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Last-modified: 2021-06-24 (木) 22:38:22

この長い夜が明ける前に
 我々人類の誰もが、この世の真実に気づくことなく生きている。


 ・・・・・・。
 1823年に設立されて以来、我々異種間調停理事会は異種族と人間との間を取り持つ調停役であり続けてきた。そんな我々異種間調停理事会がいわゆる"異星人"と関わりを持ったのは、1943年の秋のこと。
 私の名はエージェントパルサー、かつて異種族と人間との間を取り持つ調停官の一人だった。ある日、私の夢の中に、ハロンと名乗る異星人が現れいくつかの真実を教えてくれた。
 その内容は、耳を疑うものだった。

 宇宙はある存在が始めた〔転生ゲーム〕のための領域であるということ、物理的法則の異なる多数の宇宙が存在するということ、あらゆる宇宙、銀河、惑星、衛星には少なくとも一種の知的生命体が存在するということ、

 この宇宙には〔帝国〕と〔連邦〕という二つの勢力が存在するということ、かつてその二つの勢力の間で戦争が繰り返されたということ、そのために多くの魂が傷付き病んでいったので、彼らを癒すために地球が用意されたということ。

 異星人たちは地球での転生ゲームの器を作るために、たくさんの直立歩行型生物を造ったということ。

 多くの異星人文明が地球と交流を持っていたということ、
 多くの異星人の魂が地球で転生をはじめ、魂の傷を癒していったということ。

 だが地球に目を付けた〔帝国〕が地球を取り上げ隔離してしまったということ。
 幾度となく多数の異星人文明が地球を開放するために戦い、散っていったということ。

 異星人たちは人間たちの間に何度も救済のための工作員を送り、人類の救済を目指したが、
 救えたのはわずかな数の勘のいい人間だけだったということ。

 他の人間たちは全てを忘れたまま、娯楽に身を投じ、真実から目を背け、滅亡への道を歩んでいったということ、
 そんな中で真実に気が付いたわずかな数の人々は地下へと逃れて行ったということ、

 ・・・・・・彼ら〔シャンバラ族〕はそうして地下都市へと逃れて行った人間たちの子孫であるということ。

 さらにハロンは、ある戦争についても驚くべきことを教えてくれた。

 〔この戦争〕とは、1914年にサラエボのある青年がオーストリアの皇太子を銃殺し、始まった第一次世界大戦と、1941年に日本軍が真珠湾とマレー半島を奇襲し開戦した第二次世界大戦である。

 実はこの二つの世界大戦は支配者層の目論見に気づいた日本が彼らと戦うために始めた戦争で、第一次・第二次・そしてこれから始まる第三次・第四次世界大戦を含めて五百年の長きに亘って続く大戦となるとのことだった。

 シャンバラ族がいた元の世界ではこの大戦は五百年戦争と呼ばれており、最終的に核戦争となり、地上は焦土と化し、生き残った地下都市の住民たちも子孫を残せない体となり、クローン技術に頼るしかなくなっているらしい。

 そんな中、支配者たちは地球を見捨て、人類は混乱の中を生きているという。

 表情から私の絶望を読み取ったのだろう、ハロンは言った。
 ―――あなたの世界は、まだ美しい。
 ーーー備えよ、それが世界を救うだろう。