24時、君のハートは盗まれる～怪盗ジェイド～

“あなたの大切なものをいただきます”

満月には足らないレモン型の月が、闇の中空に輝く夜……怪盗ジェイドは、一瞬にしてその姿を消した。
その手には、予告状通り、彼がまんまと盗み出したステンドグラスが煌めいていた。

“怪盗ジェイド、今宵参上！”

突然魔法力に目覚め、魔法科に編入してきた真は『盗めぬものはない』といわれている彼に従兄弟のユキが狙われているという噂を聞く。
大切なユキを守るため怪盗を追う真はさまざまな謎に巻き込まれていく―――

そして怪盗の正体は………？

◆あらすじ

 

昨日までは、普通の学生だったはずなのに……

 

相沢真は、私立伯應学園・普通科の学生だった……昨日までは。
先週末、感情の爆発が真を目覚めさせ、今日の午後からは『魔法科』に登校しなくてはならない。
『魔法科』……それは特別な能力を有する学生たちが通うクラスだった。

 

ここ数十年の間に、全国で特異体質――
『魔法』が使える――を持った人間が生まれるようになっていた。
『魔法』と言っても、物語に出てくる魔法使いのように万能ではない。
一人一人がごく限られた特殊能力を持つだけで、その能力は千差万別。
それも、自分で制御できる者はいいが、真のように感情の爆発とともに現れ自分では制御不能になってしまうケースは、最悪、自身の衰弱を招く。
しかも、世間の目は好奇の域を出ていない上に、マスコミはおもしろ半分、心ない人は差別さえする。
そんな彼らを保護するために、伯應学園の前理事長は『魔法科』を開設していた。

 

自分に訪れた変化について行けず、ため息ばかりの真を慰めてくれたのは、親友で幼なじみ、学生会長でもある月村秀一郎。
「従兄弟のユキちゃんと仲直りするチャンスかもよ？」
そう秀一郎に言われ、真は張り切って魔法科の教室のドアを開けたのだったが……

 

真の従兄弟の相沢ユキは、両親が亡くなったために真の家に引き取られ、真とは兄弟のように育ってきた。小さい頃から『魔法』に目覚めていたユキは、『魔法科』に通い、学園の寮で生活していた。
真の両親はユキのためを思って入寮させたのだが、ユキ自身は「家を追い出された」と感じてしまったらしく、それ以来真に対しても心を閉ざしてしまっている。
家にいた頃は「マコ兄ちゃん」と慕ってくれていたのに。
魔法科編入を機会に、ユキと昔通りに仲良くなりたい……と真は考えるが、ユキの態度は教室でも、真が途中入寮した学園寮でも、つれないものだった。

 

そのころ、伯應学園では、学生たちが集まると「怪盗ジェイド」の噂話で持ちきりになっていた。
真が魔法科に編入する少し前から、理事長宅に、何度も「怪盗ジェイド」と名乗る泥棒が盗みに入り、理事長秘蔵のアンティークなどが盗み出されていたのだ。
理事長が警察に知らせたがらないこと、そして、ジェイドの行動が「魔法」を連想させることから、『ジェイドは、魔法科の学生ではないか？』という噂が流れていた。

 

こうして、平凡で平和だった真の日常生活は、非凡で波乱に満ちたものに変化していく。

 

真は魔法科でユキとトップを争っている紺野祐介がジェイドではないか……と疑い始める。
無口な祐介は何を考えているか分からない上に、夜、こっそり寮を抜け出していたから。
「魔法」に目覚めてから、魔力を制御できずに何度もお世話になっている
保健室の養護教諭・御崎崇志も、ジェイドについて何か知っている様子。
真のバスケ部の先輩・七瀬レンは、優しいけれど、なにか秘密がありそうだ。

 

そして……ある夜、真はついにジェイドと遭遇する。
真を「おチビちゃん」と呼ぶジェイドは、謎の言葉を残して去っていく。
その言葉から、「次に狙われるのは魔法科の優等生……ユキかもしれない」と予想した真は、立ち上がった。

 

「怪盗ジェイドの正体を暴く！！」

 

真は、大切なユキをジェイドの手から守ることができるか？
不思議な運命の渦に巻き込まれた真を待っているのは、どんな未来なのだろうか？