Story2781

Last-modified: 2021-10-04 (月) 01:34:30

 あれは俺がまだ二十歳になったばかりの頃、俺はアラスカ、ベーリング海の海上にいた。

 目的はもちろん一攫千金、そこで撮れる海産物はいずれも高級食材だ。一回の漁で何億という金になるベーリング海のカニ漁には、多くの若者が挑戦にやってくる。だが、この極寒の海では嵐も多く、風速四十メートルという暴風雨が吹き荒れるこの海では、死んでゆくものが後を絶たない。

 あの日も船は暴風と高波にもまれ、乗組員はみな船から転げ落ちないように船体に着いた氷を砕き、カニ漁用の鉄籠に餌となる魚をつけ海に下ろし、昨日下ろした籠を引き上げ、あくせく船の上で作業を続けていた。

 おい!あれを見ろ!
 ティムの叫びで鉄籠を海に下ろしていた俺の眼はティムの指差す海上に向けられた。

 ごうごうと声をあげながら荒れ狂う海の上に、巨大な白い人影が見えた。


海の人々の呼び声
File#2781

Thought:Neutral

EntityClass:Normal

特別対処用プロトコル:#2781に分類される実体はその巨躯から確保が不可能であるため、#2781を目撃した、または声を聴いた全ての人間にClassA記憶処理を施してください。

説明:#2781は水棲人に分類されるヒト型実体で、上半身が人間型、下半身が鯨類型となっており、127mもの巨体を有し、体色から黒色と白色の二種が確認されています。〔BLOOP〕と呼ばれる特殊な波長の声を発し、他個体と常にコミュニケーションを行っています。現在世界治安維持局と異種間調停理事会は、目撃者の中で唯一”2781とコミュニケーションをとることに成功したとされる男性(#2781-Aと呼称)をサイト8121にて保護しています。

インタビュー記録■■■■/■■/■■
オブジェクト:#2781-A
インタビュアー:調停官・鰆