さよならでち ちびたんin小説

Last-modified: 2021-07-22 (木) 00:35:52
465 名前: 。 投稿日: 2003/07/24(木) 00:47 [ iyiQIpes ]
    歯を抜くと、さよならを言うことになる


 ここは平和なちびギコ達がすむ山。
 いつもマターリ過ごしていたが、今日は少し様子が違かった。
 山に住むみんなが、ちびギコを囲んでいたのだ。
 「ひぎゃぁぁぁ、歯が、歯がいたいでちぃっ!」
 ちびギコが叫び、その場に転がった。
 「いたいでち!いたいでち!しぬでち!たすけてでち!」
 そんなちびギコをみて、物知りちびフサが言った。
 「これはきっと虫歯でち」
 「むしばとは何ワチョーイ?」
 オニーニが怪訝そうに尋ねる。
 「歯に虫が入り込んで、とても痛くなる病気でち」
 物知りちびフサが言うと、戦慄が皆に走った。
 「そんな恐ろしい病気が本当にあるのか、コゾウ!」
 強がりレコが言った。
 「ちびたんの痛がりようは、これに間違いないでち・・・・・」
 「ちびたんしんじゃうんですか?」
 「ちなないでほちいです・・・・」
 双子のちびしぃが涙を流している。
 「ひやぁ!イヤでち!しにたくないでち!もっとまたーりしたいでち!」
 死、という言葉を聞いたちびギコが更に喚きだした。
 「しっかりしろ、コゾウ!病気なんかに負けるな!」
 強がりレコも涙を滲ませながら、ちびギコを励ました。
 「こんなのざんこくですぅ」
 「かわいそう・・・ちびたん」
 双子のちびしぃは目を逸らし、絶望的雰囲気があたりを漂っていた。
 「どうにもならないでちか?フサたん!」
 丸耳ちびギコが物知りちびフサに詰めよった。
 「もしかしたら・・・」
 みんなの目がちびフサに集った。
 「虫歯を起している虫を退治できたら、治るかもしれないでち」
 「ほんとか!コゾウ!」
 「どうやって退治するワチョーイ?」
 物知りちびフサの言葉に希望を見た。
 「とりあえず、抑えるでち」
 「分かったぞ、コゾウッ!オニーニも抑えろ!」
 泣き喚くちびギコを二人がかりで押さえつけた。
 「いたいでち!いたいでち!ひどいでち!」
 「我慢しろコゾウ!」
 「ちびフサたんが治してくれるワチョーイ」
 「今度は口を開けたままに固定するでち」
 「分かったでち!」
 「やめるでち!はなすでち!くるしいでち!むぐっ・・・・」
 丸耳ちびギコは強引に頬を押さえつけ、口を閉じられないようにした。
 「ちびたん、我慢してです・・・」
 「むちばが治ったら、またみんなであそぶです」
 双子のちびしぃの応援のもと、治療は始まった。

466 名前: 。 投稿日: 2003/07/24(木) 00:48 [ iyiQIpes ]
 「どれどれ、さっそく見てみるでち」
 物知りちびフサが、ちびギコの口の中を覗き込んだ。
 しかし、どこにも虫の姿はない。
 「おかしいでち・・・・・どこにも原因となる虫がいないでち」
 「どういうことだ?コゾウッ!」
 「きっとフサたんを恐れて、隱れてしまったでち。悪賢いやつでち」
 そういうと、物知りちびフサはペンチを取り出した。
 「ちびフサたん、それをどうするでちか?」
 「こわいでち・・・」
 双子のちびギコの問に物知りちびフサは答えた。
 「これで全部、歯を抜いてしまうでち。そうすれば虫はどこにも隱れられ
ないでち」
 ペンチを見たちびギコは更にもがきだした。
 「ギャァァァ、ヤメルデヂィィィ」
 「丸耳たん、しっかり抑えておくでち!」
 丸耳チビギコは、言われたとおり更に強く押さえつけた。
 「虫の隱れていそうな奧の方から抜いていくでち」
 そして、口の中にペンチをつっこみ、奥歯を引き抜いた。
 「ガァァァァァ!!」
 ちびギコの苦悶の悲鳴が平和な山に響き渡った。
 「見てらんないです・・・!」
 「聞いてらんないです・・・!」
 双子のちびしぃは、お互いに耳をふさぎあった。
 絶叫の後、物知りちびフサはペンチを抜いた。
 「なんでちか?この汚い歯は」
 ペンチは茶色くなった歯を掴んでいた。
 「まあ、いいでち。次にいくでちよ」
 汚い歯を捨てて、更に歯を抜くべく再びペンチを突っ込んだのだった。

467 名前: 。 投稿日: 2003/07/24(木) 00:49 [ iyiQIpes ]
 ちびギコにも、他のみんなにも長い長い時間が過ぎていった。
 そして・・・・
 「これで最後の一本でち」
 そう言い、物知りちびフサは口の中から、白い歯と共にペンチを抜いた。
 「どうワチョーイ?虫はいたかワチョーイ」
 オニーニに問われた物知りちびフサは、すぐには答えられなかった。
 隱れるところが一つもないのに、虫はどこにもいないのだ。
 しかし、それはすぐに答えがでた。
 「うーん・・・分かったでち!きっとフサたんが怖くなって逃げたしたでちね!
もう大丈夫でち。ちびたんの虫はもういないでち」
 「ほんとかワチョーイ?」
 オニーニはワチョーイワチョーイと踊りだした。
 「やったな!コゾウッ!」
 「良かったでち!本当によかったでち!」
 「ぐす、これでまたいっしょにあそべるんですね」
 「こんなにうれちいことはないです・・・」
 みんなの喜ぶ中、物知りちびフサはちびギコに言った。
 「もう、痛くないでちね?大丈夫でちか?」
 しかし、ちびギコはなんの反応もない。
 「あれ、どうしたでちか?返事してほしいでち」
 ちびギコはすでに事切れていたのだった・・・・・・

468 名前: 。 投稿日: 2003/07/24(木) 00:49 [ iyiQIpes ]
 山の一番見晴らしのいい場所に、ちびギコの墓はたてられた。
 「チビたん、ごめんでち・・・・・フサたんが悪かったんでち」
 ちびギコの墓石の前で、物知りちびフサが泣いていた。
 「フサたんがもっと早く虫を見つけていたら・・・」
 「もう、やめろ、コゾウッ!お前のせいじゃないぞ!」
 「そうです。フサたんは頑張りましたです」
 「りっぱだったです」 
 みんながちびフサを慰める。
 「そんなことないでち。虫が体の奥に逃げる前に捕まえてたら、きっとちびたん
は助かっていたでち」
 しかし、ちびフサはなおも自分を責めた。
 「やめるでち。そんなこと言っても、きっとちびたんは喜ばないでち」
 「丸耳たん・・・・・・」
 「そうだワチョーイ。悲しむフサたんをみたら、ちびたんも悲しむワチョーイ」
 「そうでちか・・・?」
 「そうですよ」
 「みんなでわらってすごすです。これがちびたんのくようですぅ」
 「わかったでち・・・・・・もう言わないでち」
 こうして、みんなは墓に別れをつげた。

            “さようならでち、ちびたん"
                               おわり

この小説のAA版:さよならでち ちびたん