■ これからAPRSを始める方へ!
APRSとは Automatic Packet Reporting Systemの略で、アマチュア無線の遊びの1つです。
パケット通信(パケット無線)を利用する通信システムで、以前は(Automatic Position Reporting System)と言われていましたが、
トラック業界やタクシー業界等が導入しているような 車両位置情報システムではありません。
移動体(車、船舶、飛行機、ウォーカー)向け情報システムです。
実際の運用では、最近流行りのVoIP無線(EchoLink、IRLP、WiRES-II)等のノード局情報や、地元レピーター局情報発信の他、
アメリカでは災害救助の支援にも使われています。
日本国内では、 レスキューバイク団体 や 地域消防団 、 赤十字奉仕団 等が活用しています。
アマチュアのシステムなので、あらゆる機能が制限無く使えます。新しいシステムとの連動を模索したり、
創始者であるWB4APR Bob Bruninga氏や、APRS運用指針を定めているAPRS-WorkingGroupと協議する事で
新たなAPRS運用の基準構成作成に参加出来ます。
深くも浅くも楽しめるシステムですが、1人では遊べず必ず近隣の局と協議する時期がいつか来るシステムです。
ある程度ルールは守られる必要がありますので、自分勝手したい方にはやり難い遊びです。(笑
APRS運用に注目し各局と協力しネットワーク構築に関わろうと思う積極的なハムは進んで始めてみましょう。
APRSでのインターネットの役割
APRSは基礎理念からハイブリッド的構想で出来ています。それは、D-STARのエリアとゾーンの考え方に似ています。
日本では先にVoIP(WiRES-II、EchoLink、eQSO、等)が普及した為、『APRS = インターネットとGPSを使った遊び』という
イメージが定着しがちですが、少し違う点をまず理解しましょう。
- エリアとは、デジピーターを介しても電波でのやりとりの出来ない地域で I-Gateを通して交信可能な場所の事
- ゾーンとは、デジピーターを介して電波のみで交信可能な場所。(同県内・同市町村等)
APRSでのインターネットとは、エリアとエリアを繋ぐための目的を主とし、仕様上拡散的に広がり易い通信方式を
設置場所を上手に手配し電波カバーエリアを適切な構想とし、必要以上に拡散させない事と、通信経路の制定、
ゾーンでカバー出来ないエリアに関してはI-Gate間通信を用いるという基本理念を遵守し構築を行うものである。
またVoIP同様の楽しみとして、インターネットとリンクさせる事で海外局とのパケットによる交信も可能となり、
短文で簡潔、運用者の状態(CQなのかHELPなのか)等を的確に伝えられる手段として期待されているものだ。
更に、情報がインターネット上に載る事で多種多様なWebツールを用いて解析を容易にする事も可能で、
代表的なWebサイトに aprs.fi がある。
何が楽しいの?
皆さんにとって、どのような価値が見出せるかは筆者は分かりません。しかし、私は楽しんでいます。
ビーコンに受信中の周波数情報を記載していれば、CQを出さずとも近隣の局から呼ばれる事もあります。
移動中にアイボール希望を持ちかけられる場合もあります。
各地のI-GateやDigipeater局が正しく設定されていれば、決まったフォーマットでVoIPノード局の情報や
地域レピーター情報、無線屋さんの情報、その他様々な情報が届きます。
その情報を元にすぐにVoIPやレピーターを効率良く利用出来る素晴しいシステムです。
APRS仕様書はよく考えられてあり、ルールを守って正しい運用を行えば色々な情報が見えてきます。
ニヤニヤ ヘラヘラ ケラケラ と笑いながらするような遊びではありませんが、
RAWデータを眺め眉間にシワを寄せながら非効率な部分を減らそうと日々調べ努力し、結果が出れば達成感が得られます。
他の無線のように「電波を出す=運用する」という無線ではありません。
『5割 勉強』、『3割 検証・議論』、『1割 運用』、『1割 その他』 と出来れば最適です。
終始 自力で調べる 事が基本の遊びです。
Google等で海外のAPRS公式サイトや日本のワーキンググループである JAPRSX のページで最新情報を参照しましょう。
一般無線局のブログやWebページの古い記事や、APRS運用指針に基づいて語らないフレンド局の口頭説明はアテになりません。(苦笑
APRSはWorking Group の定めたルールに従って運用するようにしましょう。
運用を始めるには?
