Alain

Last-modified: 2009-07-30 (木) 18:07:44

SD17少年 アラン

2007年12月23日(日) ドールズパーティ18 発売



第二章「長靴をはいた猫」
シャルル・ペロー「童話集」より



皆の衆、ようおいでなされた。


今宵もまた夢夜話にわしのとっておきの話をしようかいの。


つまらぬ心配ごとなど早く忘れ、心からの開放感を楽しまれるがよい。



それは昔むか~し、
人々の願い事がまだ本当に叶っていたころの物語じゃ。


それは遥か東方のその向こう、春には野原一面が深緑に染まり、
秋にはそれが黄金色に輝く豊かな豊かな国に住む
粉ひきの息子のお話じゃ。


粉ひきには三人の息子があった。
粉ひきはこの世を去る時を知り、心優しい
三人の息子それぞれに
おのれの形見を分け与えたのじゃ。



長男には粉をひく風車とその小屋を。
次男には働き者のロバを。
そして三男には最後に残った猫じゃった。


猫を貰った三男のアランは
「兄さん達は風車とロバで立派に暮らしていけるのに・・・
猫なんて、こいつを食べてしまったら
後は何も残らないじゃあないか・・・。」と
がっかりして猫をただ見つめるばかりじゃった。



そんなアラン、いやいや
新しいご主人様のため息を聞いていた猫は
大きな瞳をキョロキョロさせて、こう言ったのじゃ。


「アランさまそんな心配しないで!
あなたが貰ったこの私。 そんなにふさぐものでもないわよ。


私の新しい、そして大切なご主人様ですもの。
きっときっと幸せにしてみせるから!」


なんとそう言って、猫が目の前で立ち上がり
息巻いたんじゃからアランはたいそう驚いたわいの。


「そのかわり、私に素敵なブーツを下さいな。
バラ藪の中でも、ぬかるみの中でも
自由に駆けられる丈夫なブーツ。
もちろん、普通のじゃダメよ。
私にぴったりのとびきり可愛いブーツにしてね!」



「えっ?猫がブーツ?」


「しかもどうして猫が人間のことばを!??」


そりゃあアランは驚いたのなんの。
ところがその後からアランの周りには
びっくりするようなことが
次々に起こり始めたのじゃ。


いつの間にか朝になると、
アランの枕もとには野うさぎや
果物がどっさりと届けられておったり。


空っぽだったはずの瓶のなかには、
とろけそうな甘い蜂蜜が
たっぷりとじゃ。


もっと不思議な事には、
アランが夢を見ると、
その夢の中に現れた物が
次の日の枕元にちゃんと
届けられるようになっていたのじゃ。



アランの毎日が、
猫の様子にむけられるようになって行くには
そう時間もかからんかったのじゃ。


なぜなら、アランが考え、希望をするだけで、
もうそれは次の日には
アランのものになっていたのじゃからな。


こうしてアランとその猫の物語が
始まって行くのじゃが、
今日はここまでとしておこうかいの。
このあとはまたわしの夢夜話として、
たっぷりと聞かせることもあるじゃろう。
それまでしばしの休息じゃ。



若くてりりしいご主人さまと、奇妙な猫の化身の物語。


あなたの心の中に、ほらほらもう
「アランとルネ」の姿が見えてきませんか。
抱きしめてあげたいほどの衝動が創りだす、神秘の物語。
このつづきをどうぞお楽しみに。

シリーズ名

同シリーズ

序章「異次元からの小さな訪問者達」

第一章「カエルの王様 または 鉄のハインリッヒ」

第二章「長靴をはいた猫」

第三章「雪白姫」