ライフ 第20話

Last-modified: 2010-10-31 (日) 21:06:25

夜、克己邸では…。

 

「なんだこの成績はァ!!!」
《ガシャアアン!!》
広間にて克己の父親が灰皿を壁に投げつける。
克己は父親から目をそらして怯えている。
母親も大きな音で駆けつけてきた。
「あなた!まだケガが治ってないのに…。」
「おまえはだまってろ!」
父親は克己の胸ぐらを掴むとグッと睨み付けた。
「無様な目にあいやがって…そもそもあの夜、マナミさんとの約束を断ったりしたからだろ?」
実はあの日、病院先で駆けつけた愛海から今日は一緒に勉強すると約束していたのだが、来なかったことを父親に話していたのだった。
父親は手を話すと克己は力なくソファーに座り込む。

 

「自業自得だ!!」
大きな声で叱咤すると父親は乱暴にドアを開けて去っていった。

 

「…カッちゃん…お友達から電話…。」
母親が受話器を持ってくると克己は恐る恐る受話器を耳に当てる。すると克己の顔色が真っ青になり、急いで家から飛び出していった。
……………………………
町の裏通りで克己とあの男、アキラが何かをしている。

 

「3、4、5…いつもアリガトねー。」
克己はアキラに5枚の1万円札を渡すとニヤニヤしながら数えて胸ポケットの中に入れる。
顔を下げている克己が震えながらも口をあける。
「いっ…いいがげんにしろ…警察につきだしてやるからな!!」
それに対し、アキラは胸ポケットから何かを取り出す。それは克己の学生証だった。

 

「“佐古克己、彼女は大手企業の社長令嬢。”オマエんちはその子会社だからご機嫌うかがいで付き合っている。
オマエ、その女と別れたいんじゃねーの?」
「………!?。どうしてそれを…?。」
するてアキラは克己の耳元でこう呟いた。

 

「オレが彼女をヤっちゃってもいーんだぜぇ…。もちろん、オマエが指図したことにしてな…。
そうなるとどうなるか…クックックっ。」
それを聞くと克己は脱力し、膝をついた。

 

「そんなことになったら…オレは終わりだ…。」涙を流しながらアキラにひれ伏す克己。アキラは克己を足蹴にして高笑う。
「せいぜい金でも貯めとけや!!」
……………………………

 

「キャアハハハハっ!!」
アキラと愛海はラブホテルのバスルームであの出来事を話していた。

 

「カツミくんってやっぱりマナと別れたがってんだ?」
愛海は浴槽に浮かんでる花を持つとグシャっと握りつぶす。

 

「ムカつく。」
「…わっかんねーなぁ、会社の都合でイヤイヤつきあうなんてよ。オレならブチ切れるね。」

 

「最初はほんとにラブラブだったんだよぉ?でも勉強しか能ないし、Hもしないしつまんなくてさー。
もう別れちゃっていーけど自由にしてやるのも悔しいじゃん?」
愛海はアキラにゆっくりと抱きつく。

 

「…アイツさぁ…手、出してこねーのはいつでも別れられるよーにしてるってことじゃねーの?」
「!?」
その言葉に愛海の表情が変わった。
「…なっなにそれ…ありえない…じゃあ初めからカツミくんはマナを嫌っていたワケ?」

 

「どうでもいーじゃん。オレが思いっきり愛してやるっつーの。」
「………。」
アキラは浴槽の花を一輪取ると、それを愛海の髪に飾る。
……………………………
アキラは着替えて部屋から出ようとするが愛海はバスタオルを体に巻いただけだった。

 

「マナミ出ねーの?」
「楽しーからもーちょい堪能してから出るー。」
「そんなのいつでも連れてきてやるのに…金は払っとくからなー。」

 

「えっ?アキラ、金あんの?」
するとアウターシャツの胸ポケットが五枚の札束を見せる。

 

「これってまさか…カツミくんの?」
「そっ。」

 

