437 名前: ナヒャ(yWVxXezQ) 投稿日: 2003/02/22(土) 18:06 [ oiJlop2E ] 1/2 ここは、海辺の町だ。堤防に囲まれた小さな町。 ここに一匹のベビギコがちびギコと一緒に住んでいた。 ある日、真剣な顔つきで散歩から帰ってきたベビが、しつこくちびにまとわりついた。 「ミュイー、ミュイー」 最初は、ベビを相手にしていたちびもしだいにベビをうざったく感じ始めた。 「うるさいデチよ」 ちびは、ベビを家から追い出した。 追い出されたベビギコは、町を歩いていたギコにすり寄った。 ギコは軽くベビの頭をなでると、足早に去っていった。 ベビは、しばらく何か考えるようにうつむいていた。 やがて、ベビは顔をあげ、通りすがりのしぃに近づいていった。 ベビは、その小さな口でしぃの足に噛みついた。 痛みに思わず叫び声をあげるしぃ。 「ナニスルノ? ワルイコネ!」 ベビは逃げ出した。 さらにベビは、道を歩いていたモララーに小石を投げつけた。 石はみごとにモララーの顔面に直撃した。 モララーは怒り狂い、走り去るベビを大人気なく追いかけた。 438 名前: ナヒャ(yWVxXezQ) 投稿日: 2003/02/22(土) 18:06 [ oiJlop2E ] 2/2 その後も、ベビを町の人に悪戯し続けた。 怒った何人かの人々は、ベビを追いかけた。 町はずれで、ついにベビは捕まった。 足を噛まれたしぃは、ベビの口の中に手を突っ込んだ。暖かく、ヌルヌルした唾液が手にまとわりついた。 ベビの小さな乳歯が、斜めに傾き、歯茎をえぐりながら抜き取られた。 血がベビの口から滴り落ち、ベビの口元としぃの腕を赤く染め上げた。 赤い血と艶やかな唾液が混じり合い、まるで少女のつけるグロスのような輝きを放っていた。 石をぶつけられたモララーは、ベビの腕を掴んだ。 ベビの指を逆に反らす。 手応えのある感触が、モララーの手に伝わってくる。 バキリと生々しい音を立てながらベビの指が折れた。 その他にも、ベビに悪戯された人々がベビに復讐し続けた。 まだ、小さな幼子に大の大人が寄ってたかって暴力を振るう光景は、異様な狂気をはらんでいた。 激しい暴行を受け、血にまみれ骨の折れたベビは ゆっくりと這いずりながら何処かに向かっていた。 虫のように地面に這う無様なベビを人々は笑いながら鑑賞していた。 ベビの這った跡は、かすれた血で彩られた。 草が血で染められ、緑と赤の対比は鮮やかで美しかった。 ベビの向かった先にある物を見て、人々は驚愕した。 ヒビが入り、水が漏れている堤防。 決壊するのも時間の問題だろう。 そして堤防が決壊すれば、町は海水に流され、人々は溺死するに違いない。 散歩をしていたベビは、堤防のヒビを見つけ、誰かに知らせようとした。 が、言葉のしゃべれないベビは、このことを伝えることができなかった。 おそらくベビは、堤防のヒビを教えるため、わざと人々に悪戯をしたのだろう。 が、ことの真偽は分からない。 何故なら、ベビは堤防のヒビを見つけ慌てた人々によって踏まれて死んでしまったのだから。 派手に内臓をまき散らしたベビの横で、堤防のヒビは塞がれた。 ちびはベビがいないことに気づくと、適当なちびしぃを襲い、新たなベビを作った。 ちびにとって、ベビはその程度の存在だった。 誰もベビに感謝する者はいなかった。 誰一人、ベビの死を悲しむ者はいなかった。 完