しぃとふとましぃ

Last-modified: 2020-01-28 (火) 00:39:07
545 名前: ナヒャ(yWVxXezQ) 投稿日: 2003/03/17(月) 23:33 [ OcY1yJMY ]
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とても仲の良い二人の少女達がいた。
一人はしぃ、もう一人はふとましぃだ。
が、ある日、ふとましぃが遠く離れた場所に引っ越すことがわかった。
「サミシイナ。ワタシ、シィチャンノコト ワスレナイヨ」
ふとましぃが、目に大粒の涙をためながら言った。
しぃは無言で、ふとましぃの手を握った。厚い脂肪に被われた、暖かな手だった。
「ネェ。イカナイデ。シィ、ヒトリニ ナリタクナイ」
しぃの顔の筋肉が強張っているのが、自分でもわかった。
ふとましぃの手を握るしぃの手に、力が込められる。
「アナタヲ ウシナイタクナイ」
「シィチャン、オテテ イタイヨ。ハナシテ」
ふとましぃは、しぃの手を振り払おうとした。体格の関係で、しぃは簡単に振り払われた。
「ナンデ コバムノ? ワタシタチ オトモダチ デショ?」
しぃは、目を痛くなるほど見開き恨めしそうに、ふとましぃを見上げた。
「ゴ、ゴメンネ シィチャン。ダイジョウブ?」
ふとましぃは、しぃの近くへ駆け寄った。
「ウウン。シィガ ワガママ ダッタノ。ネ、オワカレノ パーティヲ シィノ オウチデ ヤロウヨ」
「イイネ ソレ。オカシ アル?」
二人は、ふとましぃのお別れ会をしぃの家で、することになった。

しぃの家は、かなり立派な家だった。
ダンボール暮らしのしぃが多いにも関わらず、このしぃは洋風の一軒家に住んでいた。
少し小さめの家だが、薄茶色のレンガで作られた家は、気品と上品さをかもし出していた。
「サァ。パーティ シヨウネ」
そう言ったしぃの口元には、極上の笑みが浮かべられていた。

546 名前: ナヒャ(yWVxXezQ) 投稿日: 2003/03/17(月) 23:34 [ OcY1yJMY ]
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応接間には、色とりどりの菓子や飲み物が置いてあった。
透明な皿の上で、涼しげに揺れるゼリー。
白や、パステルカラーのマシュマロ。
ミルクチョコをかけられた、新鮮な果物のチョコレートフォンデュ。
飲み物は、ジュースが各種取りそろえられていた。
「ゼーンブ フトマシィチャンガ タベテイイヨ」
「ホント!? ドレモ オイシソウ」
ふとましぃは、キレイに盛り付けられている菓子を食べ荒らしていった。その食べっぷりは凄まじかった。
しぃは、食べ物がふとましぃの口に自ら飛び込んでいるのかと思ったくらいだ。
が、やがてその勢いも衰えてきた。
「カラダガ ダルイヨ……」
「タベスギダネ」
しぃは、水風船のようなふとましぃの腹を撫でさすっている。
「ソレト、オカシニ イレタ オクスリノ セイダネ」
しぃは、ニヤリとほくそ笑んだ。ふとましぃの意識は、もはや無かった。
ふとましぃの重たい体を地下室まで引きずる。
階段を一歩下がるごとに、ツンと鼻をつくカビの臭いが強まる。
地下の湿ったコンクリートの上に、ふとましぃの巨体を寝かせる。
重たくて、しぃの腕は痺れてしまった。軽く腕を振るい、肩を回す。
ふとましぃをうつ伏せにすると、しぃはふとましぃの手を後ろ手に縛り上げた。
しかも、絶対に外せないように、手首をきつく縛った後、両手の親指を縛り合わせた。
こうすると、少しのことでは外れなくなるのだ。
しぃは、ふとましぃが目を覚ますまで待っていた。
長い尻尾をくねらせながら。

547 名前: ナヒャ(yWVxXezQ) 投稿日: 2003/03/17(月) 23:34 [ OcY1yJMY ]
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ふとましぃが目を覚ますと同時に、しぃは行動をおこした。
しぃの手には、長さ2メートルはあろうかと思われる革の鞭が握られていた。
鞭が空を切るヒュンという音がしたかと思うと、次の瞬間、ふとましぃの体に鞭が叩き付けられた。
バシンという音と共に、鞭を握るしぃの手に小気味イイ振動が伝わった。
痛みに叫ぶふとましぃの表情を見て、しぃは顔を醜くゆがめて笑った。
「ナニスルノ シィチャン!? ヤメテ イタイヨッ」
哀願するふとましぃの顔に、ペッと唾を吐きかけるしぃ。
「トオクニ イッテモ カマワナイ。ダケド シィヲ ワスレテホシクナイカラ」
しぃは真っ赤な舌を出し、黒い革の鞭を舐めあげた。鞭はほんのりと血の味がした。
「イッショウ シィヲ ワスレナイヨウニ シテアゲルノ」
今のしぃは、
どんなモララーよりも凶悪で、どんなアヒャよりも狂気に満ちていて、
そしてどんな8頭身よりも愛にあふれていた。ふとましぃへの、狂おしいほど歪んだ愛情。
絶対自分を忘れないで。そんな思いを込めて、鞭を振るう。
色白で脂肪の多い者は、傷の跡がよく映える。
ふとましぃの体に、出来の悪いタトゥーを思わせる傷跡が、蛇のように浮かび上がった。
「シィチャン ヤメテヨォ……」
涙ぐみながら言ったその言葉は、どこか熱気をはらんでいた。
しぃは、そんなふとましぃの言葉を無視して、何かをいじっている。
細い針金をバーナーの火であぶっているのだ。
針金は、赤い光を放つほどに熱せられている。
ふとましぃの顔が、恐怖で歪んだ。
「マサカ ジョウダン ダヨネ? イヤァッ コナイデッ アツイッ アツイヨォォォッ!!」
皮膚が黒く焼けこげ、細い灰色の煙が立った。
少しばかり臭いがするが、まぁガマンできる程度だ。
「ウフフ。シィノ オナマエ ハリガネデ ツクッタノ。シィノ コト ワスレナイデネ」
ふとましぃの下腹部には、醜く焼けただれた焼印がついた。
「ハジメテダカラ チョット シッパイ シチャッタネ」
ペロリと舌を出して、悪戯っ子のように微笑む。
そんなしぃの足下には、体と心の痛みで震えてうずくまっているふとましぃがいた。
ふとましぃは、一生、しぃを忘れることは、ないだろう。
絶対に。

 完