二人の運命

Last-modified: 2015-06-09 (火) 04:17:24
42 名前: ナヒャ(yWVxXezQ) 投稿日: 2003/03/23(日) 16:27 [ NPApw44g ]
1/3
モララーがいた。ごく普通のモララーだ。
ただ、今時のモララーとしては珍しく、彼は虐殺や虐待が大嫌いだった。
ちびギコを見れば、共に遊んでやった。
ぃょぅに会えば、握手を交わした。
しぃがいれば、ダッコをした。例えアフォしぃでも。
そんな彼が、思いを寄せるAAがいた。一人のしぃだ。
モララーは、このしぃを心の底から愛していた。苦しくなるくらい、愛していた。
そんなある日、モララーは心地よい昼寝を妨害された。
昼寝の邪魔をしたのは、消防車のサイレンの音だった。
野次馬根性で、家から出て、消防車を追いかける。
着いた場所は、しぃの家。
モララーは、一人の消防隊員に駆け寄った。
「しぃさん……この家の人はっ? 中に誰か居るんですか!?」
「はっきりとは分からないけど、女性が一人、炎の中に取り残されているらしい。
 さぁ、一般人は危ないからさがってるモナ」
炎が、しぃの家を舐め回しているようだった。
朱色の炎は、凶暴な美しさを見せつけるかのように、暴れ狂った。
モララーは、一瞬、戸惑うと消防隊員を押しのけて、燃えさかるしぃの家に走っていった。
「フォォォォッ!? 戻ってくるモナ!! 死んじゃうモナよ!?」
モナー隊員の叫びは、モララーには届かなかった。
四方から炎の轟音を聞かされていたし、頭の中はしぃへの思いでいっぱいだったからだ。

「しぃーーさぁーーん!! どこです? 返事をしてください!!」
口の中に、火の粉が入るのも構わずに、モララーは大声で叫んだ。
体が熱い。洒落にならないくらい汗が吹き出てくる。頭が痛い。吐き気がする。
モララーは、気力だけで立っていた。
その時、モララーの耳に、かすかな声が聞こえてきた。
「助ケ……テ。ゲホ……ウッウゥ……」
「しぃさんっ」
モララーは炎の中を本能だけで走った。
無謀ともいえるその行動は、愛のなせる業だった。
しぃは居間にいた。フローリングの床に、うつ伏せになって倒れていた。
「しぃさん、しっかりしてください!! 僕です。助けに来ました!!」
「ウ……痛イ、熱イ……。ハァ、ハァ……苦シ……」
モララーは、しぃを両腕で抱くと、しぃをかばうように炎の家から脱出した。
外に出ると、モララーはモナー隊員にしぃを預け、倒れてしまった。

43 名前: ナヒャ(yWVxXezQ) 投稿日: 2003/03/23(日) 16:28 [ NPApw44g ]
2/3
気が付くと、モララーは病院のベッドの上にいた。
白い部屋。白いベッド。白い包帯。気が狂いそうな、白の世界。
ベッドのそばには、ギコ医師の姿があった。
モララーは思わず叫んだ。
「しぃさんは? 無事なんですか?」
「うん? あぁあぁ、無事だぞ。軽い火傷だけで済んだ。もう退院してるぞゴルァ」
「良かったぁ……。ねぇ、ギコ先生。僕はどのくらいで退院できます?
 ……早くしぃさんに会いたいんです」
後半の言葉は、とても小さな声だった。が、ギコ医師はその言葉をキチンと聞き取っていた。
「会うねぇ、会う……。まぁ、気長にな。お前の怪我を治す方が先だぞゴルァ。
 お前、全身包帯だらけのミイラ野郎になってるんだぞ」
元気な声で言ったギコ医師だが、その表情は曇っていた。

