The Making of -nomine.mp4-/コンセプト解説:制作動機と全体の構成

Last-modified: 2021-05-20 (木) 18:30:38

この記事は、Web企画「ゴーストマスカレード3」の参加ゴースト「nomine.mp4」に関する一連の技術および創作論等の解説記事の一つです。



全体のコンセプト

解説記事のはじめに、nomine.mp4がどのようなコンセプト設計で作られたかをまとめておきます。

使命必ず専用バルーンを使う
テーマホラー作品である
演出の形式動画風の作品である
規模長くても5分程度の短編に仕上げる
運用試験項目里々をSAORIとして用い、里々に極力複雑な処理をさせず文字列リソースを簡易に記述するためのツールとして使う

当ページの次節以降では、上記コンセプトが確立された過程をなぞってみますが、裏話というか、作者の心情とか頭の中身的な話の占める割合が高いため、もう少し技術的な話に的を絞って読みたい方は、以下を飛ばして次の記事へお進みいただいて構いません。

ゴマカレー3参加のきっかけ

nomine.mp4の企画が具体的な形を成していったのは、ゴーストマスカレード3(以下ゴマカレー3)の開催決定後だったのですが、作品自体のルーツとしては、元より作者が抱えていたアイディアや動機がいくつか関係しています。
ゴマカレー3開催発表の報を知った時点で、作者の頭にはだいたい以下のような「nomine.mp4の種子」がありました。

動機たち

  • [ねがい] -ホラーゴーストを一回ちゃんと作りたいなあ
  • [おもいつき] -配信画面風の演出をゴースト上でやれそうだなあ
  • [うしろめたさ] -専用バルーンを持つゴーストを作り、「推奨バルーン」「推奨ゴースト」の機能を使わねばならない
  • [ついで] -里々はひょっとしてSAORIにした方がいいのでは論を検証したいなあ

さて、ネタとなるアイディアや動機自体が、まとまらないなりに「もやもや」と既にあり、実現しようと思えば技術的にもリソース的にもどうやら可能であると思われるとしても、実際にそれが作品として具象化されるには、大抵の場合あと一つ足りないものがあります。
それは「締め切り」です。
なぜなら(少なくとも作者は)いつでもできることは、大体いつまでもやらないからです。
急に飛んできたゴマカレー3は、まさに溜まっていた諸々を精算するために絶好の機会なのでした。

動機について

話を進めるにあたり、上記4つの動機についてもう少し説明をしておきたいと思います。

[ねがい] -ホラーゴーストを一回ちゃんと作りたいなあ

作者は隠しようもなくホラーが好きです。
実は一番最初に伺かとか里々とかを触りだしたときも、ホラーゴーストを作ろうとしていました。まあ、結局公開できていないのですが。
公開できたものとしては、一応「うしろのやまひこさん」という、ホラーモチーフのゴーストを作ったこともあります。まあ、趣旨としては機能デモ用ゴーストなので、そこまでホラー要素に(自分としては)力を入れられた感じではなかったのですが。
というわけで、ホラーゴーストを作るということについてはずっと不完全燃焼感があったわけですね。いつかその時出せる限りの力でホラーゴーストを一つ作ってみようというモチベーションは確実にありました。それを今回引っ張り出しました。
nomine.mp4のホラーとしての側面については、主に「The Making of -nomine.mp4-/演出解説:ホラー演出について?」の記事で触れていくことになるかと思います。

[おもいつき] -配信画面風の演出をゴースト上でやれそうだなあ

作者は割と「何をやりたいか」と同じくらい「この玩具で何ができるかな」というのを考えるのが好きな性質なので、SHIORIやベースウェアの機能を用いて変な遊びができないかなあという事は常日頃から考えています。
nomine.mp4において主だった技術のまとまりは大きく「配信コメント欄風の文字フロー」「ノイズなどの映像表現のSERIKO(伺かのアニメーション仕様名称)による再現」「動画再生プレイヤー風UI」の3つに分けられるかと思いますが、これらは今回急遽アイディアをひねり出したというわけではなく、元より温めていたネタでした。
こうした技術に関する側面の詳細は、主に「The Making of -nomine.mp4-/技術解説:プレイヤー風UIについて」「The Making of -nomine.mp4-/技術解説:配信動画風表現について」「The Making of -nomine.mp4-/技術解説:コメント欄風トークについて」の記事で解説する予定です。

