地域地理学/再②

Last-modified: 2023-07-14 (金) 12:20:26

問題提起

  • どの指標が南北格差を最も表している?(例:1人当たりの穀物生産量)←差の出る原因
  • 耕地の6割程度が自分の食糧ではなく、海外向けの商品作物を生産する「背景」
  • 新興国・先進国・途上国の定義を明確に

フードシステム学会からの提言

「先進国アグリビジネス」=先進国における構成主体である企業体のこと。先進国アグリビジネスは、発展途上国の特定産業部門に結びついて進出する。

発展途上国

地域内容ビジネスの対象(p46)
中南米アルゼンチン・ブラジルは食料の輸出国であるが、ペルー・チリ・コロンビア・ボリビアは食料栄養的に途上国である。アフリカのように栄養量の絶対水準の低いケースは少ないものの、所得の不均衡が問題視されている。北アメリカ
アフリカ植民地支配政策により輸出用一時産品に特化させられたモノカルチャーが残存する。自然的災害と内戦により食糧不足が頻繫に発生する。先進国からの食糧援助は、途上国の生活者の嗜好を変える。ヨーロッパ
東南アジアアフリカと異なり、豊かな自然に恵まれ飢餓的な食糧問題は発生していない。ただし、農業は各国が強力に進める工業化の糧として位置付けられている。外貨獲得のため、途上国に存在する一次産品は輸出物資となり、先進国アグリビジネスはこれらの未利用資源を利用している。東南アジア

※中進国=中南米ではメキシコ・ブラジル・アルゼンチン、東南アジアでは中国・台湾・タイなど。

同じ南北問題であっても、南アメリカ・東南アジア・アフリカでは事態が異なる。アフリカの場合、食料そのものが絶対的に不足しており、人口増加に食料が追いついていない。矢口は、その理由を①干ばつの続発と収奪農法の継続、②農業政策の貧困、③紛争や内戦の続発と軍事優先の投資の3点を挙げ、このような構造的な問題で貧困の解消は困難だとしている。

先進国アグリビジネスによる途上国支配

段階名内容
第1段階先進国アグリビジネスが途上国から特産品を輸入し、途上国に先進国向けの特産品輸出産業が形成される。地域的に需給バランスのとれていた食料システムは、輸出による供給不足となり、地域内の価格体系が崩れる。発展途上国の食糧システムのなかに輸出指向型の経営主体が形成される。
第2段階途上国の特産品産業企業は、輸出指向型の企業グループと、はみ出したグループに分解する。先進国アグリビジネスは前者との関係を強化する一方で、より大きな利益を求めて生産部門のみならず販売部門にも進出する。途上国の非輸出指向型の企業グループは排除される。こうした進出は、両国間の国際関係が安定していなければならない。
第3段階先進国アグリビジネスが途上国の生産システムを自らのシステムのなかに吸収し、他の先進国アグリビジネスと競争して世界市場を分割する。

先進国アグリビジネスの収奪的・強制的収益力

の要因

  • ①賃金格差(1/2~1/10)、労働力の質(途上国では人口が依然として増加傾向にあり、若くて良質な労働力が再生産されている)
  • ②発展途上国製品に対する問題。先進国アグリビジネスではある程度の危険率を見込んだ価格設定が必要であり、これを価格に織り込むと高い利益率となる?
  • ③多国籍アグリビジネスによる資本回転率の強化。途上国は政治的・経済的に不安定であり、この地域に投資する場合は投下資本を短期間で回収したいのである。

途上国における産業構造の変質

  • ①途上国の農業・漁業生産構造が先進国アグリビジネスの必要とする特定輸出産品に強化する。フィリピンのバナナなど。
  • ②先進国アグリビジネスの経営戦略により、途上国における生産構造が輸出品を対象とした特定部門へますます集中される。先進国アグリビジネスは、より巨額の利益を確保するため、途上国は安定した所得を確保するために。この結果、途上国の産業部門は分解され、非輸出部門は、多くの資源。資材が輸出産業に集中する結果、生産力が低下する。途上国間の格差が発生する。
  • ③産業間格差により、非輸出産業のなかには国内需要を賄えないケースが発生する。農業が輸出部門に集中→農業の主力である穀物が輸入される(皮肉)
  • ④従来の農業生産体系の変化。緑の革命のフィリピンは、収量が増加したものの、肥料・農薬・種子などの農業資材のほとんどを先進国アグリビジネスに依存する。

途上国フードシステムの変形・変質

  • 発展途上国における食材で素材タイプとして先進国のフードシステムに導入される食品は途上国の特産品に限定される。コーヒーや紅茶は先進国において比較的改良もなく利用されるが、穀物や水産物など先進国で生産されている食材は、先進国の基準に合うように生産方式の変更が強いられる。山本は、契約農業で普及される新技術は、従来の伝統的な生態系循環型農法とは異なり、効率化優先の技術であり、自然環境に負荷をもたらす収奪型農法であることが多く、持続的経済発展を困難にする要素が含まれていることも無視できないとする。
  • グローバル化され先進国型フードシステムに組み込まれることにより、発展途上国における富の分配の不均衡・不均等がより進む。
  • 途上国が特定品目の開発に取り組み、先進国への売り込みが成功しても、それが継続して進められる保証はない。