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Last-modified: 2015-12-29 (火) 23:52:03

翌日、再び敵が現れ、二人はまたゲッターで出撃することになった。
研究所から三機のゲットマシンが飛び立つと、イーグル号を軸に三機が合体する。
赤いボディにマントをなびかせ、ゲッター1が姿を現した。

「さてと、今日は何匹来るんだ?」

操縦者の女性は、楽しそうに男に尋ねる。ため息と共に彼の言葉が返ってきた。

「リョウ、昨日言ったことを忘れたのか。少しは緊張感を持て」

「緊張したら、とっさに動けないだろう、ハヤトは考えすぎなんだよ」

何か言い返そうとするハヤトの声を、リョウの歓声が掻き消す。

「おっしゃ、いたぜ敵さん。じゃあさっそく」

そういってリョウはトマホークを取り出そうとした。

「待て」

それにハヤトが一段と低い声で忠告する。

「なんだよ」

「様子が変だ」

「ああん?そういや動きが」

敵はその位置を変えず、体や目を小刻みに左右に揺らしている。まるで何かにおびえているような動きだ。

そう思った瞬間、リョウの耳に掘削音が響く。要はドリルが回転し、土を掘る音だ。
ゲッター2で地中に潜ったときにいつも聞く音。だが、一番の問題は・・・・・・ここが空中であることだ。

「いったいどっから聞こえてるんだ」

リョウが音の出所を探るため、目を閉じ耳を澄ます。彼女の五感は研ぎ澄まされ、それらが得た情報は
、脳内に、空に大穴が開く映像を映し出す。
(上か)
音の出所を突き止めた彼女は目を開ける。それと同時にハヤトが叫んだ。

「来るぞ」

リョウは、流れるような動きで、機体を半歩だけずらす、すると、巨大な銀色の物体が、弾丸のような速さで機体をかすめた。

「なんだあれは」

視界をかすめた物を、一瞬で見分けたリョウ。質問ではなく感嘆の意味で言葉をつむぐ。

「見れば分かるだろう」

人心の機微を解さない男がそれに答えた。

「ゲッター2だ」

 
 
 

銀の弾丸のように見えたものは、腕に付いた巨大なドリルだ。
高速で通り過ぎたはずのそれは、初太刀を外したと見るやすぐさま上昇し、
今はリョウたちの乗るゲッター1と対峙し、目の前でこちらを見据えている。
事態が未だ把握できないでいるリョウ。それと対照的に、ハヤトは冷静だった。

「リョウ、チェンジだ」

「はぁ?この距離でか」

「スピード勝負ではゲッター1はゲッター2に劣る。俺ならば互角には持ち込めるだろう」

この時点でハヤトには勝算があった。
このゲッターはとある仕掛けによりゲッター線を吸収する能力が非常に高くなっている
ゆえにゲッター2に変形することが出来れば逃げ回るだけで相手をエネルギー切れにさせられる。
そう踏んだのだ。

 
 

「・・・・・・お前でも互角か」

 

半ば勝ちを確信しているハヤトに比べ、リョウは慎重だった。
リョウの研ぎ澄まされた感覚は、二つのことを理解していた。
目の前のゲッターは、自分には互角にさえ持ち込めない。そして、今はまだ本気ではない。
ならば奴が本気を出す前にカタをつけるしかない。

「やるしかねぇか」

そう言ったリョウはトマホークを出し、敵に投げつける。
狙いの甘い攻撃を、敵は回避し、距離を取った。

「さすがに突っ込んで来ちゃくれねえか」

ゲッター2の長所はその加速である。逆に言えば、一度勢いが付けば止まるのは容易ではない。
攻撃によって自らに隙を作り、そこを狙った敵の反撃を、オープンゲットによって回避出来れば、
安全にゲッター2にチェンジできただろう。しかし相手もゲッター乗りである以上それを知っている。
だから、こちらの最良の手は打たせてくれない。

