敗者のゲーム

Last-modified: 2005-11-26 (土) 10:41:29

敗者のゲーム

敗者のゲーム」チャールズエリス著、日本経済新聞社刊。

この本も「ウォール街のランダムウォーカー」と同様、刊行されてから20年という月日のフィルターを通ってきた投資本である。というわけで読んでみた。

読書ノート

ウォール街のランダムウォーカーはこの本の資料やグラフを多数引用しているため、ランダムウォーカーを読んでいれば主張そのものは真新しいものはなく、さしたる驚きはない。機関投資家向けの話に多くのページが割かれ、やや冗長な感じもする。

ランダムウォーカーとの共通項

ランダムウォーカーと一致する主張は「インデックスファンドを買え」。まさに長期投資家にとってはインデックスファンドしか選択肢が無いようである。

ランダムウォーカーと正反対の主張

ランダムウォーカーと全く違う主張をしている部分もあり、これは興味深かった。違う主張は以下の通り

  • 自分の住宅は投資資産と考えるな
  • 債券に投資するな
  • 世代ごとの運用などはない

ランダムウォーカーでは「住宅を買っているなら不動産について投資は終わっている」と述べている。また、債券への投資は否定していない。世代ごとにとれるリスクは違うから、年を取るごとにリスクの低い債券へとポートフォリオを変化させるべきだ、と主張している。

これは、エリスがインフレについて慎重であるからである。

20世紀初めに100ドル投資していたら73万ドル近くになっている。(中略)ここで言いたいことは複利の効果がいかに富の実質価値を増加させるかということではない。インフレが富の実質購買力を容赦なく破壊していく、しかも経済成長が富を蓄積していくスピードとほとんど変わらぬ早さで。

とあるとおり。マンハッタン島をインディアンから略奪しておいて「その24ドル投資しておけばよかったんだ」と曰うマルキールとの違いがここにある。

新しい主張

  • 長期運用方針を文書にして書き出し、それに沿って投資すること。見直しは毎年。最低でも10年に1度。
  • 生涯を通じた運用をすること。(生涯とは子や孫の期間も含むほぼ永久)

実際の投資に取り込むべき事

株式インデックスファンドを長期にわたりドルコスト平均法で積み立てる。長期ならこの方法がベストのようだ。これは早速始めなくてはならない。

そしてマルキールの主張のように自宅を投資資産とは考えない。長期運用方針を文書にするというのは是非やって見ようと思う。

さて、一番の大きな違いは「債券の扱い」であり、両者まったく扱いが異なっている。マルキールとエリスのちがいは、マルキールは資産形成を「お金の心配のない自分の引退後のため」に行うのに対し、エリスはもっと長いスパン(自分の寿命をも上回る期間)で考えているところにあると思う。

マルキールは「資産が無くなってもなお生きながらえることは、死より恐怖だ」と、引退後の安全な資産運用に債券を勧める。エリスは「何よりも怖いのはインフレ」であるという。

債券の扱い

さて、債券についてはどのように扱うべきだろう?自分はまだこれからインデックスファンドを積み立てていこうという段階なので、まだまだ債券について思案する必要はないと思っている。そもそも資産自体が少額なのだから。

債券の扱いについてはちょっと長期ペンディング事項になりそうだ。