数週間して、モララーの包帯を取る日が来た。
「ふぅ、包帯はもうウンザリですよ。あ、鏡ありますか」
鏡をモララーに渡すギコ医師の手は、震えていた。
が、鏡を覗き込んだモララーは、ギコ医師よりも震えることになる。
「あ、あ。これ。センセ、先生。これ、あの、先生、これ治りますよね? 先生?」
モララーの顔は、醜く膨れ上がり、皮膚は焼けただれていた。
つぶらな瞳は、盛り上がったマブタの肉で覆い隠されている。
口角のあがった口は、皮膚の捻れによって歪んでしまった。
とても醜い、自分の姿にモララーはただただ震えていた。
ギコ医師は、無言でモララーを見つめている。
「悪いが、俺の技術では。いや、どのAAの技術でも、治すのは、その、困難なんだ」
ギコ医師は、眉間にシワを寄せながら淡々としゃべり続けた。
「お前が、しぃの家に入ったとき、そのくらいの覚悟は、あったんだろう?」
突き放すようだが、この言葉はギコ医師なりの優しさだった。
モララーの醜い顔が、歪んだ。
それは、意外にも笑顔だった。
「えぇ、しぃさんが無事ならイイんです。僕は、しぃさんが無事ならそれで……」

44 名前: ナヒャ(yWVxXezQ) 投稿日: 2003/03/23(日) 16:28 [ NPApw44g ]
3/3
退院したモララー。彼の顔を見て、驚く者はいた。
が、村人は全員怪我の理由を知っているので、モララーに冷たく当たることはなかった。
ある日、モララーは村の公園に来ていた。
以前と変わらずに、ちびギコと遊ぶ。
このちびギコ、結構イイ香具師で、モララーをさり気なく気遣っていた。
今日、二人はキャッチボールをしていた。
モララーはうっかりボールを取り損ねてしまった。
「あ、ゴメンゴメン。取りに行ってくるからな」
「変な所に投げちゃったデチね。ゴメンなさいデチ」
モラーは駆け足でボールを追う。ボールの転がった先には一人のAAがいた。
「あ、しぃさん。こ、こ、こんにちわ」
モララーのあいさつに、しぃは答えなかった。嫌悪の表情を浮かべ、しぃは走り去った。
一人、呆然とたたずむモララー。心配したちびギコが走ってきた。
「何かあったんデチか? 大丈夫デチか!?」
モララーの目から、透明な涙のスジがいくつも伸びていた。
「大丈夫、大丈夫だから」
モララーの肩は、嗚咽に合わせて震えていた。
ちびギコは、そんなモララーを心配そうにのぞき込むことしかできなかった。
それだけなら、まだ良かった。村人のウワサが、偶然耳に入った。
「しぃは、モララーのこと避けてるよね。酷い話よねぇ」
「しかも、消防隊員のモナーと最近とても仲がイイでしょ。助けてくれたのはモララーなのに」
「アラヤダ! でもあの顔じゃねぇ」