「けどな 俺たちをなめんなよ!」

自分たちの技術ならば、ベアー号が無人であることを差し引いても合体が間に合うだろう。
敵の機体が離れた一瞬の隙に、リョウは合体レバーに手をかけた。

「オープンゲット!」

機体を三機に分解し、二人同時にレバーを操作する。

「チェェンジ ゲッタァァァァ2!」

その言葉が出る一瞬前に、合体時と同等の衝撃がリョウを、いや、イーグル号を襲った。

「うわぁぁぁ!」

「どうしたリョウ!」

その瞬間、通信機の音声が乱れ、ハヤトの映像にノイズが走る。

「!・・・くそっ!こっちもやられた」

衝撃音の後、通信が切断される。それら二つの原因は対峙しているゲッターだった。
リョウの赤く染まる視界は、コクピットの窓の外にハヤトのジャガー号を捕らえる。
それの脇腹に大穴が開き、そこから銀色のドリルが覗いていた。

「ハ・・ヤト」

リョウは痛む頭を押さえ、ジャガー号への通信ボタンを押す。すると聞いたことの無い男の声が降って来た。

「チッ・・・炉心は外しちまったか」

地獄の底から響いてくるかのような凶暴さを宿した声。それにリョウは本能的に身を硬くする。
男は通信が入っていることに気づかず、独り言を言い始めた。

「さて、後はサンプルの場所か・・・どうしたもんだろうな」

しばらく考え込む声がし、次に勢いをつけて起き上がる音がする。

「とりあえずイーグル号のパイロットに聞くか」

男の発言と共に、機体がきしみ始める。どうやらゲッター2のアームで機体をこじ開けようとしているらしい。
大事なことなので二回言う。ここは空中だ。

「・・・・・・冗談だろ」

リョウが押し殺した声で言ったのが聞こえたのか、それとも偶然か、男は操作の手を止めた。

「やっぱ他のゲッターってのは慣れねぇな。ゲッター1にチェンジすっか」

通信機越しにレバーに手をかける音がし、リョウはある事実に気がつく。
チェンジをするということは一度合体を解かねばならない。
当然腕などは一時的に収納される。つまり
(このままだと 落ちる)
このまま落ちて地面に叩きつけられる。そんな最悪の未来を考えたリョウの耳にあの男の声が響いた。

「おっと、先にこいつら地面に降ろしてやらねぇとな。落としちまう」

リョウは、そのことに気が付いてくれたことに安堵して、体をシートに預けた。
ゆっくりと降下していく感覚の中、何気なく画面を見ると、そこにはハヤトが写っている。
どうやら奇跡的に音声だけが敵のコックピットと繋がれ、映像は、ハヤトの機体とつながったらしい。
ハヤトはどこからか取り出したマシンガンを構え、リョウに意思を伝える。
(奴が地上に降りたら攻撃する)
絶望的な状況でも、目の前の男は、あきらめようとしない。頼りになる相棒に、リョウの口角が上がる。
(援護は任せろ)
リョウも彼に意思を伝えると、座席にしまいこんでいた手甲を取り出し、ブーツを履きなおす。
鉄板で強化されているそれらは、リョウがもっとも得意とする武器だ。

白熱する彼らをよそに、出現していた敵は虹色に光り消えてゆく。
まるで元から存在していなかったかのように、その存在は誰にも悟られず、消え去った。

 
 
 

横腹を貫かれたジャガー号が地上に下ろされるのを見計らい、ハヤトはコックピットの脱出装置を起動する。
その煙の切れ間から、ゲッター2のジャガー号のコックピットに、弾丸の雨が降り注いだ。

「うぉっ!なんだ!?」

男のひるんだような声を背に、リョウは、ゆがんでしまったコックピットの扉を、手でこじ開ける。
なんとかこじ開けると、未だゲッター2につかまれたままの機体から、広く天地が見渡せた。
空には未だ大穴が開いている。だが、その異変を気にかけている余裕はなかった。