まずは、移動局の運用から始める方が良いです。
興味を持った多くの方は aprs.fi をご存知だと思います。
APRS対応無線機やトラッカー等でビーコンを出します。地図に表示されればビーコンが出せてI-Gateに届いています。
ここで満足する事無く、運用指針上正しいか?、デジパスを設定し過ぎていないか?、RAWデータ等と照らし会わせ
適切な運用になるよう努力しましょう。 努力する事が運用です。
メーカー製のAPRS対応無線機のお使いの方へ…
多くの無線機が The new WIDEn-N PARADIGM のデジパス設定で出荷されていると思われます。
出荷時設定では 『WIDE1-1,WIDE2-1』を付加して電波を出すよう設定されていますが、
日本全体的に2段デジパスは不要であり、設定を変更する事が強く推奨されます。
1段デジパスの『WIDE1-1』のみに変更しましょう。
※ メーカー出荷時設定のまま運用を行えば輻輳状態を発生させたり、他局の運用妨害を起こしてしまう地域があります。
電波法でも
「一般に無線局は免許状に記載された空中線電力以内で、かつ通信を行うために必要最小の電力で運用しなければならない(日本の電波法第 54 条による)」
とある事から、多段デジパス設定を初期値として不必要に電波を広く飛ばしてしまう事は、APRS運用指針に反しておりますし、
「知らない、分からない」「デジピーターがローカルに無いからいいだろう」という理由で設定したまま放置してしまうと、
その事で輻輳状態や他局妨害が頻発した場合 法的観点から見ても良くない事になります。
メーカー様には出荷時設定を「デジパス無し」か「WIDE1-1のみ」にして頂くよう今後お願いしていきたいと筆者は考えています。
基本的な運用
APRSはパケット通信ですので、音声とは違います。 音声でどこまで届いた~という経験はアテになりません。
ネット側に確実に記録を残そうと高出力にしても、マルチパスの影響等で多くは妨害電波になるだけです。
- 電波出力
- 移動しない局(I-Gate局、デジピーター局) = 10w
移動局(モービル局、その他) = 5w ~ 20w ( 最大20wまでが好ましい )
- ビーコン間隔
- 移動しない局(I-Gate局、デジピーター局) = 30分~60分間隔
移動局(モービル局) = 1分~10分間隔 (最低1分以上と運用指針で決まっている)
移動局(海上) = 3分~20分間隔 (5分前後推奨)
移動局(航空機) = 30秒~10分間隔 (上空を飛行する機体のみ、飛行中に限り30秒間隔ビーコンが許されている。)
(※ 上空の飛行体デジパス設定は、広範囲に電波が飛ぶ事から原則デジパス無しか WIDE2-1 のみ。WIDE1-1を設定してはいけない。)
- デジパス
- 基本 = 無し
↑でI-Gateへ届かない場合 = WIDE1-1
↑でも届かない場合 = 近隣のI-Gateやデジピーター運用局に相談。必要であれば適切なデジパス設定を教えてもらう
移動局を運用してみて、APRSネットワーク構成について理解出来、I-Gateの運用が必要と感じた場合は、
近隣各局と相談して I-Gateやデジピーターの運用を開始します。
ビーコン経路整理を行う必要がある為、電波で他の移動しない局を受信してしまう位置では
勝手な開局をしない事が重要です。
I-Gate局やデジピーター局の運用
まず、自分がI-Gateやデジピーターを運用する必要があるのか、よく考えましょう。
同県内に先に運用をしている局がいたら、コンタクトをとって同エリア同県内の運用方法について相談
何をどのように運用すれば一番効率が良いのか話し合いましょう。
「一通りやってみたいから」という気持ちで始め、全国統一の周波数に合わせてはいけません。
特に、Inet to RF で他エリア局の位置情報を垂れ流しにしているようなI-Gate局は、全国統一の周波数に合わせては絶対ダメです。
APRSでは、その多くの運用に関して運用指針で細かく決まっています。
日本国内の(東京・6エリアを除く)APRS局は運用指針を守れていない局があります。
シンボルマークの仕様からビーコン内容の記載方法まで、多くが決められています。
何を発信するべきかよく考え、自分の名前や住所、メールアドレス、VoIPの運用情報等が
本来発信すべき5桁PHGや運用周波数、対応デジパス等の情報より優先されぬよう気をつけましょう。
※ 運用しているVoIP無線のノード局情報はオブジェクトフォーマットが決まっているので、 ステータスやビーコンに入れずに正しい方法で送出しましょう。 |
シンボルマークを見ただけでI-Gateなのかデジなのか
ビーコン内容を見てAPRS運用形態が分かる事が重要です。
トラフィック交通整理
APRSパケットの交通整理はとても重要です。狭い地域にI-Gate乱立はMSG不通要因となる為、好ましくありません。
デジピーターを設置した場合もビーコン経路の整理は重要です。
http://jm7muu.com/index.php?APRS%2FWelcome のAPRSのトラフィックを考えてみましょうを参照してみましょう。
オリジナルの記事はそのうち書きたいと思っています。
ページ作者: DCN-Hiroshima JN4OQT *1