356 名前: ナヒャ(yWVxXezQ) 投稿日: 2003/06/14(土) 21:53 [ TvmA8Utg ] 1/3 僕達の町には、緑色に澱んだ一本の川がありました。 薄汚い川を橋の上から眺めているモララーが一人。 川の汚れは、それはそれは酷い物で 深緑の水の中には錆びた自転車が不格好にヘドロに突き刺さっていた。 時折、水の中に魚がいるのが分かる。水は濁っているが、浅いので魚の動きが分かるのだ。 「ア、コンナ川ニモ 魚ガ 住ンデイルンダネ」 橋を通りかかったしぃが呟いた。 モララーが振り返る。しぃと目が合う。 「でもね。この川の魚は奇形が多いんですよ。奇形ばかりなんです」 そう言ったモララーは寂しそうに笑っていた。 しぃは不思議そうに首を傾げた。 「なぜだか分かりますか、しぃさん」 「水ガ 汚イカラ」 頷くモララー。 魚がピチャンと水飛沫を上げて飛び跳ねる。 片目が白目しかない鮒だった。 「では何故水が汚れたのか分かりますか?」 「皆ガ 川ニ ゴミヲ 捨テタカラ」 微笑しながら頷くモララー。不気味で妖しい雰囲気をはらんだ微笑みだった。 「それ以前に、この川は緑に濁っていたんですよ。 元から汚い川になら、ゴミを捨てる罪悪感も少ないでしょうね」 しぃは身の危険を感じた。 モララーの薄気味悪い笑い。狂気が染み込んでいる敬語。 そしてひ弱な者の持つ、生き残るための勘がしぃに寒気をもたらした。 「ア、アノ 私 用事ガ。失礼シマス」 しぃは冷や汗をかきながらも礼儀正しく立ち去ろうとした。 その細いしぃの腕を鷲掴みして引き留めるモララー。 彼の目にはハッキリと狂気の色が垣間見られた。 「放シテ下サイッ。嫌ァッ! 誰カ、誰カ 助ケテェェェエエエッ!」 モララーは低い声で、泣き喚くしぃの耳元に囁く。 ニヤニヤと気味悪く笑いながら。 357 名前: ナヒャ(yWVxXezQ) 投稿日: 2003/06/14(土) 21:54 [ TvmA8Utg ] 2/3 しぃの耳元に、唇が触れそうな程に近づいて、妖しく囁く。 「水が濁ったのは」 聴きたくない、と言わんばかりにモララーから顔を背けるしぃ。 恐怖がしぃの体に汗を滲ませる。涙を浮かべさせる。 狂ったモララーは何をするか分からない。果てない恐怖に、胃の内容物は逆流しそうだ。 しぃの顔を掴み、モララーは強引に耳を自分の口元に近づける。 「川の中の栄養が増えすぎて、微生物が大繁殖したからさ」 しぃの耳に生暖かい息が吹きかかる。 尻尾の先まで恐怖に捕らえられたしぃの体。 「あの川のヘドロの溜まった水底に、僕がいくつもの」 ヒヒヒ、と甲高く笑った後に溜め息を吐く。 「栄養タップリの死体を詰め込んでいったんです」 耐えきれなくなったしぃはモララーを突き飛ばし、脱兎のごとく駆けだした。 家まで駆け抜け、玄関に飛び込むと厳重に錠をかけた。 それからトイレに入り、滝のような勢いで嘔吐した。 いつまでも、いつまでも吐瀉物は止まることなく吹き出された。 純真無垢なこのしぃには、モララーの狂気は重苦しいトラウマとして深く刻み込まれた。 数ヶ月後、川の近辺におかしなしぃがうろつき始めた。 彼女の唇は爛れており、歯も老婆のようにボロボロである。 度重なる嘔吐の所為で、胃酸が歯を溶かしてしまったのだろう。 完璧に、彼女は狂ってしまった。 彼女は三面コンクリートの川に侵入し、ヘドロの中に手を突いた。 何かを探すような手つき。 死体を、探しているのだ。 「可哀想ニ、コンナ所ニ 埋メラレテ。私ガ 見ツケ出シテ アゲルカラネ」 こんなことを呟きながら、虚ろな目でヘドロをかき回していく。 手に触れるのは、奇怪な虫達とゴミくずばかり、死体はなかなか見つからない。 ヘドロをかき回すしぃに、子供達は空き缶を投げた。石をぶつけた。 大人達はしぃと目を合わせないそうに、足早に駆けて行く。 それでもしぃは、哀れな死体を探し続けた。 背骨の折れ曲がった奇形魚がユラユラと不安定に泳ぎ去った。 358 名前: ナヒャ(yWVxXezQ) 投稿日: 2003/06/14(土) 21:54 [ TvmA8Utg ] 3/3 「手前、汚ねぇんだよ。ゴルァ」 「臭せんだよ。ブス」 しばらくして、しぃは殺された。 殺したと思われるのは、不良中学生のギコ率いる集団だった。 日頃からホームレスのAAをからかうような子供達だ。 しぃが不良中学生グループにリンチにあって死亡したと言うことは、 あの時のモララーの耳にも伝わった。 地方紙を折り畳みながら、ひぃーひーと苦しそうに笑っている。 「まさか、ちょっと危ない人のマネしてからかったらこうなるなんて、 思いもしなかったなぁ」 今が旬の美味しいサクランボを舌の上で転がしながら新聞を放り投げる。 最初から川に死体など無かった。川が汚いのはそれ以外の原因の為だ。 「さぁて、次はちびギコでもからかおうかな」 サクランボの種がプッと吹き出され、 モララーのコレクションの一つ、毛の禿かかったちびフサの乾燥死体に当たった。 「川に死体を捨てるなんて、とんでもない」 ちびフサの傍らには、リンチによって全身外傷だらけのしぃが漬け込まれたホルマリン漬けの瓶が有った。 完 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ | 虐殺小説もAAもスランプ気味。. | | 虐殺じゃない小説はビシバシ書いてるんですがねぇ。 | '\_________ ____________,/ ∨´ (( (ヽ▲_▲ ● `(゚∀゚ ⊂ ⌒⌒つ