「あいつら、なんでコクピットに武器なんて積んでんだ!」

通信機から響く、焦りと怒りの浮かんだ男の声に、リョウが涼やかな声で答える。

「それはな。お前みたいな奴をこらしめるためだ。」

「何!?今声が、」

リョウは相手の返事を待たず、宙に飛ぶ、向かう先は敵のジャガー号のコクピットだ。

「うおりやぁぁぁぁぁぁぁあ!」

鉄板で強化した靴を、マシンガンの攻撃によって、ヒビの入っている部分に叩きつける。
エメラルドグリーンの強化ガラスは、まるで普通のガラスのように、あっけなく音をたてて砕け散った。

操縦席にいたのは、獣のような雰囲気をまとう一人の男だった。
重力に逆らって逆立つ髪と、同じように逆立った赤いマフラーが、
その男が、何者にも捕らえられないことを示しているようだった。

リョウは、彼の迫力を目の当たりにし、ほんの一瞬怯んだ。通信機を通してさえ、彼女をおびえさせたのだ
。間近で見る迫力に、本能が攻撃をためらう。
それでもリョウは自らの拳を繰り出した。
強烈な殺気を放つ男は、攻撃の隙に、向かってきたリョウを捕らえ、そのまま盾にする

「リョウ!」

ハヤトは事態に気づき、銃撃の手を止めた。

「余計な手間かけさせやがって、こいつに当てたくなかったら、おとなしくしやがれ」

ハヤトは動じずに彼女に指示を出す。

「リョウそいつの腕をへし折ってやれ!」

ゲッター合金を歪めるほどの腕力をもつ彼女なら、たいていの敵は一ひねりでつぶせる
だが、相手もゲッター乗りであるという事実が、彼女の怪力を意味のないものにしていた。

「くっハヤト。だめだ」

男は、もがく女を難なく抑えながら、殺気を強くする。

「!隼人だと」

相手のわずかな動揺を見たハヤトが、付け入る隙になるかと、交渉のために歩み寄る。

「そうだ。俺がハヤトだ」

ハヤトはパイロットスーツのヘルメットを脱ぐ、すると、特徴的な前髪が、面長な顔を覆った。

「そんなはずは。くそっ、どうなってやがるんだ」

男は一瞬、動揺するも、すぐに冷静さを取り戻す。

「まあいい あとであいつに全部吐かせてやる」

「おいそこの男 てめぇにはサンプルの場所を吐いてもらうぜ」

男の不敵な笑みに、感情を逆撫でされたハヤトは不服そうに答える。

「いやだと言ったら?」

その言葉にマフラーの男は、無言でリョウを絞め上げた。

「うっ・・・あっ」

彼女は苦悶する声を上げ、細いからだは軋むような、不穏な音をたてた。
ハヤトはわずかに表情を変え、それを悟られないように背を向けた。

「わかった。案内しよう。こっちだ」

背を向けたハヤトに、男は端末を投げ渡す。

「そいつに座標を入力しろ。あとは回収部隊が何とかすんだろ」

男は投げやりに言うと、興味を失ったようにコックピットに座り、空いている方の手で
ゲッターの端末を操作し始めた。
無視されていることに気づかず、ハヤトは端末に、情報をすばやく打ち込む。

「入力したぞ。リョウを離せ」

そう言って、つまらなそうに端末を地面に放ったハヤトに、男は無情に言い放った。

「やなこった」

まるで口が裂けたかのように不気味に口角をあげ、目を見開く。その腕で女はまた暴れた。

「!離せ あんたなんかすぐにやっつけてやる」

「うるせぇ猫だな。司令様の命令だ。女は、殺さずつれて来いって言われてんだよ」

女は、その部分を強調した口調にリョウは焦りを強くした。

「やめろ。ハヤトに何かしたら許さないぞ!」

「リョウを離せ!彼女に何をするつもりだ」

二人の様子を面白そうに、ちらりとだけ見て、男はレバーに手をかけた。

「俺はお前らに手出ししねぇよ もっともあいつはわかんねぇがな!」

「あばよ!」

男がレバーを引く。二人を乗せたゲッターロボが発進し、
未だ大空にぽっかりと空いているトンネルを掘ってきたゲッター2で逆走する。 
二人の乗っていたゲッターは無残に壊され、ハヤトは逃げる敵を追うことが出来なかった。