ダブルキラ(デブリ)
「どうして仮面をつけているんだ?」
ハイネはサイ(キラ)に聞いた。
「過去との決別です」
ハイネはその次の言葉が出なかった。
沈黙がその場を支配する。
「そんな顔しないでください」
サイの言葉が沈黙を打ち破った。
「嫌な事を聞いてしまったな……」
「別にかまいませんよ」
「サイ」
ハイネはサイの名を呼んだ。
「なんですか?」
「敬語ではなさなくていいぞ」
「でもしかし……」
「隊長命令だ」
サイはハイネの言葉に頷く。
ハイネとサイは宇宙港へと向かい歩き出した。
ハイネは一つの艦の前に止まった。
「これは今、俺達が使用している艦、ヴェサリウスだ」
サイは何処かで見た事あるような感覚にとらわれた。
ハイネが中に入っていくので、サイは変な感覚を捨て後について行った。
ブリーフィングルームに通され、ハイネ部隊やヴェサリウスの人たちに紹介された。
紹介が終わるとハイネと一緒の格納庫に向かった。
格納庫に置いてあるMSジンにサイは乗せられた。
サイがOSを起動させた。
「ハイネ……」
唐突にコックピット中からハイネを呼ぶ声が聞こえた。
「どうした?」
「すまないが、今回の任務は私は行けないようだ」
「なぜ?」
ハイネがコックピットの中を除いてきた。
「おい体が震えているぞ!大丈夫か」
ハイネが心配そうな声を上げる。
サイはなにも反応しない。
「コックピット恐怖症と言うべきなのか……」
ハイネはコックピットから飛び出し、部下達に命令をだした。
「お前はここに残っていろ。今日は俺達が作業する」
そう言うとハイネたちは宇宙へと飛び出していった。
サイはコックピットから抜け出し、パイロットの待機ルームに向かった。
待機ルームに着くと、近くの椅子に座った。
「シミュレータの時は何も起こらなかったのだがどうして……実戦との違いか……」
サイが落ち込んでいると、艦に残っていたハイネ部隊が慌しく動き出した。
サイはその中の兵士一人を呼びとめ何があったか聞いた。
「隊長たちが、所属不明のMSと交戦しているようだ。お前はここに残って俺達の活躍を見ていろ」
サイを振り払い格納庫に向かって兵士は走り出した。
サイも後に続き格納庫に向かった。
格納庫に向かうとサイのMS以外全て出撃していた。
サイは自分のMSのコックピットのOSを起動させた。
そしてCICに通信を入れる。
「こちらハイネ隊サイ・アーガイル。今からジンで出撃する。問題ないな!」
モニターの向こうで女性が映り動揺していた。
「パイロットスーツはどうしたんですか?」
「そんな時間はない!」
サイの言葉に女性は戸惑っていた。
「分りました。私の指示に従ってください」
サイは女性の指示に従い、ジンを動かし宇宙へと飛び出した。
暗闇の向こうで何度か光源が発生する。
サイはその光源に向けてジンのスロットルを開放する。
高原の場所に着くとほとんどの自軍のマーカーがほとんど消えていた。
「サイ、どうしてここに来た!しかもお前パイロットスーツを……」
通信の向こうでハイネが吼えた。
「ハイネ、敵はどのくらい残っている?」
「サイ、何を言っているんだ!」
「いいから答えたまえ!」
サイの言葉に従いハイネは従った。
「10機ぐらいは残っている筈だ」
「こっちはどのくらい残っている」
「俺とお前をいれて5機だ。戦力になるのは3機しかいない」
ハイネのモニターからジンが消えた。
「サイ!お前まさか一人で敵をやるのか?そんなの無理に決まっているだろう!戻れ!」
ハイネはジンに通信を入れて叫ぶ。
ハイネの言葉にサイが返してきた。
「ハイネ、私を信じたまえ!必ずここから生きてプラントに戻ってみせる」
ハイネは、先程までコックピットで震えた男に何が出来るのだろうと信じられなかった。
サイはコックピットの中で無理やり震えを抑え操縦桿を動かしていた。
モニター越しにジンが映る。サイは目の前のゲイツを敵と判断した。
ハイネ隊に配備されているのは、ジンなのだから。
サイは、ジンのスロットルを全開放させ、ゲイツに一瞬で近づき頭部を殴りつけた。
頭部が歪みゲイツは動かなくなった。
装備していたビームライフルを奪い取り別のゲイツに向かってビームを射出した。
ビームはゲイツに辺り爆発した。
爆発の中からゲイツが飛び出してきた。そしてジンに体当たりしてきた。
ジンは後方に飛ばされた。サイはコックピットの中で衝撃に耐えていた。
「空気は漏れていないな」
ジンは先程、頭部を歪めさせたゲイツを盾にした。
ゲイツの動きが停止した。
「甘いのだよ!」
サイはその隙を狙い、ゲイツからビームライフルを奪い、射抜いた。
「あと7機!」
真上からゲイツがサイのジンに向かって攻撃を仕掛けてきた。
サイはまだ気がついてないようだ。
「大丈夫か」
いきなりハイネから通信があった。
「何とかな」
「お前後もうすぐで死ぬ所だったぞ」
サイはハイネの言っている意味が分らなかった。
「カメラを上に向けてみろ」
ハイネの言われたとおりに上を見上げると、そこには爆発しているゲイツに姿が目に入った。
「助かったよ、ハイネ。敵はどうなった」
「殲滅したさ」
「そうか。もう駄目みたいだ」
「なにが?」
「意識が飛ぶという事さ」
ハイネはジンは両手に二つのMS手に取りヴェサリウスへと帰還した。
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