Story1135

Last-modified: 2021-07-07 (水) 12:52:40

 地球には世界が二つある。
 人間の住む物質界と、先住民族の住む精霊界だ。
 近年この二つの世界の間の壁が、薄くなりつつあることが問題になっている。
精霊たちの戻るとき


 昔々あるところに、美しい星がありました。この星には碧く広がる海と、深く美しい森があり、空と海と大地に、精霊たちが舞い踊り、楽しく暮らしておりました。

 ある日、この星に、空から星の人がやってきました。彼らはこの星に存在する"ある鉱物資源"を採掘するために、遠い星からやってきたのだと言いました。

 暫くすると彼らは、いくつも新しい種族を造り、それらを鉱物採掘に駆り出しました。
 その幼い種族らを、その星で最も進化した存在であった霊翼人は、この星の一員として迎え入れました。

 幼い種族らはいずれも感情が無く、愛を理解する能力に欠けていました。
 霊翼人たちは幼い種族らに"妖精の遺伝子"を与え、その能力を育てました。

 必要なだけ鉱石資源を採掘し終えた星の人は、自分たちの星に帰っていきました。
 その後、幼い種族らは、自分たちで文明を築き始めました。

 幼い種族らの文明は栄え、高度な技術を身に着けました。
 そしてある時幼い種族らの前に、星の人たちが現れました。

 彼らは彼らの高度な技術を、幼い種族らに与え、幼い種族らの科学技術は、更に高度に発達していきました。
 星の人たちは殆どが愛情深い存在でしたが、中には悪意ある者たちもおりました。

 悪意ある者たちは、心を支配するために、幼い種族らに近付きました。殆どの種族はそれに気付き、悪意ある者たちを寄せ付けませんでしたが、幼い種族らの一種である"人間"たちは、彼らの言葉を聞いてしまいました。

 "人間"たちは傲慢になり、他種族を見下すようになりました。
 怪しい儀式を行い、悪意ある者たちと契約を結び、自らの繁栄のために他種族を陥れ、自然を破壊しました。

 これを危惧した霊翼人たちは人間たちの前に姿を現し、悪意ある存在とは関わりを断つようにと何度も忠告しましたが、それを聞き入れたのはわずかな数の人間たちだけでした。

 そしてある日大変なことが起きてしまいます。
 東方大陸の文明と西方大陸の文明が戦争を始め、地球は人間たちの使った兵器のために大災害に見舞われました。

 霊翼人たちの長であったウルズ、スクルド、ヴェルザンディは話し合い、そしてあることが決定されました。
 世界を二つに分けよう。そして私たちは分かれた世界に移り住もう。

 ウルズとスクルドは異世界への転移を、当時地球上に住んでいた全ての種族に呼びかけました。
 そして全ての種族がその呼びかけに応じ、全ての存在が異世界へ転移しました。

 ・・・・・・。
 人間たちを残して。


 こうして現在の荒廃した世界に、人間だけが残されたのです。

 これは昔のお話です。
 人間たちの間では、知られていないお話です。

 近年分かたれた二つの世界の間の壁が、少しずつ薄くなり始めています。
 これにより二つの世界の交わりが復活し、精霊界の者たちがこぞって物質界に姿を現す事件が多発しています。