ギコを待つしぃ

Last-modified: 2015-06-06 (土) 00:36:06
155 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/07(金) 22:50 [ xwpct.SQ ]
冬の冷たい風が、しぃの頬を叩くように吹いている。
河原でしぃは待っていた。ギコが来るのを。
やがて、ギコが来た。申し訳なさそうに。
しぃは微笑をたたえると、
「ワタシモ キタバカリダカラ ソンナニ マタナカッタヨ」
と、声をかけた。
ギコはしぃの隣に腰をおろし、凍てつく冬の川の流れを見つめていた。
「早く春にならねぇかなぁ」
震えながら、ギコがつぶやく。
「ソウダネ」
しぃも静かにうなずいた。
穏やかで安らげるひととき。
殺伐とした空気に飽きたとき、しぃの暖かさはギコにとって、ありがたいものだった。

河原を離れ、独り家路を歩くとモララーに会った。
イイ奴だが、何を考えているのか分からない不思議な男だ。
「ギコ。しぃなんかと会って、楽しいかい?」
軽蔑と煽りをはらませた口調で、ギコに問いかけてきた。
「しぃなんか? どういうことだ?」
モララーは口角をつり上げて、無言で笑った。
「あいつらはダッコ虫だよ。蚤をうつされない内に離れたら?」
そう言うと、モララーは足早に立ち去った。
「クソッタレが、しぃをアフォみたく言いやがって。勝手に誤解するんじゃねぇよゴルァ!!」

156 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/07(金) 22:50 [ xwpct.SQ ]
その後。
モララーはしつこくしぃの中傷を言ってきた。
モナーは心配そうにしぃとの関係をたしなめた。
その他、ギコの友人全員がしぃを悪く言った。
そんなある日、ギコはモララーに河原に連れてこられた。
ギコは見た。
数多くの友人達の姿。
縄で縛られ、恐怖で涙を流しているしぃの姿。
「何なんだよこれはよぉ!? あぁん? 説明しろやゴルァ!!」
モララーはにこやかに言った。
「このままではギコ、君はダメになってしまう。そのしぃというゴミのせいでね」
周りには無数の友人の目。
このどれもが、ギコにしぃを殺せと囁いているかのようだった。
脂汗がギコの頬をつたった。
そしてゆっくりとしぃに近づいた。
ギコの目は虚ろだった。
BGMは友人達の叫び声。
「よし、行け、殺せ!!」
「ゴミ虫は死刑!!」
「アヒャヒャヒャヒャ!! 氏ね氏ね氏ねぇヒャハハヒャ」

157 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/08(土) 20:46 [ HfFUwLv2 ]
「こいつはちゃんと分別のつくしぃなんだ。アフォでもゴミでもない」
ギコは力無くつぶやいた。
モララーは、そんなギコを見下したように言った。
「そのしぃを殺さないってことは、所詮君もゴミってことだねぇ」
一瞬の沈黙の後、しぃは口を開いた。
「ナニヨォ ソンナ ヤバンナヤシラトシィト ドッチガタイセツナノヨォッ」
ギコは驚いて目を見開いた。
「シィチャンハ カワイイノ。アイドルナノ。イジメルナラ ディデモ イジメレバ?」
呆然としていたギコは、我に返り目の前のしぃを見た。
「……やっぱアフォだったかゴルァ」
ギコはしぃの柔らかな腹部に強烈な蹴りを入れた。
「シギィィィィ!? ギコクン ナニスルノォ!?」
ギコは無言でしぃの横面を平手で叩いた。
しぃの口から血液混じりの唾液が吹き出された。
ギコは踵を高くあげた。
しぃは顔をあげて、ギコに話しかけようとした。
が、そんな暇もなくギコの脚は縛られて動けないしぃの頭を目がけて振り下ろされた。
しぃの鼻から止めどなく鼻血が流れた。
「ヒギィィィシィアアア!! フガッフエアァァ……」
鼻血と言えども、その出血量は侮れない。しぃの顔面は鼻から下は真っ赤に染まった。
「シィノオカオガ イタイイタイダヨウ……。ギコクゥゥン、ギコクゥゥゥゥン……」
名前を呼ばれたギコは、煩わしそうに足下の土を掴むと、しぃの口に詰め込んだ。
その後、ギコはしぃを蹴った。殴った。突き飛ばした。踏みにじった。叩いた。
友人達の歓声が、ギコの行動をエスカレートさせた。

158 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/08(土) 20:46 [ HfFUwLv2 ]
やがて、しぃは動かなくなった。
ギコもそろそろ疲れてきた。
モララーは笑っていた。
「いやぁ、君のことを見損なうとこだったよ。
 今時、しぃと仲がイイなんて誉められたことじゃないからね」
「このカマトトしぃには騙されたぜゴルァ。まぁ、縛られて本性を現しやがったから気づいたがな」
ギコは血まみれのしぃに淡を吐くと、友人達と共に河原から去っていった。
河原に残されたのは虫の息のしぃだけ。
今はなんとか生きているが、死ぬのは時間の問題だろう。

ねぇ、しぃはギコ君のこと大好きだったよ。
しぃは、自分の命なんてどうでもよかったんだよ。
しぃのせいで、ギコ君がバカにされるなんて嫌だから。
ワザと嫌われるようなこと言えば、ギコ君もしぃのこと殺しやすいよね。
嫌な子だって、誤解されたままだけど、まぁいっか。
しぃはもうすぐ死ぬみたい。
……アフォしぃだって言われてもイイから、
死ぬ前に一度だけでもギコ君にダッコされたかったな。

冷たい冬の風が、永遠の眠りについたしぃの体を叩くように吹いている。

 完