乙一 『GOTH 夜の章』 角川文庫
『GOTH 夜の章』という本は三つの短編小説が入っていて、
名なしの主人公とヒロインである森野夜がそのすべてに登場している。
この作品の特徴ともいえるのは、主人公もヒロインも狂っているように見えるという事である。
主人公は犯人の正体が分かっていても警察に言わなかったり、証拠に当たるものを家に戦利品として持って帰ったりする。
他方、夜は殺された女性の格好で行動したり、小さい頃には死体ごっこをして遊んだ経験がある。
二人は狂っている。だが、彼らは自分の欲求にしたがい、素直に生きているだけだ。
欲のままに行動しつづける二人を追いかけるうち、最も人間らしいのはじつは彼らなのではないかと思わさせられる。
テンポよく読めるのでお勧めです。
担当者 - 凱竹