初野晴 『漆黒の王子』 角川書店
本作は著者の第二作目の作品。新人ですが、描写やストーリー構成はなかなか面白い一作です。
眠ったまま死に至る謎の殺人事件が起こり、上の世界と下の世界でそれぞれに様々な謎が形を変えて浮き出てきます。
下の世界には、王子や時計師、ブラシ職人などわけが分からない職業名をもった男達が生活をしています。
上の世界では構成員が次々と眠ったまま死ぬ不可解な事件と、その犯行声明文が届き事件の真相を探っていきます。
この一見まったく関係のない両世界の人間たちが上と下の中心人物によって、不思議な関りを持っていきます。
ミステリというよりはサスペンス色の方が強く、探偵や推理披露などの派手な演出はありませんが、
ありえない世界の中の妙なリアルさを味わえることが出来る作品だと思います。
また、発想に意外性があるのが面白いです。
著者はまだ三作しか出していませんが、これからどんどん作品を出して欲しい注目の一人です。
担当者 - Syo