膏を、優しい手つきで巻いてくれる。
 女の子に耐性のないロビンは、もうドキドキしっぱなしである。

ロビン  (うわぁー、こんな可愛い子が、お、俺の手……! な、なんか、髪からいい香りが……!)
シーダ  「……はい、出来ましたよ。応急処置で申し訳ないんですけど……」
ロビン  「いいいいいえいえ、こんなかすり傷でここまでしてもらっちゃって……」
シーダ  「ふふ……結構、大きな傷だと思ったのですけど……本当に、痛がらないんですね?」
ロビン  「あー、ウチの手伝いしてるときなんか、こんな傷はつきものだし……」
シーダ  「まあ、お家では、何を?」
ロビン  「ええと、バレンシアで、農家を」
シーダ  「そうなんですか。道理で、たくましい殿方だと思いました」
ロビン  「た、たくましい!? いやあ、そんな……」
シーダ  「あ、ごめんなさい、もうこんな時間……ごめんなさい、失礼しますね」
ロビン  「は、はい」
シーダ  「お家に帰ったら、傷、ちゃんと治療してもらってくださいね」
ロビン  「そ、そうします……あ、ありがとうございました!」
シーダ  「はい。それでは……」
ロビン  「……行っちゃった。あー、なんか、照れるなー……グレイじゃないけど、これはちょっと、期待……」
マルス  「いけないなあ」
ロビン  「!? あ、あんたは……!?」
マルス  「シーダは相変わらず、誰にでも親切なんだから……おかげでまた変なフラグが立っちゃったじゃないか……」
ロビン  「え、ええと……?」
マルス  「んー……『はなす』コマンドの相手が増えるって、あまりいい気分じゃないんだよねー、正直……」
ロビン  「は……?」
マルス  「君もねえ……バレンシアの村人ってのは、たくさんの可能性を持ってるって話だけど、これは、ねえ……」
ロビン  「……な、なんか、嫌な予感……!?」
マルス  「……少し、頭、冷やそうか?」

 ~一時間後~

クリフ  「ぜぇ、ぜぇ……! な、なんだったんだあの槍の人は……!
      途中で妙に気障なスナイパーの人が現れなければ、今頃……
      ああ、良かった、きっと、あのスナイパーの人は僕を助けてくれたんだな。実はいい人なんだろうなあ……」

グレイ  「はぁ、はぁ……! に、逃げられたーっ!
      一体なんなんだよもう! なんだって俺がこんな目に……
      ああ、やっぱり都会は怖いところだ! ロクな女がいやしない! クレア、やっぱりお前が一番だよ!」

ロビン  「ひぃ、ひぃ……! ここここ、怖かったぁーっ!
      逃げても逃げても誰かが追ってくるなんて……! あの王子様然とした人は、一体なんだったんだ!?
      あれだけの人数動かせるなんて、並大抵じゃないよ!」

 それぞれ走ってきた三人は、とある十字路でようやく合流する。

クリフ  「おお、お前ら!」
グレイ  「無事だったか!」
ロビン  「ってことは、やっぱり危ない目に遭ったんだな!?」
グレイ  「おうともよ! 都会は怖いところだ! 村人を解剖してみたいなんて、イカれてるよ!」
クリフ  「なんか、槍持った人が、俺の可能性がどうこう……」
ロビン  「ああ、俺も村人の可能性がなんとか言われたなあ……一体どういうことなんだろう」
???  「その疑問には、わたしがお答えするわ」

 突然聞こえてきた声に、三人はぎょっとして振り向く。
 コンクリートの塀を背に、誰かが椅子と卓を置いて座っていた。卓の上には水晶玉があり、その横に札が立てられている。

グレイ  「銀の髪の乙女……?」
ミカヤ  「ええ、ここで、占い師をやらせてもらってるの。よろしくね」
ロビン  「はあ……」
クリフ  「それで、疑問に答える、って……」
ミカヤ  「……あなたたちは、バレンシア地区のご出身なのよね?」
グレイ  「そうですけど……?」
ミカヤ  「あの地区の……特に、村人と呼ばれる階層の人たちは、生まれながらにしてたくさんの可能性を秘めていると言われているの」
ロビン  「可能性、ですか」
ミカヤ  「そう。普通の人たちは、大体、戦士か騎士かマージか……みたいに、一本しか道が選べない運命にあるんだけど……
      バレンシア地区の村人さんたちには、かなりたくさんの選択肢が用意されているのよ。それこそ、その気になればどんな職にでも就けるぐらいにね」
クリフ  「へぇー、そりゃ初耳だなあ」
ロビン  「そっか、それで今日、あんなにいろんなところから勧誘を……」
グレイ  「クゥーッ! 俺たちって、実はスゲー人間だったんだな!」
ミカヤ? 「そう……凄い人間なのよ……だから、ね」
グレイ  「……だから?」
ロビン  「あ、なんか……」
クリフ  「嫌な予感……」
ユンヌ  「わたしの下にいらっしゃい坊やたちぃぃぃぃぃっ! 『美少年』にクラスチェンジして、逆ハーレムを形成しましょぉぉぉぉぉぉっ!」
三人   「やっぱりこのパターンかよぉぉぉぉぉぉおっ!」

 ……そんなこんなで、三人は夜になってようやく、親友であるアルムの家に辿りついたわけで。

アルム  「いらっしゃい……って、なんか三人ともボロボロだね?」
セリカ  「何があったの、一体?」
ロビン  「……聞かないでくれ」
クリフ  「……もうつかれたよ……」
グレイ  「……アルム。俺、やっぱ実家の農家継ぐわ……」
アルム  「は、はあ……?」
セリカ  「一体……」
グレイ  「聞かないでくれ! 都会は恐ろしいところだ。お前ら、よくこんなところで生きていられるな!?」
アルム  「落ち着けよ。一体何があったんだ?」
グレイ  「それがな……」

 と、グレイが事情を話そうとしたところで、外の方からガヤガヤと騒がしい声が。

ヘクトル 「ったく、兄貴が邪魔しなけりゃよー」
アイク  「何を言う。ああいう体つきのいい奴らは、土方をやるべきなんだ」
エフラム 「あの村人、やはり筋が良かった……ヒーニアスの邪魔さえ入らなければ、もっと才能を確かめられたものを……」
リーフ  「クソゥ、僕はどうやったらおねいさんに……」
マルス  「全く……あれだけの人数から逃れるなんて、村人には盗賊の才能もあるのかな?」
リン   「まあまあみんな、積もる話は家の中で……」
ユンヌ(鳥)「クーッ、わたしの美少年コレクションが……!」
ミカヤ  「自重して、ユンヌ……でもそのコレクションの話はまたあとで詳しく……」
エリウッド「そうそう。ただいまーっ!」

 玄関の敷居を跨いだ兄弟達は、当然村人三人組とバッタリ顔を合わせることになった訳で。

三人   「あーっ!?」
兄弟   「おーっ!?」
アルム  「え?」
セリカ  「なに?」
アイク  「お前達、今度こそグレイル工務店に」
ヘクトル 「いや、エレブ高に」
エフラム 「さあ槍を取れ、ソルジャーとして手合わせ願おう!」
リーフ  「僕におねいさんに好かれるコツを!」
マルス  「今度こそ頭冷やしてもらおうか……!」
ユンヌ(鳥)「美少年の卵発見! 動きを封じるのよ、ミカヤ!」
ミカヤ  「落ち着きなさいってば……」
三人   「もういやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 喧々諤々の騒ぎの中、村人三人組はひしっと抱き合って叫ぶのだった。