マスコミは統計でウソをつく

Last-modified: 2017-08-06 (日) 21:46:19

マスコミは大衆を馬鹿にしている

 これはよく知られている単なる事実なのでどうでもよい。マスコミにモラルなどというものは期待してはいけない。

マスコミ関係者は全員「統計でウソをつく法」を読め

と言いたくなる記事が跋扈しているのに驚きだ。マスコミの使用する統計はたいていがウソで、そのウソの付き方は「統計でウソをつく法」で解説済みのものばかり。それだけダレルハフ著の「統計でウソをつく法」は、古典であるにもかかわらず、普遍的な内容であるという証明なのだけれど。

見かけた統計のウソを暴いてみる。

ちょっと大げさかな。

プレジデントオンライン「平均年収1400万円、「開成・灘」卒業生とは何者か」2017年4月3日掲載

超久々の更新。

http://president.jp/articles/-/21720?page=2

読むべきところはたった一か所。「開成は2013年、灘は14年に、28年分の卒業生のうちランダム抽出した約5000人に質問紙を郵送し、あわせて1000を超える回答が集まった。」

つまり、5000人に質問用紙を回答し、4000人は無回答であり、答えられる人間1000人から情報を得られたとのこと。
何度も何度も言う。「『統計でウソをつく法』を読め」。なんでこんな簡単な統計の穴に陥るのか?もろにダレルハフ氏が指摘している学歴と年収の相関のウソにはまっているではないか。

簡単である。優秀な進学校を卒業して今はホームレス、ってな人は質問には回答しないであろう。また、いわゆる「普通の」収入の人だって、「超有名進学校」出身者であれば、こういった質問に回答するであろうか疑問である。
つまり、回答するのは文句なく順風満帆な人生を送っている高収入の人間が回答するものなのである。

統計を駆使してなにかを言っている気になっているとはおめでたいが、この雑誌はもともと「頭のよくない上流階級」相手の雑誌なので、これはこれでお似合いなのかもしれない。

雑誌「ビッグマシン」2005年8月号

 「1日、24時間のうちで最も死亡事故の多いのは18時から20時の間。つまり、夕方だ。(中略)原因のひとつとして考えられるのが”運転者の疲れ”。(中略)ところで、18時から20時の間というと、帰宅ラッシュの時間帯なので、交通量が多いから死亡事故も多いのではないか、と考える向きもあるだろう。しかし、昼間の時間帯で最も死亡事故の少ないのは12時から14時。交通量は決して少なくはないのだが、その時間帯は心身共に活動的。よって、死亡事故が回避されるケースが少なくないのではないないだろうか。」

 だそうです。この「夕方には死亡事故が多い」神話は何度も何度も何度も何度も何度も何度も言われている。占星術や血液型性格判断のように、デタラメなのに消えることがない。いったいなぜなんだろう。自分でも言っているとおり、まさにその時間は帰宅ラッシュで単純に交通量が多いからである。しかも、昼休みにより交通量が一時的に減る時間には死亡事故もすくなくなる、と自分できちんと言っている。なぜその統計だけで「夕方は危険だ」という事になるのか。まさに「夕方は危険であるということにしたい」という思いが先にあり、統計は後付なのだ。

 それを証明するように、この文章の後にはこう続く。「もうひとつ、18時から20時というと、夕暮れ時ということになり、視界が悪くなるのも大きな原因といえるだろう。」だそうです。自分の都合よく統計を解釈している。死亡者数の統計からは視界の話など導出できない。

 ただ単純に人数が多いからというのでは、その時間帯が危険であるという理由には絶対にならない。「死にたくないのなら、青信号を渡るよりも赤信号を渡った方がよい。なぜなら青信号を渡る人の方が死亡者は多いという統計が出ているからだ」という論を、この執筆者は否定することができない。

 しつこく言おう。ただ単純に数が多いからだ。

平成17年1月7日日経新聞朝刊

 「子供は授かるものか、つくるものか。」日経新聞のアンケートでは51%が授かるもの、49%がつくるものとの回答を得たのだそうだ。そして「意見が割れている」という結論。

 何の51%?何の49%?男だけから聞いた?女から?年代は?日経新聞の読者全部から聞いた?貴様のところの社内アンケート?日本国民全員から?それに何人に聞いて何人から回答を得られたの?????

 51とか49とか書いているけれども、こういうことが全く明示がない。そんな中で出されるパーセントだけの数字は全く意味を持たない。当然のことだ。なにやってんだまったく。

東名高速のトイレで見かけたウソ

 「死亡事故の大半が、高速に乗ってから30分の運転者が起こしている」「これは高速に身体がなれないうちに事故を起こすことが多いからとおもわれる。早めにサービスエリア等で休みましょう」だそうです。

 さて、これは初歩的なウソです。「青信号で横断中の歩行者と、赤信号で横断中の歩行者ではどちらが死亡者が多いでしょうか。」という問題と同レベル。当然、青信号で横断する歩行者の絶対数が多いのだから、死亡者だって青信号横断中の事故が圧倒的に多い。

 つまり、「単に数が多いから」ということだ。

平成16年12月20日日経新聞夕刊

 生活欄。「ワーキングウーマン」というキャリア女性に偏った記事。ここに掲載されているアンケートが非常に興味深い。「女性ゼミ卒業生のうち、国内在住の76人に(アンケート)用紙を発送、39人から回答を得た」

 「(働く理由として)複数回答で「社会と接点を持つ」「自己成長」がそれぞれ26人で最多、「経済的自立」の24人を上回った。(中略)必ずしも企業などに勤め続けることにはこだわらず(…云々後略)」

 さて、何がうそか。「統計でウソをつく法」の、(確か)ハーバード卒業生の年収アンケートの項目を読めば一目瞭然だ。有効回答率がほぼ50%であるという時点で、サンプル調査の意味がない。そもそも慶応出身で、かつ、おそらく男女共同参画云々をお勉強するという(記事では不明確)島田ゼミの出身者が、全国のキャリア指向女性という母集団の平均的なサンプルなのだろうか。さらにそのなかの50%の回答率で一般的な何かを語ろうとしている時点で、すでにこの記事はマスコミ良心を汚している。さらに、記事に付されているグラフも注目に値するのだが、これはまたあとで。

 日経は経済統計に強いというイメージがあるが、こういうアンケート調査とかは全くお話にならない記事をいくつか書いている。よくみると、専門のはずの経済統計でさえ誤りを犯していることがある。今後ツッコミをいれながらここに残していこうと考えている。要注目。