ふたご学園ヘヴン2

Last-modified: 2009-10-14 (水) 15:45:21
 

天野都 『ふたご学園ヘヴン2』 美少女文庫

 

まさにふたご天国!

 

『ふたご学園ヘヴン2』は、フランス書院から出ている官能小説。
作者は天野都という新人なのだが、今回の作品でその実力を十分に見せつけてくれた。

 

『ふたご学園ヘヴン2』を大まかに要約すると、女性的で弱よわしい少年・天沼祥が女子高に入学し、
女子生徒を犯しまくる話だ。なぜタイトルに「ふたご」とあるのかというと、小説に登場する女子高に、
双子枠推薦という特別推薦枠があり、学校に双子ばかりいるからである。

 

主人公の祥にも菜摘という双子の姉がいる。
もちろん祥は男なので女子高に入れる訳がないのだが、姉に女装を施され、ほぼ強制的に入学させられるのであった。
その出来事が祥の人生を大きく狂わせてゆくことになる。

 

オイラは、この小説を読み終えたときピンときたね。この小説には解説が必要だって。

 

大人になるためにファックしろ!

 

「ファック・ユー」という言葉がある。腹の立った相手を「お前は自分すら犯せないような腰ぬけ」とののしるための侮蔑語だ。
実は。この小説の冒頭で祥は暗喩的な意味合いで自分を犯す。姉・菜摘とセックスするのだ。
なぜ、姉を犯すことが、自分を犯していることになるのか? それを解いてゆくと、この作品の深いテーマが見えてくる。

 

まず、作中の双子というのは人間の二面性を象徴している。
小説を読めばわかるのだが、双子たちのキャラクターはどこか欠けている。
あまりに一面的で人間味に欠けるのだ。これはけして人物構成のミスなどではなく、作者が意図的にしていることだ。
その証拠に、登場する双子それぞれの話していることや仕草をあわせ、ふたりでひとりの人間と考えると、
実にリアリティのあるキャラクターが浮かびあがってくる。これこそ、人間のもつ二面性そのものだ。

 

冒頭での姉とのセックスは、女性的かつ弱よわしい「もうひとりの自分」とのセックスだったのだ。
そのセックスにより、祥は自らのもつ「女性的な一面」を完全に自分のなかに取りこむ。
これまで姉に支配されてばかりだった彼は、それ以降彼女の意志に反するかのように他の女性たちを犯してゆく。
ひとりの男として目ざめたわけだ。つまり、姉とのセックスは大人になるためのイニシエーション(通過儀礼)だったのだ。

 

入学のさい、祥に女ものの服を着せ服従させようとこころみた菜摘だったが、それは無理というものだ。

 

勃起した男に、女もののショーツはきつすぎる。

 

目覚めろ男性性!

 

男女平等という理念に関してなんの不満もない。
だが、むかしにくらべて「男」という精神が弱くなってしまっていることにたいして、オイラは大いに不服だね。
同じことを思っているやつは沢山いると思うのだけど、天野都もそういうことに不満をいだく男のひとりだってことは
『ふたご学園ヘヴン2』を読めば火を見るよりあきらかだ。

 

主人公の祥は、女子高に入学するまではダメ人間だった。
が、女を犯すことをおぼえた途端いきいきし始める。
それまでダメだった主人公が女を犯し、男性性を取りもどすことで、芯のとおったたくましい人間になったのだ。

 

『ふたご学園ヘヴン2』の最大のテーマがここにある。

 

男は所詮、男としてしか生きられないのだ。男から「男性性」を奪ってしまうと、ただの弱い人間になってしまう。

 

現代がそうだ。

 

天野都はこの作品で、「男」という精神が弱くなり、女性にばかりこびた男で飽和状態のいまの世の中をファックしているのだ!

 

担当者 - 更山寛和