間を置いて愛海がクスッと笑う。

 

「マナの魅力がわからないなんてバカな男…。」アキラは去ろうと部屋のドアをあける。

 

「わかってるわよね…。」
愛海がそう言うとアキラは少し笑った。

 

「じゃあな。」
アキラは部屋から去っていくと愛海は部屋のテレビをつけた。
画面に映ったのは18禁系の番組だった。

 

“あっあんっ!”
“かわいいね…。かわいいよ。”
“世界で一番かわいいよ”
その声を聞いた瞬間。

 

《ビリーーーっ!!》
愛海は狂ったかのごとく、ベッドのカーテンを無残に破りちぎる。

 

次にそばにあったステンドを持ち上げると棚に並べてあったアンティークや薬用品にむけて叩きつけた。
「思い知れ!!」

 

《ドガシャーンっ!!》
「マナが一番かわいいんだ。」
最後にステンドを窓側に投げつけた。

 

「マナが一番愛されるはずなんだ!!」
ステンドが部屋の証明スイッチに当たり、証明がほとんどなくなる。その中でも愛海は狂ったような笑いかたをしていた。
「…マナを裏切るヤツは許さない。」

 

“ど ん な 手 を 使 っ て で も … … ! !”
……………………………
火曜日の夕方、薗田が町の本屋から出てくる。

 

《ドン!》
薗田は人とぶつかり、買った物を落とした。

 

「どこ見て歩いてんだよ!!」
「すいません…。」
薗田は落とした物を拾うと顔をあげる。

 

《! ! ?》

 

目があった瞬間、薗田は目を反らし、そそくさと去っていった。

 

「あいつは…。」
薗田とぶつかった男はアキラだった。すぐにアキラの仲間がやってきた。
「なーにやってんだよ!アキラ!」
「ワリィ、またせたな…。」
「今の知り合いか?」
「いや…似てたけどな…。中1のころイジメてたやつに。」
アキラはタバコに火をつけて、空を見上げた。

 

「…そいつ不登校になってさ、そのあと転校までしてオレから逃げたんだよ。」
「ギャハハハッ、ヒサンだなー。」
「まあー転校したんだもんな。こんなところで会うわけねえか…。」

 

………その頃、薗田は離れたところで息を切らして休んでいた。

 

「…あいつだ…狩野だ…狩野アキラ……!!」
薗田はさっきの顔と昔、自分をイジメていた集団の主犯の顔と重ねると完成に一致した。
そう…中学時代に薗田を不登校、転校にまで追いやった集団の主犯が、あのアキラだったのである…。

 
 

………話にもどり、アキラ達はある紙を見ていた。
「場所分かったのかよ?」
「ああ。昨日マナミに地図をもらった。」

 

それを見終わると握りつぶし、ニヤッと笑った。「さぁーて、ショータイムの始まりだ!!行くぞ!!」

 

……………………………
その夜、歩は部屋で羽鳥からもらったバイトのスケジュール表を眺めていた。

 

「今日はこの店にいるんだ。」
その場所は入学してきて間もないころ、きのこピラフを食べたあの店だった。
“行ってみようかな…羽鳥さん驚くかな…。”

 

早速歩はあの日、羽鳥に買ってもらった服を来て、家から出ようとした。すると居間から母親が出てきた。

 

「成績表は?結果出たんでしょ?」
歩は黙り込んだがすぐに口を開いた。

 

「……帰ってから見せる……。すぐに帰るから。」
歩は家を出ると笑顔で出ていった。

 

……………………………
歩は羽鳥がバイトしている店に到着し、ドアから覗くと忙しくも笑顔で働いている羽鳥の姿があった。
「あっ!羽鳥さんだ!。」
歩は外から力いっぱい手を振るが忙しいのか全く気づいてもらえない。

 

“イキナリ来ちゃまずかったかな…?”
そう思っていると、

 

「すいません。」
横を見るとサラリーマンらしき人が歩に声をかけてきた。

 

