経済格差/再②

Last-modified: 2023-03-23 (木) 11:53:01

地域経済学入門

1人当たり県民所得は、最高と最低の格差は拡大傾向を示しているものの、日本の地域間格差に大きな変化はなかったようにみえる。平均値からの乖離にも大きな変化はない。ただし、順位にはかなりの変動がある。例えば、2014年度においては大都市圏に属さない静岡県・栃木県・富山県など製造業でも自動車産業や薬品産業等の付加価値の高い産業が盛んなところが上位である。一方で、東北地方や山陰地方など下位においてはそれほど入れ替わりが激しくない。

1人当たり県民所得の変動係数(標準偏差/平均値)の推移によれば、1961,1989,2005年度頃をピークとする3つの逆U字型カーブが連なった形態を取る。3つのカーブの堺は①第1次石油危機の1970年代後半と、②経済のグローバル化や規制緩和の進んだ1990年代後半である。2つ目のカーブ=1970年代後半の高度成長→安定成長に転換した時期、ピークはバブル崩壊直前の時期。2008~2009年にかけての急激な格差縮小→アメリカの急速な景気後退で日本も不景気になった。1990年以降の不景気の影響は、1人当たり所得が相対的に上位にある県に影響を及ぼし(景気に影響されやすいサービス産業が都市圏に集中しているため)、地方圏では不景気の影響が都市圏より小さく(農業・公的部門の割合が高いため)、結果として格差が縮小傾向を示した。

第2次世界大戦の復興期から1960年代前半にかけては、東京・大阪・名古屋などの大都市圏への資本や労働力の集中が進むとともに、地域間の格差も拡大した。

  • 1960年代前半~1970年頃まで多くの人口が地方圏から3大都市圏へ移動
  • 1970年代では3大都市圏への純流入は急激に減少
  • 1980年代では3大都市圏のうち、東京圏のみ人口の純転入が続いている。

1970年代半ばまでの所得格差と人口移動との間の因果関係については、田渕(1987)など所得格差が人口移動の主たる要因であるという研究結果がある。しかし、70年以降この因果関係は明瞭ではなく、1980年~1990年代後半の東京圏への人口移動は、人口純転入の増加によって所得格差が拡大したとの指摘もある。

国際化時代の地域経済学

  • 高度成長の初期には四大工業地帯・三大都市圏とその他の地方圏との格差が拡大した。後半からは工場分散、公共投資・財政トランスファーで格差縮小。
  • 1970年代にはUターンの方が上回っていたが、格差は縮小しなかった(地方に展開したのは分工場であって、高次の機能は首都圏に集中していたから)
  • 1980年代中盤の国際化・情報化のなかでの民活・行革路線によって東京一極集中が強まった。
  • 1990年代のバブル崩壊後、東京圏への人口集中は一旦収まる。
  • 2000年代以降、都市再生政策による東京都心回帰が生じる

日本経済地理読本

2002年から2007年にかけて長期的な景気上昇局面が続いたが、2008年の経済危機により、東北地方の電子産業における雇用調整が今度は九州にも波及してきた。

2000年を過ぎた頃からの景気回復期には格差拡大、世界金融危機以降は格差縮小という経路を辿る。すなわち、1970年代後半以降は、景気拡大期に地域間格差が拡大し、景気縮小期には地域間格差が縮小するという循環を描いてきた。

1960年代後半~1970年代初頭では景気拡大のなかで格差縮小している(地方圏における雇用機会の増加→格差縮小。
1990年代以降も格差縮小しているが、地方圏の豊かさは示さない(都市圏の景気後退で所得抑制→統計上は格差縮小)。