 前編 完

後編で、殺しますね。
あ、これは三人娘の続きじゃありませんよ。

45 名前: ナヒャ(yWVxXezQ) 投稿日: 2003/03/23(日) 19:19 [ NPApw44g ]
1/4
火事の後、しぃは村外れの小屋を借りて住んでいた。
夜、モララーはしぃの小屋に忍び込んだ。大きなリュックサックを背負って。
しぃは、窓辺で物憂げにハーブティーなんか飲んでいた。モララーには、まだ気づいていない。
モララーは、しぃの頭を目掛けて拳を繰り出した。
バシッ。しぃの端正な顔が歪む。頬にモララーの拳がめり込んだのだ。
しぃは、無言で頬に手を当てると、モララーの顔を直視した。
醜く焼けただれた顔。しぃは、とても辛そうな表情を浮かべた。
モララーは、そんなしぃの腹部に蹴りを放った。
虐待どころか、喧嘩すら滅多に行わないモララーの蹴りは、動きが遅かった。
かわそうと思えば、かわせたのかも知れない。だが、しぃはその蹴りをかわせなかった。
しぃは、モララーの顔に気を取られていたからだ。
小さくうめくと、しぃは前ノメリに倒れ込んだ。モララーは、おもむろにリュックの中身を取り出した。
倒れたしぃに、ベルトのような物をつける。普通のベルトと違い、脇腹の方にそれぞれ腕輪のような物がくっついている。
腕輪に、しぃのか細い手首を入れ、キツク締め上げる。これで両腕は封じた。
しぃが起きるまで、気長に待つ。リュックの中身を確認しながら。
どうやら、しぃが起きたようだ。モララーは、しぃの目の前で、細いロウソクを何本も束ねた物に火をつけた。
「何ヲ スル気?」
「分かっているでしょう。もう少し待っていて下さいね」
モララーは、ロウソクの束を掴んで、しぃの体の上にかざした。
しぃは、多少表情を強張らせたが、泣き叫んだりはしなかった。
「哀願は、しないのですか?」
「ソンナコト シナイ……」
「はっは、気丈な人だ」
ポタポタと、乳白色のロウが垂れる。が、しぃは唇を噛みしめて耐えている。
「ふむ、我慢強いですね。これだといかがです?」
モララーは、ロウソクの火を直接、しぃの皮膚に当てた。
焦げ臭い。しぃの悲鳴があがる。モララーは醜く笑った。
モララーはリュックから大きな板のような物を取り出した。
内側に突起のある曲がった板、そして平らな板の組み合わせだ。
モララーは、しぃの滑らかな左脚を板の間に入れた。スネの方に、突起が当たるように。
「おや、抵抗しないんですか。しぃさん、もしかしてマゾヒストですか?」
「違ウ、違ウヨ。私ハ タダ……」
「まぁ、僕はSMなんて生易しい言葉で片づくようなことをする気は、ありませんよ」
そう言いながら、板についてある万力を締め上げた。
しぃの体が、ビクンと跳ね上がる。
「アァアッ!! 痛イ、痛ァァァッ!! 折レル、脚ガ、アアァァァッ! 折レル、折レルゥゥゥッ!!」
モララーは、鼻歌混じりに万力を回している。しぃの脚から、血が大量に滲み出ていた。
「あ、それね。折れると言うか、脚の骨砕いちゃいますから。折れるのとは、ちょっと違いますね」
万力を一層強く締める。ミリミリと、しぃの細い脚から、鈍い音が聞こえてきた。
ミリミリから、ギリギリと音は変わり、最後にベキャアっと大きな音がした。
「ッアアアァッ!! アァ、ハ、ハァッ。死ヌ、死ンジャウ!」
「大丈夫、簡単には死ねませんから」

46 名前: ナヒャ(yWVxXezQ) 投稿日: 2003/03/23(日) 19:19 [ NPApw44g ]
2/4
モララーが、次に取り出したのは軽そうな一本の鞭。これは雄牛の陰茎から作られた鞭だ。
一見、威力は低そうに見えるが、これはかなり凶悪な鞭だ。
脊髄のある部分に上手く当てると、軽く打っただけで、相手を死に至らしめることも可能だと言う。
まぁ、モララーは、その部分が分からないし、もう少しいたぶってから殺すつもりだ。
「しぃさん、お尻。這いつくばって、お尻、あげて下さい」
「エ……? 嫌ダヨ。ソンナノ 恥ズカシイヨォ……」
「お尻は嫌ですか。ならイイですよ。腹にしますか。ノドにしますか。顔にしますか。どこを打てばイイですか」
「ア、ウウ……」
しぃは、床に這いつくばり、尻を突き出した。頬は、羞恥心で赤く染まっている。
モララーは深呼吸すると、鞭を振り上げた。
風を切るヒュンという音。肉にぶつかるバチンという音。しぃの絶叫。
二、三回繰り返すと、しぃの愛らしい尻は無惨にも肉が裂け、骨が露出するようになった。
「ヒッ、アァアア!! ウッ……カッ、ハァ……ハァ」
「ね。腹やノド、顔じゃなくて良かったでしょ」
モララーは、穏やかな声で言った。
そして、ペンチを取り出した。しぃの尻の傷口にペンチをあてがう。
露出した骨とペンチが触れあい、カツンと澄んだ音が響く。
まだ骨にくっついている肉をペンチで挟む。
しぃの体が、激しく痙攣する。その振動で、挟んだ肉が、ベリッベリッと骨から剥ぎ取られる。
「動いちゃダメじゃないですか。でも、どっちみち、僕が肉を剥ぎ取りますがね」
「オ願イ、許シテ……。アッ、クゥゥ、死ヌ。痛イ。ギッ、アァ」
「おや、哀願は、しないんじゃないんですか」
そう言うと、しぃの唇を長い舌で舐め回す。
恐怖で、しぃは震えている。怯えた瞳が、モララーの醜い顔を凝視している。