「道に迷ってしまって……QLLビルに行きたいんです。」
「それならもうひとつ奥の道です。」
「そうなんですか!?ありがとうございます。この辺ははじめてで…。」するとその男は持っていたカバンを開け出した。
「よかったらお礼に…。」
「そっそんないいです。」
歩は必死で首を振る。

 

「いやいや、ぜひ受け取って下さい。」
すると男が取り出したのはハンカチだった。

 

「えっ…?」

 

次の瞬間、男は歩の背後に回り、歩の首を押さえて口と鼻をハンカチで押さえつけた。

 

「むっ!むぐぐぐっ……。」
歩は必死で抵抗するがしばらくしてその場で倒れ込んでしまった。
すると近く潜んでいた男達が歩を持ち上げ、近くの車のトランクの中に放り込んだ。

 

一方、羽鳥は車の音がしたのでドアを開けたが誰もいない。

 

「……?」
羽鳥はまた店に戻っていった。

 

………その頃、竜馬は町のバーで一人、酒を飲んでいた。
「……椎葉…?」
突然、竜馬の頭に歩の姿が浮かび上がったが、気のせいだと思い、また酒を飲み始めた。
……………………………
「………?」
歩は目が覚めた。しかし体が言うことを聞かなかった。目を開けても何も見えず、口も開けられず、手足は何かで拘束されて何も出来なかった。

 

「!?ーーー!!」
ビリビリとする音がし、手足は解放され、周りが見えるようになった。
足元を見ると、やけに多くの足がある。上を少しずつ見ると。

 

「ようこそ」

 

“! ! ? ”

 

そこにはアキラとその仲間が歩を見つめていた。歩は恐怖で後ろの壁にもたれかかる。

 

「あっ……あっ…。」

 

《ズバーン!!》

 

隙を見て、歩は部屋の入り口から飛び出した。

 

「はあっ…はあっ…」
ここはどこか分からない。しかし今はそんなことを言ってる暇などない。とにかくあの男達から逃げなくては…と必死で出口を探す歩。

 

「アハハハハッ!!」
後ろを向くとどこまで追ってくるアキラ達、歩は非常口の看板を見つけて、先にあった扉を開けたーーー。

 

しかし。
「………。」
その先には脱出できる道がなく、あるのは闇という地の底が視線いっぱい広がるばかりだった。
歩は絶望し、その場に力なく座り込む。

 

「ここから逃げられたヤツはいねーんだよ。」
アキラ達に追いつかれ、連れていかれる歩。

 

……………………………
「あきらめたみたいだな…。」
手錠をかけられ、一つだけあるベッドの手すりに引っかけられる歩。

 

「荷物こんだけかぁ?」「あっ!?」

 

アキラに持っていたバッグを取り上げられた。

 

《ドボンっ!》

 

水の貯めたバケツの中に放り込まれ、バッグはずぶ濡れになってしまった。

 

“けっ…ケータイが…”バッグには携帯が入っていて、バッグがずぶ濡れになった今、携帯はもう使えないと悟った。

 

「ざーんねんでしたぁ♪じゃあね♪」
アキラ達は歩から去っていくがアキラは歩に振り向いた。

 

「明日は祭りだ。もう一人たんねーしな…。」
アキラはドアに鎖をかけるとニヤっと笑った。

 

「明日は性欲に飢えたヤツら連れてくっから楽しみにしとけよ♪」
そういうとアキラ達全員は去っていった。

 

一人取り残された歩は手錠により、完全に身動きが取れなくなっている。
次第に恐怖と絶望が襲いはじめ、ガタガタ震える歩。

 

「いやっ…いやっ…。」

 

なんとかしようと必死に手錠をガチガチ叩きつけるが全くの無意味であった。逆に体力を大幅に消費してしまった。

 

そして恐怖が限界に達し、大粒の涙が歩の目から溢れていた…。

 

“イ ヤ ア ア ア ア ア ! !”