編者勝手に注釈:『No Boundaries in CE』を書いている626◆Hgibd3UDFM氏の書いた短編である。
あるコンサート会場…カーテンコールが鳴り止まない…先ほどの演奏はすばらしかった
その拍手を向けられている緑色の髪の少年――彼が次の取材相手だ
打ち合わせどおり楽屋裏に出向く
ちょうど一息ついたところだったようだ
『すばらしい演奏でした。』そう声をかけようと思ったところで気付いた――片足がない。
驚いたことに…その少年の片足は義足だった
―――
取材の方ですね?ミゲルさんから聞いています
僕たちを完膚なきまでに叩きのめしたあの人について聞きたいそうですね。
え、ああ、この足ですか?
ええ――ご推察のとおり、あの人と戦った時に…
――憎んでいるか?そうですね…たまに不便だと思うことはありますけど慣れました
あの人の飛び方、戦い方を何度かみた僕には憎めませんね
僕の本業の音楽で表すならベートーベンの"英雄"…でしょうか。それほど綺麗で勇猛な飛び方・戦い方だったんです
当時の僕は過去の作曲家達…"ナチュラル"はすばらしいと思っていました。
けど、やっぱりまわりと同じように、どこかで"それ以外のナチュラル"を見下しているところがありました。
それを粉々に打ち砕かれましたね。
僕たちは何とかヘリオポリスで開発されていた5機の新型MSのうち4機を奪取することに成功しました
そこまでは順調にいっていました
そのときに奪い損ねた残り1機――
ミゲルさんを落とした…ミゲルさんから何度も聞かされた、メビウスの輪のリボンのエンブレムをつけた機体
あの人に追い回されるまでは…
≪くそ、なんなんだよ コイツは≫
≪一斉に攻撃を仕掛けるぞ イザーク≫
≪貴様が命令するな≫
一斉攻撃――何度やったでしょうか…僕が地球手前で落とされるまで少なくとも二桁はやったと思います
ガンバレルを使ったように四方を囲んだ一斉射撃をなんども…
考えられますか?僕たちの奪った4機はスペック面ですべて互角。
あちらが装備を換装して性能を上げても、何かしら性能が上回っている機体がこちら側に1機はいるはずなんです…
それでも落とせませんでした
最初の内はMAからMSに乗り換えた戸惑い。そんなものがあったんだと思います…
掠ったりした攻撃ありましたからね
けど三度目の正直と望んだ戦いにはもうまるで当たりませんでした
――そして地球手前の戦いで…
≪ニコル!そっちいったぞ かわせ!≫
仲間のその声を聞いた瞬間には敵は目の前に来ていました
…後は覚えてません
目覚めれば、本国のベットの上寝ていて片足がなくなっていました…
病院の人が言うにはコックピット近くをビームサーベルで切られて、その溶解に僕の足もまきこまれていたそうです
それで、何とか片方は治療出来たけど、もう片方は切り離すために足を切断するしかなかった――と
でも、あと少しずれていたら僕は生きていませんでしたね…
そしてリハビリをしていたとき、僕の手術を担当した先生が
『"蒼いリボンの死神"と戦場で会って帰ってこれたのは、君の仲間とほんの少しの者だけだよ』
…そう話をしたとき。ただ命があったことを喜びました。
――もう飛びたくないかって?
そうですね…敵にするのはこりごりです。今度飛ぶのなら、味方としてあの人と一緒に飛びたいですね。
ソラの一部のように飛ぶあの人と――
ところで取材、続けるんですか?そうですか・・・がんばってください。
そういった彼のその目に怨み、憎しみそういったものの色はなかった