[うしろめたさ] -専用バルーンを持つゴーストを作り、「推奨バルーン」「推奨ゴースト」の機能を使わねばならない

nomine.mp4について頂いた感想の中で、制作上意図した部分には大体気づいてくださっている方がいて大変うれしかったというのは序文でもお話したところですが、一方ここは言及されなかったなあというところもありました。
それがこの「推奨バルーン(recommended.balloon)」「推奨ゴースト(recommended.ghost)」の設定で、nomine.mp4が利用しているSSPの機能の一つです。
実はこの機能、私の要望でSSPに実装いただいたものでした。
もともとは、拙作「暦にしき」で使う予定があったためにお願いした機能だったのですが、その後作者の生活変化などで伺かの活動がほぼ止まってしまい、その後数年間更新が止まり続けています。
つまりは、機能の追加要望を出しておきながらまったく活かさず放置してしまうというあまりにも罰当たりな状況が続いていたわけです。
なので、暦にしきはさておくとしても、どうしても一度この機能を活かしたゴーストを作らないわけにはゆかない、というのが強く気持ちとしてありました。

そんなわけなので、実はnomine.mp4の設計にあたって最も根源的な動機はこの「推奨バルーン/ゴースト」を使ってみせることです。
「ホラーを作りたい」とか「動画風の演出を」とかいうのは、いかにして専用バルーンを使うかという目的に対して、作者がもつ引き出しの中から見繕っただけに過ぎないとすら言えるかもしれません。

推奨バルーン/ゴーストの設定については、「The Making of -nomine.mp4-/技術解説:プレイヤー風UIについて」で紹介予定です。

[ついで] -里々はひょっとしてSAORIにした方がいいのでは論を検証したいなあ

作者は、里々で複雑な処理を行うことに、暦にしきで相当懲りています。
暦にしきを熱心に制作していた当時は、ほぼ里々しか触れなかったので、そのまま里々で面倒な処理も無理やりやっていたのですが、それが良くなかった。
暦にしきの制作は中断してしばらく放置されているわけですが、その期間に一般的なプログラミング言語なんかにもちょっと触って遊んだりしたこともあり、里々で組まれた複雑な処理への忌避感が途方もなく高まっています。
暦にしきの辞書が見返せない。
割とガチで嫌です。

さて、話は変わりますが里々はSHIORIではなくSAORIとしても使えます。古事記にもそう書いてある。
そして先行研究もあるのですが、同記事においては、どちらかというと里々が密かに備えている独特の機能面にフィーチャーされている印象があるので、この記事を読んだ時点だと「まあそういう特殊な機能を使いたかったら里々をSAORIにするなんていう珍技を繰り出すのも手なのかなあ……」ぐらいの印象でいました。
しかし、暦にしきから離れて数年、抱え続けた里々へのトラウマは時間を経て変質し、今私は「むしろ里々はSAORIとして使ったほうが幸福につながるのでは?」という境地に達しつつあります。
そして、せっかく久しぶりに新しくゴースト作るなら、この悟りを試してみない手はないわけです。
そんなこんなで、nomine.mp4に副次的な運用試験項目が付け加わることになりました。
このあたりの話については色々書くことがあるので、「The Making of -nomine.mp4-/環境解説:里々はひょっとしてSAORIにした方がいいのでは論」という個別の記事を書かせて頂く予定です。

まとめ

以上のような動機、感情、思惑、趣味などを、ゴマカレー3という絶好の締切と制限(短めの作品が推奨されている)で裁断して形にしたのがnomine.mp4というわけです。思考の流れを改めて整理して書くとこんな具合。

まずは推奨バルーン/ゴーストの設定を使わねばならない……

となると、「配信コメント欄風のトークフロー」のアイディアは専用バルーンを作るいい理由になりそうだ

配信ネタならホラー動画風演出がやりやすいじゃないか、なんといってもゴマカレーは短編推奨だからむしろ都合がいい(※動画風の作品は物理的に長くなればなるほど作るのがしんどくなるので)。これはちゃんとホラーゴースト作る機会としてもちょうどいいじゃないか

そういえばせっかく新しくゴーストを作るなら里々をSAORIとして使って見る件も検証するのに丁度いいんじゃないか?

やりたいこともまとまったし締め切りができた!ゴマカレー最高!

こんなふうに欲張って色々一気に精算しようとすると、締め切り当日に提出して主催を困らせることになるので、ぜひ反面教師としていただければ幸いです。

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