47 名前: ナヒャ(yWVxXezQ) 投稿日: 2003/03/23(日) 19:19 [ NPApw44g ]
3/4
「僕はねぇ。しぃさん、貴方のことが、大好きでした」
「……知ッテタヨ」
「そうですか、知っていた。ふむ、結構」
モララーはしぃの目元をいやらしく舐めあげた。
「知っていて僕を避けたんですね。知っていてモナーと仲良くしてたんですね。
 僕の方がアイツより、貴方を愛しているのに!
 僕の方がアイツより、努力したのに!
 炎の中から、貴方を助け出したのはこの僕だ。
 アイツは、助け出された貴方を受け取っただけだろう。
 こんな顔になって、貴方のために。これで貴方に避けられたのなら、僕はどうすればイイんですか」
「違ウ、私ハ、私ハ……」
「人のようにしゃべらないでいただきたい。貴方は家畜ですよ。
 僕の気持ち、人の気持ちが分からない貴方は家畜以下だ」
モララーは、しぃの唇と自分の唇を乱暴に重ねた。
しぃの唇は、柔らかくて、とても気持ちが良かった。しぃの唇の温もりが、モララーの唇にも伝わってきた。
 どうして。どうして、僕はあんなに貴方を愛していたのに。
 僕はどうすれば良かったの? どうすれば貴方と幸せになれたの?
 貴方が悪いんだよ。貴方が僕の気持ちに答えてくれなかったから。
いつの間にか、モララーは泣いていた。しぃは、うっすらと目を開けた。
ゆっくりと、二人の唇が離れる。
「泣イテルノ?」
「黙れ」
「辛イノ?」
「黙れっ! お前は家畜だぁっ!!」
しぃの顔を感情の赴くままに殴り続ける。拳に伝わる、しぃの頬の柔らかな肉の触感。
美しかったしぃの顔が、赤紫色に腫れ上がった。
「随分と醜くなりましたね。それでも僕よりはマシですが」
モララーは、床の上で芋虫のように這いつくばっているしぃの姿を見つめている。
華奢な細腕は、ベルトの腕輪との摩擦で、血を滲ませている。
全身、固まったロウがこびりつき、皮膚の一部には重度の火傷を負っている。
左脚は、骨が砕かれ無惨なことになっている。
尻の肉は、もうほとんど剥ぎ取られ、血でピンクがかったオレンジ色の骨が覗いていた。
整った美しい顔は、見る影もないくらいに腫れ上がっている。
とても醜い、しぃの姿。
モララーは、しぃをそっと撫でた。しぃは震えている。いや、痙攣していると言った方が正しい。

48 名前: ナヒャ(yWVxXezQ) 投稿日: 2003/03/23(日) 19:20 [ NPApw44g ]
4/4
しぃはもうほとんど動かなくなった。そろそろ死ぬのだろう。
モララーは、しぃの柔らかな腹の上に、コテンと頭を乗せた。
そして、腹の皮に歯を立てる。顎が痛くなるほど噛み続ける。
モララーは、しぃの腹の皮を食い破った。
手を入れて、肉を掻き出す。内臓が露わになる。
リュックから、電動泡立て器を出し、しぃの腹の中に入れる。
電源を入れると、しぃの内臓はかき回された。
ちぎれた内臓の欠片が、周りに飛び散り、モララーの顔にもかかる。

しぃを殺した後、モララーは何気なく部屋の中を見渡した。
テーブルの上に、薄い水色の紙が置いてある。手紙のようだ。
宛先は、モララーにだった。
手紙を読んで、モララーはリュックから刃物を取り出して、ノドを切り裂いた。
手紙の内容は、このような物だった。

『モララーヘ
 
 助ケテクレテ アリガトウ。本当ニ 感謝シテイマス。
 チャント 口デ 言ッタ方ガ イイト 思ウケド、
 モララーノ 顔ヲ 見ルト、何ダガ 罪悪感デ マトモニ 会話デキソウニナイカラ……。
 私ニ デキルコトナラ 何デモ スルカラ。ゴメンナサイ。ゴメンナサイ……。

 シィヨリ』

しぃがモララーに抵抗しなかったのは、罪滅ぼしのつもりだったのだろうか。
私にできることなら何でもする、虐殺されても構わない。そう覚悟を決めていたのだろうか。
もし、モララーが、しぃを襲うのをもう少し後にしていたら。
もし、しぃが、モララーに手紙を出すのをもう少し早くにしていたら。
この二人の運命は、全く違っていたのかも知れない。

 後編 完